腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
審議前日の月曜日、学校の支度をしながら携帯を使って自分が立ち上げた掲示板の募集を確認した時だった。
「俺以外にも暴力事件の情報収集を呼び掛ける奴が出たか……」
掲示板には俺と同じように暴力事件について情報提供を呼びかけているコーナーがあった。これは間違いなくBクラスの仕業だな。
何故なら有力な情報提供者にはポイントを支払うって書かれているが、Dクラスに払えるとは思えない。0ポイント生活に加えて由比ヶ浜を退学から助ける際に龍園に10万、学校に20万のポイントを払ってDクラスはクソ貧乏だろうし。
(放っておいても問題ないがポイントは欲しいし……)
俺はフリーアドレスを利用して入学してから須藤が起こしたトラブルの1つを書いて掲示板に書かれたアドレスに送りつける。事実だからポイントを貰えるだろう。
「さて……学校に行きますか」
俺は鞄を持って部屋を後にする。そしてエレベーターを使って一階に降りて寮を出る。
今日も良い天気で気分が上がる。昨日も良い天気だったが、ひよりと昼寝して……これ以上考えるのはよそう。
俺は頭を振って昨日の事から逃げるように学校に向かい、下駄箱で上履きに履き替えている。
と、ここでBクラスリーダーの一之瀬と参謀の神崎、更には堀北会長と激戦を繰り広げた男の3人が階段近くにいるのを目にする。
何を話してるのか気になるがここで立ち止まるのは不自然だし、通り過ぎるしかない。
ため息を吐きながら廊下を歩き、3人に不自然に思われない程度の速さでゆっくりと近づく。
「訴えた1人の石崎くん、中学では相当なワルだったんだって。喧嘩も相当強いらしいよ」
「もしかしたらわざと須藤にやられたのかもしれないな。須藤だけが無傷なのは不自然だ」
「神崎君の言う通りだね。それでもう一件は……「須藤も石崎も態度は悪いが、入学初日から上級生3人と揉め事を起こした須藤が喧嘩をふっかけた可能性が高い」だって」
「それは事実だな。コンビニ前で揉めてるのを見た」
そんな会話が耳に入る。どうやら俺の情報はしっかり届いたようだ。
しかし石崎が元ワルである事を知られたか。別に知られても戦局はそこまで変化しないが、知られない方が事は進みやすかったんだがな。
ため息を吐きながらもCクラスの教室に入ると、いつものようにひよりが話しかけてくる。
「おはようございます八幡君」
「おはよう……昨日は悪かったな」
俺はそう返す。昨日俺はひよりと公園に行った。そんで昼飯を食ってから眠くなったので2人で寝たのだが、目が覚めた時に俺はひよりを抱きしめていたのだ。
その際にひよりに謝って、気にしてないと言って貰ったが申し訳ない気持ちは残っているので再度謝る。
「昨日も言いましたが私は怒ってないですから気にしないでください。八幡君に抱きしめられた際には温かくて気持ちよかったですから」
そう言って貰えるとありがたいが……
「おい聞いたか?今比企谷に抱きしめられたって言ったよな?」
「マジかよ?先週なんてAクラスの坂柳をお姫様抱っこして下校したのにかよ……」
「まさかの二股?リアルで見るのは初めてだわ」
「畜生……ぼっちの癖に……!」
TPOを考えて言って欲しい。クラスの連中が物凄い眼差しで見てるし。先週須藤に傷つけられた坂柳をお姫様抱っこした事もあって噂は止まらない。このままだと明日にはCクラスのみならず、AクラスとBクラスとDクラスにも広まっている可能性が高い。女子の噂話ほど恐ろしい拡散方法はないからな。
当のひよりは特に気にしてないようにぽわぽわした表情を浮かべている。畜生、可愛過ぎて文句を言えない。
そんな事を考えていると坂上先生が教室に入ってきてHRが始まる。その際は静かになったが、クラスの大半が興味深そうな目を俺に向けてくるのが腹立たしかったのは言うまでもない。
尚、須藤の情報の報酬として5千ポイントの臨時収入が入った時は存外嬉しかった。
数時間後……
「比企谷、ちょっと付き合えよ」
昼休み、昼食を食べようとしたら龍園が話しかけてくる。背後には石崎、小宮、近藤の3人がいるから審議についての話だろう。
「わかった……済まんひより。ちょっと行ってくる」
「わかりました」
ひよりから了承を得ると龍園達が廊下に出るのでそれに続く。
「で?だいたい予想はつくが話ってなんだ?どこに行くんだ?」
「職員室だ。明日の審議についてお前には証人だけじゃなくて弁護人としても出て欲しいから坂上に許可を取りに行く」
そういや堀北会長は当事者、Cクラスなら石崎、小宮、近藤の許可があれば2人まで許されていると言っていたな。
