腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
試験3日目
「あぁ。暇だ……」
俺はスポットがない洞窟の中でそう呟く。しかし時間の速さは変わらない。
俺は今Aクラスのベースキャンプの近くにある洞窟を拠点としている。普通ならAクラスのベースキャンプの近くに拠点を構えるのは危険と考えるだろう。
しかしこの洞窟は海に面していて歩くのは難しい場所であり、加えてスポットではないので、Aクラスの連中は初日に見つけただろうが、利用価値が無いと思ってるだろう。現に俺は2日目の夕方から潜伏しているが、3日目の昼まで人が近づく気配を一切感じてないし。
とはいえメチャクチャ暇なのだ。俺の仕事はAクラスのリーダーの特定だが、Aクラスのリーダーがスポットの更新をするまで仕事がない。
しかも暇潰しの娯楽は一切ない。一応Cクラスのベースキャンプには遊び道具があるが、水上スキーなんて使ったら俺の存在がバレるし使えない。
「ああ……マジで暇だ。っても後4日我慢すれば最低20万だし我慢だ」
既に何十回も口にした言葉を改めて口にする。龍園が葛城と交わした契約により、龍園は最低でも卒業までAクラスから毎月39万ポイント貰える。
そして龍園は利益の半分をやると言ったので後4日我慢すれば毎月20万近くのポイントが卒業まで龍園から貰えるのだ。
ならば我慢するしかない……が、マジで暇過ぎる。Aクラスのスポット更新まで後1時間近くあるし。
そう思いながらもため息を吐くが、吐いた所で時間は早まらないし……はぁ。
しかし時間は必ず進むのは事実であり、やがて動かないといけない。
暇潰しに瞑想という末期な事をしていると遂に1番近いスポットの更新まで10分を切ったので俺は服を全部脱いで、初日に用意した水着を着てそのまま海に入る。
バタ足などをしないで波を立てないように注意しながらスポットがある方向にひっそり移動する。道を使うよりは海を使った方がバレないと思ったからだ。
そしてスポットのある洞窟の近くにある岩陰に身を潜めるが、こうやって何かをするって充実感を感じるなぁ……
暫く感動していると足音が聞こえてくるのでこっそり覗き見るとAクラスの生徒数人がこっちにやってくる。そして1人を除いて洞窟の外で自分達が来た道を見張っている。
やっていることは正しい。このスポットに行くには基本的に彼らが使った箇所以外の道はないのだから。その道を見張れば余程のことがない限りリーダーの存在は知られないだろう。
しかし今回は余程のことだ。まさか連中も海の中から見張っているとは思ってないようで、俺がいる岩陰の方には視線を向けてすらいない。
安心しながら洞窟の中を見ると、緑髪の男がキーカードを取り出してスポットにタッチする。
「戸塚〜、スポット占有終わったか?」
「ああ、次行くぞ」
そう言ってAクラスの連中はこの場を後にする。Aクラスのリーダーが判明した。3日目でこれはラッキーだろう。
しかし1つ問題がある。
(下の名前がわからん……)
多分リーダーを指名する際はフルネームで答えないとダメだろう。実際キーカードにはフルネームが刻まれてるし。
しかし俺は戸塚の名前を知らない。これはかなりヤバい問題だ。
(龍園なら知ってるか?とりあえず定例報告の時に伝えとくが、もしも知らなかった場合はどうにかして神室と接触して聞き出すしかないな)
まあそのどうにかが難しいんだかな。神室は坂柳の部下だから葛城派は警戒してるだろうし、俺がBクラスとDクラスに知られたら伊吹と金田がスパイと疑われるだろうし面倒な事になる。
(とりあえず寒いから洞窟に戻るか)
いつまでも海にいたら身体が冷える。風邪ひいてリタイヤとかマジで笑えない。
俺はAクラスの連中が完全に居なくなるのを確認してから、それでもなお波を立てずに泳ぎ洞窟に戻り、タオルで身体を拭いてからジャージに着替える。
そしてそのまま寝袋の中に入ってゆっくりと目を閉じる。この寝袋は龍園が事前に購入してくれたものだ。大方俺が地べたで寝るのが嫌になってリタイヤされたら堪らないと判断したのだろうがこちらとしてはありがたい。
やる事がないと寝るしかないんだよなぁ。はぁ、豪華客船が恋しい……
数時間後……
『で?進捗はどうだ?』
夜になって報告の時間となったので龍園から通信が入る。よって俺は無線機を持って口を開ける。
「Aクラスのリーダーだが、一応判明した」
『仕事が早いな。誰だ?』
