※この作品はR-18です。

腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ   作:トラファルガー

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ハプニング

「いよいよ6月も最後ですね。明日、クラスポイントがどれだけ増えていると思いますか?」

 

「わからんが、クラス間の差はそこまで変わらないだろう」

 

6月最後の日の放課後の図書館、向かいに座る坂柳がそんな事を聞いてくるので、俺は質問に答える。

 

今日は坂柳の2人で放課後を過ごしているが、これは珍しいことだ。坂柳と過ごす事は珍しいわけではないが、その際は大抵ひよりや神室がいるし。しかし今日は2人とも部活なので坂柳と2人で理科の課題をやりながら雑談をしている。

 

「そうでしょうね。ポイントが動くとしたら夏、水泳が関係するであろう特別試験ですかね」

 

水泳?……ああ、そういや体育の先生が夏までに泳げるようにしてやるって張り切っていたが、やっぱり水泳が関係あるよな。

 

「もしそうならお前は参加できっ……あ!馬鹿した!」

 

そこまで話しながら俺は缶コーヒーを飲もうとしたが、余所見をしてしまい手からすっぽ抜けて理科の課題プリントを坂柳の物も含めて汚してしまった。

 

「済まん坂柳。巻き込んじまった」

 

「そんなに進んでないですから気にしないでください。とはいえ既に6時を回ってますので切り上げて新しいプリントを貰いに行きましょう」

 

坂柳はそう言って立ち上がる。今日は神室がいないので俺が荷物を持つ。

 

「わざわざありがとうございます」

 

「気にするな。というかプリントについてもお前の分も俺が取りに行くからお前は先に寮に帰って良いぞ」

 

坂柳は足が遅いので、多分坂柳が寮に帰る前に合流出来るだろう。

 

「いえ。もう少し比企谷君とお話をしたいので一緒に行きます」

 

まあ迷惑をかけた以上文句を言うつもりはないので、俺は頷き坂柳と同じ歩幅で歩き始め図書館を出る。

 

図書館を出た俺と坂柳は特別棟に向かう。特別棟は家庭科室や視聴覚室、理科室など頻繁に利用しない施設が揃っている校舎だ。授業が終わると人の気配がなくなり不気味だが理科の先生は特別棟に部屋を構えているので行くしかない。

 

「ところで比企谷君。龍園君についてですが、Dクラスを叩くという話を龍園君から聞いてますか?」

 

特別棟に入り階段を上ると坂柳がそんな話をしてくる。

 

「Dクラスを叩くってのは何度か聞いたな。ただ具体的な話は聞いてない」

 

「そうですか。では比企谷君。龍園君にDクラスを叩く時は私も力を貸すと伝えてくれませんか?」

 

「ん?龍園は停学や退学によるペナルティをDクラスを使って調べるつもりではあるが、お前も知りたいのか?」

 

つかDクラスを叩く為に龍園と坂柳が組むとか悪夢だろ?Dクラスの連中どころかBクラスも潰せる可能性がある。

 

「それもありますが、由比ヶ浜さんを追い詰めていきたいと思います」

 

由比ヶ浜だと?確かに由比ヶ浜は坂柳をdisりまくって坂柳に敵認定されたが……

 

「由比ヶ浜を挑発して暴力を振るわせるのか?」

 

「まさか。それでは面白くありません。暴力を誘発させるなら違う生徒にします。例えばDクラス1の不良と言われている須藤君とかですね」

 

まあ須藤の短気っぷりなら余裕で暴力を誘発出来るだろう。

 

「それはわかるが須藤を停学や退学に追い込んでも由比ヶ浜には影響無くね?」

 

「直接的には無いでしょう。しかしもしも須藤君を停学や退学に追い込んでクラスポイントが減ったら、Dクラスからは由比ヶ浜さんを恨む生徒が出るでしょう」

 

なるほどな。確かに由比ヶ浜は明確な攻略法がある中間試験で赤点を取って退学になりかけた。クラスメイトや他クラスからの協力を得て退学は免れたが由比ヶ浜に良い感情を抱いてないDクラスの生徒はそれなりにいる。

 

