腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「じゃあ話は終わったし俺はもう行く」
「ええ。こちらのお願いを聞いてくれて感謝します」
龍園は有栖と言葉を交わしてデッキから去る。よって必然的に有栖と2人きりになる。
「しかし中々良い作戦だな。こうすれば作戦が失敗してもCクラスにもダメージが与えられるし」
「万が一もありますし、龍園君が私より先に優待者の法則を見抜いた際の保険です。向こうも私が先に優待者の法則を見抜くことを危惧したから受けたのでしょう」
「なるほどな。で?他のグループについては?」
「一之瀬さんを始め、一部の生徒の作戦は気になるので直ぐに仕掛けはしません。しかし正規の解答時間が来る前に裏切るつもりです」
ま、それが妥当だろうな。とはいえ葛城派とBクラスは裏切らないだろうし、Dクラスは大半が雑魚だから安易に裏切りはしないだろうから問題ない。
「明日からは同じグループとしてよろしくお願いしますね」
「ああ。といってもマトモに話す事は少ないだろうな」
葛城がどんな作戦で来るかは容易に想像出来るが、グループ内で話すのは余りないと思う。
「否定は出来ません。まあ詳しくは明日になってからです。それよりも本来の目的である星を見てのんびりしましょう」
そう言って有栖は近くのベンチに座ったかと思えば手招きしてくる。こっちに来いって事だろう。
そう判断した俺は特に逆らわずに有栖が座っている場所から少し離れて座る。が、同時に有栖はススっと距離を詰めてきて俺の手を握ってくる。それにより有栖の温もりが伝わってきて心地よい。
反射的に握り返すと有栖はクスリと笑って、握る力を強める。
「八幡君の手、柔らかくて温かいです」
「そりゃどうも……しかしこうやって平穏な時間を卒業まで過ごしたいもんだ」
「それは無理でしょうね。この学校は生徒に絶え間なく試練を与えるでしょうから。ところで八幡君は何故この学校を希望したんですか?」
「諸々理由はあるな。高い就職率や進学率の恩恵に預かりたい、3年間外部とのこと接触を断つルールを利用して家族や雪ノ下達と離れたかったとかな。ま、後者については失敗だ。まさか2人もこの学校に入学するとは予想外だった」
不幸中の幸いなのは葉山が入学しなかった事だろう。奴もいたら更に面倒な事になるだろうし、自主退学も視野に入れていたと思う。
「そうなんですか。本当に彼女達とは何があったんですか?」
有栖は質問してくるか俺としては余り話したくな……っ!
そこまで考えていると嫌な予感がしたので、俺は口を閉じて指を口元付近で立て、有栖に静かにするように促す。
当の有栖は不思議そうに見ているが……
「ゆきのん星が綺麗だよっ!」
聞き覚えのある声が聞こえると納得したように頷き、そのまま気配を殺す。俺も同じように気配を殺す。真っ暗だから向こうが近づかない限り気付かれないだろう。
「そうね。まるで私達の勝利を一足先に祝福してくれているようだわ」
「だよね。ゆきのんは誰よりも優秀だからヒッキーやチビやヤンキーなんかコテンパンに出来るよ」
由比ヶ浜の言葉に有栖の額に青筋が浮かぶ。有栖って子供扱いされたら怒るんだよなぁ。
「当然よ。それに堀北さんにも格の違いを教えてあげないといけないわ」
「だよねー。Dクラスで1番優秀なのはゆきのんなのに出しゃばりまくって……本当あり得ないし!」
どうやら雪ノ下と由比ヶ浜は堀北が実績を出す事が気に入らないようだ。昔から変わらないな。雪ノ下は依頼を受けてる時も自分が優秀だから何でも出来ると思い込んでいたし。
ま、雪ノ下がどう動こうが関係ない。雪ノ下にしろ堀北にしろ2人とも俺と同じグループだから容赦なく叩き潰せばいいだけだ。
「まあゆきのん。明日から頑張ろうね」
「ええ。そして私が屑3人にDクラスにいる理由は手違いである事を証明してみせるわ」
屑3人とは俺と龍園と有栖だろうな。有栖の頭には更に青筋が浮かぶ。冷静沈着な有栖に対してハッキリと怒らせるなんて、ある意味凄いな。
「ゆきのんなら出来るよ。ゆきのんがDクラスなら他の人は入学なんて出来ないに決まってるし!」
「ありがとう由比ヶ浜さん。由比ヶ浜さんも明日から頑張って」
「うん!プライベートポイントを手に入れたいからね。須藤君の所為でクラスポイントが入らなくて遊べないし」
