腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「っあ〜、疲れた」
夕方6時。俺は自分の部屋に帰るや否やそのまま冷蔵庫にあるお茶を飲む。元々疲れを取るためにプールに行ったのに更に疲れてしまった。
理由は簡単、飯を食った後は龍園らと行動を共にしたのだが、途中でCとDの連中と鉢合わせしたからだ。
その際に龍園は堀北や一之瀬にセクハラに近い挑発をして、それにより須藤がキレ龍園が更に煽ったりしたからだ。
煽る事そのものを咎めるつもりはない。それも戦術の一つだからな。
ただ俺がいる時にはやめて欲しい。俺は喧嘩が強い訳じゃないし、八つ当たりを食らうのは嫌だしな。
ともあれお茶を飲んだら動かないといけない。7時に綾小路が来るし、8時前にはひよりの部屋に移動しないといけないからな。
俺はお茶を飲むとそのまま風呂場に行き、浴槽を洗ってからお湯を沸かす。ひよりの部屋に泊まるのは承諾したが、ひよりの部屋の風呂を使うのはマズイからな。
予定としては6時半までに風呂から上がって、7時までに晩飯を済ませて、7時に綾小路と話して、綾小路が帰ったらひよりの部屋に行く流れだ。
そう思いながらも俺は水着を洗濯機に入れ、パパッと服を脱いで風呂に入る。身体を洗っている間に風呂は沸くだろうしな。
しかし龍園の奴、マジでぶっ飛んだ誘い方をしやがって……俺が泊まりたいなんてどんなプレイボーイだよ?
身体を洗うと同じタイミングで風呂が沸くのでそのまま入る。それによって疲れが取れてくる。
このままずっとこうしているのも悪くないが、綾小路との話し合いやひよりとの泊まり会が……
『おやすみなさい……八幡君』
……や、ヤバい。頭の中で紫色の薄いネグリジェを着て俺に抱きつきながらお休みの挨拶をしてくるひよりが浮かんでしまった。
抱きつきながらお休みの挨拶をするのは百歩譲ってわかるが、ネグリジェ、それもエロ系は無いだろ!
俺は首を振りながら煩悩を振り払うべく、湯船から上がる。そして身体を拭いて着替えるもネグリジェを着たひよりが頭から離れる事はなかった。
ピンポーン
風呂から上がって20分ちょい、漸く煩悩が弱くなった頃に丁度同じタイミングでインターフォンが鳴る。
モニターでカメラを確認すると案の定、綾小路だったので玄関に向かってドアを開ける。
「わざわざ呼び出して悪かったな。とりあえず入ってくれ」
言いながら廊下を見回すが誰もいないので問題ない。
「邪魔をするぞ」
そう言って綾小路は中に入るので俺は先導して、クッションを出してから冷蔵庫にあるお茶を取り出しコップに注いでそれを渡す。
綾小路がそれを飲んだのを確認した俺は口を開ける。
「んじゃ単刀直入に聞くが、ウチのクラスに情報を渡す条件を話してくれ」
由比ヶ浜に関する事は知ってるが、詳しく聞く前に邪魔者が現れたから昼には聞けなかったんだよな。
「ああ。そっちが同盟を結んだ理由は由比ヶ浜を叩く為だが、暫く……2年の中頃まで由比ヶ浜を退学させないで欲しい」
これは予想外の頼みだな。由比ヶ浜がいる限りウチと有栖のクラスは足並みを揃えられるし、Dクラスの生徒からしたら一刻も早く由比ヶ浜が退学して欲しいはず。
にもかかわらず由比ヶ浜を直ぐに退学させないで欲しい……その事から察するに綾小路はAクラスについて微塵も興味を持ってない事を意味する。
(しかし何故だ?)
