腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。まもなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』
そんなアナウンスが流れる。
やれやれ、嫌な予感しかしないなぁ……
「どう見る?」
「十中八九、存在するであろう試験に関する事だと思います。すみませんがデッキまで運んでくれませんか?」
「はいはい」
言いながら俺は席から立ち上がり、坂柳をお姫様抱っこする。既に何度も人前でやっから慣れちまったよ。
そしてそのままデッキの展望台に向かうと前方に島が見える。大きさは島として見れば狭いが、俺達が過ごす分には広すぎる。
そんな中、船は桟橋をスルーして島の周りを回り始めるが……
「妙ですね……スピードが速過ぎます」
坂柳の言う通りだ。意義ある景色と言っておきながら旋回速度が速い。少なくとも景色を楽しむ配慮はない。
「だろうな……というか坂柳。お前はいつまで抱っこされてんだよ?」
「すみません。船が速いのでこのままでお願いします」
いや船は速さを維持してはいるが速度は上がってないないからな?展望台に着いたんだから降りろや。周りからの視線が痛いわ。
そう思うが坂柳はギュッと抱きついているので、仕方なく抱きながら景色を見る。
「洞窟、開けた道、廃墟。色々な物があるがよ……ペンションが無いじゃねぇか」
思わずそう呟いてしまう。予定では今日から1週間ペンションで過ごすらしいが件のペンションが見当たらない。要するに……
「どうやら真っ赤な嘘で、実際は無人島生活をする可能性が高いですね」
つかそれ以外に考えられない。ただの旅行ではないとは思っていたが、まさかのサバイバル生活かよ……
ため息を吐いていると船は島の周りを一周して桟橋に向かい、やがて停止する。
『これより、当学校が所有する孤島に上陸致します。生徒の皆様は三十分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合して下さい。またしばらく御手洗に行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいて下さい』
そんなアナウンスが流れる。同時に俺の腕の中にいる坂柳からメロディが流れるので、一旦坂柳をおろす。
「学校からメールが来てますね……上陸禁止のようです」
「って事はある程度体力を使う必要があるようだな」
「ええ。比企谷君とはここでお別れですが土産話を期待してますから」
そう言う坂柳の目には嗜虐の色が混じっている。これは葛城派を叩けって期待しているのだろう。
「へいへい。悪いが俺は準備しないといけないから先に行くぞ」
坂柳に会釈してから俺は船内にある自分が割り当てられた部屋に行き、中に入ると同じ部屋で寝泊まりする龍園とアルベルトと石崎は既に着替えをしていた。
「来たか。十中八九試験があると思うがお前には暴れて貰うからな」
「それに見合った報酬を出せよ」
俺が龍園に協力するのは報酬が魅力的だからだ。無かったら適当に流すだろう。
「お前はそれで良い」
龍園はそう言ってくる。俺は龍園に対して忠誠心は全くないが、龍園はポイントで俺から信用を買っている。俺と龍園の関係はポイントによって成り立っているのだ。
そして着替えた俺達は集合場所に移動すると既に大半の生徒が集まっていて、全員が集合場所に集まるとAクラス担任の真嶋先生が拡声器を持って話しかける。
「ではこれより、Aクラスの生徒から順番に降りて貰う。それから島に携帯端末の持ち込みは禁止だ。担任の先生に各自提出し、下船するように」
おいおい……携帯の持ち込みすら禁止って……相当面倒な予感しかしないな。
ため息を吐きながら待機していると遂にCクラスの番になったので船から降り始める。
その際に先生からボディチェックを受けたが警戒し過ぎだ。マジでどんな試験をやるんだか……
島に上陸した俺達は砂浜で点呼をするか暑くて仕方ない。
内心イライラする中、真嶋先生が口を開ける。
「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかし、1人の生徒は上陸できなかったことは非常に残念でならない」
それは坂柳だな。これについては仕方ないが。
すると作業着を着た大人が特設テントを設置し始める。中にはパソコンもあるが……
「ではこれより、本年度最初の特別試験を開始する」
うん。だいたい予想通りだな。
「と、特別試験?」
真嶋先生の言葉に戸惑いの感情が周囲から生まれていくが、戸惑ってない奴は馬鹿ではないだろう。
