腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「比企谷君。由比ヶ浜さんが退学を回避する道を教えなさい。拒否権はないわ」
あろうことか俺にそんな命令をしてきたので……
「30万で良いぞ」
そう返す。すると雪ノ下は怒りを露わにする。
「ふざけないで!このままだと由比ヶ浜さんは退学するのよ!」
「知らねぇよ。そもそもの話、何で由比ヶ浜が退学するのかわからないのか?誰かに嵌められたならまだしも、勉強しなかったアイツの自業自得だろうが。つかそんなに由比ヶ浜を守りたいならクラスメイトと協力してポイントをかき集めて龍園に土下座すれば良い話だろうが」
「そうですね。所詮は由比ヶ浜さんの自業自得です。どの選択をするかは自由ですが、自分のプライドを捨てずに由比ヶ浜さんを見捨てるのが1番だと思いますよ。由比ヶ浜さんはいても足を引っ張るだけでしょう」
坂柳がこの状況を見て楽しそうに笑いながらそう口にする。そんな中、龍園の責めは止まらない。
「後1分だな」
その言葉に雪ノ下は焦り俺の胸倉を引っ張る。
「今すぐに教えなさい!でないと容赦しないわ!」
なるほどな。力づくで聞き出す腹か。焦りのあまり暴力に走ろうとするか。
「どうぞご自由に。まあそうなったらお前も退学だろうな」
俺は監視カメラを指差しながらそう口にすると雪ノ下は悔しそうに手を離す。
「つかそんなに土下座が嫌なら見捨てたら良いじゃねぇか。お前にとっては由比ヶ浜より自分のプライドの方が大事なんだろ?」
龍園があおりまくる。それはもう楽しそうに。
「ふざけないで!由比ヶ浜さんは大切な友達よ!」
雪ノ下の叫び声に龍園が嘲笑を浮かべる。その際に携帯を取り出しているのは雪ノ下が土下座した場合に写真を撮る為だろう。
「だったら土下座しろよ。後30秒な」
「っ……!」
龍園の言葉に雪ノ下は顔を真っ赤にする。そしてチラッと横にいて泣いている由比ヶ浜を見たかと思えば、再度龍園を睨みつけ、床に座り頭を地面につける。要するに土下座をした。
「くはっ!コイツは傑作だな!」
龍園は笑いながら写真を撮る。その際に雪ノ下は土下座しながらもプルプル震える。プライドの高い雪ノ下からしたら今の状況は我慢出来ないものがあるだろうな。
「じゃあ後は10万……って言いたいが、頭を踏ませてくれんならタダにしてやるよ」
コイツ、やっぱり鬼畜だな。Dクラスの大半はドン引きしてるし。
「待て龍園。それ以上は度が過ぎるぞ」
「教師は引っ込んでな。で?頭を踏ませるのか?それとも「待ってくれないかな?」……あ?」
するとイケメンが話しかけてくる。
「10万ポイントは用意する。だからこれ以上雪ノ下さんを傷付けるのはやめて欲しい。皆、少しずつで良いからポイントを出してくれないかな?」
「……平田君。私の端末に6万ポイントあるから使って」
イケメンがそう言うと土下座している雪ノ下がそう言う。どうやらかなり貯めているみたいだな。
「じゃあ僕が4万ポイント払うよ。龍園君は番号を教えて」
「くくっ、交渉成立だな」
龍園はそう言って番号を平田という男子に渡す。同時に平田が自分と雪ノ下の携帯を操作する。すると龍園の携帯が鳴りだし、龍園は小さく頷く。
「じゃあ約束通り教えてやるよ。それはな、教師に頼んで点数を売って貰うんだよ」
龍園の言葉にDクラスの間に騒めきが起こり、茶柱先生は目を細める。
「点数を売るとは前代未聞だな」
「この学校ではあらゆる物をポイントで買えるって入学初日に言われたからな。以前坂上に聞いたら坂上は1点5万ポイントで売ってやると答えたぞ」
「なるほどな。他の先生が認めたなら問題ないだろう」
「で?Dクラス担任は何点で売るんだ?」
「そうだな……坂上先生と同じ5万ポイントにしよう。由比ヶ浜は4点足りないから20万ポイント必要になるな」
「待ってください茶柱先生。それは高過ぎだと思います」
「そうでもないだろう。1点あたり1000ポイント程度なら誰でも赤点を回避出来て、勉強する意欲が無くなるだろう。教師としてそれは看過できない」
まあそうだろうな。仮にも国が運営する学校の生徒が勉強する意欲を無くしたらアウトだ。寧ろポイントを高くすれば赤点を回避しようとする意欲が更に増すし、教師が点数を安売りするのは無理だろう。よって茶柱先生の提示した値段は妥当だ。