由比ヶ浜が苦しむ姿を長く見たいって理由ではないだろう。そんな理由なら態度や目に表れるが、綾小路の目には感情が乗ってないし。
まあ無茶な要求じゃないし俺としてはOKしても良いが……
「話はわかった……が、それを決めるのはあくまで龍園と有栖だから2人の返事次第だ」
俺はリーダーじゃないし、俺の一存で決めていい話でもない。
「ああ。2人には「由比ヶ浜が苦しむ姿を見たい」と言えば納得するだろうな。龍園は知らないが坂柳は間違いなく由比ヶ浜を恨んでいるし交渉の余地はある」
だろうな。有栖は由比ヶ浜に散々ガキ呼ばわりされてるし、嬲りたいと考えているだろう。
「わかった。とりあえず2人には話をしておくが、2人が了承した場合に備えて連絡先を交換したいが……」
「念には念を入れて適当なメールアカウントを作っておく」
俺の言葉を綾小路が引き継ぐ。他人に携帯を見せるつもりはなかろうが、細心の注意を払っておくのは当然だ。
俺達は適当なメールアカウントを作り、そのまま連絡先を交換する。
「今後は極力接点を持たないようにするが良いな?」
「ああ。BクラスのNo.2と話してるのを見られたら間違いなく面倒な事になる。もしもの時は事前に連絡して深夜に会わせてもらう」
ま、それが妥当だな。深夜に非常階段で話せば第三者に聞かれる事はないだろう。
「それと報酬についてだが、特別試験に関するDクラスの情報なら前金で3万、その情報が合っていて特別試験で有利を取れたら試験後に7万で良いか?」
「随分と羽振りがいいか」
「情報は立派な武器だからな」
それに高くはないだろう。もしも優待者当て試験のような試験が今後あれば、何百万のプライベートポイントを稼げる事も容易くなるかもしれないし。
「わかった。それで構わない」
「決まりだな。しかしお前、幾ら勝ち目が薄いから躊躇いなくクラスを売るなんて中々やるな」
「オレは外部との接触が制限されている事を理由に入学したからな」
なるほどな。俺も同じ理由だし、中学時代に色々あったのだろう。まあ俺の場合は雪ノ下と由比ヶ浜も同じ学校に入学して最悪だけど、
そこまで考えていると綾小路は立ち上がる。
「話はついたしオレは帰る」
「わかった……っと、バレたら面倒だから俺が先に行く」
そう言ってから俺も立ち上がり、玄関に向かう。そしてドアを開けて廊下を見るが人はいない。
同時に綾小路にアイコンタクトを送ると綾小路は頷き、俺の横を通って、非常階段の方へ向かう。
綾小路が見えなくなったのを確認した俺はドアを閉めて、ポケットから携帯を取り出して有栖に電話をかける。
『もしもし。どうしましたか八幡君』
「実は有栖に頼みがあるんだが、良いか?」
『はい。何でしょう』
「実はDクラスにいる生徒の1人をスパイに仕立て上げる事に成功したんだよ」
『そうでしたか。そうなるとDクラスの情報をAクラスにもくれるのですか?』
「渡しても良いんだが、そのスパイから『由比ヶ浜が苦しむ所を見たいから、すぐに退学させないで嬲ってくれ』って頼まれたんだよ」
まあ実際綾小路がそう思っているとは思わないが。アイツの目を見る限り全く興味なさそうだし。
『なるほど。まあ良いでしょう。私としても真綿で首を絞めるのも嫌いじゃないですから』
有栖はドSだから、やっぱり乗ってきたか。
「悪いな。じゃあまた明日から宜しく頼む」
『ええ。何でも二学期からは体育祭があるようなのでルールが判明次第、足並みをそろえていきましょう。失礼します』
有栖はそう言って通話を切る。それを確認した俺は携帯をポケットにしまい、リビングに戻り明日の準備をする。今日はひよりの部屋に泊まるので、明日はひよりの部屋で朝を迎える。
もしかしたら寝不足になる可能性があるので支度は今日のうちに済ませておきたい。
準備を済ませた俺は部屋を出てエレベーターではなく、非常階段を利用してひよりの部屋に向かう。万が一見られたりしたら絶対に面倒な事になるからな。
そう思いながらも階段を上り続けていると、上の方から微かに足音が聞こえてくる。まさか俺以外に非常階段を使う奴がいるとはな。
と、ここで俺は掃除具が入っているロッカーが目に入ったので中に入ってドアを閉める。誰が降りてくるかはわからないが、1年生寮である以上知った顔の可能性が高い。
息を殺して待機していると足音が大きくなり、それに連れて声も聞こえてくる。
「大丈夫よ由比ヶ浜さん。明日もしも由比ヶ浜さんを悪く言う人が出てきたら、学校に苛めについて報告すると脅すわ。苛めはクラスポイントに悪影響である以上、収まるはずよ」
「ありがとう……迷惑かけてごめんねゆきのん」
「貴女は私の親友だから当然よ。だから由比ヶ浜さんは早く立ち直って、あの屑3人を潰すのに協力して」
「もちろんだよ!あたしは何にも悪いことをしてないのに……絶対に許さないし!」
お前らかよ……
2人が通り過ぎるまで息を殺す。多分エレベーターを使ってクラスメイトと会った時に備えた雪ノ下の配慮だろう。
(しかし龍園や有栖を潰せると思うなんておめでたい頭をしてるな)
龍園や有栖がお前らが勝てる程度の実力ならDクラスはとっくの昔にAクラスに上がってるわ。
内心呆れながらも2人が離れるのを待ち、話し声が聞こえなくなったタイミングでロッカーから出て、再度階段を上る。
そしてひよりの部屋がある階層に着いたので、廊下に繋がるドアを開けて人がいない事を確認してから廊下に出る。
音を立てないように注意しながらも遂にひよりの部屋の前に到着したのでインターフォンを押す。
すると部屋からパタパタと足音が聞こえてきて……
「お待ちしてましたよ、八幡君」
ひよりが満面の笑みを浮かべて俺を迎えてくれた。
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