腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
夏休みもあと少しで終わる。毎年思うが夏休みはもう2ヶ月くらいあっても良いと思う。
そんな事を考えながらも俺はケヤキモールを歩いている。暑いから冷たいパフェを食べたいのだ。
そして目的の店にて着いたので、中に入る。
「いらっしゃいませ。2名で宜しいでしょうか」
ウェイトレスが俺を迎えるが2名だと?
疑問に思っていると……
「はい。2名でお願いします」
背後からそんな声が聞こえてきたので振り向くと、白く涼しげなワンピースを着ている有栖がいて、俺と目が合いクスリと笑う。
「お席に案内します」
そんな俺を他所にウェイトレスが歩き出すので俺もそれに続く。
案内された席に座ると向かい側に有栖が座る。
「お久しぶりですね」
「そうだな。今日は神室はいないのか?」
「昨日付き合ってもらいましたから」
「なるほどな……あ、すみません。このストロベリーパフェお願いします」
話しているとウェイトレスが近くに来たので注文をする。
「では私はバナナパフェをお願いします」
有栖が同じように注目するとウェイトレスは一礼して去っていく。
「で?わざわざ俺と店に入ったって事は何か重要な話でもあるのか?」
Aクラスのリーダーの有栖がBクラスで高い地位にいる俺に話しかけるとしたら、クラス闘争に関する話である可能性が高い。
「いえ、デザートを食べようと店を探していたら、八幡君がカフェに向かおうとしているのを偶然見つけたので付いてきただけです」
……どうやら違ったようだ。まあまだ次の試験が発表されたわけじゃないし、様子見ってところだろう。
「夏休みは楽しんでいますか?」
「ぼちぼちだ。面倒な連中とも会わずに済むからな」
言うまでもなく由比ヶ浜と雪ノ下だ。学校があるときは教室が隣だったから偶然鉢合わせして騒がれることもあったが、夏休みだからか一度も会ってない。
「そうですか。まあ由比ヶ浜さんは引きこもっているかもしれないですから」
だろうな。舟の上でクラスメイトに責められまくったし、部屋から出るのを怖がっていてもおかしくないだろう。
「お前としても良かっただろ?」
「否定はしません。彼女の話を聞いていると頭が痛くなります」
まあ有栖は散々チビやガキって言われているからな。不愉快でしかないだろう。
そう思っているとウェイトレスがパフェを2つ持ってやってくる。
「お待たせしました。ストロベリーパフェとバナナパフェになります」
テーブルにパフェが置かれる。見るからに冷たそうであり、甘そうだ。
「「頂きます」」
そう言ってからパフェを口に入れると、ストロベリーの甘みが口に広がる。やっぱり甘い物は最高だな。
「八幡君。そちらのストロベリーパフェも一口貰っても良いですか?」
「別にいいぞ」
「ありがとうございます……んっ」
と、有栖は小さい口を開けて俺を見てくるが、これはアレか?あーんをしてるのか?
有栖は口を開けたまま俺を見てくる。有栖の性格上、譲る気は無さそうだ。
どうしたものかと悩んでいると周りから騒めき声が聞こえてくる。
「ねぇ、アレ見て……」
「女の子が待ってるのに……」
「男なら女を待たせるのはダメでしょ」
そんな声が聞こえてくる。どうやら俺は彼女を焦らす男と思われている……っ、有栖の奴、今一瞬ニヤリと笑ったが確信犯かよ?!
