腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「ん、んんっ……」
良い匂いがしたので目が覚める。窓を見れば朝日が部屋を照らしている。
匂いがする方向を見れば……
「あ、おはようございます八幡君。朝食はもうすぐ出来ますよ」
エプロンを着たひよりが笑顔で挨拶をしてくる。そんなひよりに見惚れながらも俺は昨夜ひよりの部屋に泊まった事を思い出した。
同時に顔が熱くなる。俺は昨日、友人としてか異性としてかはわからないが、ひよりの事が好きである事を強く自覚したのだ。そんな彼女が朝から迎えてくれるとなれば恥ずかしい。
ともあれ挨拶をされた以上、こちらも挨拶を返さないといけない。
「おはようひより。わざわざありがとな」
「私は自炊をしてますから気にしないでください」
ひよりはそう言って皿に料理を盛り付けるので、俺は皿や食器をテーブルの上に運ぶ。
全ての料理を運び終えると、ひよりはエプロンを脱いで俺と向かい合う。
「では……頂きます」
「頂きます」
挨拶をして食べ始めるが凄く美味い。ひよりの作る飯は何度も食ったが全く飽きる気はしない。
「どうですか?お口に合いますか?」
「凄く美味い。ひよりは将来良い嫁になるだろうな」
見た目も性格も良く、料理の腕もあるし、ひよりの夫になる男はそれだけで人生の勝ち組になるだろう。
そう思っているとひよりは頬を染めて俺をチラチラ見てくる。そんなひよりらしからぬ行動に戸惑ってしまう。
「どうかしたか?」
「い、いえ。何でもありません」
ひよりはテンパりながらも何でもないと返してくる。何でもないって事はないだろうが、本人がそう言うならばこれ以上聞くのは無粋だな。
そう判断した俺は食事を再開するのだった。
(良いお嫁さん……八幡君のお嫁さんに……)
10分後……
「じゃあひより。また学校で」
「はい。また学校で」
飯を食った俺はひよりと挨拶を交わしてひよりの部屋を出て、非常階段を使って階層を下る。
そして自分の部屋にある階層に到着したのでドアを開けると……
「「あ」」
何と廊下に有栖がいて鉢合わせしまった。予想外の邂逅に驚く中、有栖は楽しそうに笑いながら近寄ってくる。
「おはようございます八幡君。非常階段を使うとは珍しいですね。もしかして椎名さんの部屋に泊まっていましたか?」
え?何でわかったの?もしかしてひよりの部屋に出入りする所を見られたのか?
疑問に思っていると有栖はクスリと笑う。
「ふふっ。冗談で言いましたが、真実みたいですね」
ハッタリかよ?!畜生、的確だったら黙っちまったが、シラを切るのが正解だったようだ。
「頼む。黙っといてくれ」
夜8時以降、男子が女子エリアに行くのは校則違反だ。龍園は怒らないと言ったが、第三者に知られたくないからな。
「良いですよ。ただし条件として私ともお泊まり会をしてください」
「待て。校則違反をした俺が言うのもアレだが、だからって校則違反を勧めるな」
それで罰を受けるのは俺だからリスクがデカ過ぎる。
「問題ありません。男子が20時以降に女子エリアに行くのは校則違反ですが、その逆は校則違反ではないので私が八幡君の部屋に泊まります」
な、なるほど……確かに女子が夜8時以降に男子エリアに行ってはいけないなんて校則はないな。つかそれを理解できりゃ、ひよりを俺の部屋に呼ぶべきだったな。
話を戻すが、有栖の性格的に断るのは無理だろう。
「わかったよ。好きな日を指名しろ」
「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
有栖はそれはもう良い笑顔でお礼を言ってくる。コイツには一生勝てる気がしないな。
「というかお前は何か用事があったのか?」
「はい。八幡君と一緒に学校に行きたくなったので迎えに来ちゃいました」
「物好きな奴だな。まあとりあえず上がれ」
「お邪魔します」
言いながら俺は自分の部屋のドアを開けて有栖を迎え入れると、有栖は丁寧に礼をして部屋に入る。
「朝のHRまで時間があるし、茶でも飲むか?」
「では紅茶をお願いします」
有栖を座らせてからキッチンに立ち、お湯を沸かし始める。
「それにしても今日から2学期ですが、楽しい事があると良いですね」
