腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「それでは次に大グループの試験結果の順位を発表します」
由比ヶ浜と雪ノ下を医務室に搬送……という名前の除外を済ませると初老の男性がそう告げる。まあアイツらがいたら煩いからありがたい。実際2人が出ていくと2人に暴力を振るった松下は全校生徒の大半から拍手を受けていたからな。
その中にはひよりと有栖のグループのみならず、俺や龍園、綾小路や高円寺、なずな先輩や南雲会長もいたからな。
挙句に茶柱先生も一瞬だけ拍手しかけていたぐらいだ。そして茶柱先生の近くにいた真嶋先生や星之宮先生や坂上先生も茶柱先生の行動をチラ見しながらも咎めないあたり由比ヶ浜と雪ノ下は教員にも相当嫌われているようだ。
「グループの順位読み上げる際には3年生グループの責任者のみを読み上げます。まずは男子グループですが男子生徒の全グループはボーダーラインを越えていて、退学者を出さずに試験を乗り切ることができました」
しかし「男子生徒の全グループは」か……つまり女子は違うって可能性がある。ひよりのグループは大丈夫か?有栖のグループの雪ノ下は筆記が優秀なのに対して、由比ヶ浜は本当の無能だからな。万が一って事もある。
「では、まず男子総合1位は……3年Cクラス、二宮倉之助くんのグループです」
瞬間、離れた場所にいる堀北先輩の近くから歓声が上がる。つまり1年生だと葛城のグループか。
「やったな堀北。流石だな」
藤巻先輩が堀北先輩を褒める中、2位から6位までの順位が発表される。俺のいたグループは、2位という結果だった。
1年生で比較したらウチのグループは1位だっただろうな。何せ……
「んっ……2人の胸、柔らかいです」
「煩い変態!あたし1人でも充分でしょ!」
「やれやれ、本当に甘えん坊な後輩だよ。仕方ないから今夜はたっぷり甘やかしてやろう」
今現在、軽井沢と鬼龍院先輩の胸に顔を挟まれながら、鬼龍院先輩に頭を撫でられている怪物がぶっち切りだったから。というか綾小路はマジでTPOを弁えろ。
もう今はコイツらは気にしないでおこう。
「やっぱりさすがですね、堀北先輩。おめでとうございます」
南雲会長は笑みを浮かべながらそう口にする。全く悔しそうじゃないが、視界の隅に綾小路達がいるからか口元が引き攣っている。
しかし悔しそうじゃないのも当然だろう。綾小路の意見がが合っているなら南雲会長はこの後にとんでもない悪意を展開するからな。
南雲会長の賞賛に堀北先輩は黙っている。もしかしたら嫌な予感を感じているのかもしれないな。
「お前の負けだな、南雲」
藤巻先輩が南雲会長に向かってそういい放つが南雲会長の表情に変化はない。
「そうですかね。まだ発表は始まったばかりですよ」
「抜かせ。決着はついた」
「ええ、確かにつきました。男子の方は」
南雲会長がそう言った瞬間に周りの空気が冷たくなる。
「男子の方?女子は関係ない」
「ええ。関係ありませんよ。この勝負にはね」
回りくどい言い方に藤巻先輩も険しい表情になる。
「では次に女子グループを発表します。1位のグループは3年Cクラス、綾瀬夏さんの所属するグループです」
その言葉に一部の女子のテンションがあがる。ウチのクラスの女子も喜んでいるな。
そして遂に問題の時が来る。
「えー、誠に残念なことではございますが……女子の方から、平均点のボーダーを割る小グループが出てしまいました」
するとさっきまでの喧騒はどこへやら、体育館は一気に静まり返る。ここで堀北先輩も気づいたようで南雲会長を見る。
しかし俺の中でも焦りがある。南雲会長の作戦が成功するだけならまだしも、由比ヶ浜の愚かさによりひよりやなずな先輩の所属する大グループは精神的に疲弊しているのが怖い。
ましてひよりは由比ヶ浜が所属するグループの責任者だ。万が一って事もあるので緊張してしまう。
(確かひよりの大グループの3年グループの責任者は山口先輩だったな)
ビリじゃないなら何位でも良いから、ビリの発表で山口先輩の名前は出るな。ビリじゃないなら退学者は出ないのだから。
緊張が高まる中、男性が口を開ける。
、
