腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「……という事もあり、Dクラスの持つ他クラスへの賞賛票も30票以上は確実です。Cクラスについてはどうでしたか?」
昼休み、校舎裏にてひより&有栖&なずな先輩と飯を食べながら有栖の話を聞く。
「ポイントは貸しても良いが、本当にそれで良いのかって真摯にCクラスにアドバイスしたら、中堅から不満が見えたし上々だな」
「なんかギスギスした空気が生まれてるっぽいね。まあ雅や溝脇、殿川あたりは試験の概要を聞いたらメチャクチャ喜んでたよ」
そりゃそうだ。生徒会役員からしたら苦情の種が2人も消える試験だしな。多分2年Bクラスの桐山先輩も喜んでいるだろうな。
「それにしても1年間退学者が出ないと理不尽な試験が追加されるんだね」
「そうとは限りません。実は今回の試験は父が追加したわけではないのですよ」
有栖がサンドイッチを食べながら口を開ける。
「そうなのか?」
「はい。実は少し前に父は停職処分になりまして、今回の試験は理事長代理が追加したようです」
停職処分ねぇ……有栖の父親だからヤバい人なのかもしれない。
「なるほど……しかし理事長代理が直ぐに理不尽な試験を出せるとは、政府の中枢に位置する人間なんでしょうか?」
だろうな。代理で来たばかりの人間で理不尽な試験を強行できる事を考えれば、この学校の理事長より権力を持っていてもおかしくない。
「そうでしょう。しかし代理になってからこんな試験を直ぐに行う……誰かを消したいのかもしれませんね」
有栖が意味深な笑みを呟くが、こんな事件で簡単に消せるとしたらDクラスの5馬鹿くらいだが、あんな奴らを消したいのか?
もしかして雪ノ下関係か?アイツの実家は建築会社の社長と県議会議員を両立して、権力はかなりあるし。
……まあ考えた所で仕方ないか。俺には関係ないだろうからな。
そう思いながら俺は昼食を食べ終えて、デザートに3人からのディープキスを堪能するのだった。
2時間後……
キーンコーンカーンコーン
6時間目終了のチャイムが鳴り、物理教師が出ていくと坂上先生が入ってくる。
「ではHRを始める……が、今日は連絡事項はないので朝の投票の結果を発表する。票が多ければ退学に近い生徒になる」
坂上先生の言葉に真鍋グループが震え出すが、自業自得だ。
「5位から発表するぞ。5位は伊吹の6票、4位が薮の19票、3位が山下の20票、2位が諸藤の28票、1位が真鍋の30票だ」
「そ、そんな……」
「嫌ぁぁぁぁぁぁっ!」
坂上先生の発表に諸藤がよろめき真鍋が悲鳴をあげる。
「決まりだな。本番は全員真鍋と諸藤に批判票を絶対に入れろ。残りの1票は山下か薮のどちらかにしろ」
龍園が淡々と口にする。こういうのは淡々と進めるのが1番だからな。
「ふ、ふざけないで!こんなの認めないわ!」
近くにいる真鍋が立ち上がって文句を言うが……
「お前の認可が必要な訳ないだろ?全票数は1人3票で40人だから合計で120票だ。で、お前のグループ4人分を除いたら108票だが、そのうちの97票がお前らのグループに入っている。客観的に見てクラスの大半がお前らの存在を不要だと思っているんだぞ」
「4位の薮と5位の伊吹は13票も差がある。しかも5位の伊吹が6票だが、テメェらのグループは伊吹を嫌ってるし4票はテメェらのものだろ?それを考えると実質17票差になるが、それでもまだ自分達はこのクラスに必要と言えるのか?」
俺と龍園が殆ど同時に明確な数字を出す。実際真鍋のグループは普段から好かれてないしな。
「っ!だったら他のクラスに賞賛票を「無駄だ。既にDクラスは有栖が1票50000ポイントで買収しようとしているし、Cクラスについては救済措置に必要なポイントを貸し付ける条件として他クラスへの賞賛票も含める」な、何よ!そんな上から目線で!」
「お前が下だからだ。少なくともお前よりはクラスに貢献した自負がある」
客観的に見て俺はクラスにとってプラスになって、真鍋よりは価値があるだろう。
「馬鹿共の喚きは放っとけ。で、賞賛票については2票を俺と比企谷に、残りの1票は金田やひよりのようにデカい短所と長所を持つ奴に入れるが、そこはまた後日決める」
まあそれが良いだろう。3位は退学になり難くなる権利だが、これについては龍園が言ったように優秀だけど欠点がある生徒に与えるべきだ。
実際ひよりや金田は学力は高いが運動能力が低く、運動を重視した試験では下位に落ちる可能性が高いからな。
龍園が淡々と方針を告げると真鍋と諸藤は泣き崩れるが知った事じゃない。5月1日の時点で変わろうとしなかったり、クラスの為に動こうとしなかったのが悪いからな。
さて、他のクラスはどうなっているのだろうか?