「そうだな。ま、お前の場合、体育祭に参加出来ないから最初は楽しめないかもな」
「そうでもありません。Dクラスを潰す戦略を練る際に楽しめれば大丈夫です」
ま、有栖ならそう考えるな。そんで龍園も色々悪巧みをするだろうし、Dクラスは阿鼻叫喚と化しそうだ。
っと、龍園で思い出したが、自分の仮IDに税金として3万入れないとな。
そう思いながら俺は携帯を取り出して、仮じゃない方のIDを確認すると、昨日より60万以上増えている。これは毎月学校から支給されるポイントに加え、無人島試験の件で龍園から毎月58万5千ポイントを貰う契約を結んだからだ。
そして俺はその中から3万ポイントを自分の仮IDに移す。仮IDを見れば296万ポイント入っている。
税収制度は優待者当て試験が終わってから始めて、優待者当て試験で稼いだポイントの中から200万を俺の仮IDに入れ、毎月1人当たり3万振り込む事が決まっている。
そんで296万入ってるって事は32人が今月分の税金を納めた事を意味する……あ、今ちょうど299万になった。
そこまで考えているとお湯が沸いたので有栖の為に紅茶を淹れて、俺は日本茶を淹れ、テーブルに持って行く。
「どうもありがとうございます」
有栖は礼を言ってからチビチビ飲むが、普段クールな有栖がそんな風に飲むと子供っぽく見えて癒されるな。
「何か失礼な事を考えましたか?」
「いや、全く」
「……まあ良いでしょう。ですが失礼な事を考え続けた場合、お仕置きをしますからね?」
「お仕置きって何だよ?」
「そうですね……食堂で八幡君の唇にキスを……」
「止めろ。絶対止めろ」
そんな事をされたら俺は悶死してしまうだろう。
「冗談です」
「タチの悪い冗談は止めろ……つかキスをするとか言ったが、あの時にチキったお前には無理だろ?」
「ご冗談を。八幡君が怖気付いたのでしょう?」
「まさか」
有栖は心外とばかり言ってくるが、有栖のほうが早くビビったと俺は考えている。
そこまで考えていると有栖は口を開ける。
「でしたら証拠を示しましょう」
言うなり有栖は俺に近寄り……
ちゅっ
頬にキスをしてくる。それを理解すると俺の顔が熱くなってくる。
「っ!い、いきなり何を……!」
対する有栖は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「ふふっ。頬にキスをされただけで慌て過ぎですね。それだけの慌てようならば、私にキスをされそうになったら逃げるでしょうね」
そういう事か。やってくれたなオイ。
「やはりあの時は八幡君が怖気づいたみたいですね」
有栖がドヤ顔を浮かべてくる。ぶっちゃけイラッとした。
(いつもいつも有栖にはマウントを取られっぱなしなのは納得いかない……偶には反撃するか)
そう判断した俺はドヤ顔を浮かべる有栖に近寄り、いつもやるように有栖をギュッと抱きしめる。何十回も抱きしめたから恥ずかしい気持ちはない。
そしてそのまま有栖が俺にやったように有栖の頬にキスを落とす。どうにも有栖が相手だと負けっぱなしは嫌だ。
「は、八幡君っ?!」
有栖は真っ赤になってテンパりだす。
「随分テンパってるな」
そう言うと有栖はハッとした表情になってから、睨みつけてくる。ブーメランが返ってきた怒りはデカいようだ。
「……言ってくれますね。でしたらもう一度勝負をしましょうか?」
勝負とはプリクラの一件についてだろう。
俺としてはそれでも構わないが……
「そうしたいのは山々だが、遊んでるうちに朝のHRまで15分を切ってるからまた今度な」
時計を見ればかなり進んでいた。これ以上遊んでいたら遅刻……いや、有栖は足が不自由だから遅刻するだろう。
「あっ、そうですね」
「まあ遊びに関わった詫びとして学校まで運んでやるから安心しろ」
「お心遣いありがとうございます。お言葉に甘えます」
言いながら俺は日本茶を飲み干して、火の元を確認してから鞄を肩にかけてから有栖をお姫様抱っこして部屋を出た。
そしてそのまま学校までお姫様抱っこを続けたが、遅刻ギリギリであったことから、他の生徒に見られずに済んだのは不幸中の幸いと言えるだろう。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
-
はい。
-
いいえ