「最下位のグループですが……3年Bクラス、猪狩桃子さんのグループです」
瞬間……
『セェェェェェェェェフッ!』
ひよりが所属する大グループのメンバーが一斉にガッツポーズをして、ひよりは安堵の息を吐いている。まあ厄病神の呪いから解放されたからな。気持ちはわかる。
しかしそれ以外の生徒には緊張が走る。3年生の大半の緊張は半端ない。
しかし緊張とは裏腹に教師の言葉は続く。順位を発表するがひよりの所属する大グループは6グループ中5位だったが、由比ヶ浜がいなかったら1位は無理かもしれないが3位圏内だと思う。
「そしてボーダーを割ってしまった小グループは……同じく3年Bクラス、猪狩桃子さんの小グループです。以上で混合合宿の結果発表を終わります」
そう宣言して発表を済ませる。
「何をしたんだ南雲!」
「今は結果発表の最中ですよ先輩」
発表の直後、藤巻先輩が南雲会長に詰め寄るが南雲会長は鼻で笑う。しかし南雲会長の視線は藤巻先輩に向けられておらず、南雲会長から見てダブルぱふぱふを堪能している綾小路の後ろにいる橘先輩を見ている。
「えー、お静かに願います。残念ではありますが責任者の猪狩さんの退学が決定いたしました。また審議の結果、グループ内で連帯責任を命じることも出来ますので、猪狩さんは私の所に来てください……以上で発表を終わります。バスの準備が整うまでは自由に過ごしてください」
解散が命じられて生徒らはゾロゾロと動き出す。そんな中、南雲会長は嬉々として笑いながら猪狩先輩の元に向かう。この人本当に性格が悪いな。
「猪狩先輩。いったい誰を道連れにするのか教えてくださいよ」
南雲会長の言葉に対して猪狩先輩は落ち着いている。退学を告げられたのに落ちついてるし、多分南雲会長から2000万ポイントを貰ってるな。
「決まってるでしょ。散々私達の安寧を乱して最下位に導いたAクラスの橘茜さんよ」
そんな南雲会長に対して猪狩先輩は怒気を含め吐き捨てる。一方の橘先輩は顔を青白くしている。
どうやら以前綾小路の言っていたことは完璧な正解だったようだ。まあ俺としてはひよりと有栖となずな先輩が馬鹿2人のせいで退学にならなかったから良しとしよう。
しかし今後も生徒会が特別試験に携われるなら対策を打つべきだろう。また全学年でもぶつかる試験があるかもしれないしな。
まあ今日明日の事じゃないし、今は帰りの支度を済ませて直ぐにバスに乗れるようにしよう。ひよりや有栖はグループメンバーと生き残った喜びを分かち合っているし、今は話しかけないでおくべきだ。
俺は藤巻先輩の怒号を背後にしながら自分達のグループの部屋に行くべく体育館の出口に向かうと、なずな先輩がすれ違いに……
「……帰ったら朝までエッチしようね」
こっそり耳打ちしてくる。同時に俺の中でも昂りを感じる。合宿中も抱いたが、やはり気兼ねない自室で抱くのが1番だろう。
なずな先輩の言うように今夜は3人を相手に朝までセックスをしよう。
そう決意して体育館を後にした。
同時刻……
「教えてくださいよ橘先輩。3年Aクラスの卒業間近に「ひゃぁんっ」……退学していく気分はどうですか?そして堀北先輩、きっと「んっ、清隆……」……これまで感じたことない苛立ちに包まれて「もっと強くぱふぱふしてください」さっきから煩えよ!乳繰りあいは別の場所でしろ!」
体育館で橘と堀北学を煽っていた南雲だが、近くでダブルぱふぱふを受けている綾小路に怒鳴る。
「失礼しました。ついムラっとしました」
綾小路は2人の胸から離れて一礼する。
「この状況でムラムラ出来るお前の神経はどうなってんだよ……ついでに聞いとくが綾小路、お前は俺の考えてる事に気づいたか?」
「3年Bクラスに橘先輩を道連れにする報酬として2000万渡して、2年の南雲親衛隊と3年BCD連合で橘先輩をリンチした作戦ですか?」
綾小路は淡々と口にすると3年の大半はギョッとした表情になり、南雲は楽しそうに笑う。
「どうやら完全に理解してるようだがいつから気付いてた?」
「2、3日目に廊下で猪狩先輩達が橘先輩を囲んで責めてるのを見て怪しいと思って、その後、猪狩先輩の大グループの2年の小グループはAクラスで纏まってるのを知って理解しましたね。で、猪狩先輩に焦りの色がないあたり南雲会長が3年Bクラスに救済ポイントを渡したのでしょう?」
