腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
真嶋先生が大まかな説明をすませると解散宣言がされて、坂上先生が俺達の所にやって来る。
「今から君達全員に腕時計を配布する。試験中、この腕時計を許可なく外すことは認められていない。外したらペナルティが発生する。これには時刻の確認だけではなく、GPS機能、体温、脈拍など、様々な機能が搭載されている。非常事態に備えて、学校側にそれを伝える手段も用意されている。緊急時には迷わずそのボタンを押すように」
俺らに腕時計が配布される。GPSが付いて、非常ボタンもあるなんて危険な事もあるって事か?
「つけたまま海に入ってもいいんすか?」
「完全防水だから安心したまえ。万一故障した場合、直ちに担当者が代用品を持ってくることになっている」
やっぱり準備に抜かりはないか。
「先生、ポイントを使わない限り、私達は全て自分たちで何とかしなければならないということですか?」
「そうだ。解決方法を考えるのもこの試験で我々教員の関知するところではない。それでマニュアルの最後に目を通してくれ。特別試験において重要な事が書かれている」
坂上先生の指示に従ってマニュアルの最後を見ると……
著しく体調を崩したり、大怪我をしたりして続行不可能と判断された場合はマイナス30ポイントとなり、その者はリタイアとなる
環境を汚染する行為を発見したら、マイナス20ポイント
午前と午後8時の2回ある点呼に遅れた場合、1人につきマイナス5ポイント
他クラスへの暴力、略奪行為、器物破損を行なった場合、そのクラスは即失格、対象者のプライベートポイントを全て没収
4つのペナルティがある。要するに体調管理に気をつけて、遅刻と野糞と暴力略奪器物破損をしないようにすれば良いんだな。
しかし体調管理が重要ならある程度ポイントを使う必要があるだろう。ひよりみたいに身体が強くない生徒に0ポイント生活は厳し過ぎる。
「坂上、300ポイント全てを使い切ってからリタイアする生徒などが出たら、ポイントのマイナスはどうなるんだ?」
龍園が質問をするが敬語を使えや。
「その場合はリタイア者が増えるだけだ。ポイントがマイナスになることはない」
「なるほどな……」
龍園は小さく頷く。どうやら色々企んでいるのだろう。
ともあれ俺も質問をしとくか。
「坂上先生。点呼はどこでするんですか?今作業員が作ってるテント付近ですか?」
「クラスの担任は、自分のクラスのベースキャンプのそばに拠点を構えることになっている。ベースキャンプが決まったら私に報告をしてくれ。点呼はそこで行われる。また、一度決めたベースキャンプは正当な理由なく場所を変更できないから注意するように」
ベースキャンプの場所もしっかり考えないといけない。今いる砂浜のように日光が強い場所は論外だ。
「先生、トイレはないんですか?」
すると女子の1人が質問をする。そういやトイレがないな。
「トイレについては今から説明する。トイレは男女共用、クラスに1つ支給されるこれを使うように」
そう言って坂上先生が示したのは、段ボールだった。おい……まさかアレか?災害時に使うアレだよな?
「そ、そんな段ボール使うんですか!?」
女子が喚く中、坂上先生はスムーズにトイレを組み立てて、使い方の説明を始めるが女子は拒絶するような表情を浮かべている。俺も正直使いたくない。
そう思う中、坂上先生は話を続ける。
「それとこれより追加ルールを説明する。まもなく君達にはこの島を自由に移動する時間が与えられるが、島の各所にはスポットという場所が設けられている。そこには占有権が存在し、占有したクラスにのみそのスポットの使用権が与えられる」
「他クラスが占有している場所に侵入したらペナルティが発生するんですか?」
「それは最後に説明する。話を戻すと占有権の効力は8時間のみで、時間ごとに権利がリセットされる。つまり、その度に他クラスにも占有のチャンスがあるということだ。そして、一度占有するごとに1ポイントのボーナスポイントが与えられる。ただしこのポイントは試験中に使用できないので注意しろ。試験終了時にそのボーナスポイントは加算される」
つまり一箇所のスポットを1日占有すれば3ポイント手に入ることになる。1週間で21ポイント、これはかなりデカいな。
マニュアルによればスポットの近くには専用装置があるらしい。
更に詳しく読んでみると……
・スポットを占有するためには専用のキーカードが必要である。
・1度の占有につき1ポイントを得る。占有したスポットは自由に使用できる
・他クラスが占有しているスポットを許可なく使用した場合、50ポイントのペナルティを受ける。
・キーカードの使用権はリーダーのみにある
・正当な理由なくリーダーを変更することはできない。
