※この作品はR-18です。

腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ   作:トラファルガー

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プール

「あぁ……怠い」

 

俺はメチャクチャテンションが低い状態だ。

 

テンションが低い理由は3つある。1つは夏休み最終日であるからだ。

 

いよいよ明日から学校が始まり、また他クラスとぶつかり合う事をと思うと怠くて仕方ない。まあAクラスと同盟を結んだから相対するクラスは2クラスで済むけどな。

 

2つ目、夏休み後半についてはひよりと有栖に振り回されまくったからだ。

 

ひよりは俺の部屋で一緒に読書をすると、休憩の際に持ち前の天然っぷりを発揮して一緒に昼寝をしようと普通に提案して、気がつけばベッドの上で抱き合っているなんてザラだ。

 

一方の有栖は確信犯である。夏休み中はひより同様に俺の部屋に遊びに来たが、俺の膝の上に乗ったり、俺に抱きついて頬にキスやスリスリをしてくるなど、とにかく俺を辱めてくるのだ。

 

3つ目の理由として昨日寝る直前に突如エアコンが故障してしまった事にある。おかげで部屋は蒸し暑く昨日の夜はガチで地獄だったのは言うまでもない。

 

エアコンについては昨日の夜に壊れたので今日の朝、電気屋が開く時間に連絡をしたら修理は明日以降となった。

 

よって俺は熱い夜を明かして新学期を迎えないといけないが、ハッキリ言って苦痛でしかない。

 

そんな事がありながらも俺は更衣室で服を脱いでいる。余りの暑さにより部屋にいるのが嫌になって、俺は1人でプールに行っている。

 

他の連中は夏休み最終日だから友達と思い切り遊び倒すようだが、俺はただ水に浸かりたいだけだから、1人でも問題ない。

 

そう思いながらパパッと水着に着替えて、更衣室を後にする。

 

そしてプールに着くと沢山の生徒がいた。しかも隅には上級生が運営している売店もあり、ちょっとした祭りのようにも見える。

 

まあ俺としては流れるプールにてノンビリと流れる事が出来るなら文句ない。

 

そのままプールサイドをノンビリと歩き、流れるプールに入ろうとしたら、とある男子が更衣室から出てくるのが目に入る。

 

(綾小路……まさかこんなところで会えるとはな)

 

堀北会長と凄まじい格闘戦をして、審議では堀北を上手く動かした男……特に有名ではないが俺の勘が強いと言っている。

 

やり合うような真似はしない。俺は別に喧嘩が強いってわけじゃないからな。

 

とはいえ折角会ったのだから、少し探ってみるか。

 

「よう」

 

そう言って話しかけると綾小路は無表情のまま俺を見てくるが、コイツロボットかよ?感情の色が見えない。

 

「確か比企谷だったよな?」

 

「ああ。比企谷八幡だ。今1人か?」

 

「いや、もうすぐ堀北達が来る」

 

なるほどな。そうなると長引くと面倒だし、早めに済ませるか。

 

「そうか。じゃあ単刀直入に言うが、もし俺が2000万用意したらウチのクラスに来ないか?」

 

その言葉に綾小路は目を細める。

 

「どういった意図でそんな提案をしたのか知らないが、俺にそんな価値はない」

 

「お前に価値があるかどうかは、お前自身ではなく第三者が決める事だ。どの道俺としては戦力になりそうな奴をウチのクラスに引き入れたいからな」

 

Dクラスにはカスが多いのは事実だが、全員がカスとは思ってない。内何人かは優秀なヤツもいるだろうし、チェックするのは当然だ。

 

「悪いが遠慮しておく。仮に俺を引き入れたら俺は間違いなく有名人となるが、目立つのは嫌いなんでな」

 

なるほどな。まあ一理ある。仮に2000万払って引き入れた場合、スカウトを受けた生徒は間違いなく目立つし、警戒対象となるだろう。

 

ならば……

 

「……わかった。ならスパイにならないか?今後Dクラスの情報を売ったらポイントをやるからさ」

 

これなら乗ってくるかもしれない。今のDクラスのクラスポイントは75だから、来月振り込まれるプライベートポイントは僅か7500だ。

 

1プライベートポイントは1円と同等だからDクラスの小遣いは月に7500円。無料の食事や道具があるから生活は出来るが、必要最低限の生活だし、色々な欲求が生まれるのは当然だ。

 

その言葉に綾小路は眉を寄せ、なにかを考える素振りを見せたかと思えば俺を見てくる。

 

「……条件次第ならその話を受けても良い」

 

「何だ?ポイントを大量に欲しいのか?」

 

「いや。ポイントについてはそこまで求めてない。由比ヶ浜についてだ」

 

まあそうだろうな。Dクラスの綾小路が出す条件となったらプライベートポイントか由比ヶ浜のどちらかが関係しているに決まっている。

 

そこまで考えていると女子更衣室から見覚えのある女子数人が出てくる。Dクラスからは堀北に櫛田、以前暴力事件の審議の時に俺達の味方になった佐倉がいる。

 

また俺達にBクラスの座を奪われた一之瀬もいる。その後ろにいる女子2人は一之瀬のクラスメイトだろう。

 

向こうも俺達に気付いたのか訝しげな表情を浮かべながらこっちに近付いてくる。

 

「続きは後だ。俺の部屋は503号室だから夜7時に来てくれ」

 

