腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
試験4日目
(来た来た。待ちくたびれたぜ)
海に入ってスポットがある洞窟の近くに潜伏していた俺だが、漸くAクラスの生徒がこっちにやって来た。しかし今回は2人しかいない。
1人は昨日スポットを更新したと思われる戸塚弥彦だ。んでもう1人はAクラスのトップの1人の葛城だ。人数が少ないのは坂柳派が信用出来ないから多数で動きたくないからか?
そう考えると昨日の面子も葛城派の人間で、今日は別の仕事があるのかもしれない。
そう思っていると葛城は洞窟に入る直前に、ポケットからキーカードを取り出す。そして洞窟に入るとそれを戸塚に渡し、戸塚がスポットの更新をする。
(なるほどね。ああやってれば2人を尾行してる奴がいても、葛城がリーダーだと誤認出来るだろう)
単純ながら良い手だ。ただ俺は昨日の時点でリーダーを把握していた上、俺は道を使って尾行をしておらず海に入って待ち伏せしているのだからな。
そう思っていると2人は去って行く。これでAクラスのリーダーは間違いなく戸塚であることがわかった。今のところ順調だ。
これで伊吹と金田がBクラスとDクラスのリーダーを見つけられたら最大で150ポイントが入る。Aクラスに200ポイント渡して150ポイント稼げたなら最高の結果だろう。
とはいえ油断は禁物。もしかしたら向こうもリーダーリタイヤ作戦を取ってくるかもしれないし、伊吹と金田が見抜いたリーダーが実はリーダーじゃないって可能性もあるし、そもそもリーダーを見抜けないって可能性もある。
まあ何にせよ、無人島試験が終われば最低でも毎月20万近くのポイントが卒業まで龍園から支給されるので問題ない。つまり卒業までに600万近くのポイントが約束されているのだから、ある意味勝ち組になれる。
しかし可能なら作戦を成功したい。ともすればAクラスは更にポイントを龍園に払い、必然的に俺に対する小遣いも増えるからな。
そう思いながらもゆっくり泳いで洞窟に戻り、夕方まで眠るのだった。
翌日……
「んじゃ例の作戦を実行するが、その前に今日までの状況整理だ」
夕方、俺と龍園はCクラスがベースキャンプとして使っていた砂浜の近くにある岩場にいた。ここは他クラスのベースキャンプとは離れているし、Aクラス以外の生徒はCクラスは全員リタイヤしたと思っているから、人の気配は一切しない。
「といっても俺はAクラスしか知らないぞ」
一応深夜に偵察は行っているが拠点の近くにあるAクラスだけだ。
「BクラスとDクラスについては俺が偵察してるから問題ない」
龍園がそう言ってくるので説明を始める。
「Aクラスは洞窟の入り口に暗幕を展開してるが、入口付近にシャワー1つと簡易トイレを2つ展開して堅実な守備プレイだな。それでリーダーを戸塚にして洞窟付近のスポットを更新しまくってる。坂柳からしたら退屈なやり方だろうな」
「だろうな。あの女ならリーダー情報を求めて動き回るに決まってる」
龍園はそう言って自分の言葉を疑ってないが、これについては俺も同意見だ。坂柳が守りに入るなんて想像すら出来ない。
「まあスポットを何回更新しようがリーダーを当てたらボーナスポイントは無くなるんだしあからさまに妨害はしない方が良いだろ」
「ああ。で、Bクラスはスポットについて一切狙わないで食料の捜索しかしておらず、捜索の際にスポットを発見しても放置してるらしい」
「Aクラス以上の堅実な手か。もうBクラスのキーカードを狙うのはやめないか?葛城との契約はBクラスかDクラスのどちらかのキーカードを手に入れたら達成なんだし無理に奪うのは危険過ぎる」
もしも奪ったのがバレたらCクラスは失格となるからな。いくら攻撃的な龍園でもガードが固過ぎるBクラスを攻めないだろう。
「俺もそれは考えた。とりあえず金田に写真を撮りにいくのはやめさせ、あくまでリーダーの確認だけするように命じた」
「リーダーはわかってるならそれで良いだろ。俺達が当てたら50ポイント入るんだし」
「そうだな。で、次にDクラスだが、簡単に言うとBクラスの下位互換だ。節約を重視しているがBクラスより要領が悪いらしい。伊吹によれば女子は男子に内緒でフロアマットや枕、扇風機など20ポイント近く消費してるらしい。更に自由人で有名な高円寺がリタイヤした事もあって50ポイント近く無駄に消費している」
うわぁ……クラスポイントが0なのに無駄遣いとかしてんのかよ。しかも男子に内緒ってカスだな?
