腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
いよいよ審議当日の火曜日となった。
その日は審議当日だから1年全体の空気が重く、廊下を歩く際も緊張感に包まれていた。
それは時間が経つにつれて増していき、最後の授業が終わる頃には最高潮となっていた。
放課後を告げるチャイムが鳴ると同時に俺は立ち上がり、ひよりに話しかける。
「ちょっくら行ってくる。多分1時間くらいで終わると思うわ」
「わかりました。図書室で待っていますので頑張ってください」
「ああ。またな」
そう言ってから教室を出て廊下で待っていると石崎達3人が出てくる。
「なあ比企谷。本当に俺達はお前が言った事をやるだけでいいんだよな?」
小宮がそんな風に質問をしてくる。
「この審議はCクラスが圧倒的有利だが、絶対はこの世に存在しない。だが絶対に限りなく近付くのは可能だ。お前らは用意した回答と俺が言った事をこなせば問題ない」
何せ相手は小学生より短気であろう須藤だ。ぶっちゃけ負ける気はしない。
「ちなみに比企谷の中だと須藤にどれくらいの罰を与える予定だ?」
「さぁな。向こうが用意したカード次第だ」
俺個人としては退学処分にしてやりたいが、そう都合よく事が進むとは思えないからな。
言いながら俺達は職員室に向かうと職員室前の廊下で坂柳と坂上先生が待っていた。
「来たようだね。では生徒会室に行こうか」
「あの、先生。何故ここにAクラスの坂柳が?」
「坂柳は俺と同じ目撃者だ。俺達は2人で事件を見てたんだよ」
その言葉に3人は驚くが、坂柳はこっちの味方だから安心しろ。まあ壁に耳ありだからハッキリとは口に出来ないが。
「宜しくお願いします。では坂上先生、案内をお願いします」
坂柳がそう言うと坂上先生を先頭に歩き出す。と、同時に坂柳が話しかけてくる。
「いよいよですね。私、審議がどのようなものなのか楽しみです」
「審議を楽しみと言うのはお前くらいだろうな。ま、今後の参考にしとけ」
「もちろんです。あ、比企谷君さえ宜しければ週末2人で祝勝会をしませんか?比企谷君の部屋で」
「俺の部屋かよ?」
「私の部屋だと、比企谷君は夜8時までしか過ごせませんから」
寮は下層が男子エリアで上層が女子エリアとなっているが、「男子は夜8時以降、女子エリアに入る事を禁ずる」って校則がある。よって男女が夜遅くまで一緒に過ごすには男子エリアを拠点としないといけない。
「悪いがパスさせ「断るなら比企谷君の部屋の前にずっといます」……了解した」
「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
俺は無力だ……
ため息を吐きながらも俺達は生徒会室に向かう。坂上先生が扉をノックした後に中へと足を踏み入れる。
「失礼します」
「「「失礼します」」」
一言そう言って中に入る。生徒会室の中には長机が置かれていてグルリと長方形を作っていた。1番奥には堀北会長と書記の橘先輩がいた。
「坂上先生とCクラスの生徒はこちらに座ってください。目撃者の坂柳さんは私達の向かい側に座ってください」
そう言われたので俺は1番手前にある椅子を引いて坂柳が座りやすいようにする。坂柳は椅子に座るのも一苦労だからな。
「ありがとうございます」
「気にするな」
そう返しながら俺は坂上先生と石崎に挟まれる形で椅子に座る。向かい側にも椅子はあるが、そっちにはDクラスの生徒が座るのだろう。
暫くの間、待機していると審議開始まで10分を切ったタイミングでドアがノックされて開く。そしてDクラス担任の茶柱先生が入ってきて、その後ろから3人の生徒が入ってくる。
1人は当事者の須藤で、残り2人は堀北、そして堀北会長と凄い戦闘をした男だった。どうやら2人が弁護人……ん?
そこまで考えていると坂柳の目が一瞬だけ鋭くなっているのが見えたが、何かあったのか?
目を擦って再度確認すると、いつもの表情になっていた。見間違いか?
「遅れました」
「時間にはまだ余裕があります。お気になさらず」
「C組のクラス担任、坂上先生だ。手前にいるのが目撃者の1人であるAクラスの坂柳。それから彼がこの学校の生徒会長だ。彼の横に立っている彼女は書記だな」
茶柱先生は須藤達に紹介をしながら席に座る。俺の真ん前には堀北が座るが……動揺しながら堀北会長をチラチラ見ている。
一方須藤は机の上に肘をついて苛立ちを露わにしているが、態度悪過ぎだろ?
