腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
5月1日、朝起きて直ぐに学生証端末を取り出してポイントを確認すると、123985ポイントと表示されていた。昨日までは7万4千ちょっとあったので、その事から察するに支給されたポイントは49000だと思う。
すると端末に着信が来たので画面を見ると坂柳からだった。
「もしもし?」
『おはようございます比企谷君。いきなりですがポイントは幾ら振り込まれていましたか?』
「4万9千。そっちは?」
『9万4千ポイント入ってましたね』
マジか?殆ど減ってねぇじゃねぇか。やっぱりAクラスが優秀でBクラス、Cクラス、Dクラスの順で格付けされているのだろう。
「そうか。そっちはともかくウチのクラスは荒れそうだな」
『Cクラスはまだマシでしょう。私は今寮のエントランスに居ますが、ポイントが振り込まれてないと喚いているDクラスの男子がいました』
つまりDクラスは0ポイント支給されたって事か。そりゃ喚くな。
「まあ詳しい事情は学校でわかるだろ。悪いが俺まだ飯も着替えも済ませてないから切るぞ」
『わかりました。では後ほど』
通話を切って俺はパパッと着替えて、冷蔵庫にある無料食品を使って調理を始める。
さて、教室はどうなってるやら……頼むから騒いでるなよ。
30分後……
学校についた俺はCクラスの教室に向かう。と、そこで聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「やっぱり由比ヶ浜さんも振り込まれてないのね」
「うん。あたし後2000ポイントしかないのに……」
チラッと横を見ると雪ノ下と由比ヶ浜がそんな話をしているが、由比ヶ浜は入学してから今日までの3週間ちょいで10万近く使ったようだが金遣い荒過ぎだろ?馬鹿か?ここで無駄遣いを覚えたら社会に出て大変なのに
まあ関わったら面倒だから口にはせず廊下を歩くとDクラスからは騒ぎ声が聞こえてくる。まあ0ポイントらしいからな。
そしてCクラスに入るとDクラスに比べたらマシだが多少騒いでいる。
まあ何で10万ポイント振り込まれてないのかではなく、ポイントが予想よりも少ないって声だ。つまり皆、ポイントが減る事は可能性として考えていたが、ポイントの減り具合に驚いている感じだ。
「おはようございます比企谷君。大方予想通りポイントが減りましたね」
「ああ。ま、ある程度ポイントが貰えて何よりだ」
5万ポイント飛んだのは大きいが、それでも月に5万近く貰える。
実際俺が入学してから今日まで使ったポイントは2万5千程度だし、その事を考えたら1ヶ月5万は小遣いとして文句ないだろう。
「そうですね。しかしDクラスの生徒は大丈夫なんでしょうか?朝からポイントが振り込まれていない、ジュースを買えないなどの声を聞きました」
「計画も立てずにポイントを浪費した馬鹿の自業自得だ」
普通ある程度は貯金するだろうに。備えあれば憂いなしって言葉を知らないのか?