「まあ馬鹿どもは放っておいて次の作戦に移るぞ。その為に……」
言いながら俺は両手を広げて受け入れる構えとなる。それを見た龍園は小さく頷いてから拳を振り上げて……
「がはっ!」
そのまま俺の顔面を殴りつけてきた。
20分後……
「少し良いか?」
「ん……って!なんだその傷?!誰だよお前?!」
Aクラスのベースキャンプの入口付近にて、俺が見張りをしているAクラスのリーダーの戸塚弥彦に話しかけると、彼は目を見開いて叫ぶ。
しかしそれも仕方ないだろう。俺の顔には殴られた痕が複数あるのだから。
「Cクラスの比企谷だ。葛城に話があってきた」
「Cクラスだと?!ちょっと待ってろ」
戸塚はそう言って暗幕を展開してある洞窟に入っていく。反応からして取引について知っているな。
暫くすると戸塚は葛城を連れてやってきた。葛城は俺の顔を見て一瞬だけ眉をひそめる。
「葛城だな。無駄話は好きじゃないし、長居は危険だから手っ取り早く本題に入るがCクラスのリーダー情報を提供しにきた」
「……何だと?島に残っている以上、俺が龍園と組んでいるのを知っている筈だ」
「ああ。俺は俺でBクラスとDクラスのリーダー情報を調べるが、その上でCクラスのリーダー情報を提供しに来た。あの野郎、予想以上に唯我独尊野郎でもう我慢出来ねぇんだよ」
言いながら俺はわざと唾を地面に吐き捨てる。
「まずCクラスに何があった?」
「簡単に言うと次の試験について揉めたんだよ」
「次の試験?随分先の話で揉めてんのかよ?」
戸塚はそう言っているが……
「いや、次の試験は無人島試験が終わって、直ぐにあるだろう。この学校が1週間も舟の上で俺達を遊ばせるとは思えない。何せ半分騙し討ちをして無人島試験をやらせてくるんだからな」
これについてはマジでそう思う。1週間無人島生活を送ったら、1週間遊び放題?絶対にあり得ないな。
「だろうな。それで?」
葛城も俺と同意見のようで続きを促す。
「その際に俺は「無人島の作戦は博打要素が強いし、次の試験では堅実に行こう」って提案したんだが、龍園は「更に攻めるべき」って反対した。そんで俺が食い下がったら……」
「殴られた、と?」
頬を指差しながら葛城の問いに頷く。
「はっ、暴力でクラスを支配しようとしたら裏切りを受けるって間抜けだな」
俺の話を聞いた戸塚は龍園の事を嘲笑う。一方の葛城は険しい表情で俺に話しかける。
「それで?お前は俺に何を求めるのだ?プライベートポイントか?」
「別に何も?今回は龍園に対する仕返しだからお前らがCクラスのリーダーを指名すれば、それが報酬となる。強いて言うなら龍園に質問された時にしらを切ってくれ」
「……良いだろう。ただしお前の言葉だけでは信用出来ない」
葛城の言葉に対して俺はポケットからキーカードを取り出して葛城に投げつける。
「ほらよ、これで文句はないか?」
「……本物だな。情報感謝する」
「気にすんな。それと葛城、次回からは龍園と組むのはやめとけ。今回の試験では龍園は裏切るつもりはないが、それはあくまでお前から信用を得る為の策だ。ポイントが大量に入るライン……今回の契約が成立して以降は裏切る気満々だから」
「そのつもりだ。今回は必要だったから手を組んだが、奴は危険過ぎる」
葛城はそう言いながら俺にキーカードを返すので受け取る。
「それがわかってりゃ良い。じゃあ俺は帰る。長居は危険だからな」
そう言って俺は葛城と戸塚に会釈をしてAクラスのベースキャンプを後にするのだった。
口元に笑みを浮かべ、笑いを堪えながら。
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