※この作品はR-18です。

腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ   作:トラファルガー

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気分転換

「……よし、完成だな。後はレタスの水を切れば……」

 

日曜日の早朝、俺は土曜の夜のうちに仕込んでおいた食材を調理して弁当箱に詰める。弁当箱にはおにぎりや唐揚げ、レタスやスパゲティなど定番料理が入っている。

 

今日はひよりと公園で過ごす日で、前回はひよりが弁当を作ったので今回は俺が作っている。専業主夫志望だからか基本的な料理なら問題なくこなせる。

 

しかし俺が他人、それも女子の為に飯を作るとは、入学前には考えられなかった。

 

 

 

ーーーただいま、貴方ーーー

 

ーーーおかえりひより。風呂と飯、どっちにする?ーーー

 

ーーー八幡君でーーー

 

ーーーやれやれ。甘えん坊だ……

 

 

(って!何を考えてんだ俺は?!痛々しいわ!)

 

俺は自分の痛々しい妄想にツッコミを入れてしまう。マジで俺の頭は何を考えてんだよ。アホ過ぎる……

 

頭を振って妄想を吹き飛ばした俺は弁当箱に具を詰め込み、魔法瓶に紅茶を入れて蓋をする。これで完成だが、ひよりの口に合ってくれると嬉しい。

 

弁当を作り終えた俺はキッチンを出てテーブルの上にある原稿をチェックする。審議の時に石崎達が話すべき内容だ。向こうがしてくる質問を予想してそれに合わせた答えを用意してある。

 

用意したのは龍園だがこれを改善して、更に俺が用意したカードを使うタイミングをチェックしないといけない。まあやり過ぎると、準備が良過ぎると疑われる可能性もあるので坂柳との連携も大切だ。

 

それと今日出掛ける時には色々と買いたい物があるからチェックもしないとな。デジカメとボイスレコーダー、可能ならペン型カメラも買っておきたい。まあペン型カメラはないと思うけど。

 

今回の件ではわかったが、今後は特別な試験以外にも審議などでぶつかる可能性が高い。その時に重要なのは証拠だ。よって証拠を集める為に必要な物は買い揃えておきたいからな。

 

(今月分のポイントは支給されてないが20万近くあるし問題ないな)

 

俺は最低でも10万は懐に残しておく方針をとっているが、それでも使えるポイントは9万近くあるし買えるだろう。買えないならポイントが支給されてから買えば良いだけだ。

 

そんな事を考えながら原稿をチェックする。原稿そのものは問題ないが、問題は質疑応答する石崎達にある。俺は感情的にならない自信はあるが、石崎達は割と感情的だからな。そこを突かれる可能性もあるし、事前に龍園に紹介してもらうか。

 

俺は審議の予定を考えながらも、ひよりと過ごす時間を心待ちにした。

 

 

 

 

 

 

2時間後……

 

「おはようございます八幡君」

 

寮のエントランスで待機しているとエレベーターからひよりが降りてきて笑顔で挨拶をしてくる。相変わらずひよりの笑顔はオアシスだな。

 

「おはようひより。それじゃあ行こうか」

 

「はいっ」

 

ひよりが満足そうに頷いたのを確認した俺はエントランスを出てショッピングモールの方へ向かう。

 

「話し合いまで後2日ですが大丈夫ですか?」

 

「知らん。結局のところ、俺は思った事を話すだけだ。重要なのは石崎達と須藤のどちらかが嘘を吐いている事だ」

 

「そうですね。両者共に自分の言っている事は事実と言うでしょう。そうなると怪我の具合から判断しないといけないですね」

 

「まあな。そして怪我の具合で判断した場合、証拠を持っているこちらの勝ちは絶対だ」

 

つまりDクラスは石崎達が嘘を吐いているって事を証明しないと勝ち目は一切ないって事になる。その為には最初から事件を見ていた目撃者が必要だが、そんな奴はいないだろう。俺と坂柳ですら途中からしか見てないし。