大まかなルールはこんな感じだ。
更に最終日の点呼では各クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられ、他クラスのリーダーを1人当てるごとに50ポイントを得ることができる。
反対に、他クラスに言い当てられた場合や外してしまった場合は50ポイントずつ失いそれまでのボーナスポイントも剥奪される、学校側の性格が見え隠れするルールだ。
「リーダーは必ず1人決めてもらう。無理にスポット占有に走らなければ、見破られることもないだろう。リーダーが決まったら私に報告するように。その際にリーダーの名前が記されたキーカードを渡す。また、今日の点呼までに決まらなければこちらで勝手に決めることになる。以上だ」
リーダーの名前が刻印されるということは、盗み見られてもダメということか。
坂上先生はそう言って去って行く。その際に騒めきが生じるが……
「全員黙れ。早速だが方針を発表するぞ」
龍園がそう言うと一瞬で静まる。流石恐怖でクラスは支配しただけある。
「リーダーを誰にするかは後で決めるがぶっちゃけどうでも良い。結論を言うと俺達Cクラスは試験を放棄して夏のバカンスを思い切り楽しむぞ」
その言葉にクラスメイトからは再度騒めきが生じるが、今度は龍園も止めに入らない。
「あの龍園さん、試験を放棄するって……」
龍園の側近の石崎が恐る恐る質問をする。
「言葉通りだ。おそらく普通に試験を受けたら最終日の時点でポイントは100から200くらいだろう」
まあそうだな。マニュアルを見たが、1週間リタイヤなしで過ごすならある程度のポイントの消費は必要だし。
「俺からしたら真っ平御免だ。たかが100や200のポイントの為に1週間、暑さや虫、飢えなどに耐えるなんて馬鹿げた話だ」
その言葉に騒めきが大きくなるが龍園はそれを無視して説明を続ける。
「それならいっそポイントを全て遊びに使って、使い切ったら全員仮病でリタイヤする。そうすりゃ試験中、俺達は豪華客船で夏休みを満喫できる」
随分とぶっ飛んだ発想だな。まあこの試験の主旨は自由だから龍園の案も正解の一つだ。
そしてマイナス要素がない試験なら俺としても悪くない。
Dクラスは未だにクラスポイントが0だから抜かされる事はないだろう。
Bクラスは一之瀬の性格上、リーダー当てには挑戦しないだろうからポイントはそこまで増えないから、多少差が大きくなる程度でそこまで支障はない。
Aクラスについては坂柳がいないのでリーダーは保守派の葛城となる。坂柳なら積極的にリーダー当てには挑戦するだろうが、葛城なら一之瀬同様堅実に試験をこなすだろう。
結論を言うとクラスごとの序列は変わらないだろうし、龍園の考えも悪くはない。
「話は終わりだ。俺達もベースキャンプを探すが、場所は砂浜がある場所にするぞ」
言いながら龍園は歩き出す。普通に試験をこなすなら日差しが強い砂浜を選ぶのは悪手だが、龍園は本気でバカンスを楽しむようだ
一部のクラスメイトは龍園の提案に戸惑いながらもそれに続くがそんな中、俺は龍園に話しかける。
「龍園、ちょっと話がある」
「わかった……石崎、俺はちょっと比企谷と話をするから、他の連中連れてベースキャンプを探しに行け」
「は、はいっ!」
石崎は頷いてアルベルトと一緒にクラスメイトを率いて歩き出す。辺りを見ればAクラスとBクラスも行動を始めていて、Dクラスは大声で揉めている。その事からDクラスのリーダーは雑魚、もしくはリーダーがいないのかもしれない。
そんなDクラスを尻目に俺と龍園は森に入る。
「お前の事だ。バカンスをするのは事実だろうがそれだけじゃないだろ?」
「くくっ、やっぱりクラスで俺の企みを理解出来るのはお前くらいか」
「そりゃ俺もお前も性格が屑だからな」
屑同士考えがわかるのだろう。
「結論を言うと正解だ。バカンスをするのは本当だが、2、3日遊び倒したら俺は無人島に残って追加ルールでポイントを稼ぎに行く」
そ、そうきたか……確かに数日遊んでベースキャンプから撤収すれば、他のクラスの連中はCクラスの事を頭から除外するし、暗躍がやりやすいな。
「とはいえ坂柳との約束もあるからAクラスの葛城に取引を持ちかける」
葛城に取引を持ちかける言ったが、その前にに坂柳との約束って言ってる時点で裏切る気満々のようだ。まあ俺としても葛城派を叩けって頼まれてるし反対はしない。
そう思っていると……
「そこでだ比企谷。俺は他クラスを引っ掻き回し、尚且つ葛城から大量のプライベートポイントを奪いに行くんだが、お前も島に残って俺の手伝いをしろ。報酬として儲けの半分くれてやる」
龍園がそんな提案をするのだった。
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