「期間はこれより一週間。8月7日の正午に終了となる。君達にはこれから1週間、この無人島で集団生活して貰う。また、これは実在する企業でも実践されている現実的、且つ実践的なものであることをはじめに告げておく」
「無人島で生活って……この島で、寝泊まりするってことですか?」
「その通りだ。その間君たちは寝泊まりする場所はもちろん、食料や飲料水に至るまで、全て自分たちで確保することが必要になる。試験実施中、正当な理由がない限り乗船は許されない。試験開始時点で、各クラスにテント2つ、懐中電灯2つ、マッチを一箱支給する。また、歯ブラシに関しては各生徒に1セットずつ、日焼け止め、女子生徒のみ生理用品は無制限で支給する。各クラスの担任に願い出るように。以上だ」
おいおい……予想以上にハードだな。
「は、はあ!?マジの無人島サバイバルなんて聞いたことないし!漫画の世界じゃないんだから!第一テント2つで全員寝られるわけないじゃん!マジあり得ないし!」
内心ため息を吐いていると由比ヶ浜が大きな声で喚くが、真嶋先生はその声に呆れたように返答した。
「君はあり得ないと言ったが、それは君が歩んできた人生が浅はかなものであったことにすぎない。はじめに説明しただろう。これは実際に企業研修でも取り行われているものだと」
「そ、そんなの特別に決まってるし!」
由比ヶ浜は尚喚くが、他クラスから侮蔑の視線で見られてるぞ。現に俺の隣にいる龍園なんて嘲笑を浮かべてるし。
「由比ヶ浜、これ以上みっともないマネはするな。真嶋先生が言ったのはほんの一部。これは、誰もが知る有名企業でも取り入れられていることだ」
茶柱先生は由比ヶ浜の言葉を一蹴すると由比ヶ浜は頬を膨らませて黙り込む。
「しかし先生、今は夏休みですし、この行事の名目は旅行のはずです。企業研修なら、こんな騙し討ちのような真似はしないと思いますが」
そうだな。ペンションが云々と説明を受けていたが、ペンションなんてないし、明らかに問題だ。ついでに言うならばテントなどの物資も明らかに不足しているし。40人で使うには足りない。
「なるほど、確かに不満が出るのも納得できる。だが特別試験と言っても深く考えなくていい。この1週間、君らは何をしようと自由だ。海で泳いだり、バーベキューをしたり。キャンプファイヤーで友と語り合うのもいいだろう。この試験のテーマは『自由』だ」
「んっ?え、試験なのに自由?ちょっと頭こんがらがってきた……」
生徒らは混乱し始める。
「この無人島における特別試験では、まず、試験専用のポイントを全クラスに300ポイント支給する。これを上手く使うことで、君らはこの試験を乗り切ることが可能だ。今からマニュアルを配布するが、マニュアルにはポイントで購入できるすべてのものがのリストが載っている。食料や水のみならず、バーベキュー用の機材や無数の遊び道具なども取り揃えている」
「つまりその300ポイントで欲しいものがなんでも買えるってことですか?」
「そうだ」
「で、でも試験っていうくらいだから、何か難しいのがあるんじゃ……」
「いや。2学期以降への悪影響は何もない。それは保障しよう」
真嶋先生は悪影響がないと言うが……
(良い影響があるって事だろう)
でなきゃ試験にする必要はないし。例えばポイントを一定以上残したらクラスポイントやプライベートポイントが支給されるとかな。
そんな中、真嶋先生が一度区切ってから……
「この特別試験終了時には、各クラスに残ったポイントをそのままクラスポイントに加算し、夏休み明け以降に反映する」
そう告げる。真嶋先生の言葉が風と共にビーチを吹き抜けて砂埃が舞い上がるが、やっぱり重要な試験じゃねぇか。
同時に生徒全員に衝撃が走る。
この試験は学力のみならず、忍耐力や環境への適応力なども問われる試験で、A〜Dクラスの間にあるハンディキャップを感じさせない仕組みだ。
「今からマニュアルを配布する。紛失の際は再発行も可能だが、ポイントを消費するので確実に保管しておくように。また、試験中に体調不良などでリタイアした生徒がいるクラスは30ポイントのペナルティを受ける。よって、Aクラスは270ポイントからのスタートとなる」
身体が弱い生徒でもペナルティがあるのかよ?
呆れる中、真嶋先生の話は終わり、残りは各クラス担任から説明を受けるよう指示される流れなのでクラスごとに分かれて集まり始めるが……
(絶対面倒な予感しかしねぇ……)
隣にいる龍園が獰猛な笑みを浮かべている事から、色々と働かされる予感しかしない……憂鬱だ。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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