呆れる中、審議が始まる。
「それではこれより、先日起こった『暴力事件』についての審議を執り行いたいと思います。進行は生徒会書記、橘が務めさせて頂きます」
「「よろしくお願いします」」
言いながら小さく頭を下げて橘先輩に一礼する。同じタイミングで坂柳も一礼する。
「「「よろしくお願いします」」」
石崎達も一拍おいて一礼する。それに対して橘先輩は軽く目を見開くが直ぐに同じように一礼してくる。
「随分と礼儀正しいのだな」
「先輩が名乗ったら礼をするのは当然でしょう。寧ろ先輩主導の審議が始まるのに机に肘をついている事が問題では?」
「んだとテメェ?!」
薄い笑みを浮かべてくる茶柱先生にそう返すと須藤がブチ切れ、机を叩きながら立ち上がる。
「須藤君着席してください」
即座に橘先輩が注意すると須藤は舌打ちをしながら着席する。しかし肘は机の上についているので、会長を含め全員が須藤に対して冷たい目を向けている。
石崎達にアドバイスした事は2つあるが、1つは「礼儀正しくする」ことだ。
礼儀正しい態度を取る人間と悪い態度を取る人間を比べたら必然的に後者の意見は弱くなる。
勿論堀北会長は公平な判断をするだろうが、今の須藤の態度は須藤が暴力的な人間である事を示したので、こちらの意見は僅かながらに信憑性が上がるだろう。
橘先輩は審議を執り行うと言ったが、審議ってのは開始の言葉が出る前から始まっているんだよ。
ちなみに坂柳にはアドバイスしてないので、坂柳は元々礼儀正しいって事になるな。
「それにしてもこの程度の揉め事に生徒会長が足を運ぶとはな。いつもなら橘だけのはずだが?」
「日々多忙故、橘に任せてしまう機会が多いですが、原則私は立ち会う事を理想としてますよ」
「あくまでも偶然、ということか」
会話の内容はよくわからんが、要するに堀北が兄を苦手としているのだろう。明らかに動揺してるし。
ま、こちらとしてはありがたい話だけど。
そう思う中、橘先輩が事件の概要を説明するが今更な事だから流し聞きする。
「──以上のような経緯を踏まえ、双方の主張を客観的に聞き、どちらが正しいのかを見極めさせて頂きます」
ようやく開戦だな。
「小宮くんと近藤くんの二人は、同じバスケットボール部の須藤くんに呼び出され、放課後、特別棟に出向いた。そこで喧嘩を売られ、一方的に殴られたと主張しています。須藤くん、これは真実ですか?」
「そいつらの言ってることは嘘だ。俺が特別棟に呼び出されたんだよ」
「では須藤君。事実を教えて頂きますか?」
「俺はあの日、部活の練習を終えた後、小宮と近藤に呼び出されたから出向いてやったんだよ。そしたら石崎が待ってて、3人でバスケ部を辞めろって脅してきやがったんだよ。そんでそれを断ったら殴りかかってきたから、やられる前にやっただけだ」
コイツは馬鹿か?自分で自分の首を絞めてやがるよ。先輩の質問に対して肘をついたままで敬語も使わないどころか口も悪い。既に須藤に対する心証は最悪と言っていいだろう。
「須藤君はこう言っていますが小宮君と近藤君に反論はありますか?」
橘先輩は小宮と近藤に目を向ける。対する小宮は首を横に振る。
「はい。須藤君の言っている事は丸っきり嘘です。僕達が「ふざけんなよ小宮。嘘吐いてんじゃねぇよ!」……すみません須藤君。全て話させてください」
「っざけんな!」
小宮の言葉に須藤が怒鳴ると小宮は黙る。これも俺が教えたアドバイス、「相手が話しているときは絶対に口を挟まない。また自分が話しているときに口を挟まれたら穏やかに注意する」だ。
須藤の性格上、こっちが嘘をついたらキレて口を挟むのは明白だ。だから口を挟ませまくり、須藤の心証をとにかく悪くさせる。上手くいきゃ途中退場させることも不可能ではないだろう。
「少し落ち着いてください須藤君。今は小宮君に話を聞いています」
「ふざけんな。嘘を吐いて黙ってろってか?」
橘先輩の注意に対して須藤は食ってかかるが、コイツはマジで審議に勝ちたいと思ってるのか?
須藤の余りの態度に呆れ果てている時だった。
「いい加減にしろ須藤。これ以上橘の警告を無視するなら、ここで審議を終了して本来お前に与える予定の処分を下す事も考えないといけない」
堀北会長が威厳ある態度でそう言ってくる。
おいおい……こっちは勝つ為に色々作戦を練ってきたが、マトモに審議をする前にこっちが勝っちまうんじゃね?
もしもガイルキャラが高度育成高等学校に入学したら?
高度育成高等学校学生データベース (4/6時点)
氏名 葉山隼人
クラス 1年A組
学籍番号 S01T004671
部活 サッカー部
誕生日 9月28日
評価
学力 A
知性 B
判断力 D
身体能力 A
協調性 A
面接官コメント
成績は小学校の頃から優秀で、中学ではサッカー部の部長を務めてリーダーシップを発揮する事からAクラス配属とする。クラスの大半と仲良く出来ているが多数の意見を最優先に、少数の意見を蔑ろにする傾向があるので改善を必要とする。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
-
はい。
-
いいえ