「今回の試験だが、比企谷の言ったようにクラス内で救済措置を使う事に不満を持つ生徒はいるだろう……が、俺としては今回は救済措置を使うべきだ」
Cクラス、HRを終える今回の試験の向き合い方について話す事になり、最初に神崎が教壇に立ってそう告げる。
「理由としてはこれまで退学者を出さない方針で動いていたウチのクラスが、急に龍園のように雑魚の切り捨てに走ったら今後のクラスの運営に支障をきたす可能性があるからだ」
これが最悪の点だ。今回の試験は「ハイリスクな救済措置を使う」か「雑魚の切り捨てをする」の2点しか結果がない。よって先を見据えたらCクラスは前者を選ぶ必要がある。
神崎の言葉に安堵する一之瀬だが……
「ただし問答無用で救済措置を使うのは今回までで、来年度からはリスクとリターンを考慮して使うかを決め、今回のような試験がまた行われたら実力のない生徒を切り捨てるべきだ」
続く言葉に凍りついてしまう。
「いやいや!こんな試験が2度もないだろ!なあ皆?」
柴田が慌ててそう言うとクラスメイトの半数近くが頷く。その意識の低さに神崎は呆れを抱き、八幡に助言されなければ問答無用の救済をしていた可能性に恐怖した。
「忘れたか?今回の試験は1年間退学者が出なかったら作られた試験だ。つまり2年生になってから全クラスが退学者を出さなかったら再度行われる可能性も充分ある」
「そうだよね。しかも2回目だからペナルティも厳しくなるよね」
神崎の言葉に白波が頷く。
「俺もそう思う。今回は1人あたりの救済に1000万プライベートポイントと100クラスポイントだが、来年度に同じ試験が行われたら倍額になってもおかしくない」
そうなると1人あたりの救済に2000万プライベートポイントと200クラスポイントと莫大なポイントがかかる。しかも2回目だから退学者を3人出すようになるかもしれない。
「そしてそのような時が来たら心を鬼にしてクラスの中で実力の低いものを切り捨てるべきだ」
「いやいや、退学者を出してまで目指すAクラスに価値はないだろ。絶対に仲間を守り、仲間を信じ抜いたクラスが勝つだろ」
柴田がそう返すが神崎の表情は険しい。
「今の状況を理解してないのか?現在1つ上のBクラスは俺達Cクラスより600ポイント近く上回っている。Bクラスは救済措置を使わないだろうし、ここで救済措置を使えば800ポイント近くの差になり、他クラスに500万近くの借金を背負う。それまでなら俺も考えているが、救済措置を使う場合、その差を埋めるべく今のやり方を少しずつ変えていくべきだ」
「それは……」
明確な数字を突きつけられ、柴田を始めとした一之瀬の考えに染まっている人間は苦い顔をする。
「更に言えばAクラスはBクラスより150ポイント近く上回っているし、Bクラスと同盟を結んでいる。Dクラスについても足手纏いが5人もいるからクラスポイントが低いだけで、綾小路や高円寺がプライベートポイントのついでにクラスポイントを稼ぎ、俺達の稼ぎ所を奪ってくるだろう」
高い総合力を持つAクラス
清一択のCクラスと違って清濁併せ持つBクラス
足手纏いがいるから下位に属するが全てにおいて桁違いの怪物2人を擁するDクラス
Cクラスからしたら全員脅威である。特にBクラスのNo.2の八幡に自クラスのリーダーの一之瀬が論戦で一方的だった事を考えるとBクラスとはかなり差があるのがわかる。
「以上だ。俺としての考えは今回は救済措置を使って、そのペナルティのポイントを次からの意識改善の勉強代にするべきだ。一之瀬、反対意見があるなら言ってくれ」
神崎の言葉にクラスの空気は重くなる。一之瀬としては退学者を絶対に出さない方針を変えないようにしたいが、神崎の言っている事は理論的に正しく、自分の意見がリーダーとしては言ってはいけない感情論になってしまう。
今回は救済措置を使うべきと言って、救済措置の使用に反対する生徒の防壁となってくれた神崎に感情論をぶつけたりしたら、それこそ反対派の生徒の怒りが爆発するのは明白だ。
一之瀬は悩んだ末に……
「……うん、神崎君の意見で良いと思う」
重い口調でそう口にした。
それによりCクラス内の方針は固まったが、一之瀬の心は晴れなかった。
(今後は退学者を出さないようにしないと……でも来年度にまたこの試験があったら……)
一之瀬は何とか退学者を出さない方法の模索を始めるが、その時Aクラスに上がることについては頭から抜け落ちていた。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
-
はい。
-
いいえ