仮にもし須藤が停学になってクラスポイントを失ったら、Dクラスの大半は須藤に敵意を向けるだろう。しかし人間ってのは醜い生き物だから一部の生徒は絶対に「あーあ、あの時由比ヶ浜を助けなければ蓄えがあったのに」と思ったり愚痴ったりするだろう。

 

そうなった場合、悪意は蔓延して少しずつ鎮静している由比ヶ浜に対する敵意が活性化する可能性が高い。

 

坂柳のやり方は一気に叩き潰すやり方ではなく、真綿で首を絞めるやり方だ。速攻で由比ヶ浜を潰すのではなく、ヘイトを集めてから潰すのか……由比ヶ浜の奴、とんでもない相手を怒らせたな。ま、同情はしないが。

 

そう思いながらも俺達は4階に上がって理科準備室に入って、そこにいた先生から事情を話し新しいプリントを用意して貰った。

 

そして外に出て廊下を歩いていると怒号と物音が聞こえてくるので、思わず坂柳と顔を見合わせる。

 

「もしかして騒動か?」

 

「あり得ない話ではないですね。特別棟には監視カメラがありませんから」

 

そういやそうだったな。すっかり忘れてた。

 

「見に行きましょうか。誰が揉めるかは知りませんが、場合によっては今後の役に立つでしょう」

 

坂柳は好戦的な笑みを浮かべながら携帯を取り出して歩き出す。やっぱりコイツは生粋のドSだな。

 

呆れながらも俺達はひっそりと階段を降りると……

 

「おや、噂をすれば何とやら。須藤君でしたか」

 

坂柳の言うように3階ではDクラスの須藤がウチのクラスの石崎と小宮と近藤の3人を相手にしていた。

 

しかし須藤は3人を相手に容赦なく殴りまくっていた。床に倒れる近藤の顔面に拳を叩き込み、近藤を助けようとした小宮の顔面に肘打ちをぶちかまし、最後に石崎の鳩尾に蹴りを入れていた。

 

数分すると石崎達は床に倒れ伏し、須藤は何かを話しているが距離がそこそこあるので聞き取れない。

 

そしてそのまま須藤は階段を下り去って行く。一方の石崎達というと、石崎が体をよろめかせながら携帯を操作し始める。

 

「中々面白い光景が撮れました。さて比企谷君は今回の件についてどう考えますか?」

 

「龍園の策だな。アイツらはこの後学校に「須藤に特別棟に呼び出され暴力を受けた」って訴えるだろうな」

 

元々龍園はDクラス、そして須藤をおもちゃにするとか言っていたし。

 

「そうでしょうね。そしてそうなった場合、十中八九須藤君が罰を受けるでしょう」

 

だろうな。監視カメラがない以上、大怪我をした石崎達が圧倒的に有利だし。

 

そこまで考えていると石崎達はボロボロな体に鞭打って階段を下りる。

 

それが見えなくなると坂柳が話しかけてくる。

 

「比企谷君。今から龍園君に会わせて貰えませんか?」

 

「わかった。じゃあ龍園の部屋に連れてく」

 

言いながら俺達はゆっくりと階段を下り、特別棟を後にする。

 

「で?お前はどうすんだ?龍園を脅迫するのか?協力するのか?」

 

「協力というより依頼ですね。今回の件に協力する見返りを求めます」

 

「なるほどな。まあ何にせよお前が動く前に問題が起こって良かったな」

 

「全くです。こっちとしては下手に動くと葛城君が煩いので、Cクラスが動いてくれたおかげで大分楽になるでしょう」

 

坂柳は安心したように笑いながらそう言ってくる。葛城とは会った事はないが、クラス間同士で対立するなよ。

 

そう思いながらもゆっくりと歩き、寮に辿り着いたので俺と坂柳はエレベーターに乗って、龍園の部屋がある階に行く。

 

そして龍園の部屋の前に着いた俺はインターフォンを押す。するとドアが開き、龍園が出てきて眉をひそめる。

 

「坂柳がいるとはな。俺に何の用だ?」

 

「特別棟」

 

「なるほどな。入れよ」

 

「邪魔するぞ」

 

「お邪魔します」

 

その一言だけで龍園は納得したようになって、部屋に入るように促す。その反応から龍園が仕組んだのは丸分かりだ。

 