「ところで椎名。5万とはいえポイントが入ったし今日は本屋に行かないか?」
椎名とはお互いに違う本を買って、お互いにシェアする約束をしている。それにより俺達は本5冊分のポイントで10冊の本を読む事が出来る。
俺の言葉に椎名は嬉しそうに頷く。普段は無表情に近い椎名だが、本の話になると凄く可愛い笑顔を見せてくる。
「はいっ。お互いに5冊ずつ、計10冊買うのはどうでしょうか?」
「そうしようか」
椎名の提案に頷くとチャイムが鳴り坂上先生が入ってくる。しかしいつもより若干険しい表情だ。
「諸君おはよう。朝のHRを始める。しかしその前に質問を受け付けようか。質問がある生徒は手を挙げてくれ」
あらかじめ来るだろうと予測していなければ出来ない言葉だ。その事から判断するにポイントについての説明はこの場で行うのだろう。
対する生徒らは沈黙している。ポイントについて事情を把握しているから質問しないのか坂上先生の冷たい声に気圧されているのかわからない。
「ふむ。どうして10万ポイント振り込まれてないのか、という質問が来ると思ったんだが……今年のCクラスは優秀な生徒が多いようだ」
事前に龍園が質問してなかったら今質問している奴がいたかもな。
「では改めてポイントについて説明する前にまずはこれを見て欲しい」
坂上先生はペンを出すとホワイトボードに何かを書き始める。
暫くすると各クラスとcpという単位で表されたポイントが書かれていた。
Aクラス 940cp
Bクラス 650cp
Cクラス 490cp
Dクラス 0cp
Cクラスは490……cpの意味はわからないが、cpの100倍ポイントが貰えるんだろう。
「まずはcp……クラスポイントというものを説明しよう。この学校はリアルタイムで生徒の実力を測り、数値化する。要するにポイントはこのクラスの実力と思ってくれて構わない」
やはりクラス全体の評価が実力か。
「入学当初、各クラスにはあらかじめ1000クラスポイントが支給されている。そして君達の生活態度を査定、評価して、問題行動をとっている所を確認したら1000クラスポイントから減点するという減点方式の採点を行っていた。 のだよ。そして1クラスポイントにつき100プライベートポイントが支給される。君達のクラスポイントは490だから49000プライベートポイントが支給されているということになる」
「おい、先生。ポイントが減った詳細を教えてくれよ。何やったら何ポイント引かれるみたいによ」
するとクラスのリーダー格の龍園が机に足を乗せながら質問する。今は授業ではないから問題ないと判断したのか?
「残念ながらそれはできない。人事考課、詳しい査定内容を教えないという方針にしている。まあ私個人からヒントを言っておこう。なぜ減ったのかというと一部の生徒が当たり前の事を当たり前に出来ていなかったからだ」
「はっ、なるほどな。ようするに西野が携帯をいじっていたり、小宮と近藤が授業中に駄弁ったように、ふざけた生活態度をとった奴らのせいでポイントが下がったわけか」
龍園はケラケラ笑いながら名指しをする。名指しされた生徒はバツの悪そうな表情を浮かべている。
そして坂上先生の話と龍園の会話から皆ポイントが減った理由を察しただろう。授業を真面目に受けるという当たり前の事を当たり前に出来なかったからポイントが減ったのだろう。
「学校側は君達の生活を基本的に否定するつもりはない。遅刻や私語、授業のサボりのツケは後で回ってくるだけの事。特に今年のDクラスは遅刻欠席を100近く、授業中の私語や携帯いじりを400回近くやらかして、歴代最低の記録を叩き出した」
坂上先生は遠回しに肯定するが、Dクラスの連中はどんだけやらかしたんだ?ウチのクラスもそれなりに私語をしていたが400回は無いし、遅刻欠席は精々5、6回だぞ。
「だがよ先生、俺や比企谷や椎名あたりは真面目に授業を受けてポイントを減らすような行動をしてないのに、この仕打ちはあんまりじゃねぇか?」
すると龍園はそんな事を言う。これは恐らく今後の布石の為だろう。
「確かに一切ポイントの減点対象となってない生徒はそれなりにいるが、この学校では連帯責任だ」
「なるほどな。真面目に授業を受けていた生徒からすれば良い迷惑だな」
龍園は笑い、不真面目な態度を取っていた生徒に向けて罵倒する。それによりクラスにいる何人かは悔しそうな表情を浮かべるが、反論は出来ない。何故なら龍園が言っている事は紛れもない事実であり、言っている龍園本人も授業は真面目に受けていたからな。