 

「そうですか。まあ何にせよ、今回の事件を最後に揉め事は終わりになって欲しいですね」

 

ひよりはそう言っているが、ウチのクラスのリーダーがアレだからな。平穏な学校生活を送るのは殆ど不可能に近いだろう。

 

「それは厳しいだろうな……っと、済まんひより。ショッピングモールで買い物しても良いか?」

 

「本ですか?」

 

「いや、デジカメとボイスレコーダー、後あったらペン型カメラを買いたい」

 

「なるほど……私も買った方がいいですかね?」

 

「お前は他クラスから狙われないだろ。俺は既に龍園と割と強い繋がりを持ってるから用心として買うんだよ」

 

少なくともAクラスの坂柳と坂柳派の人間は俺の立場を知ってるだろうし、Bクラスの一之瀬あたりも薄々勘付いているだろう。他クラスの攻め方は知らないが備えあれば憂いなしだ。

 

「そうですか。とりあえず電気屋に行きましょうか」

 

ひよりから了承を得たので俺達は電気屋に入る。そして中を見渡すと……

 

(おいおい。ボイスレコーダーはともかく、ペン型カメラや監視カメラも売ってんのかよ?)

 

監視カメラというかネットワークカメラだけど。計測や記録、つまり勉強の為に売られているようだが、使い手によっては悪さに使える代物だ。コイツは完全に予想外だな。

 

(一応龍園には報告しとくか。場合によっては役立つかもしれないし)

 

そう思いながら俺は龍園にメールをしてから本来の目的であるボイスレコーダーとペン型カメラを取ってデジカメが売ってある場所に向かう。カメラについては予算オーバーだから今日は買わないでおく。

 

そしてレジでポイントを払って店を後にしようとしたが……

 

「あっ……」

 

ある事に気付き、俺は反射的にひよりを抱き寄せながら柱の影に隠れる。何故なら雪ノ下と由比ヶ浜がショッピングモールを歩いていたからだ。

 

以前坂柳と登校していただけで、由比ヶ浜は脅し云々言って喚いたのだ。休日にショッピングモールでひよりと歩いているのを見られたら絶対に面倒な事になるし。

 

物陰に隠れる中、2人の会話を耳にする。

 

「ゆきのん、今日は無料食品に肉が多くて良かったね」

 

「ええ。それにしても須藤君は本当に足手纏いね。退学になった方がDクラスの為になるわ」

 

「暴力を振るうなんてマジでキモいし」

 

「全くね。それにしてもなぜ彼程度の存在が入学出来たのかしら?」

 

「だよねー。ヒッキーも入学出来るし、ゆきのんがDクラス行きなんて試験官って頭悪過ぎだし」

 

「そうね。本当にこの学校は国主導の学校なのか不思議に思うわ。でも私が生徒会長になって学校を良い方向に変えてみせるわ」

 

「待って。確かにゆきのんなら出来ると思うけど、落とされたじゃん。どうするの?」

 

「落ち着いて由比ヶ浜さん。私が落ちたのは実力不足じゃなくて堀北会長が私を恐れていたからに決まってるわ。だから会長が引退したらもう一度希望して生徒会入りすれば良いだけの話よ」

 

「ゆきのん流石!アタシも生徒会に入って頑張るね!」

 

そんな会話が聞こえてきて、ため息を吐いてしまう。コイツらが生徒会?3日もしないで解散請求が求められるだろう。

 

というか堀北会長が誰かを恐れるとかあり得ないだろう。スペックなら陽乃さんクラスだろうし。相変わらず雪ノ下は自分が全て正しいと思っているようだが、実力不足にも程があるだろ?