「済まんが苗字しか知らないが、戸塚って男だ」
『アイツか。フルネームは戸塚弥彦、葛城の側近という名前の腰巾着だ』
どうやら龍園は名前をしっているようだ。
「なら良かった。で?俺もお前と合流するか?」
『いや、それはまだいい。とりあえずAクラスのリーダー情報が絶対かを調べる。お前は明日もスポットを見張れ。俺は俺で坂柳派に接触する』
「了解した。じゃあ4日目は引き続きAクラスのリーダー情報を探り、夕方に例の作戦に移るぞ」
『ああ』
「なら良い。ちなみに金田と伊吹の調子はわかるか?」
『金田はBのリーダーを知った……が、ガードが固く写真の撮影やキーカードの強奪は厳しいらしい。伊吹については警戒心が強いからか中々見抜けずにいるようだ』
まあそうだろうな。仮に見抜けてもキーカードを手にするのは至難の技だ。
「どうするんだ?まさかとは思うが夜襲でもするのか?」
『まだ3日目だ。様子を見る。とりあえずまた明日この時間に連絡する』
そう言われると通信が切れるので無線機を地面に置いて再度寝袋に入る。とりあえず今はゆっくり休まないといけない。というか休み以外やる事が一切ないのが本音だ。
あぁ……船にいる坂柳とひよりが羨ましいなぁ。
同時刻……
「さて……今頃比企谷君は野宿をしてるのでしょうが大丈夫ですかね」
「わかりませんが、リタイヤはしてないので何とかやっているんだと思います」
椎名ひよりと坂柳有栖は船にあるカフェで夜風に当たりながら紅茶を飲んでいた。洞窟で寝ている八幡からしたら天国と言って良い環境だろう。
「ちなみに坂柳さんはこの試験はどういう形で終わると思いますか?」
「そうですね……最下位はAクラスだと思います。1位については……現場の空気を理解出来てないので判断が難しいですね」
有栖は例の契約をひよりから聞かされている。そしてその契約はAクラスの生徒全員が対象であるので、有栖は自分の配下が龍園と八幡の支援をするという確信があった。
それも有栖は自分以外の生徒が下船する前に「特別な試験があったら葛城派に嫌がらせをしろ」と自分の配下に命じていたからである。
仮にキーカードの情報を龍園と八幡が葛城に渡せなくても、坂柳の配下がAクラスのリーダー情報を他クラスに売ればそれだけでAクラスは大ダメージとなる。
そして1位については予想が出来ない。ひよりからスポットやキーカードなどの基本的な情報は聞いてはいるが、Cクラスはバカンスを楽しんでいて、島の捜索をしてないので島の情報については聞けてない。
流石の有栖も情報が不足している状態では1位が何処かは判断しにくい。とはいえ各クラスの戦略についてはある程度予想はしている。
しかし……
「ちなみに椎名さんはCクラス以外はどんな戦略を取っていると思いますか?」
有栖はひよりに質問をする。理由としてはCクラスの生徒に関する情報を得るためだ。特にひよりは八幡同様に龍園に支配されてない生徒であるので興味はある。
「そうですね……Aクラスについては洞窟をスポットにしているらしいですけど葛城君の性格は慎重ですし、入り口に暗幕を展開して中に物資が見えないようにしてCクラスと組んでいることを隠すでしょうね」
「まあ葛城君ならそんな面白みのない戦略を取るでしょうね」
「葛城君の事はお嫌いなんですか?」
「誰かの下につくのは御免ですから。そういった意味だと比企谷君を雇っている龍園君が羨ましいですよ」
これについて本気でそう思っている。葛城も優秀ではあるが、自分と相反するやり方を説き敵対しているので駒としての価値は低い。
一方の八幡は自分に利益があるなら駒になる事、クライアントの方針に不満を持たないのは明白だ。
加えて優秀でもあるので有栖からしたら是非ともポイントで雇いたいと思っている。今はまだしも今後、2000万ポイントを用意して引き抜く事も視野に入れているくらいだ。
「まあ龍園君も八幡君を重宝してますね。次にBクラスは必要最低限のポイントを消費して節約生活、リーダー当てには挑戦しないでしょう。Dクラスについては……バラバラになってるかもしれないですね」
ひよりは船から無人島を見ながらそう呟くと有栖も同じように無人島を見る。
無人島は真っ暗でありながらも不気味な雰囲気を醸し出していた。
(さてさて、どうなるやら……面白くなる事を祈ってますよ)
有栖は無人島を見ながら冷笑を浮かべるのだった。
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