腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
学年末試験の結果が発表された翌日、いつものように教室で朝のHRを待っていると、チャイムが鳴って坂上先生が入ってくるが何故か物凄く険しい表情を浮かべている。
おまけにピリピリしたオーラを放っていて、教室に緊張が走る。
「あの、何かあったんすか、先生」
石崎の質問に坂上先生は答えず、深呼吸をしてから口を開ける。
「君達に、伝えなければならないことがある」
喉の奥から懸命に絞り出されるような声からは動揺を感じ取れる。
「君達1年生はこれまでに脱落者を出さずにクリアしてきた。学校が出した課題により1年間脱落者が出なかったのは本年度が初めてだ」
そういやそうだな。まあ一部の馬鹿は退学になってもおかしくないけど。
「何か問題があるんでしょうか。良い事じゃないですか?」
金田の言葉に坂上先生は険しい表情を浮かべたまま頷く。良い事なのにあんな表情をする理由がわからん。
「もちろんだ。しかし時として私の予測を超えた事態になる事もある」
どういうことだ?
疑問符を浮かべている中、坂上先生は躊躇うように仕草をする……が、やがて口を開ける。
「学校側は君達1年生から退学者が出てないことを考慮して……その特例措置として今日より追加の特別試験が行われ、それをクリアした者が本来の特別試験に進める」
黒板に3月2日火曜日と追加特別試験と書かれる。
「なんすか!退学者が出なかったら追加ってふざけてるんですか?!」
石崎が騒ぐがご尤もだ。いくら退学のリスクがある試験を受けたからって退学者がいない事が問題視されるなんてふざけてるとしか思えない。
「石崎君の意見は尤もだ。我々教員は今回の試験を重く受け止めている」
教師は不満がある……つまり理事会は不満に持ってる……しかし理事長って有栖の親父だよな?娘がサディストだから父親もサディストの可能性はあるが、いくら何でも理不尽過ぎるぞ?
「坂上、その追加特別試験はどんな内容なんだ?」
全員が気になっていたであろう内容を龍園が質問する。
「今から説明を始める。今回の試験は学力や体力など求めるものではなく、内容は至ってシンプルだ。そして退学率もクラスごとに3%未満と決して高くはない」
数値だけみれば確かに高くはないだろう。しかし今までと違って退学率が出たから油断は出来ない。どういう意味合いかで難易度は変わるからな。
「今回の追加特別試験の名称は———『クラス内投票』だ」
「クラス内投票?退学者がいないから行う試験ですし、人気投票やってビリが退学ってところですか?」
それなら学力や体力はあまり関係なさそうだが……
「概ね正解だ」
俺の質問に坂上先生がそう答えるとクラスに騒めきが生まれる。まあ人気投票で退学者を決めるなんて前代未聞だからな。
「君達は今日からの金曜日までにクラスメイトに評価をつけてもらう。そして投票日である5日後の土曜日に、自分が最も高く評価したクラスメイト3名に『賞賛票』を投じ、逆に最も低く評価したクラスメイト3名に『批判票』を投じる。更に他クラスの生徒へ『賞賛票』を一票投じる。点数については票数で判断する。例えば比企谷君が20人から賞賛票を貰い、5人から批判票を貰えば比企谷君の点数は20マイナス5で15点となる」
つまり賞賛票と批判票の強さは同じというわけだ。
「つまり批判票が集まった奴が退学って訳か。投票数は3名って事は退学者は3人なのか?」
龍園が質問するがそれは流石にない……と思いたい。
「まずは報酬について話す。まず上位3人には報酬が与えられ、1位と2位の生徒にはプロテクトポイントが与えられる。これは所有数の数だけ退学を無効に出来るポイントだ」
教室には驚きが広がる。確実に一回は退学を回避出来る事になるからな。つまり龍園が自爆戦術を使っても、一回はペナルティ無しで済む事になる。
「そして3位の生徒については今後退学になりにくくなる。この学校では赤点以下は退学になるが、例えば赤点ラインが40点だとしたら、3位の生徒のみ35点になる……といった具合だ」
それも充分魅力的だな。しかし報酬がそれだけ豪華である事を考えるとペナルティは……
「ビリとブービーは退学、下から3番目の奴は退学になりやすくなるのか?」
「その通りだ。ちなみに退学者が出た際のペナルティはない。また誰が誰に投票したかについては絶対に公開しない。プライベートによる支払いでもだ」
まあ賞賛票はまだしも、批判票は火種になるからな。
「また今回の試験では必ず上位と下位から3人ずつ出さないといけない為、票の操作で全員が0票とかになった場合、何回でもやり直す」
どんだけ退学者を出したいんだよ?