 

そんな事を考えているとチョンチョンと肩を叩かれたので下を見ると……

 

「えっと……いきなりどうしんたですか?」

 

少しだけ頬を染めているひよりが俺の腕の中にいた。しまった、雪ノ下達に見られないよう、柱の影に隠れた際にひよりを抱き寄せてしまったようだ。

 

「す、済まん。余り関わりたくない奴がいたら隠れたんだ。いきなり抱き寄せて悪かった」

 

下手したらセクハラで訴えられてもおかしくない事をやっちまったよ。マジで反省しないと。

 

「いえ。驚きはしましたが、別に怒ってはないですよ?」

 

ひよりからは怒りの色は見えない。その事から本当に怒ってないのだろう。

 

「それよりも買い物が終わったのならそろそろ行きましょうか」

 

俺はそんなひよりの言葉に頷き、2人で公園に向かうのだった。

 

そして公園に着くとレジャーシートを広げて、靴を脱いでシートの上に座る。学校は海に囲まれていて、公園は学校の四隅にあるからか相変わらず潮の香りが強い。

 

潮の香りを感じながらも図書館で過ごす時のように無言で本を読み始める。

 

 

 

暫くの間、本を読んでいると風が吹き、何かが顔をくすぐってくる。予想外の感触に顔を上げると、その正体は俺の隣で本を読んでいるひよりの髪である事に気付く。

 

当のひよりは夢中になって本を読んでいる。その姿は美術品のように美しく、気がつけば手にある本ではなくひよりを見ていた。

 

同時に俺はひよりから目を逸らして本を読もうとしたが、同じタイミングでひよりの腹から可愛らしい音が鳴るので顔を上げると目が合う。

 

「……聞こえました?」

 

若干恥ずかしそうに聞いてくるので無言で頷く。同時に俺の腹からも音が鳴る。

 

「……飯にするか」

 

俺はひよりの返事を聞かずに弁当箱を取り出してレジャーシートの上に広げる。

 

「わぁ……美味しそうなお弁当ですね」

 

「美味いかはわからないから食べてみてくれ」

 

「はい……あっ、美味しいですよ」

 

ひよりは唐揚げを食べながら笑顔を見せてくる。

 

「なら良かった。ありがとな」

 

自分の作った飯が美味いって言われるのは存外悪くないな。

 

嬉しく思いながら食事を済ませると……

 

「「ふぁあ……」」

 

俺とひよりは同時に小さく欠伸をしてしまう。

 

「眠いのか?」

 

「実は今日を楽しみにしていたので余り眠れなかったんです。八幡君もですか?」

 

「まあな」

 

朝早くに弁当を作る為に起きたので結構眠い。

 

「でしたら今日は2人で寝ませんか?」

 

するとひよりはいつもの表情でそんな事を言ってくるが……

 

「言ってる意味わかってんのか?」

 

他の男子が聞いたら理性を吹っ飛ばしてるかもしれないぞ。

 

「?変な事を言いましたか?」

 

この天然め……自分が言ったことの恐ろしさを理解してないようだ。

 

「それに以前八幡君が寝た時は気持ち良さそうでしたから……ふぁ……やっぱり少し眠いので寝ませんか?」

 

「……わかったよ」

 

俺は止む無く了承する。ひよりが眠そうだから一蹴出来ないし。つか俺もマジで眠い。弁当を作る事も原因の一つだが、ひよりと過ごす時間を楽しみにしていてマトモに寝れなかったし。

 

「では空を見ながら寝ましょう」

 

ひよりはそう言って広いレジャーシートに寝転がるので俺も寝転がる。レジャーシートが広くて良かった。

 

ひより同様に空を眺めると雲がゆっくりと動いている。あ〜、雲のように自由気ままに生きてぇな……

 

そう思いながら雲を眺めていると眠気がやってくるので特に逆らうことなく、ゆっくりと目を閉じるのだった。良い夢を見れたな良、い……な……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目が覚めたのは太陽が傾き夕焼けが綺麗な頃であったが、その際にひよりに抱きついていて、即座に謝り倒した。

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