「で?俺とお前が弁護人になるのか?」
「いや、俺は出ない」
「えっ?!龍園さん出ないんですか?!」
「馬鹿か石崎。俺が出たら生徒会から疑われるだろうが」
否定は出来ない。龍園は既に悪名高いからな。出ただけでDクラスや生徒会の目が厳しくなるだろう。
一方の俺は生徒会長と交流があるが、特に悪い事はしてないので悪い印象を持たれないだろう。
そこまで話してると龍園は教室に入るように職員室に入る。というか失礼しますくらい言えや。
そして坂上先生も元に行く。
「坂上、明日の審議だが、比企谷を目撃者としてのみならず弁護人として出せるか?」
「小宮君達が了承すれば2人までは可能だ。龍園と比企谷君の2人で良いのかね?」
「俺は出ねぇ。比企谷だけで充分だ」
「わかった。生徒会には報告しておく。比企谷君は明日の放課後、私や小宮君達と生徒会室に来てもらうよ」
「了解しました」
「邪魔したな」
話が済むと龍園は敬語を使わずに教室を出る。俺は失礼しますと一礼してから出る。
「さて石崎、小宮、近藤」
「「「は、はいっ!」」」
「今回についてはお前らは比企谷の命令には従え。不満を抱こうが逆らうな」
「あ、あの龍園さん。比企谷に従って大丈夫なんですか?」
石崎が質問するが当然だろう。俺が暗躍しているのを知ってるのは龍園と協力者の坂柳、諜報活動をしている神室くらいだから、それ以外の人間からしたら俺を疑うのは当然だ。
「あ?俺の判断に文句があるのか?」
「い、いえっ!ありません!」
石崎は即座に前言撤回する。相変わらず龍園は暴君をやってるんだな……
「最初からそう言え。比企谷にはアルベルトを貸すからコイツらが馬鹿やらかしたら制裁を与えてやれ」
「いらねぇよ。そもそも俺が審議中にコイツらにやって貰いたい事は……と……くらいだ」
俺の言葉に龍園は笑い、石崎達はポカンとした表情になる。
「?そんな簡単な事だけで良いのか?」
「相手が須藤に限定したらそれだけでも充分な武器になる。後は俺が須藤を仕留めるから何の問題もない。須藤を潰す策もDクラスに負けを認めさせる策も既に考えている」
Dクラスの弁護人に坂柳クラスの人間がいるならともかく、それ以外の人間なら完封出来る自信がある。
「それと比企谷。明日はボイスレコーダーを備えとけ。審議の内容について今後の参考にする為にしっかり把握しておきたい」
「それは構わないが、事前にボディチェックとかされて没収されたら諦めろよ」
「そこで諦めないほど馬鹿じゃねぇよ」
まあ多分大丈夫だろうけど。審議内容を記録するのは別におかしい事じゃないし。
「なら良い。話が終わりなら俺は失礼する」
そう言って俺は4人に背を向けて教室に戻り、椅子に座ってひよりと弁当を食べるのだった。
その夜……
「って感じだ。こっちの作戦については問題ない。証人の方は坂柳に任せるぞ」
『お任せください。いざという時に備えてこちらも色々と考えていますから』
「Aクラスには本当に助けられるな」
俺は自室で坂柳と電話を使って最後の打ち合わせをする。事実、坂柳が証人となる事でこちらの信憑性はグッと上がるだろうし、神室の諜報活動はこちらの作戦を練るのに役立った。
『気にしないでください。こちらとしても停学などのペナルティについて知りたかったですから』
「そう言ってくれるとこちらも助かる」
『世の中持ちつ持たれつですから。あ、それと万が一Dクラスが完全無罪を勝ち取ったとしても安心してください。そうなったら私が『須藤君に職員室前で突き飛ばされて悪意ある言葉を吐かれた』と須藤君を学校に訴えますから』
あー、なるほどね。確かにあの時の須藤の態度は問題だった。普通なら良くて厳重注意、悪くて停学だろう。
しかも坂柳は障害者であり、須藤はその前の日に起こった暴力事件の当事者だ。その事を考えると須藤を停学させる事は不可能じゃない。加えて須藤が坂柳を突き飛ばしたのは監視カメラがある職員室前だし。
とどのつまり、須藤は詰んでるって訳か。
「そうか。まあ何にせよ明日はよろしくな」
「はい。ところで比企谷君」
「どうした?」
俺が尋ねると……
『比企谷君が私と椎名さん相手に二股をしているという噂がAクラスに流れているのですが……アレはどういう意味ですか?』
………あ
その後、俺はしどろもどろになりながらも事情を説明したが、物凄く説明するのが大変だったのは言うまでもないだろう。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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