そしてこれは龍園がCクラスの頂点に立つ為の布石だ。今の発言で悔しそうな表情を浮かべた生徒はポイントを減らした要因って事で今後クラス内での立場が低くなるだろう。中には不良っぽい奴もいるし、必然的に龍園が上に立つ可能性が上がる。
というか十中八九龍園がボスになるだろう。クラス内でも強いであろう石崎やアルベルトは既に龍園の下についてるし。
「話を進めようか。既に気付いている生徒もいると思うが、この学校のクラス分けは大手の塾でよくあるように優秀な生徒から順にAクラスに分けられている。そして君達はCクラス、つまり学校側からは平均よりやや下の評価をされたクラスというわけだ」
その言葉に一部の生徒が不満を露わにするが、俺からしたらDクラスに配置されなかったと若干驚いている。俺は客観的に問題児であろうから多分Dクラスに近いCクラスの生徒だと思う。まあCクラスで良かった。幾ら節約してもポイントが一切支給されないってのは嫌だからな。
「そう怒らないでくれ。今はCクラスであるが、これから努力すればBクラスにもAクラスにも上がれる可能性がある。クラスポイントはクラスのランクにも反映していて、もし君達のクラスポイントが651ポイント以上なら君達はBクラスに昇格して、今のBクラスはCクラスに降格する」
やはり下克上制度はあったか。色々と面倒そうな学校だな。
しかし気になる点がある。
「先生、質問良いですか?」
「今度は比企谷君か。何かね?」
「BクラスやAクラスに上がった場合のメリットはなんかあるんですか?例えば昇格ボーナスとしてプライベートポイントが大量に支給されるみたいな」
「それは今から君達には伝えなければならない事だがこの学校は進学率、就職率100%を誇るが、それは卒業する時にAクラスに在学している生徒のみだ」
今度はクラス中がざわめき出す。まあクラスメイトの大半は進学率や就職率を選んでこの学校に来ただろうに、今の発言は根本的に否定したものだ。
「なるほど。つまり大半の生徒が進学希望した理由を叶える為にはAクラスに上がれって事ですね」
「その通りだ。以上でこの学校の仕組みについての説明は終わりだが、次にこれを見てもらおうか」
坂上先生は鞄から白い紙を取り出し広げ、ホワイトボードに貼る。
そこに載っていたのは先日行った小テストの結果だった。名前と点数が書かれていることから全員の結果がハッキリと見れるようになっており、1番高い生徒を左上に書きそこから順々と下がりながら全員の成績が表示されている。
1位が椎名の95点で2位が金田の90点。つまりこの2人は最後の難しい問題を解けた事を意味する。
そして俺を含め15人近くが85点だった。これは最後の3問以外解けた生徒だろう。
そんで60点台も結構いて、ビリは石崎の35点だった。平均点は70前半くらいだろう。
「平均点は72.3点だ。赤点は平均点を2で割った点数で小数点以下は四捨五入するから今回の赤点ラインは36点だから石崎君は赤点だ。まあ今回は成績表に影響しないテストだからペナルティはないが、次回以降中間や期末では赤点を取らないように頑張りたまえ」
「赤点を取るとどうなんだ?クラスポイントが減るのか?」
「今後中間試験や期末試験で1科目でも赤点を取ったものは即退学となる。これについては君達も深く理解して欲しい」
龍園の問いに坂上先生がそう答える。同時に教室が一層騒つく。騒ついてるのは赤点の石崎を筆頭に50点以下の生徒だった。
確かに赤点1つで退学ってのは少々厳しいだろう。俺も数学はしっかり勉強しとこう。受験に備えて死ぬ気で勉強したとはいえ得意ってわけじゃないし。
「これについて脅しじゃない。嘘だと思うなら上級生に退学になった人がいるかを聞いてみるといい。質問がないなら今日のHRを終わりにする。出来ることなら1学期早々退学者が出ないように頑張って欲しい。君達が赤点を取らずに済む方法はあると確信している。では解散してくれ」
言うことを言うと坂上先生は教室を出て行くが、クラスの騒ぎは大きくなる。
その後、1限の先生が来ると静かになるが、殆どの生徒は落ち着いていないまま授業を受けるのだった。
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