腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
夏の日差しはとても暑く、日の当たる場所にいれば直ぐに日焼けをしてしまうだろう。よって外にいるときは日陰に行くのを好む。
ましてや今は無人島で1週間のサバイバル試験だ。必要のない限り日陰に行くのが基本だ。
普通ならな。
「おっ、蟹がいるぞ」
「本当ですね。それにしても岩場には沢山の生き物がいますね」
現在俺は水着を着て、同じく水着姿のひよりと一緒に日光の下でベースキャンプから少し離れた岩場を散歩している。ひよりは水色のビキニを着ている。涼しげな色の水着はひよりの清楚さとマッチして良く似合っている。昼に見た白いワンピース水着を着た坂柳と良い勝負だ。
そんなひよりに見惚れながらも散歩を続けていると少し離れた場所ではボールで遊んでいる女子や水上スキーを楽しんでいる男子が目に入る。
龍園が試験を放棄して遊び倒すと提案してからクラスメイトは海で思い切り楽しんでいるのだ。
実際龍園は試験を放棄しないで、俺とスパイとなった金田と伊吹の4人で試験に挑むことになっている。
そして金田と伊吹は既に龍園に怪我をさせられてBクラスとDクラスに向かっている。
俺はクラスメイトの大半がリタイヤする2日目の夜まで思い切り羽目を外すつもりだ。3日目からはマジのサバイバルだからな。
そんなことを考えながらも岩場を散歩していると行き止まりにぶつかった。ここまでは歩けたが、ここから先は巨大な岩が道を塞いでいて先に進めない。
引き返そうと考えたが、少し暑くなってきたし海に入って引き返すか。
「ひより、暑いし海に入って引き返さないか?」
「良いですよ」
ひよりが頷いたので俺は岩場から海に入る。同時に身体がひんやりとして気持ちが良い。
少ししてからひよりも海に入るが、運動音痴だからか慌ててバチャバチャと水を跳ね上げている。
「落ち着け」
「あっ……」
昼前に坂柳にやったようにひよりの手を握るとひよりはゆっくりと落ち着きを取り戻す。
「す、すみません。予想よりも冷たくて焦ってしまい、みっともない所を見せてしまいた」
「気にするな。普段クールなお前が焦ってるのは可愛かったぞ?」
「もう……馬鹿」
俺をdisりながらもひよりは微笑んでいるので俺は頭につけたゴーグルを目にはめる。同時にひよりもゴーグルを装着するので、手を繋いだまま2人で海に顔をつける。
すると魚が泳いでいるのが鮮明に見える。しかも都会の海と違ってゴミなども全く見えず、海そのものも美しい。
暫くの間、海の中を見ていると少し息苦しくなったので顔を上げる。
「ぷはっ……凄く綺麗ですね」
「ああ。見たことない魚も沢山いたし、非常に興味深い」
「はい……あの、八幡君」
「何だよ?」
「八幡君はこれから色々大変だと思いますが……無茶はしないでくださいね?」
俺がやろうとしていることを知っているひよりは不安そうな表情を浮かべて俺を見ている。
「ま、何とか頑張る」
そう返しながら俺達はゆっくりと泳ぐ。と、ここで急に大きな波が現れて……
「うおっ!」
「きゃあっ!」
そのまま俺達を押して岩場に押し寄せる。このままだと2人まとめて岩場にぶつかってしまうので、俺はその前にひよりの後ろに回り……
「ぐえっ……!」
そのまま岩場とひよりにサンドイッチされる。それにより背中には痛みが発生するが、ひよりが無事なら安い買い物だ。
「大丈夫かひより?」
「あ、はい……でも八幡君は……」
「ちょっと痛いが気にするな」
「……ごめんなさい。私なんかを助けて」
「だから気にすんなって言っただろ。女子は肌が命なんだから大事にしろ」
「……ありがとうございます」
言いながら俺はひよりの手を引っ張ってベースキャンプの方へ向かう。対するひよりは礼を言ってから俺の手をギュッとさっきよりも強く握ってくる。
そしてそのまま砂浜に戻り、海から上がる。砂浜ではビーチバレーをする男女がいて活気があるが、俺はあんなリア充グループと関わるのは苦手だから離れた場所でのんびり過ごす。
「ひより、俺は少し疲れたから砂浜で寝るが、お前はどうすんだ?」
なんだかんだベースキャンプの捜索をしたり、船から降りてからも色々あって結構疲れたのは事実だからな。明日の夜からはガチのサバイバルとなるからそれまでに万全の状態にしておきたい。
「そうですね……私も騒がしいのは好きじゃないですからご一緒してもいいですか?」
「ああ。じゃあちょっとマットを2つ持ってくる」
