腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
体育祭に関する説明を受けた俺達は顔合わせの為に体育館に向かう。
そして赤組白組に別れて待機するが強い視線を感じる。
それは近くで待機している一之瀬らCクラスの連中からだ。一之瀬のクラスは元々Bクラスだが、入学当初からウチのクラスに喧嘩を売られ、挙句夏休みには俺達にBクラスの座を奪われてCクラスに落ちたからな。敵視されてもおかしくない。
一方の龍園は敵意を浴びても平然として、舌を出しながら一之瀬に中指を立てる。それにより一之瀬の周囲にいる女子が詰め寄ろうとするが一之瀬が止める。
というか龍園の奴、同じ白組にケンカを売るなや。
内心呆れていると体育館が徐々に静かになってきたので前を見ると、上級生とみられる生徒数名が壇上に立っていた。
そして完全に静まると大柄な男子が2人前に出る。
「俺は3年Aクラスの藤巻だ。今回、赤組の総指揮を執ることとなった」
「白組の指揮を執る石倉だ」
へぇ、赤組の指揮は堀北会長が執るかと思ったが違うようだ。
「1年生に1つアドバイスをしておく。一部の連中は余計な世話だと思っているかもしれないが、この体育祭は非常に重要なことだということを肝に銘じておけ。この経験は必ず次に活かされる。これからの試験は一見遊びのように思えるものもあるかもしれないが、それら全てが、例外なくこの学校での生き残りをかけた重要な戦いとなる」
随分と曖昧なアドバイスだな。先生もそうだが、この学校にいる人って遠回しに言い過ぎだろ。とりあえず今後は退学する可能性のある試験が出て来るし、注意しろってことだろう。
「今はまだ自覚がないかもしれない。だが、やる以上は勝ちに行く。それだけは肝に命じておけ」
ま、その気持ちは持っておかないといけないものだよな。
「全学年合同のリレーを除き、競技は学年別だ。残りの時間は学年に別れた方針についての話し合いを好きにやってくれ」
そう言って、壇上にいる先輩方は集団へと引っ込んでいった。指示通り、学年ごとに分かれた集団が形成される。
同時に一之瀬が自分のクラスメイトを連れてこっちにやって来る。対する龍園は面倒臭そうに一之瀬に話しかける。
「話は比企谷としろ」
「龍園君はしないのかな?」
「こっちは善意で言ってんだぜ?ルールを平気で破る俺が話し合いに応じてもお前らが信じるとは思えない。なら比企谷を代理にした方が合理的だろ」
まあ間違っちゃいないな。龍園が話し合いに参加しても絶対に向こうは警戒心剥き出しで、マトモに話し合いにはならないだろう。
俺も警戒されているだろうが、龍園に比べたら遥かにマシである。
「なるほどー。時間の無駄を省くためなんだねー?」
「そういうことだ。感謝するんだな」
龍園は笑っているが自慢することじゃないからな?
「じゃあ比企谷、後は任せた。行くぞお前ら」
龍園はそう言って俺以外のメンバーを連れて去って行く。そんな行動にCクラスが唖然とする中、俺は口を開ける。
「さて、そんじゃ話し合いをするが構わないか?」
「それは良いけど、1人で良いの?」
「問題ない。今回Cクラスとの話し合いについては龍園に一任されてる。それにお前らのクラスだって話し合いに参加するのは精々主力の3、4人くらいで、下っ端36〜37人は話を聞くだけだろ?」
特にCクラスの下っ端は一之瀬のイエスマンだからな。ぶっちゃけ一之瀬がいるなら話し合いは成立する。
「まあそうだね。それと私のクラスメイトを下っ端って呼ぶのはやめてくれないかな?」
「そりゃ悪かったな。んじゃ本題に入るが同じ組になったからって協力については最小限で良いな?」
いくら同じ組でも学年ごとで順位を付けてクラスポイントが変動する以上、足並みを揃えるのは難しい。
それは一之瀬も理解しているようで頷く。
「そうだね。協力するとしたら団体競技の練習かな?」
「ああ。今週はクラスごとで練習して、来週から月、水、金の放課後に合同練習でどうだ?」
「賛成かな。それと週に一度作戦会議をしたいんだけど大丈夫?」
「問題ない。とりあえず今話せるのはこれくらいだ。そっちから質問はあるか?」
「うーん……聞いて良いかわからないけど……龍園君は何か企んでるのかな?」
まあ普通気になるよな。それに対する答えは決まっている。
「アイツはいつも何か企んでるから何とも言えないな」