小声でそう言うと綾小路が頷く。それを確認すると同時に女子達がこっちに着くが会話の内容は聞かれてないだろう。

 

「わざわざ呼び止めて悪かったな綾小路。じゃあ俺はもう行く」

 

そう言って切り上げようとするが、進路上に女子達がやって来る。

 

「何だ?逆ナンなら他の男にやれ」

 

「そんなわけないでしょう。綾小路君となにを話したのかしら?」

 

堀北が尋ねてくるが、疑いの色が強い。

 

「別に俺が何を話そうとお前には関係ないと思うが?それに他クラスの人間と話すのがタブーだというなら、まずお前の隣にいる櫛田に文句を言え」

 

実際のところ他クラスと話しちゃいけないなんてルールはないし、仮に話しちゃいけないなら、他クラスに大量の友人を持つ櫛田もルール違反ということになる。

 

「そうね。普通なら気に留めないけど、話す相手が何を企んでるか不気味な貴方なら話は別よ」

 

「失礼な。俺は別に企んでないぞ。企みは龍園の仕事だ」

 

俺は進んで何かをするつもりはない。報酬が魅力的ならば、龍園の企みについてバックアップするだけだ。

 

「つか聞きたいんだったら綾小路に聞けばいいだろ……ま、プライベートな会話にしゃしゃりでるのは人としてどうかと思うがな」

 

言いながら俺はこの場から離れようとするが、ある事を忘れてた。

 

「あ、そうだ忘れてた。一之瀬に提案がある」

 

「提案?何かな?」

 

一之瀬は意外そうな表情で俺を見てくるので俺は口を開ける。

 

「単刀直入に言うが、ウチのクラスに来ないか?」

 

その言葉に騒めきが生まれる。当の一之瀬本人はキョトンとした表情に変わる。

 

「どういう意味かな?」

 

「言葉通りだ。有栖のクラスとタイマンになった場合に備えて戦力の補充は大切だからな」

 

一之瀬はリーダーとしての資質は龍園や有栖に劣っているが、参謀としての力は群を抜いている。龍園が暴れて一之瀬がサポートに徹する体制なら、ウチのクラスはかなり伸びるだろう。

 

まあ十中八九断られるだろうがな。

 

「それは無理な相談だね。私は私のクラスで戦いたいからね」

 

だろうな。少し揺さぶってみるか。

 

「仮にお前のクラスが0ポイント生活になってもか?」

 

「うん」

 

即答……まあダメ元だから特に気にしない。

 

「そうか。変な質問をして悪かった」

 

最後にそう言って俺はこの場を離れる。そろそろ流れるプールに入りたいからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで綾小路君。何を話していたか教えてくれないかしら?」

 

質問ではあるが強い圧力をぶつけてくる堀北に対して綾小路はため息を吐く。

 

「話していたというより質問を受けていたのが正確だ。Dクラスに優秀な奴はいるのか、いるなら誰だって質問をされたな」

 

綾小路は真顔で嘘を吐く。それに対して他の面々は特に疑う様子を見せない。

 

「そう……さっきの一之瀬さんへの誘いといい、優秀な人間を引き入れようとしているみたいね」

 

「でも引き入れるのには2000万ポイントもかかるし、難しいんじゃないかな?」

 

「無人島でAクラスと結んだ契約の正確な内容がわからないから何とも言えないね」

 

堀北達が会話する中、綾小路は去って行く八幡の背中を眺める。

 

(このタイミングで比企谷から接触をされたのは僥倖だな)

 

元々綾小路は自身の平穏の為にクラスを裏切る気であった。Aクラス又はBクラスに「今後行われる特別試験においてDクラスの情報を全部渡すから、由比ヶ浜を暫くは退学させないでくれ」と売り込む事を考えていた。

 

綾小路からしたら平穏な学園生活を送る事が最優先であり、茶柱に脅されている状況を好ましく思っていない。

 

しかし由比ヶ浜の足手纏いっぷりが尋常じゃないので、由比ヶ浜が在学している間は、茶柱に結果を求められる心配もない。

 

だから綾小路は、由比ヶ浜には出来るだけ長く、最低でも2年の中頃までは在学して欲しいと思っている。

 

2年の中頃まで由比ヶ浜が在学していたらDクラスは間違いなく逆転不可能レベルまで落ちぶれていると綾小路は確信している。

 

そしてそんな状態なら茶柱も脅すのをやめてくれる可能性は高い。

 

(そうなれば卒業まで平穏な生活は約束される。だから堀北。オレは今後Dクラスを裏切る)

 

未だに八幡の考えについて考察している堀北達を見ながら綾小路は内心にてそう呟く。

 

綾小路からしたらAクラスは微塵も興味ないのでDクラスがどれだけ落ちぶれようが気にしない。

 

寧ろ裏切る方が魅力的だ。ポイントを貰えたり、由比ヶ浜を長く在学させ尚且つDクラスを叩けば茶柱からの干渉も無くなり平穏な生活を送れるのだから。

 

罪悪感は一切ない。堀北についても櫛田についても、佐倉についても仲間だと思った事は一度もなく、綾小路からしたら道具でしかない。

 

それは比企谷や龍園や坂柳についても同じであり、便利な道具としか思ってない。

 

(恨むなら由比ヶ浜を恨め)

 

綾小路は内心にて最後にそう告げてから堀北達から目を逸らし、ほんやりとプールを眺めるのであった。

 

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