いやいや、先ずは借金を返せよ。聞いた話じゃDクラスは由比ヶ浜を救う為に凄く貧乏状態らしいし。
「全くね。本当にあの屑3人は余計な事をしてくれたわね」
「本当だし!ちょっと突き飛ばされたくらいでチクるなんてマジあり得ない!」
いやいや。俺はあの件の目撃者だが、障害者である有栖に対してアレはないと思う。ぶつかって謝るならまだしも邪魔扱いしたからな。
まあ審議が終わった直後に訴えたのはDクラスに対する嫌がらせだけど。
そう思う間にも2人は話を続けるが、大半が俺と龍園と有栖の悪口ばかりだった。もしくは雪ノ下が自分を優秀と言って由比ヶ浜がそれを褒める感じだ。
暫くすると2人はデッキから去って行く。それを確認すると有栖は満面の笑みを浮かべているに気付く。
但し額には大量の青筋が浮かんでいて、口元を引攣らせていた。相当キレてやがるな……
「決めました。今回の試験についてですがDクラスを潰します」
「お、おう……龍園には俺が報告しておく」
「お願いします。それとストレスを発散したいので抱きしめてください。八幡君に抱きしめられると安心するのはスパでの一件でわかりましたから」
言いながら有栖は俺の返事を聞く前に抱きついてくる。有栖の性格的に俺が抱き返すまで離れないだろう。
ため息を吐きながら俺は有栖をそっと抱きしめる。すると有栖は小さく吐息を漏らしながらも抱きしめる力を強めてくる。
「あっ……凄く、温かいです。ストレスが無くなっていくのがわかります……」
どんだけ俺の身体は凄いんだよ?正直言って信じられないんだが?
そう思いながらも俺は有栖を抱きしめる。有栖の身体はひよりの身体よりもほっそりしているので壊れないよう丁重に扱う感じで抱きしめる。
「八幡君、もう少し強くお願いします……」
「ああ……」
こうして俺は有栖の気が済むまで抱きしめてやるのであった。
翌日……
「そろそろ時間か……」
8時少し前、俺は船のデッキにして携帯を片手にメールが来るのを待っている。デッキには他の生徒もいるが全員が携帯を持って、尚且つ第三者に見られないように距離を置いている。
そして……
pipipi……
デッキのあらゆる箇所から着信音が鳴り出す。俺もメールをチェックする。
『厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれませんでした。グループの一人として自覚を持って行動し試験に挑んでください。本日午後1時より試験を開始いたします。本試験は本日より3日間行われます。竜グループの方は2階竜部屋に集合して下さい』
どうやら俺は優待者じゃないようだ。
俺は即座に龍園とひよりに優待者ではない事をメールすると、送信し終わったタイミングで2人からメールが来る。それによれば2人とも優待者ではないらしい。
となると俺達竜グループにいるCクラスの人間は優待者を外す以外にデメリットはないってことになる。まあ龍園の性格上、裏切りに行くだろうから優待者を見抜く必要があるが、中々面倒だろう。
(とりあえず様子見だな。龍園も最初の話し合いが終わるまでは様子を見るって言っていた)
そしてそれは有栖もだろう。有栖も攻撃的ではあるが、実際に話し合いに参加して他クラスを伺うくらいの用心はあるし。
とはいえ様子見をしながらも優待者の法則を考える必要はある。メールには厳正なる調整と書いてあるが、普通厳正なる審査の結果と書くだろう。こんな回りくどい言い方を学校がしてきた以上、絶対に裏がある。
とはいえ今は出来ることもないし、1回目の話し合いが終わったら龍園と話した方がいいかもな。
そう判断した俺は自室に戻る。とりあえず試験開始まで眠って英気を養って「あ、八幡君」おこうとしたらひよりと鉢合わせする。
「ひよりか。1時から一緒に頑張ろうな」
「はいっ。八幡君はどちらへ?」
「部屋に戻って寝て英気を養っておく」
「あ、じゃあ私も同伴して良いですか?」
それはつまり一緒に寝るって意味だよな?一緒に寝るのに慣れているから今更どうこう言わないが少々大胆過ぎじゃね?
「……石崎達が居なかったらな」
そう返事をしてから船内に戻るがその5分後、俺は自分のベッドの上でひよりと抱き合っているのであった。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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