腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
試験最終日……
「龍園、最後に確認をするぞ」
7時50分。点呼10分前にて俺は船の桟橋近くの森に身を潜めながら無線機で龍園と連絡をしている。
「Aのリーダーが戸塚弥彦でBのリーダーは白波千尋、Dについては不明で良いんだな?」
『ああ。そんでAクラスはお前がリーダーって知ってるから後8分したらリタイヤしろ』
「ああ。金田が夜中にリタイヤしたのを確認したし、それ以外の人はリタイヤしてない。よってウチのクラスは最大で100ポイントって所だな」
『ま、0だろうと葛城との契約は上手くいったし大した問題じゃない』
「だな。じゃあそろそろ切るが健闘を祈る」
そう言ってから通信を切って辺りを見回す。しかし辺りから物音が聞こえてこないのでリタイヤする人間はいないのだろう。
と、ここで7時58分、点呼とリーダー当ての時間まで2分を切ったので俺は森から出て、早足で教員用のテントに向かい坂上先生に話しかける。
「坂上先生。体調不良でリタイヤします」
「わかった。リタイヤのペナルティは30ポイントだが、構わないかね?」
「はい」
言いながらキーカードを渡す。リーダーは最低1人は必要なので必然的に龍園がリーダーとなる。
「んじゃ失礼します」
一礼してから俺は豪華客船に乗船する。とりあえず部屋のシャワーを使って汚れを落とそう。
俺は人気のない廊下を歩き、やがて自分の部屋に着いたので中に入る。すると部屋ではパジャマ姿の石崎とアルベルトがいて、俺を見て目を見開く。
「比企谷?!何でここに……?」
「それよりシャワー使うから」
そう言って俺はシャワールームに行き、パパッと服を脱いでシャワーを浴びる。
「あー……気持ちいい……」
5日ぶりのシャワーは最高の一言だ。何というか身の汚れがどんどん落ちているのがわかる。
俺はそのままシャンプーとボディーソープをふんだんに使ってとにかく身体を洗いまくる。身体を洗い終えたら飯を食いに行こう。無人島生活においては初日と2日目以外の食事はガチで質素だったからな。
30分後……
「ふぅ……生き返った」
身体を徹底的に洗い終えて、髭を剃った俺は風呂場から出て制服に着替える。そして汚れたジャージを洗濯機に入れて回す。
そして脱衣所から出ると石崎が話しかけてくる。
「何でお前がいるんだよ?龍園さんはどうしたんだよ?」
「作戦の1つだ。俺は体調不良ってことにしてリタイヤ。今のリーダーは龍園がやってる」
「作戦って……龍園さんは何を考えてるんだ?」
「今俺が教えても良いが、試験の結果はまだ出てないから後にしとけ」
言いながら俺はそのまま部屋を出てレストランに向かう。腹がペコペコだし、分厚いステーキを食べに「おや、比企谷君ではないですか?」……懐かしい声だ。
後ろを振り向くと杖をついている女子ーーー坂柳有栖が微笑みを浮かべて俺を見ていた。
「久しぶりだな」
「はい。1週間ぶりですね。無人島生活はどうでしたか?」
「もう二度とやりたくない」
初日と2日目は天国だったが、以降は地獄だった。来年もあるなら俺はバカンスを楽しむ側に行くと思う。
「そうでしょうね。ちなみにAクラスに攻撃を仕掛けましたか?」
「約束だからな。Aクラスはウチから200ポイント分の物資を貰ったから、最終日の点呼の時には270ポイントがそのまま残ってるだろうな」
「でしょうね。試験の概要は知ってますが150ポイントあれば1週間過ごすのは不可能ではないです。加えてスポットのボーナスも加えた場合、Aクラスは普通なら500ポイント以上となるでしょう。普通ならですが」
坂柳は意味深な笑みを浮かべてそう言ってくるので俺も頷く。
「普通ならな。ま、続きは試験の結果を見てからだな。それより俺は腹が減ったし飯を食いに行くんだが、お前は?」
「私も朝食を食べに行くところでしたのて一緒に行きます」
坂柳が頷いたので俺は坂柳の歩幅に合わせてレストランに向かい、到着するなりステーキを注文する。一方の坂柳はサンドイッチと紅茶を頼む。
「朝からステーキを頼むなんて余程お腹が空いていたんですね」
「ああ。船に戻ったら肉を食うと決めてた」
暫くするとステーキが運ばれてきたので口に入れると肉汁が口の中で広がり、バクバクと食い始める。もう我慢する必要がない以上、遠慮する気は全然なかった。
「さて、もうすぐ結果発表ですが楽しみですね」
坂柳は楽しそうに笑っているがAクラスの勝利については望んでないのは丸分かりだ。
「そうだな。船に降りて確認しに行くのか?」
