腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「伝達はしてきたぞ。暑いから水寄越せ」
Cクラスのベースキャンプに戻った俺は空になったコーラの缶をビニールに入れて龍園にそう伝える。
「ご苦労だったな。石崎、水持ってこい」
「は、はい!」
石崎は頷いてクーラーボックスから水の入ったボトルを取り出して俺に渡すので一気飲みする。
「ぷはっ!んじゃ俺は遊ぶからな?」
今日の夜から地獄が始まるのだ。今くらい羽目を外してやる。
そう返すと、水上スキーに空きが出来たのでそちらに向かう。昨日は乗れなかったがアレ一回だけ乗ってみたかったんだよな。
俺は水着に着替えるべく男子のテントに入りパパッと着替えてテントを出る。と、同じタイミングでひよりも出てくる。水着を着ているのでひよりも海に行こうとしたのだろう。
「お帰りなさい八幡君。今日も散歩しませんか?」
「それは構わないがその前に水上スキーに乗っていいか?」
「もちろんです……あ、私も一緒に乗って良いですか?」
ひよりはそんな風に頼んでくるが、断る理由もないので頷く。
「ありがとうございます。では行きましょうか」
そう言って歩き出すひよりに続くが、俺は了承したことを即座に後悔した。
何故なら……
「んっ……」
(や、ヤバイ……む、胸がモロに……)
俺は操縦桿を握るとひよりは俺の後ろに回り、そのまま抱きついてくるがひよりの胸が俺の背中に当たっているのだ。それがまた柔らかくてヤバい。
とはいえ態度に出したらドン引きされそうだから我慢する。唯一の友達を失うのは惜しいからな。え?坂柳とは友達じゃないかって?坂柳は俺の事をおもちゃとしか見てないだろう。
そう思いながらも水上スキーを走らせるが背中に抱きついてるひよりの存在により楽しいって思いより恥ずかしい思いが上回ったのは言うまでもないだろう。
まあ折角の水上スキーだから楽しむとしよう。俺は操縦桿を握ってまま、Uターンしたりジグザグに動いたりする。
「きゃあっ!」
すると背後からひよりの声が聞こえてくる。しかし背中には抱きつかれた感触があるので落水はしてないだろう。多分水が跳ねて身体に当たったのだと思う。
しかし俺からしたらエロく聞こえてしまう。ひよりにその気がなくともこちらの理性はゴリゴリと削られる。
これ以上はマズイと判断した俺は水上スキーの進行方向を砂浜に向けて走らせて、砂浜に水上スキーを着ける。
同時にひよりの手が離れたので水上スキーから降りて砂浜に上陸する。
ひよりも水上スキーが止まったのを確認して俺から手を離し、水上スキーから降りようとしたが、足元が濡れているからか滑ってこっちに倒れこむ。
それを見た俺はひよりの前に移動してそのまま受け止める。対するひよりは反射的な行動か俺の背中に手を回してくる。
「あっ……ごめんなさい」
「気にすんな。怪我はないか?」
「私、いつも八幡君に迷惑をかけてますね」
ひよりは自嘲するが……
「この程度の事を迷惑とは思わない」
実際俺はひよりに対して思うことはない。ぶっちゃけ奉仕部にいた頃に迷惑をかけられまくったからか、耐性がついているのかもしれない。
それにひよりは迷惑をかけたと謝ってくるし、不満を抱くことは無い。
「それに……一応友達だから気にすんな。もしかしたら今後俺の方が迷惑をかけるかもしれないし、そんときに寛大な処置をしてくれ」
「はい……ありがとうございます」
ひよりはそう言って笑顔を見せてくる。それだけで胸がポカポカしてくる。
しかしそれもひよりと抱き合っている事に気づくまでであり、気付くと慌てて距離を取る。
「わ、悪い。そんなつもりはなかった」
「謝らないでください。元々私が転びかけたのが悪いですし……」
「ですし?」
「その……八幡君に抱きしめられると、何故か幸せな気分になるんです……」
っ……!だからそんな事をハッキリと言うな……!確かに俺もひよりを抱きしめると恥ずかしさのみならず幸せな気持ちも生まれてくるけど。
しかしどう返事をしたら良いのか分からん。このまま抱き合った方がいいのか?いやいや、それは恥ずかしいし……
どうしたものかと悩んでいると、視界の隅に映るパラソルの下でジャージを着た2人がいるのに気付く。
(あそこは確か龍園の特等席だったな。クラスメイトは全員水着を着てるし、他クラスの偵察か?)
