腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「失礼します」
「何しに来たんだし!チビは今直ぐ帰れし!」
有栖が神室を連れてDクラスに入ると由比ヶ浜が怒鳴りながら指差しをしてくる。有栖の額には青筋が生まれる。
予想はしていたが、実際由比ヶ浜にそんな態度を取られていると苛立ちを宿してしまう。
しかしそれを無視して有栖は口を開ける。
「単刀直入に言いますが、貴方達の持つ他クラスへの賞賛票、1票につき5万ポイントで売っていただけませんか」
有栖の言葉に騒めきが生じる。
「イレギュラーな事態を回避する為だね?」
櫛田が有栖の前に出て尋ねる。
「はい。しかし悪い話ではないでしょう。貴方達Dクラスは連帯責任が深く関係するクラスポイントを碌に稼げないのですから」
有栖の言葉にDクラスの面々は強く頷く。実際、有栖から見ても五馬鹿の愚行はぶっ飛んでいて、五馬鹿がいなかったらCクラスに上がれたかはわからないがバイトをしなくてもある程度安定した収入はある……と考えている。
そして有栖からしたらイレギュラー要素の塊である他クラスへの賞賛票は掌握しておきたい。Bクラスとは同盟を結んでいるし、Cクラスの持つ他クラスへの賞賛票は救済措置に対する資金援助で確保出来るだろうから、残りはDクラスだけだ。
「うーん。売買の際はちゃんと先生の立会いの下で契約書の作成をするけど良いよね」
「もちろんです。私達の方から提案する予定でしたが、そちらから提示したのは感謝します」
「待ちなさい。場合によっては他クラスのエースにプロテクトポイントを持たせるのを妨げられるのに売買なんか認めないわ」
ここで堀北が口を挟むが、有栖は冷笑を浮かべる、
「なぜ堀北さんが口を挟むのですか?私は今AクラスのリーダーとしてDクラスのまとめ役の櫛田さんと話しています。下っ端が口を挟まないでくれますか?」
「うん。堀北さんって偉そうにものを言うけど、クラスに迷惑をかけてばかりだから黙ってて。この前だってグループを組めないでクラスに迷惑をかけたじゃん」
有栖に続いて櫛田も堀北に黙るように口にする。それに伴い堀北は悔しそうに睨む。
そんな中、綾小路が口を開く。
「そもそも他クラスのエースのプロテクトポイントの獲得阻止なんてAクラスとBクラスには通用しないしな。クラスのリーダーになりたがってるようだが、そんな事もわからないのか?」
「え?どういうこと清隆君?」
綾小路の近くいる乱交パーティーのメンバーの1人の佐藤が興味深そうに聞いてくる。
「他クラスへの賞賛票が無かった場合、Bクラスでプロテクトポイントを得るのは龍園と比企谷で、多分得票は35票くらいだろう」
「そうかもね」
「で、ウチのクラスが全ての賞賛票40票を2人以外に入れたら、片方のプロテクトポイント獲得を阻止できる……訳はない。同盟相手の坂柳のクラスが龍園と比企谷に入れたら?」
「あっ、そっか。同盟を組んでるから他クラスへの賞賛票80票の扱いを自在に出来るのか」
「だったらCクラスと組めば……」
「無理に決まってるだろ。一之瀬は十中八九救済措置を考えてるだろうが、現状ポイントは足りないだろう。そこで龍園達がポイント貸付の条件に「Cクラスの所有する他クラスへの賞賛票の扱いの一任」を含めるのは明白だ。実際今のCクラスには龍園か比企谷が交渉を持ちかけているんだろ?」
「……っ」
堀北は反論しようとするが綾小路に一蹴され、視野の広さの差を見せつけられて悔しそうに歯軋りする。
「ええ。八幡君とひよりさんはCクラスに救済措置の交渉をしているでしょう……話を戻しますが他クラスへの賞賛票については売買したい方は投票日前日までに私、真澄さん、橋本君、鬼頭君の誰かの所に来てください。お邪魔しました」
「待ってくれ坂柳さん!お願いだ!救済措置の為の2000万ポイントを貸して欲しい!」
教室から出て行こうとする有栖に対して平田が呼びかける。クラスメイトがポイントを出す事を拒否した以上、他クラスから2000万借りる以外、救済措置を使える方法はない。
しかしそんな大金を借りたいのは平田だけで、Dクラスの生徒の怒りが爆発しようとした時だった。
「良いですよ、2000万ポイントですね」
有栖が頷き、予想外の展開に教室にいる皆がポカンとした表情に変わる。綾小路や高円寺も「コイツ正気か?」って眼差しを向けている。
「本当かい!?」
「ええ。ただし返済期日までに返済出来なかった場合、平田君には退学して貰い、不足金については平田君のご両親が支払う契約を交わして貰います」
「っ!」
貸しても良いと言われて喜びを見せた平田だったが、条件を聞かされて笑みを消してしまう。
「何ですかその反応は?未成年が莫大な借金をして返済出来ないとなれば、保護者が立て替えるのは当然でしょう?」
「それは……」
紛れもない正論である。平田からしたら退学者は出したくないが、その場合、大量の借金を背負う事になり、返せなかったら両親にも迷惑をかけてしまうので口篭ってしまう。
「それでも良いなら構いませんよ。契約を結ぶなら投票日前日までにお願いします……では」
有栖は一礼してからDクラスから出ていこうとすると、平田は皆に向き合って頭を下げる。
「お願いだ!クラスから退学者を出したくないし、皆でポイントを集めるのに協力「ふざけんな!」「見返りがないだろうが!」「いい加減にしてよ!皆が迷惑してるんだよ!」「私達からしたら最高の試験なんだから!」良い加減にしてくれ!」
ドゴッ!