「首位が4人以上いたら?」
「その場合は4人だけで再度投票を行って3人選出する。それと退学を回避する方法として『おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』っ!これはDクラスですね」
突如背後……Dクラスの方から大歓声が響き渡る。まあ当然だろう。
今回の試験の難易度はウチとAクラスは簡単で、Cクラスはメチャクチャ難しくて、Dクラスからしたら簡単を通り越してボーナス試験だからな。
何せ明らかに足手纏いな嫌われ者が5人もいるからな。残りのメンバーからしたら最高の試験だろう。
「まあ気持ちはわかりますから放っておきます。話を戻しますが、退学回避する条件ですが、1人につき1000万プライベートポイントと100クラスポイントの支払いで回避できます」
それ実質回避出来ないだろ?基本的に批判票の対象は実力が低い生徒だ。そんな連中2人のために2000万プライベートポイントと200クラスポイントを払うなんて馬鹿のすることだ。
どこまで学校は退学者を求めているんだよ?
(まあ今回俺達からしたら凄く良い試験だ)
クラスの雑魚を消せるし、Cクラスは救済措置を狙うだろうからプライベートポイントとクラスポイントが減る。そうなれば盤石の体制となる。
そう思いながら俺は坂上先生の書いたルールを確認する
追加試験・クラス内投票
試験内容
賞賛票、批判票が各自に3票ずつ与えられ、クラス内で投票して結果を求める
ルール1
賞賛票と批判票は互いに干渉しあい、結果は賞賛票から批判票を引いた数
ルール2
賞賛、批判問わず、自分自身に投票することは不可
ルール3
同一人物を複数回記入すること、無記入、棄権などの行為は一切不可
ルール4
上位3人と下位3人が決まるまで繰り返し行われる
ルール5
1位と2位にはプロテクトポイント、3位には退学回避条件の緩和が報酬として与えられ、38位には退学回避条件の厳格化、39位と40位には退学のペナルティが与えられる。
ルール6
他クラスの生徒に投じる為の専用の賞賛票も各自1票所有する。
ルール7
退学を取り消す場合は1人あたり1000万プライベートポイントと100クラスポイント
本当に抜け道が存在しないな。
「以上で説明を終了します。後は君達で考えてください」
「待て坂上」
坂上先生は教室から出ようとするが龍園が止める。
「何か質問でも」
「質問じゃねぇが、今から退学者の選定をするから立会人になれ」
龍園の言葉に騒めきが生まれる。
「え?!いきなりすぎませんか?!」
「いや、逆にいきなりが良いんだよ。時間がかかったら各自でグループを結成して票の操作が行われるだろうし、グループが一切出来てない今仕掛けてクラスの方針を決めるのは悪くない」
「比企谷の言う通りだ。本来なら俺が決めても良いが独断で決めたら最善であるか確証を持てないから、少し手を加える……良いか、テメェら」
龍園は俺達の名前を呼び……
「今から紙に自分にとって退学になるべき生徒の名前を3人書いて坂上に渡せ。坂上は休み時間などに集計して放課後に発表しろ。その結果を参考に退学者を決める」
そのまま電撃作戦を告げるのだった。
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