腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「んじゃここで降ろすぞ」
朝のHRが始まる3分前、俺は誰も居ない階段の踊り場にて有栖を降ろす。ここからなら有栖も遅刻しないで自分の教室に行けるだろうし。
「わざわざありがとうございます……んっ」
「ちょっ!」
すると有栖は再度俺の頬にキスをしてくる。同時にまた顔に熱が生まれる。
「ふふっ、やっぱり照れてる八幡君は可愛いです「お返しだコラ……んっ」ひゃあっ!」
お返しに有栖の頬にキスをすると有栖はさっきのように慌てだす。最早俺の中でコイツに対するキスは愛情表現ではなく、マウントを取るための武器となっているので恥ずかしいと思わない。
「じゃあまたな」
俺はジト目で見てくる有栖に会釈をしてから自分の教室に向かう。そして教室に入ると殆どの生徒が揃っていた。
「よう比企谷。お前にしちゃギリギリだな。ひよりは既にいるから泊まりに関する事が理由じゃないが、何かあったか?」
最初に話しかけてきたのはドアの近くにいた龍園だった。
「単純に忘れ物だ。校門をくぐる直前に筆箱を忘れてるのに気付いた」
「ご愁傷様だな。まあそれはいい。それより税金は入ってるか?」
「部屋を出る直前に299万入ってたし大丈夫だろ……ああ、問題ない」
仮IDを表示して龍園に見せる。そこにはちゃんと320万のプライベートポイントがある事が表示されている。龍園含み全員が納税したようだ。
「それと比企谷。放課後坂柳と取り引きをする予定だからお前も来い」
「体育祭に関してか?」
「同盟についてだ。まあ体育祭のルール次第ではそれも取り引きするがな」
そこまで話しているとチャイムが鳴ったので、俺達は席に座る。
そしてチャイムが鳴り終わると同時に坂上先生が入ってくる。手元にはプリントや丸まった巨大紙があるが、体育祭に関する内容だろう。
「おはよう諸君。今日から君達はBクラスだが、この調子でAクラスを目指して欲しい」
坂上先生はそう言ってから丸まった巨大紙を広げて黒板に貼る。そこは9月最初時点のクラスポイントだった。
Aクラス 1164ポイント
Bクラス 816ポイント
Cクラス 721ポイント
Dクラス 51ポイント
そう表示されている。優待者当て試験が終わった時点では……
Aクラス 1174ポイント
Bクラス 836ポイント
Cクラス 734ポイント
Dクラス 75ポイント
で、あり全クラスポイントが減っているが、これは夏休みにおいて素行などが原因だろう。
そして減点部分についてだが、Aクラスが10、俺達Bクラスが20、Cクラスが13、Dクラスが24ポイントである。要するにウチのクラスとDクラスはかなり素行が悪いってことになる。
まあ大した問題じゃない。Cクラスとはまだ100近く差があるからな。
「さて、クラスポイントの発表も終わったから連絡事項に移らせてもらう。今日から二学期が始まったわけだが、今日から1ヶ月間、体育祭に向けて体育の授業が増えることになるので新たな時間割を配布する。付け加えて体育祭の資料も配布するので、確認しておくように」
坂上先生はそう言って時間割と体育祭の資料を配り始める。
資料を受け取った俺は資料を読み始める。
それによれば今回の体育祭は全生徒を2つの組みに分けて勝負することになっていて、俺達Bクラスは白組でCクラスと組み、赤組に所属するAD連合と戦うようだ。
厄介なことになったか。同盟を結んでいるウチとAクラスが敵同士とはな。しかもそうなると一緒に戦うCクラスは俺達に疑いを持ってもおかしくない。
(まあ決まったものは仕方ない。その辺りは龍園に任せよう)
そう思いながらプリントを読み進める。
・全員参加競技の点数配分
1位15点、2位12点、3位10点、4位8点、5位以降は1点ずつ下がっていく。団体戦の場合、勝利した組に500点が与えられる。
・推薦参加競技の点数配分
1位50点、2位30点、3位15点、4位10点、5位以降は2点ずつ下がっていく。最終競技のリレーでは3倍の点数が与えられる。
・赤組対白組の結果について
全学年の点数を総合して負けた組のクラスは等しく100クラスポイント引かれる。
・学年別順位が与える影響
1位のクラスには、50クラスポイントが与えられる。
2位のクラスのクラスポイントは変動しない。
3位のクラスは、クラスポイントが50引かれる。
4位のクラスは、クラスポイントが100引かれる。
1ページ目に書かれていることは大体こんな感じだ。とりあえずマイナス要素がありまくる。
仮にウチのクラスが4クラスの中で1位を取っても、白組が負けたらマイナス50ポイントになる。
逆4クラスの中でビリになり、尚且つ白組が負けたらマイナス200ポイントと悲惨な事になる。
まあウチのクラスには運動神経が良い奴はそこそこ揃ってるからビリはないだろう。
ため息を吐きながらも次のページをめくる。
・個人競技の報酬
各競技で上位を獲得した生徒には、以下の報酬が与えられる。
1位を獲得した生徒には5000プライベートポイント、又は筆記試験における3点分の点数が与えられる。
2位を獲得した生徒には3000プライベートポイント、又は筆記試験における2点分の点数が与えられる。
3位を獲得した生徒には1000プライベートポイント、又は筆記試験における1点分の点数が与えられる。