実際はなずなからの情報で合宿前から察していたが、それを言ったら面倒なので口にしない。軽井沢と鬼龍院も空気を読んで口を挟まない。
「正解だ、おめでとさん」
南雲が綾小路に拍手を送る中、藤巻は怒りの表情を浮かべながら綾小路の胸倉を掴み上げる。
「だったら何で教えなかったんだよ!」
「?無駄だからですよ。南雲会長の戦術はグループが決まった時点で成功ですし、オレが藤巻先輩に言っても何も変わりませんが」
綾小路は淡々とそう返す。実際真っ当なやり方で南雲の作戦から逃れるにはグループ決めの段階で対策を取らないとどうにもならない。
「それに橘先輩から口止めされてましたから。文句なら橘先輩に言ってください」
綾小路は橘の原因と告げる。余りの淡々っぷりに大半の生徒がドン引きする。
「っ!お前ぇっ!」
藤巻は激昂して綾小路の顔面に拳を振るう。対する綾小路は冷静にゆっくりと頭をずらして拳の軌道上に額を移動させ、力を込めて拳と激突する瞬間に込めた力を、藤巻の拳に伝わるように調整しながら解放する。
すると……
グシャッ
「っ!がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
藤巻の右拳から砕ける音が聞こえて、藤巻は絶叫しながらのたうち回る。
「藤巻!」
「藤巻君!」
3年Aクラスの生徒は藤巻に駆け寄る。そんな中、綾小路は南雲を見る。
「今のは藤巻先輩の自業自得ですよね?オレはただ額に力を込めて衝撃に備えただけですし」
「まあそうだが……お前は何をやったんだ?」
「特には。殴られると思ったんで力を込めただけです……まあオレの頭突きは熊を気絶させるくらい頑丈ですけど」
「そういや熊を気絶させたんだったな。まさか頭突きで仕留めるとは思わなかった。何にせよ今回は藤巻先輩からの暴力に対する正当防衛って線も考えられる。学校に戻ったら話、まあ少なくとも過剰防衛と判断されても停学以上の罰はない」
南雲はそう返す。綾小路から頭突きをしたら論外だが、藤巻の方が先に顔面パンチを仕掛け、結果綾小路の額に激突した衝撃で骨が折れたのは自業自得だ。
「でしょうね。では俺も失礼します」
一礼して南雲に背を向けて軽井沢と鬼龍院の所に向かう。
「頭は大丈夫なのか?」
「大丈夫……いや、痛いんでもう一回頭に胸を押し付けてください」
「嘘をつくな変態!というか清隆、橘先輩を助けなかったんだね」
「当たり前だ。助けなかったら3年Aクラスを敵に回すだけだが、助けたら3年BからCクラスと2年を敵に回すからな。それに恵や楓花さんを巻き添えにするわけにはいかない」
恋人と恋人候補の2人と橘、どちらを優先にするかは比べるまでもない。
「ちなみに橘先輩はどうするべきだったの?」
「橘はクラスメイトや教師に相談するべきだったな。それをこまめに繰り返して、廊下とかで責められている所を第三者にしっかり把握して貰えば、テストの点数から悪質な罠と学校も認識して道連れに選ぶのを防いでくれたかもしれない」
もちろん絶対ではないが、少なくとも1人で抱え込んでいる時点で悪手以外の何物でもない。最後まで1人で立ち向かった時点で橘は間違っている。
「何にせよオレからしたら橘より2人の存在が重要だからオレが動くつもりはなかった」
八幡の影響で女好きになったが、優先順位などはしっかり把握して無理なことはしないようにしている。
「ふ、ふーん。まああたしが大切なら良し!」
「可愛い後輩だな。帰ったら背中を優しく洗ってやろう」
軽井沢はデレデレして、鬼龍院は不敵な笑みを浮かべる。
そんな2人に綾小路は……
「それも楽しみですが……2人でパイズリしてくれませんか?」
「パッ……は、破廉恥だな君は……」
「ど直球に言うなこの変態!」
自分の要求を口にすると、鬼龍院は頬を染めながらジト目を綾小路に向けて、軽井沢は正拳突きを綾小路に放つのだった。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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