周りからの視線に耐え切れなくなった俺はスプーンにパフェをよそって有栖の口に運ぶ。すると有栖はパフェを口に入れて満面の笑みを浮かべる。
「美味しいです。ありがとうございます」
畜生、ムカつくが可愛くて文句が言えん。
すると有栖はスプーンで自分のパフェをよそったかと思えば……
「はい八幡君。あーん、です」
満面の笑みを浮かべたまま俺にスプーンを突きつけてくる。ちょっ、待て。食べさせるのも恥ずかしかったが、食べさせられるのも更に恥ずかしいんですけど。
「いや、流石にそれは「あーん」……いただきます」
結局逆らえずに口を開けるとバナナパフェが口に入るので咀嚼するとストロベリーとはまた違った甘みが広がってくる。
次に来るときはバナナパフェを「ところで八幡君」……嫌な予感がする。
内心警戒をしながら有栖を見ると……
「してしまいましたね……間接キス」
「ぐはっ!」
俺の警戒は意味をなさなかった。
10分後……
「ありがとうございましたー」
ウェイトレスから挨拶を受けながら店を出る。隣を歩く有栖はそれはもう楽しそうに笑っていた。
「八幡君はこれからどうするんですか?」
「聞いてどうする?付いて行く気か?」
「はい。また可愛らしい八幡君を見たいですから」
本当にコイツは良い性格をしてるな。まあ理不尽に罵倒したりしないからそこまでムカつかないけど。
そう思いながら前方から騒ぎ声が聞こえてくるので、有栖から目を逸らして前を向く。
そこでは雪ノ下が女子2人組と向かい合って口論をしていた。2人組の方は中間試験の直後に本屋で愚痴っていた女子だ。
その事から察するに2人組が由比ヶ浜の悪口を言って、通りすがりの雪ノ下がそれを聞いてキレたのだろう。
見つかったら絶対に面倒な事になるのは明白だ。
「よし有栖。ゲーセンに入るぞ」
「わかりました」
俺の提案に有栖は即答して頷き、直ぐ近くにあるゲーセンに入る。中に入ると騒がしい音が耳に入る。
「これがゲームセンターですか。カラオケボックスとはまた違った雰囲気がありますね」
有栖はそう言うが、有栖は歌う為にカラオケに行っているのではないだろう。
この学校においてカラオケボックスで歌を歌うのはクラスにおける下っ端ぐらいで各クラスの主力は密会の為に利用していると思う。カラオケボックスは監視カメラがない数少ない場所だから、秘密の作戦を立てる際に便利だ。
龍園も悪巧みする時はカラオケボックスを利用するし、有栖も同じ用途で利用しているのは明白だ。
「早速ですが八幡君。私、プリクラに興味があるので付き合ってください」
プリクラか……中学時代に戸塚と撮ったことがあった。どうせなら戸塚もこの学校に入学してくれたらよかったのに。
とはいえ今は有栖だ。「付き合ってくれませんか?」ではなく「付き合ってください」と言った以上、俺が断ったらあの手この手で付き合わせようとしてくるのは明白。
ならば無駄な抵抗はしない。
「へいへい。さっさと行くぞ」
「ありがとうございます。では行きましょう」
言われてプリクラの筐体に入る。同時に有栖は学生証端末をかざしてポイントを支払う。
「操作は私がやっても良いですか?」
「別に構わないが出来るのか?」
「いえ。初めてですが、だからこそ興味を持ちました」
言いながら有栖は操作する。好奇心旺盛だな。
暫く操作していると……
『彼氏さんが後ろから彼女を抱きしめて〜』
そんな指示が流れる……って!待てやコラ!これ絶対カップルモードだろ?!
次いで有栖を見ると笑っている。コイツ、俺をからかうつもりだな。
「では八幡君、抱きしめてください」
「いやいや。流石にそれは「しないなら泣きます」……了解した」
俺は逆らうのをやめて、後ろからゆっくりと有栖を抱きしめる。幸い有栖を抱きしめるのは慣れてるからそこまで恥ずかしくない。
そして撮影が完了するので有栖から離れる。次は落書きか。
「八幡君。2回目は八幡君が自由にしていいので、最初の落書きは私がしても良いですか?」
「好きにしろ」
落書きなんてやった事ないし、有栖がやったのを見ておきたい。というか2回目もやるのね。
暫く有栖が落書きをしているのを眺めていると有栖がモニターから離れる。これで後はプリントアウトされるのを待つだけだ。
そう思いながら外の受取口に行き、写真を手に取るが……
(こ、コイツ本当に良い性格をしてやがる)
写真には有栖を後ろから抱きしめている俺が写っているが落書きが酷い。写真下部には花畑が、俺と有栖の身体はハートマークに囲まれている。
これだけならまだしも、俺の近くに有栖を指した矢印があり、矢印の周囲には大量のハートがあり、矢印の中には大好きって言葉が書かれていた。
これだけ見ると俺が有栖にベタ惚れしているように第三者は考えるだろう。見てるだけで恥ずかしい。
「ふふっ……後で真澄さんや龍園君に自慢を「や・め・ろ!」冗談です」
龍園に見せてみろ、卒業までずっとネタにされるに決まってるわ。
つかやられっぱなしは嫌だし反撃するか。幸い有栖はもう一回プリクラをやるようだし、そこでチキらせる。
「では2回目といきましょう。次は八幡君が操作してください」
言いながら有栖は筐体の中に入るので俺も入り、モニターを見る。それによればどうやら筐体そのものがカップル専用らしい。
俺はコースなどを見てみると指示についてレベルが決められている。
レベルは1から5まであり、本来なら間違いなくレベル1を選択しているだろう。
しかし今回は有栖に一泡吹かせたいのでレベル5を選択する。
すると……
『彼女が彼氏の唇にちゅーをして〜』
ふぁっ?!
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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