「で?わざわざ俺の所に来るって事は取引でもしたいのか?」

 

「ええ。今回の件についてですが、私と私の派閥は全面的に協力します。見返りとしては須藤君が処罰を受けた際にその詳細を隈なく教える事。そして夏に起こるであろう特別な試験で葛城派を叩く際に可能なら協力してください」

 

「前者については構わない。後者についてだが……どんな試験であっても、どんな結果になっても良いんだな?」

 

「ええ。葛城派を潰せるならBクラスに落ちても構いません」

 

龍園の鋭い眼差しと坂柳の鋭い眼差しがぶつかり合う。気のせいか空気が震えてるような……

 

互いに睨み合う中、龍園が息を吐く。

 

「……良いだろう。契約成立だ」

 

「ありがとうございます。ではこちらはCクラスの証人になる事、Dクラスの動向を探る事を約束します」

 

「比企谷。お前はDクラスを引っ掻き回せ」

 

「3万」

 

そう言うと龍園は携帯を操作し始める。

 

「払ったぞ」

 

言われて確認すると確かに3万増えていた。

 

「まいどあり。で?引っ掻き回すやり方は?」

 

「お前に任せる」

 

「了解。わかってると思うがお前は動くなよ?」

 

既にCクラスのボスが龍園である事は有名だ。龍園が動くと知られたらAクラスの葛城派やBクラスが警戒するだろう。龍園がそんなヘマをするとは思えないが念には念だ。

 

「そのつもりだ。石崎達にはお前らの名前は出さないが動かないように言っておく」

 

それが賢明だ。石崎達が動いたら偽装工作や証拠隠滅をしていると疑われるからな。

 

「ではよろしくお願いします。こちらも明日から動きます」

 

「俺も色々考えとく」

 

そう言って俺と坂柳は龍園の部屋を後にする。

 

「さて、入学して初めて遊ぶのですから楽しまないと損ですね」

 

そう言っているあたり坂柳の冷酷さがよくわかる。子供扱いしたら拗ねて普通に可愛いのに」

 

「煩いですよ比企谷君。私は子供じゃありません」

 

坂柳は杖で俺の足を突いてくる。どうやら口にしていたようだが、その仕草も可愛いだけだからな。

 

「はいはい。悪かったから暴力は止めようなー」

 

「なっ!子供扱いしないでくださいっ!」

 

軽い冗談のつもりで坂柳の頭をわしゃわしゃすると坂柳は真っ赤になって怒り出し、杖で脛を叩いてくる。って痛いわ!

 

と、その時だった。突如地震が起こった。まあ震度3か4なので避難する必要はない。

 

しかし身体が弱く、杖を地面につけていない坂柳にとっては大変みたいで……

 

「きゃっ」

 

そのまま俺の方に倒れてくる。その際、脛にダメージを受けていた俺は受け止めきれず……

 

「っと」

 

そのまま背中から床に倒れる。幸い床はそこそこ柔らかいので痛みはない。

 

しかし、予想外の事が起こった。

 

「っ…………!」

 

その際に坂柳の顔が俺の股の間ーーー正確に言うと俺の急所部分に埋められたのだ。ズボン越しとはいえ何つー状況だよ!

 

予想外の光景に顔が爆発的に熱くなる。多分第三者からしたら茹で蛸のように真っ赤なのだろう。

 

そんな中、坂柳は顔を上げる。同時に俺の顔とさっき自分の顔を埋めていた場所を見比べて、彼女の顔も茹で蛸のように真っ赤になる。

 

「……すみません。私が身体が弱い所為で……」

 

「……いや、元々俺がからかったのが悪いからな?マジで済まん」

 

「べ、別に怒ってないです。それより……お互いに忘れましょう」

 

「……だな」

 

俺が頷くと坂柳は壁を使ってゆっくりと起き上がるので杖を差し出す。そうすると坂柳は礼を言ってくるがマトモに顔は見なかった。

 

俺達はそのままエレベーターに乗って、気まずい空気全開のまま別れるのだった。

 

 

当然夜になりベットに入るが、当時のことを思い出してしまい一睡も出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……比企谷君の馬鹿……比企谷君の所為で咥える夢を見たじゃないですか……!」

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