腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
停学3日目
俺は自室の勉強机に向かい勉強をしている。停学した以上学校から課題は出るし、学校に行けないから授業を受けることも出来ない。
普通の学校ならラッキーと思うかもしれないが、この学校は赤点を取ったら即退学であるので勉強を疎かにするわけにはいかない。
よって俺は停学を食らってからは飯を食う時以外は外出しないで勉強をしているのだ。
とはいえそこまで辛い点はない。今日の朝には腕の痛みは引いたし、俺がいない時のノートはひよりがわかりやすく作ってくれているので、停学が明けても遅れはないだろう。
その点についてはひよりにマジで感謝しているが、ノートを渡す度に俺にキスをしてくるのは勘弁して欲しい。ひよりは俺にキスをすると幸せな気分になると言っているが、俺からしたら毎日悶死してしまいそうだ。
そう思いながらも勉強をしていると携帯が鳴るので、取り出すと綾小路からメールが来ていた。
内容を見てみると……
『今日、ウチのクラスで体力測定があったから記録データを送る。参加表は後日に』
データファイルが添付されたメールだった。開いてみると停学中の由比ヶ浜を除いたDクラスの生徒39人の記録があった。
これは重要な情報だ。これと今後作るDクラスの参加表をAクラスと利用すれば、Dクラスに大打撃を与えられるだろう。
俺は綾小路に感謝のメールと報酬のポイントを送りつけ、このデータを龍園と有栖の携帯に送信する。
すると有栖からはすぐに返信が来た。
『情報感謝します。それと今日ですが、八幡君の腕も完治してるでしょうから、約束のお泊まり会を開きませんか?』
そういや以前そんな約束をしたな。出来れば遠慮したいが、したら後で絶対に面倒な事になるだろうし……
俺はため息を吐いてから有栖に了承の返事をメールして携帯を閉じる。有栖のことだから俺に抱きついたり頬にキスをしてマウントを取ってくるだろうから、こっちも反撃しないとな。
30分後……
ピンポーン
勉強もひと段落したので夕食を作ろうってタイミングでインターフォンが鳴ったのでモニターを見れば荷物を持った有栖がいた。
それを確認した俺は玄関に行き、ドアを開ける。
「来たか。荷物は持つ」
「ではお言葉に甘えて」
俺は有栖から荷物を受け取りリビングに案内する。
「飯は和食で大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。ところで停学中は退屈ですか?」
「否定はしない。出された課題とかは問題なくこなせてるが、先生に質問出来ないのと遊びに行けないのが辛い」
「放課後なら遊びに行って良いのでは?由比ヶ浜さんはさっきショッピングモールで遊んでましたよ?」
「心にもない事を言うな。一応罰を受けてる身だからな」
いくらクラスポイントが増えたとはいえ、俺は学校から罰を与えられた人間だ。必要な物の買い出しとかならまだしも、謹慎中に遊びに行くなんてダメに決まっている。
つか遊んでるのを監視カメラで見られるだろうし、そうなったら教師からの心証が悪くなるわ。
「もちろん冗談ですよ。まあ由比ヶ浜さんがショッピングモールにいるのを見た時は驚きましたよ」
だろうな。アイツは停学の意味を知らないのか?それとも自分には一切の非がないと思っているのか?
「まああの馬鹿がどういう行動を取ろうがどうでも良い。とりあえずクラスポイントが増えたんだし、Dクラスには体育祭でお礼をしないとな」
「そうですね。先程の情報はありがたく使わせて貰います」
参加表を手に入れたら、運動記録データと照らし合わせ、俺達AB連合も参加表を作る。
そうすりゃDクラスはAクラスとBクラスを上回ることは出来ず、3位より上にはなれない。
そして体育祭は学年別でクラスポイントが動き、1位のクラスはプラス50ポイント、2位は0ポイント、3位はマイナス50ポイント、4位はマイナス100ポイントだ。
つまりDクラスの参加表が手に入ればDクラスのポイントがマイナスになるのは確定ってことだ。
何にせよDクラスは今後浮上しないだろう。由比ヶ浜が足を引っ張りまくるだろうし、仮に由比ヶ浜が退学しても、それまでのダメージが深刻で再起するのは不可能だと思う。
そんな事を考えながらも俺はキッチンに入り有栖と雑談をしながら調理をする。
料理は40分くらいで完成し、テーブルに運ぶ。料理は米に野菜炒めに生姜焼きに味噌汁とシンプル極まらない料理だ。毎日自炊する以上、そこまで凝った料理は作らない。
「待たせたな」
「いえ。ご馳走になります」
そう言ってから俺達は互いに向かい合って食事をするが、有栖はゆっくりながらもていねいな所作で飯を食べる。
そして食べ終えて、食後の紅茶を淹れようとしたら有栖が話しかけてくる。
「あ、八幡君の頬にご飯粒がついてますから取りますね」
言うなり有栖は俺に近寄り、あろう事か舌を使って俺の頬を舐めてくる。
「んなっ!」
驚きながら有栖を見ると、有栖はご飯粒がついた舌を口内にしまってから、クスクスと笑う。
「ふふっ、随分と可愛らしい反応ですね」
コイツ、ちょっとした事でマウントを取りに来るとは……やっぱり油断は禁物だ。
とはいえ有栖相手にやられっぱなしは趣味じゃないし、やり返すとしよう。
「わざわざありがとな。お礼にキスしてやるから目を閉じろ」
言いながら俺は有栖に近寄り、左手を有栖の背中に回し逃げられないようにしてから、右手で有栖の顎を掴む。
「えっ……じょ、冗談はやめてくださいっ」
すると勝ち誇った笑みを浮かべていた有栖は笑みを消し、頬を染めながらテンパりだす。
「目を閉じろ」
そんな有栖に対して有無を言わさない口調でそう言うと……
「は、はい……」
やがて有栖は真っ赤になって頷きながらゆっくりと目を閉じて唇を突き出す仕草を見せる。
まあ実際にキスをするつもりない。唇を近付ける気配で有栖を弄び、キスをする直前に狙いを有栖の唇から有栖の耳に変えて、息を吹きかけるだけだ。有栖の弱点が耳であるのはしっかり把握してるからな。
有栖の唇に自身の唇を近付けると、有栖も気配を察したようで、更に顔を赤くする。
さてさて、緊張している状態で耳に息を吹きかけられた有栖の反応はどんなものだろうか。
最近は有栖にマウントを取られまくってるし、ここらで有栖に対する主導権を握らないとな。
そう思いながらも有栖との距離を詰めにかかる。
5センチ……
4センチ……
3センチ……
2センチ……
1センチ……
そして0になる直前に俺は顔を有栖の唇から耳に移そうとした時だった。
ゴトゴトゴト……
突如、そこそこ強い地震が現れた。震度は4から5くらいだろう。
「なっ!」
同時にフィジカルが弱い有栖は地震に耐えられず、こちらに倒れかかり……
ちゅっ
有栖の唇と有栖の耳に移動しようとした俺の唇が重なってしまったのだ。
これには有栖も予想外のようで目を見開きながら倒れかかってくる。
一方の俺も相当動揺しているようで、有栖を支えることが出来ずにキスをしたまま背中から床に倒れてしまった。
それにより背中に痛みが生まれるが、今現在もキスをしているからか、そこまで痛いとは思わなかった。
現在、有栖は俺の上に乗りながらキスをしているが、まさか有栖ともキスをするとは思わなかった。
そんな中、俺は今後有栖とマウントの取り合いをするのはやめようと半ば現実逃避しながら決意するのであった。
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