言いながら俺はパラソルの下にいる龍園のところに向かう。
「龍園、今からひよりと昼寝するからマット2つ寄越せ」
「あん?マットはデカイの1つしかないから、それで我慢しろ」
「1つしかないのかよ。じゃあひよりに使わせるか……って、おい。無線機を堂々と出すな。幾らCクラスのベースキャンプ地だからって他クラスに見られたら警戒されるぞ」
言いながら俺はテーブルの上にある無線機を指差す。これは金田や伊吹、葛城と連絡を取るためのものだが、堂々と出すのは悪手だ。俺も無線機を渡されているが、ちゃんとテントの中にある自分の鞄に入れている。
「相変わらず警戒心剥き出しだな。まあ従っておく」
龍園は苦笑しながらも自分の鞄に通信機をしまう。これなら疑われるようなことはないだろう。
「で?龍園。俺は結局何をやればいいんだ?」
島に残れとは言われたが具体的な意見はまだ聞いてないので今のうちに聞いておきたい。
「金田と伊吹はBとDのリーダー探しで、俺は2人の補佐と葛城との連絡。お前にやって貰いたいのはAのリーダー探し、そしてBとDのリーダーが判明してからはソイツらがリタイヤするかの監視だ」
あー、なるほど。リーダーを見抜いても向こうがリタイヤしたらこっちにダメージが来るからな。
「了解した」
俺は小さく頷いてからデカイマットを持ってひよりの元に向かう。
「待たせたなひより。マットは1つしかないからお前が使ってくれ」
「?大きいですから一緒に使いませんか?」
ひよりは不思議そうに言ってくるが、男子からしたらその言葉は麻薬だぞ。
「……お前本気で言ってるのか?」
「何か変な事を言いましたか?」
この天然……男の理性をゴリゴリ削るの上手すぎだろ。いくら一緒に寝た事があるとはいえ、今は水着だぞ。
そう思っていると……
「ほら、日差しを浴びてゆったりしましょう」
ひよりはマットを砂の上に敷いたかと思えば、そのまま俺の手を引っ張ってマットの上に連れて行く。
(仕方ない、ひよりには勝てないし)
そう判断した俺はひよりに対する抵抗を放棄してそのままマットに倒れ込み、ひよりと手を繋いだまま空を見上げる。
無人島だからか空気は上手く潮風も悪くない。今までずっと都会の空気を吸っていたからだろう。
「八幡君」
「どうした?」
「正直に言うと本がない無人島は退屈だと思いました……ですが、こうして八幡君と岩場を散歩したり、海で泳いだり、砂浜で寝たりする事は凄く充実して、幸せです」
「……いきなりどうした?」
そんな風に言われた俺は恥ずかしさを誤魔化すようにひよりから目を逸らして質問を返す。
「いえ、こうして八幡君と過ごしていた時間を振り返ったらそう思っただけです。八幡君さえ良ければこれからも……卒業してからも仲良くしてください」
「……ああ。こっちこそ宜しく」
ひよりは高校に入って最初の友達だし、こちらとしても仲良くしたい。大学に入って友達が出来ないって事もあるからな。
ひよりの笑顔に見とれながらもそう返事をしてからギュッと手を握る。こうしているだけで凄く幸せになってく、るな……
そこまで考えていると眠気がやって来たので特に逆らうことなく、ゆっくりと目を閉ざした。
3時間後……
「さて、そろそろバーベキューをするか。石崎、全員集めろ」
「は、はいっ」
夕焼けが砂浜を照らす中、龍園がそう命じると石崎は龍園の言葉に従ってクラスメイトを集め始める。
2、3分くらいすると大半の生徒が集まるが……
「比企谷と椎名がいません」
「あん……って、アイツらまだ寝てんのかよ」
石崎の言葉に龍園は訝しげな表情になるも、直ぐに離れた場所にいる2人を見つけ呆れ顔になる。
「起こしてこい。点呼も近いし、ベースキャンプにいるのに欠席とかアホ過ぎるからな」
龍園の指示に石崎が頷き2人に近付くが……
「ふふっ……八幡、君……」
「んんっ……ひより……」
抱き合いながら寝ている2人を見て絶句してしまった。しかも2人とも水着を着た状態で、終いには2人とも幸せそうにしていたのだ。
それに対して石崎は起こすのを躊躇ってしまう。しかし龍園からの命令を遂行しないといけないという思いとせめぎ合ってしまう。
(ちくしょう……このバカップルがぁ!)
石崎は内心で怒鳴る事しか出来なかった。
その後2人はふとした拍子で目覚め、クラスメイトに生温かい目で見られるのであった。
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