疑問に思いながら俺はひよりの身体の柔らかさから現実逃避する形でパラソルを見ると、やがて2人は去って行く。去って行く方向からしてDクラスの人間だろう。
そう思っていると2人は見えなくなり、必然的に俺に抱きついているひよりに意識を戻してしまう。
「あの……ひより?そろそろ離してくれないか?」
「あっ……ごめんなさい」
ひよりはそう言って俺から離れる。その際ひよりは恥ずかしそうに、それでありながら妙に嬉しそうな表情を浮かべているのがまた可愛らしくドキドキしてしまう。
中学時代に戸塚と抱き合った事はある。戸塚の場合、男だから一応精神的に余裕があった。(それでも結構ギリギリだった時もあるが)
しかしひよりは女子だから精神的余裕が殆どない。加えてひより自身が、俺と抱き合う事に嫌悪してないどころか幸せって言ってるし。
この状態が続けば遠くない未来にはひよりに「結婚してくれ」って言っちまいそうだし、気をつけないと。以前にも味噌汁を作ってくれって言いかけたし。
やっぱひよりの存在ってある意味龍園よりも恐ろしい、そう思う俺は間違いないだろう。
数時間後……
「じゃあ八幡君。そろそろ私もリタイヤしますね……」
夕方、俺は砂浜でひよりと向かい合っている。
遊びまくったCクラスの生徒らは体調不良と偽ってリタイヤした。島に残っているCクラスの生徒は俺と龍園とひより、BクラスとDクラスのベースキャンプに潜り込んだ金田と伊吹だけだ。
何故ひよりが残っているかというと最後に俺と話したいと言ってきたからだ。
「ああ。次に会うのは多分5日後だな」
「無茶はしないでくださいね?少しでも気分が悪くなったらリタイヤしてくださいね?」
「意外と心配性だな」
「1番大切な友達を心配するのは当たり前です」
からかうように心配性と言うと、ひよりは少しだけ怒ったようにそう言ってくる。
「わ、悪い」
「全くです。前から思ってましたが八幡君は自己評価が低過ぎます」
そう言われてもな。今まで嫌われまくりの人生だったし、自己評価を高くするのは中々難しい。
「……一応改善するよう努力する」
「約束ですよ?」
言いながらひよりは小指を立てて俺に突き出す。指切りを意味するとわかったのでやむなく指を出して絡めて頷く。
「では私はリタイヤします。無人島試験が終わったら、一緒に船の中で過ごしましょうね」
そう言ってからひよりは抱きついてくるのでこちらも優しく抱き返す。
「わかった。試験最終日にまた会おう」
「はいっ」
ひよりは頷いてからとても可愛らしい笑みを浮かべ、そのまま先生がいるテントの方へ行く。
そしてテントで何かを話したかと思えば、そのまま桟橋に向かって船に乗る。
ひよりが見えなくなるまで見送った俺は足元にある鞄を肩にかけてから船に背を向けて、龍園の元に向かう。
「待たせたな龍園」
「いや。どうせこれからは暇になるんだから気にするな」
まあそうだな。幾ら無人島に潜伏して色々動く予定とはいえ、動き過ぎるとバレてしまうので、一切動かない時間もあるだろう。
「改めて確認するぞ。お前はAクラスのリーダーの特定と他クラスがリタイヤする事の確認をやれ。まあ後者についてはこっちが他クラスのリーダー情報を手に入れるまでは余り意識を向けなくて良い」
「わかってる。それよりも仕事をこなしたら報酬を寄越せよ」
「当然だ。お前に報酬を渡さないと躊躇いなく裏切るだろ?」
否定はしない。金の切れ目が縁の切れ目だからな。
「否定はしない。んじゃ俺は洞窟の方に向かうから」
Aクラスのベースキャンプは洞窟で、占有しているスポットも洞窟の近くであり、離れた場所のスポットを占有してないのは既に知っている。
よってAクラスのリーダーを見抜くには必然的に洞窟の方に拠点を構えないといけない。
「ああ。俺は森に潜伏する。定時には報告しろ。それと例の作戦については4日目の夕方にやるから。その時はCクラスがベースキャンプに使ってた砂浜近くの岩場に集合だ」
「了解」
最後にそう言って俺と龍園は別れ、洞窟の方へ早足で向かう。
さぁて、俺達は今から試験を頑張りますか。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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はい。
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いいえ