皆から猛反対された平田は叫びながら机を殴る。予想外の光景に皆が絶句する中、平田は虚な眼差しでクラスメイトを見る。
「退学者は出さない……出してはいけないんだ。その為にも皆でポイントを出して、皆で返済しないといけないんだ……!」
ブツブツと呟く平田に皆が絶句する。そんな中で綾小路は欠伸をしてから平田を見据え……
「断る。お前の欲求にオレ達を巻き込むな。俺達にポイントを出す義務はない」
一蹴する。そんな綾小路に平田は睨みつける。
「黙れよ綾小路……!」
「随分な言い草だな。今ウチのクラスのクラスポイントがプラスになった貢献者に対して」
実際今のDクラスのクラスポイントがプラスになっているのは先月のグループディスカッションにて綾小路と高円寺と松下と王と軽井沢と櫛田が活躍したおかげである。(堀北も上位グループだが、グループを組めなかったペナルティにより足を引っ張っている為除外)
一方平田は五馬鹿を庇い続ける為に五馬鹿を除いたら堀北と並んでDクラストップクラスの嫌われ者だ。
身分差は桁違いである。
「煩い……お前もポイントを大量に持ってるはずだから出せ……」
「断る。オレは美少女以外の頼みはあまり聞きたくない……ああ、美少女といえば思いだした。神室……今夜空いてないか?」
欲望ど直球の質問に神室は赤くなって怒る。
「はぁ?!馬鹿じゃないの!」
「ダメですよ綾小路君。彼女は私のおもちゃ……コホンッ、お友達ですから」
「そこまで来たら言い直さなくて良いからね!」
「アンタは直ぐに女に抱こうとするな!」
軽井沢が怒鳴りながら綾小路の頭をハリセンで叩き、櫛田と佐藤と松下と王と長谷部は呆れ顔を向けている。呆れ顔5人は綾小路の欲望に対する正直さを知っているからだ。
「痛いぞ恵……まあ話を戻すが、ポイントを払う気はない。諦めろ」
「良いから出せって言っているんだ……!」
ドゴッ!
平田が綾小路の顔面を殴りつける。それに対して綾小路は表情を変えない。
「その程度か。オレを暴力で屈服させたいなら高円寺レベルの強さになる事だ」
現状、この学校において綾小路が暴力で勝てるかわからないと思っているのは高円寺のみだ。それ以外なら堀北兄や南雲、龍園だろうと沈められる自信がある。
「煩い……出せよ!」
平田が再度綾小路の顔面を殴るが、綾小路は平然としながら平田の鳩尾に拳を入れる。
ドゴッッッッッッッ
「〜〜〜〜〜〜っ!」
手加減しているとはいえ、須藤の殴打を上回る威力の一撃に平田は悶絶しながら膝をついてしまう。
「さて、昼食の時間だし行こうか」
「あ、うん」
綾小路は軽井沢の手を掴んで教室の外に行こうとして……
「あ、連絡先を交換しないか?暇な時にデートしよう」
「彼女の前でナンパすんなぁぁぁぁぁぁっ!」
神室に連絡先の交換を要求して、軽井沢のハリセンが再度火を噴いた。
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