(筆記試験における点数は次回中間テスト時のみ使用可能とし、他人への譲渡は不可能である)
各競技で最下位を獲得した生徒は、1000プライベートポイントのマイナスを受ける。
(所持ポイントが1000ポイント未満である場合、筆記試験における点数を1点減点する)
・成績優秀者の報酬について
全生徒の中で最も高い得点を獲得した最優秀生徒には、10万プライベートポイントが与えられる。
学年別で、最も高い得点を獲得した優秀生徒上位3名には、それぞれ1万プライベートポイントが与えられる。
(最優秀生徒に選ばれて10万ポイントの贈与を受けた者には、学年別の報酬は与えられない)
・反則事項について
各競技のルールを遵守すること。違反者は失格同様の扱いを受け、悪質な者については退場処分や、それまでの獲得点数を剥奪する場合もある。
報酬に点数があるのは予想外だ。要するに石崎みたいに運動能力はあるが馬鹿からしたらチャンスだ。
一方ひ弱な金田みたいに学力はあるが運動能力が低い生徒は次回の中間で順位を落とすだろう。
ただ不安なのが最後の一文だ。
・体育祭終了後、全競技で獲得した点数を学年別で集計し、下位10名にはペナルティを課す。ペナルティの内容は学年ごとで異なる場合があるため、各自担任に確認すること
下位10人に入らないとは思うが、かなり重い罰だろうな。
「坂上、下位10人に与えられるペナルティはなんだ?」
龍園も気になったのか質問をする。
「1年生に課されるペナルティは、筆記試験における10点の減点だ。どのような形で減点されるかについての質問はここでは受け付けない。試験時に下位10名とともに通告する決まりになっている」
「まじかよ!?」
クラスから騒めきが聴こえてくるが、実際かなり重いペナルティだ。
まあ俺はそんなペナルティを受けることはないだろう。同時に上位に入ることもないだろうがな。
そう思いながらも資料を読み進めると、競技に関する説明がある。
全員参加競技
・100m走
・60mハードル走
・男子棒倒し
・女子玉入れ
・男女別綱引き
・障害物競走
・二人三脚
・騎馬戦
・200m走
推薦参加競技
・借り物競走
・四方綱引き
・男女混合二人三脚
・3学年合同1200mリレー
全員参加競技は、文字通り全員に参加が義務付けられる競技。つまり少なくとも9競技には強制的に出場と中々ハードだ。
「それから非常に重要なことを話すが、今回の体育祭では競技に参加する順番を全て自分たちで決め、この参加表に記入して担任の私に提出する」
参加する順番も俺達が決めるのか。中学時代は出席番号順だったから中々新鮮だ。
「どの競技の何組目に誰が参加するかまで、全て君達自身で決めてもらう。提出期限は体育祭の1週間前から前日の午後5時までで、それ以降は如何なる理由があっても変更は受け付けない。また、提出期限を過ぎた場合はランダムで組まれるので注意するように」
坂上先生が話を終えると龍園はニヤリと笑う。大方Dクラスの参加表を手に入れて本番でボロカスにするつもりだろう。
まあ俺としても綾小路から情報を貰う気満々だがな。
「質問してもよろしいでしょうか。当日、欠席者が出た場合はどうなるのでしょうか。団体競技の場合、競技そのものが成立しない場合があると思いますが」
金田がそんな質問をする。まあ確かに騎馬戦とかで欠席が出たら問題だな。
「全員参加競技では必要最低限の人数が確保できない場合、失格だ。例えば二人三脚の場合なら一組少ない状態で臨むことになるし、騎馬戦なら騎馬が1つ欠けた状態で参加する。ただし推薦参加競技の場合は救済措置がある。1人につき10万ポイントを支払うことで代役を立てることを認めている」
こういう時に俺の仮IDに入っているポイントを使うんだろうな。
「他に質問がないならここで打ち切る。次の時間は第一体育館に移動し、他学年との顔合わせとなるが、それまでの時間はお前達の好きに使うといい」
坂上先生がそう言って話を打ち切ると、龍園が教卓に座って俺達を見据える。
「全員聞け。前回の船上試験では坂柳と協力したが、今回も同じように協力してDクラスを徹底的に叩く」
「でも龍園さん。その為にはDクラスの参加表を手に入れないといけませんよ」
「石崎、テメェに言われなくてもわかってる。が、安心しろ。既に参加表を手に入る算段はついている」
龍園の言葉に教室から騒めきが聴こえてくる。まあ説明を受けて直ぐに参加表を知れるなんて言われたらそうなるわな。
「参加表を手に入れたらそれに合わせて調整する。Dクラスの早い奴には雑魚を、遅い奴には普通の奴を、普通の奴には早い奴をぶつけてDクラスを最下位に落とす」
Dクラスの参加表をAクラスと共有すれば、Dクラスは2位以上になる事はないからな。
「まあ細かい作戦については情報が集まり次第説明する。それと比企谷」
と、ここで龍園に呼ばれる。
「何だよ」
「今後一之瀬は話し合いを持ちかけるだろうがお前が応対しろ。俺が話し合いに参加したら疑いを持たれる」
まあ龍園が話し合いに参加したら誰だって警戒するな。俺も警戒される可能性はあるが龍園よりはマシだろう。
「了解した」
そう返事をする。
さてさて、本番ではいい結果を残せるとは思えないが、それまでの準備は色々大変そうだし頑張らないとな。
そう思いながら俺は色々な作戦を頭の中で思い浮かべるのであった。
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