寧ろ企みをしてなかったら、保健室に連れて行くわ。
「あはは……」
「さて、試験とは無関係の質問に答えたし、こっちも質問させて貰うぞ」
「何かな?」
「単刀直入に聞くがお前の前に「クラスメイト1人の退学を条件に500のクラスポイント」と「退学無しでクラスポイントの変動無し」の2つの選択肢があったらどっちを選ぶ?」
この質問にCクラス陣営からは騒めきが生じるが一之瀬は毅然とした表情で口を開ける。
「当然後者だよ。クラスメイトを失ったら二度と返ってこないからね?」
「なるほどな」
嘘を言っている様子はない。一之瀬は本気で後者を選ぶようだ。
(底が知れた。やっぱり一之瀬はリーダーとして龍園や有栖より遥かに下だな)
クラスのリーダーが勝ちを放棄するなんて論外だ。退学者が出た場合に生まれるクラスポイントの損失は知らないが精々100くらいだろう。
少なくとも200以上ではないのは確実だ。何故なら2年生は15人近く退学者が出ていて、CクラスとDクラスからは5、6人出ているがクラスポイントは僅かにあるらしいし。もし仮に200ポイント以上ならDクラスやCクラスのポイントは0になっているだろう。
つまり俺が言った「クラスメイト1人の退学を条件に500のクラスポイント」を行ったら、結果的に300〜400の利益を得る事になる。
それを放棄するなんてリーダーとしてあるまじき行為だ。これが龍園や有栖なら躊躇いなく実行して雑魚を切り捨てるだろう。
実行したらクラスポイントが入るだけでなく、「雑魚は切り捨てられる」って見せしめになる。そうなればクラスの連中は必死になって努力するのは明白。
実力主義であるこの学校では一之瀬の方針は不利だろう。加えてCクラスの生徒の大半は一之瀬に対して憧れのような眼差しを向けているが、勝ちを放棄しているリーダーに憧れを抱いている時点で怖さはない。
まあ一之瀬の側近の神崎は苦々しい表情で一之瀬を見ているから油断はしない。一之瀬の方針を不安視している奴がいるのといないのでは大きな違いがあるからな。
「つまらない質問をして悪かった。とりあえず今日出来る話し合いは終わったし失礼する」
そう言ってから俺は龍園達の後を追うようにして体育館を出るのだった。
放課後……
「さて、体育祭についてですがDクラスを徹底的に叩くのは当然、という流れで宜しいでしょうか?」
カラオケルームにて有栖の綺麗な声が響く。俺の隣には龍園がいて、有栖の隣には神室がいる。
「ああ。それに関してだが取引がしたい」
「何でしょうか?」
「俺と比企谷は既にDクラスの生徒を2人引き入れた。よって体育祭においてはDクラスの参加表をお前らに渡すし、今後もDクラスの情報を共有したい」
「おや、よく引き入れられましたね。私も何人か声をかけましたが、切り捨てられると思っているのか拒否されてしまったので驚きました」
まあそうだろう。マトモな人間なら龍園や有栖に声をかけられても、利用されまくった挙句にポイされると考える。
「比企谷が手に入れたスパイは知らんが、俺が手に入れたスパイは自分から売り込みに来た。鈴音を退学させることを条件に」
へぇ、龍園の協力者も中々クセが強そうだな。
「それより本題だ。こっちはDクラスに関する情報を全て渡す。だからそっちはウチのクラスの馬鹿共の学力の向上を求める」
なるほどな。確かにウチのクラスの学力は低い。今後学力が重視される特別試験があったら、ウチのクラスは3位より上に行けないだろうし、学力向上は重要だ。
「なるほど……まあ良いでしょう。こちらとしても情報があればより綿密な作戦を立てられますから」
有栖は承諾する。どうやら有栖は余程Dクラス……というか由比ヶ浜をを叩きたいようだ。ぶっちゃけ由比ヶ浜以外のDクラスの生徒はとばっちりだし、雪ノ下以外には同情してしまう。
「ではDクラスの参加表が手に入ったら連絡をお願いします。それに合わせてこちらも参加表を作りましょう」
「加えてお前が嫌ってるビッチについては可能な限り嬲りたいだろうし、そこは調整しないとな」
そんな感じで龍園と有栖は作戦を練っているが、これはもうDクラスに浮上の目は一切ないだろうな。
そう思いながらも俺も一緒に作戦を練るのであった。
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