腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
期末テストも終わり、8月となった。
現在俺達1年生は以前から聞いていたバカンスに行くべく豪華客船に乗っている。
予定では最初の1週間は無人島に建てられたペンションで夏を満喫して、その後の1週間は客船内での宿泊という流れだが……
「俺の予感じゃ特別な試験が2つあると思う」
「私もそう思います。そして私が参加するとしたら無人島での試験は無理でしょうね」
この旅行は絶対に裏があるに決まっている。俺と坂柳の意見は同じだった。
現在俺達は船のデッキにあるプールにいる。一応俺も坂柳も水着を着ているが、坂柳は泳げないのでそれに付き合う形で足だけプールに突っ込んでいる。とはいえ足は冷たく、風も気持ちいいので悪くない。
「しかし意外だな。てっきりお前は今回の旅行に参加しないかと思ったぞ」
俺は隣にいる坂柳にそう告げる。坂柳は白いワンピースタイプの水着は着て儚い雰囲気を醸し出していて、美術品のようだ。
そんな坂柳は身体が弱いので旅行そのものに参加しないと思っていた。
「ええ。真嶋先生からは参加を渋られましたが、面白くなりそうな予感がしましたので」
「そうか。けど無理するなよ」
「ありがとうございます。ところで比企谷君にお願いがあるのですが良いですか?」
「何だよ?」
「少しだけプールの中を歩きたいのですが、エスコートしてくれませんか?」
なるほど。いくら水の中でも坂柳が1人で歩くのは厳しいかもしれないし、補助は必要だ。
「はいはい、杖になってやるよ」
正直恥ずかしい気持ちはないわけじゃないが、坂柳の体の弱さを考えると無碍には出来ん。
俺が手を差し出すと坂柳は俺の手を握り、ゆっくりと身体をプールに浸からせるので、俺もそれに続いてプールに入る。
「意外と気持ちいいですね。私、お風呂以外で身体を水に浸けた事がないので新鮮に感じます」
そりゃそうだろうな。
「気持ち良いなら何よりだ。しかしお前も大変だな」
「慣れてしまえばそうでもないですよ。ただ面白そうな事に参加出来ないと不満に思う事はありますが」
だろうな。というかコイツが人並みの肉体を持っていたらあらゆる場所で暴れ回り誰にも止められないだろう。
「そうか。ま、旅行中に困ったことがあるなら手を貸す」
「ええ。以前約束したように特別な試験では動いてくださいね」
坂柳の言っていることは、以前起こった暴力事件の時に協力した際の報酬の話だろう。あの時坂柳は坂柳派がCクラスをバックアップするのと引き換えに葛城派を叩けと要求した。
「もちろん全力は尽くすが……改めて確認するがAクラスがBクラスにクラスポイントを抜かされてもいいんだな?」
「ええ。寧ろそうしてください。そうすれば葛城君の指示は無価値になるでしょう」
自分の所属するクラスが落ちようと気にしないあたり、坂柳も龍園と同様にリミッターが外れているのだろうな。
そう思いながらも坂柳の手を引いてゆっくりとプールの中を歩いていると、ボールが坂柳のいる方に飛んでくるので、左手で坂柳を俺の後ろに抱き寄せながら、右手でボールを叩く。それによってボールは一回水の上でバウンドして俺の右手に収まる。
「ごめん。怪我してない?」
すると離れた場所からポニーテールの女子生徒がこっちに謝ってくる。女子の近くに一之瀬がいるからBクラスの生徒だろう。
「問題ない。ただ、他にも泳いでる奴もいるからあんまり強くボールを投げんな」
「わかった。ごめんね」
再度謝罪を受け取ったのでボールを投げ返す。坂柳に当たらなくて本当に「あの……」良かっ……た?