「いえ。私は専用の部屋を与えられていますが、そこにあるテレビで見れますから一緒に見ましょう」
普通に言っているが男子を簡単に自分の部屋に誘うなよ?アレか?俺の事を玩具として見ているから大丈夫だと思ってんのか?」
そこまで考えていると坂柳が不満そうな表情になって俺を見ている。
「比企谷君は酷いです」
「い、いきなりどうした?」
「私が比企谷君をおもちゃとして見ているなんて……」
どうやら口に出していたようだ。しかし以前玩具扱いされていた以上、俺がそう考えても仕方ないだろう。
そう思っていると坂柳が口を開ける。
「確かに知り合った当初は良いおもちゃになると思ってました」
思ってたのかよ。予想はしていたがハッキリ言われるのは予想外だわ。
「しかし時間が経つにつれてそのような気持ちは無くなり友達と思うようになりました。大体おもちゃと思ってる人に対して抱っこされたりはしません」
ま、まあそうだな。確かに坂柳が俺を玩具として見てるなら肌を晒したり、俺に抱っこされたりせずパシリ扱いしているはずだ。
「あー、済まない。考えが甘かった」
「いえ。元はと言えば先におもちゃなんて言った私が悪いですから比企谷君は謝る必要はないです。ですが今の私は比企谷君を友達と思っている事は覚えていてください」
坂柳はそう言ってくる。その返事にどう返したらいいのか悩んでいると坂柳は口を開ける。
「話を戻しましょう。試験の結果については私の部屋で一緒に見ましょう……もちろん八幡君が嫌なら無理強いはしませんが……」
坂柳は不安そうな表情になりながら上目遣いで見てくる。普段の坂柳の性格からして演技であるのは丸わかりだが……
「わかったよ。飯食ったら案内してくれ」
逆らえん。演技とわかっていても罪悪感が湧いてくる。というか坂柳の奴、いつのまに俺の事を名前呼びしてるし。
俺が了承すると坂柳は途端に笑顔になる。
「はいっ。宜しくお願いします」
畜生、騙されたとわかっても可愛過ぎて文句が言えないな。
2時間後……
「いよいよ試験結果の発表ですね」
「だな」
朝食を済ませた俺は有栖によって、有栖の部屋に案内されて現在はソファーに座ってテレビを見て結果を待っている。(尚、有栖を名前呼びしてるのは有栖がそう呼べと何度もお願いしたからだ)
「しかし葛城君は龍園君に詰め寄ってますが何をしたんでしょうね」
有栖がコロコロと笑う。モニターを見ると生徒の様子が映っていて、葛城が龍園に詰め寄っているのも見える。撮影カメラが葛城達から離れているので音声は聞こえないが十中八九俺がリタイヤした件だろう。
『それではこれより、特別試験の結果を発表したいと思う』
モニターから真嶋先生の言葉が聞こえ、モニターに映る生徒に一気に緊張感が走る。
『なお結果に関する質問は一切受け付けていない。自分たちで結果を受け止め、分析し次の試験へと活かしてもらいたい』
そうは言っているが中には分析できないこともあるだろう。
緊張が走る中、遂に結果が発表される。
『ではこれより特別試験の結果を発表する。最下位は―――――Aクラスの70ポイント』
真嶋先生の言葉により、Aクラスを中心に騒めきが起こる。
「あらあら……」
有栖は楽しそうに笑うがこれは予想外だ。俺はAクラスは120ポイントで3位と思っていたんだが……どうやらBかDがリーダーを当てたのだろう。
『3位はCクラスの100ポイント』
これAとBのリーダーを指名したからだろう。もしも俺が昨日堀北がリタイヤしているのを発見しなかったら50ポイントになっていたはずだ。
『2位はBクラスの140ポイント』
2位がBって事はAのリーダーを当てたのはDだろうな。そして予想以上に少ないのは龍園がリーダーを当てたからだろう。
『そして1位はDクラスの175ポイント。以上をもって結果発表を終了する』
真嶋先生の言葉によって試験が終わる中、モニターを見ればDクラスの生徒ははしゃいでいて、龍園はニヤニヤ笑いながら船に戻っていて、Bクラスの生徒は皆で話し合っていて、Aクラスの生徒は葛城に詰め寄っていた。
「ふふっ、これで葛城派は大きく勢力を落とすでしょう。ご協力ありがとうございます」
「いやいや。こっちこそAクラスとは良い契約を結べたし、礼を言うのは俺だ」
有栖が微笑みながら礼を言ってくるので俺も返事をする。何せ契約が完全に成立した時点で俺は勝ち組になったようなものだからな。
モニターにて今もなおクラスメイトに詰め寄られている葛城を見て、俺は笑みを我慢するのは無理だったのは言うまでもなかった。
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