「つまりお前らは20万ポイント払って過去問を使ったのに赤点を取ったゴミを助けるか、ゴミを捨てるかのどっちを選ぶんだよ」
龍園がどっちを選ぶか楽しそうに提示する。正直言ってこれはエグい。
何故ならここで由比ヶ浜を助けたらクラスポイントが無いDクラスの生徒が所有するプライベートポイントはかなり失うだろう。しかも助けた由比ヶ浜が今後クラスにとって役に立つ可能性は低いし、下手したら次の中間で再度赤点を取る可能性もあるし、助けるメリットが無い。
そもそもの話、ポイントを出す事を嫌がる生徒もそれなりにいるだろう。
逆に由比ヶ浜を見捨てた場合、ペナルティが発生する可能性はあるが戦力については殆どダウンしないしプライベートポイントも減らないので見捨てたいと思う生徒もいるだろう。
Dクラスはクラスポイントが0なので由比ヶ浜を助けるなら必然的にポイントを持っている人間に負担がかかるし。
そう思っているとHR終了のチャイムが鳴る。続きは気になるが後数分以内に教室に戻らないとペナルティが発生する。
「ちっ……良いところで邪魔が入ったか」
「そうですね。まあ私としては臨時収入が入ったので良かったです」
「言ってろ。戻るぞ比企谷」
「へいへい。1時間目は数学だよな」
サボりたいがサボるとペナルティが発生するから仕方なく出る。
「ああ。じゃあ俺達はもう行く。10万ポイントはありがたく頂いた。お前らが大金払ってゴミを助けるか、捨てるか楽しみにしてるぜ」
龍園はそう言ってDクラスの生徒を嘲笑いながら出て行くので俺達もそれに続く。
「普通に考えたら見捨てるでしょうね」
「普通に考えたらね。でも坂柳は不本意そうね」
「そうですね。私が直接手を下したい気持ちはあります」
「さっきから気になってたんだが、何で坂柳はあのゴミを潰したがってんだ?」
「子供扱いされまくったりヒステリーみたいに喚かれたんだよ」
俺が答えると龍園は鼻で笑う。
「喚かれたのはともかく、子供扱いは普通だろ?お前貧乳でチビだし」
「ふふっ、不良の雰囲気を醸し出しているお利口さんが言ってくれますね」
龍園の挑発に坂柳の額に青筋が浮かばせながらそう言ってくる。まあ確かに龍園が真面目に授業を受けているのってシュールに見えるんだよなぁ。そう考えると龍園ってお利口さんだよな」
「黙ってろ比企谷。次に同じ事を言ったらぶっ飛ばすぞ」
どうやら口に出していたようだ。以後気を付けよう。
「へいへい。ところで由比ヶ浜についてはどうなると思う?」
「そうですね……恐らくDクラスの生徒の中に彼女を助ける事に反対する生徒はそれなりにいるでしょうから、助かる可能性は余りないでしょうね」
まあそうだろうな。由比ヶ浜を助けるのには20万ポイント必要だ。しかしDクラスはクラスポイントを持ってないので入学式以降ポイントが増えてないので20万ポイントはかなりの大金だ。
ポイントを何万も残している生徒もいるとは思うが、そいつらは由比ヶ浜を見捨てたいと思ってる可能性が高い。
全員で割り勘すれば一人当たり5千ポイント程度で済むが、Dクラスの生徒の中にはポイントを使い果たした奴も多いだろうし、それはつまり何万も残している生徒の負担が大きくなる事を意味する。
ポイントを何万も残している生徒からしたら「何万も払ってまで由比ヶ浜を助ける必要性はない」と考え、ポイントの支払いを拒否する可能性が高い。雪ノ下あたりはそいつらに騒ぐかもしれないが、ポイント持ちは雪ノ下と徹底抗戦するだろう。
よって坂柳の言う事は紛れもなく正論だ。少なくとも俺がDクラスの生徒なら絶対にポイントを出さない。
実際由比ヶ浜は成績も悪く、知識量も少ない。運動神経も悪く、頭の回転も悪い。加えて過去問ーーー答えがあるにもかかわらず赤点を2科目も取ったのだ。残してもメリットが全く見当たらない。
感情論を使えば退学を免れる可能性があるが、感情論を抜きにしたら絶対に退学になるだろう。
「ま、どうなろうが坂柳に目を付けられた以上、卒業するのは無理だろうな」
「もちろんそのつもりです」
坂柳は即答する。坂柳の目には剣呑な光が宿っているが、さてさて、由比ヶ浜の命運はどうなるやら……いつ退学になるんだろうな。
俺はそんな事を考えながら龍園とCクラスの教室に入るのだった。
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