「もう大丈夫ですから……えっと……」
すると俺は坂柳を抱き寄せている事を改めて認識する。坂柳は少しだけ恥ずかしそうに頬を染めて見上げてくる。同時に坂柳の柔らかな身体の感触が伝わってくる。
「わ、悪い……」
「……いえ。助けられたので怒ってはないですが、比企谷君って意外と大胆なんですね」
「そんなつもりはねぇよ。それより上がらないか?」
坂柳にそう提案するのは周りからは凄い視線が集まってるからだ。
不幸中の幸いなのは口煩い由比ヶ浜がこの場にいない事だろう。アイツがいたら「こんな場所でセクハラするなんてヒッキーマジキモい!」って喚きそうだし。
「そうですね。上がりましょうか」
坂柳が了承したので俺は坂柳の手を引っ張ってプールの端まで連れて行き、先にプールから上がり坂柳の杖を回収する。
そして坂柳の手を引っ張ってゆっくりプールから引き上げる。
「どうもありがとうございます」
「気にすんな。それにしても無人島到着まで後1時間ちょいか」
無人島に着くのは昼の1時近くで、今は12時前とそれなりに時間がある。
「でしたらご飯を食べましょう。今日から試験があるかもしれないですし」
「いや、1人で食べ「一緒に食べないなら泣きます」……了解した」
坂柳が泣いたら後ろ指を指されてしまうのは明白だし、従うのが賢明だ。
俺はため息を吐きながら更衣室に向かうのだった。
その後着替え終わった俺は坂柳と合流してレストランに向かう。
「ここのレストランは魚料理が有名なんですよ」
坂柳はそう説明するが庶民の俺からしたら高級レストランより適当なカフェの方が合っている気がする。
まあ偶には高級な飯も良いかもしれない。そう判断してレストランに向かうと……
「何でヒッキーがここにいるし!ここはヒッキーみたいな人が来る店じゃないし!」
入口近くで由比ヶ浜と鉢合わせこっちを指差してくる。
「……すみません比企谷君。私がこの店を選んだ所為で不愉快な気分にさせてしまいましたね」
坂柳が物凄く申し訳なさそうに謝ってくる。コイツがここまで申し訳なさそうな表情になるとは、坂柳自身も由比ヶ浜を面倒な存在と思っているのだろう。
「まあこういう事もあるさ。場所変えてデッキのカフェに行かないか?」
「そうしましょうか」
言いながら俺達はレストランに背を向けて立ち去ろうとする……が、ここで待ったをかけられる。
「待つし!謝罪もしないでどこに行くし!」
「どこって違う飯屋に決まってんだろうが。つか謝罪って何だよ?」
「決まってるじゃん!ゆきのんが土下座するのを止めなかった事!もうすぐゆきのんが来るから謝るし!後そっちのチビはあたし達のクラスポイントを奪ったんだから謝ってあたし達にポイントを渡してよ!」
そういやDクラスは未だにクラスポイントが0だったな。須藤が馬鹿した所為で。
一方チビ呼ばわりされた坂柳の額に青筋が浮かぶ。まあ気持ちはわからんでもない。チクったのは坂柳だが、そもそもの原因は須藤の言動だからな。
「謝る必要も渡す必要もありませんね。それに由比ヶ浜さん。レストランの入口で騒ぐと周りの迷惑になりますし、その格好はこの店に相応しくないですよ」
同感だな。由比ヶ浜の服は派手な服でドレスコードについて問題があるだろう。現にレストランの中にいる生徒は全員冷たい目を向けている。
「う、煩い!子供は素直に言うことを聞けし!」
「もうマジで面倒だな……坂柳、逃げるぞ」
以前のように坂柳を抱き抱える。対する坂柳は落ちないようにしっかりと俺に抱きつくので、早足でレストランを離れる。
「あ、ちょっと待つし!」
由比ヶ浜は喚くがそのまま早足で階段を上って逃げ切る。そして数階上ったところで坂柳を下ろす。
「助かりました」
「気にすんな。しっかし凄く疲れた」
「全くです。中学からあんな風だったんですか?」
「まあな」
雪ノ下を崇拝していて、俺が雪ノ下の意見とかに難色を示すと直ぐに喚くし、人の話は聞かずに直ぐにキモいキモい言ってくる。修学旅行以降はそれが顕著になったが、ハッキリ言ってイラってくる。
「とりあえず美味いものを食って気分転換するか」
「そうですね」
互いに頷き合ってからデッキに向かい、目につけたカフェでサンドイッチとコーヒーを注文して腹を膨らませる。
これから何があるかはわからないが頼むから平和に過ごしたい。
そう強く思いながら昼食を済ませて、暫くの間坂柳と雑談をしていると……
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。まもなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』
そんなアナウンスが流れる。
やれやれ、嫌な予感しかしないなぁ……
原作と変えて坂柳も船に乗ってます。
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