腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
学校の仕組みについて発表された昼休みの事だった。
「よう比企谷。一緒に昼飯を食わないか?」
教科書を机にしまっていると龍園が話しかけてきた。それによりクラス全体から注目が集まる。
「……目的は?」
「ただの雑談だ。奢ってやるから食堂に行こうぜ」
嘘だな。ただの雑談ならわざわざ俺に話しかける理由はない。
「自分の弁当がある」
「じゃあ明日奢ってやるよ」
どうやら断るって選択肢はなさそうだ。仕方ないし、従うか。
「はいはい。じゃあ行くが、手下は連れてくのか?」
「安心しろ。お前が望んでなさそうだから連れてかないでやるよ」
それはありがたい。龍園とは偶に話すが龍園の手下の石崎やアルベルトとは殆ど話してないからな。
「なら良い。混む前に行くぞ」
言いながら俺は龍園と一緒に教室を出て廊下を歩く。しかし食堂に向かう途中でDクラスの横を通ろうとしたら、同じタイミングで教室のドアが開き、雪ノ下や由比ヶ浜が出てきて、由比ヶ浜が龍園とぶつかる。
「邪魔だ。不良品がぶつかってんじゃねぇよ」
「っ……!」
龍園の容赦ない言葉に由比ヶ浜が俯く。すりと雪ノ下が由比ヶ浜の前に立つ。しかしその際に俺の存在に気付いたのか睨みつけてくる。
「……貴方がDクラスに居ないなんて一体どんなズルをしたのかしらズル谷君?」
「あ?おい比企谷、この不良品の知り合いか?」
「ソイツとお前がぶつかった女は同中だ」
「なるほどな。しっかしコイツはDクラスで納得だな」
雪ノ下を指差すと雪ノ下は俺ではなく龍園を睨む。
「どういう意味かしら?私がDクラスにいるのは手違いであるとしか思えないわ」
「くはっ!マジかコイツ!比企谷、お前の知り合い面白いな!漫才やれば成功するだろ!」
雪ノ下の言葉に龍園は大爆笑する。まあそんな風にハッキリ言ったらなぁ。
「その気持ち悪い笑いをやめなさい。不愉快だわ」
「だったら面白い事を言うなよ。じゃあ聞くけどよ、比企谷がズルをしたって言ったが具体的にどんなズルをしたんだよ?国が力を入れている学校相手にどんなズルが出来んだよ?」
全く以って同感だ。俺が大企業の跡取り息子や国会議員の息子なら賄賂って手段があるかもしれないが、一般家庭の長男の俺が国が力を入れている学校を欺くなんて無理だ。
「それに仮にズルが上手くいったとしても、それなら比企谷はCクラスじゃなくてAクラスに行くだろうが。そんな簡単なこともわかんないのかよ?だからお前はDクラスなんだよ」
「っ!」
龍園の正論に雪ノ下は睨みつける。正論を言われたら睨みつけるのは相変わらずだな。
「龍園。煽るのは良いが、食堂が混むから煽り過ぎるな。それと雪ノ下、俺や学校の選定に不満を抱いてる暇があるなら由比ヶ浜の勉強を見てやったらどうだ?どうせ小テストも0点なんだろ?」
中学時代の由比ヶ浜は成績も悪く、思考力も常識もない馬鹿だったし、小テストも0点である可能性はある。
「はぁ?!0点じゃないし!ヒッキーマジキモい!」
俺の言葉に由比ヶ浜はキレる。まあ幾ら由比ヶ浜が馬鹿でも0点はないだろうな。
「そうかい。でも赤点だろ?違うなら点数を教えてくれよ」
「な、何で教えなきゃいけないし!キモい!マジキモい!」
「コイツ絶対赤点だろ?」
「赤点だな。中学時代、コイツ30点以上の点数を取ってない」
龍園の問いに頷く。実際由比ヶ浜はテストのたびに毎回補修を受けていて、奉仕部部室で雪ノ下から勉強を教わっていたし。
「ま、退学になったら人生が詰むだろうから精々頑張れ」
この学校は国が力を入れている学校だ。その学校を退学になる、ということは国から見捨てられたと世間は判断するだろう。そうなったら比喩表現抜きで人生が詰む可能性が高い。
「そんな事ないわ。由比ヶ浜さんは絶対に退学させないし、Aクラスに上がってみせるわ」
「あっそ。しかし腑に落ちない事があるんだが、何故将来が決まってるのにAクラスを目指すんだ?」
「……どういう意味かしら?」
すると雪ノ下は怪訝そうな表情を浮かべるが陽乃さんから聞いてないのか?
「以前陽乃さんが「お母さんは、雪乃ちゃんは家の仕事をやらないのに一人暮らしをする穀潰しだから将来は大企業の跡取り息子と結婚させて役に立たせる、って考えてる」って言ってたぞ」
「っ!そんな話聞いてないわ。出鱈目言わないでちょうだい」
どうやら本当に聞かされてないようだ。
「そうだし!幾ら何でも親が勝手に結婚を決めるなんて間違ってるし!ヒッキーマジキモい!」
そしてお前はキモいしか言えないのか?
「少なくとも俺は陽乃さんからそう聞いた。それを信じるのはお前らの自由だ……って、そろそろ行くぞ」
「ああ。しっかし本当にDクラスって屑が揃ってんだな。中間で何人消えるか楽しみにしてるぜ」
「んだとテメェ!」
龍園が雪ノ下と由比ヶ浜をdisると2人の背後から、以前上級生と揉めていた赤髪の男子が激昂する。
「おいおい。Dクラスってのは屑だけじゃなくゴリラも受け入れてんのかよ?末期だなオイ」
「あぁ?!」
龍園の挑発に赤髪は更にキレて龍園の胸倉を掴む。対する龍園は待ってましたとばかりに薄く笑う。コイツ、わざと殴られてペナルティについて調べる腹か。
しかし……
「両者そこまで!」
手を叩く音が聞こえてきたかと思えば、入学式の時に俺と雪ノ下の諍いを止めた女子が立っていた。
「廊下での暴力沙汰は見過ごせないなぁ。監視カメラがあるとはいえこれ以上続けるなら先生を呼ぶことになるよ?」
「一之瀬、お前は勘違いしている。俺は善良な被害者だ」
嘘吐け。お前が善良なら人類の9割9分9厘以上の人間が仏や菩薩だからな。
「そう?私からしたら龍園君が挑発しているように見えるけど?君もここで殴ったら停学になるかもしれないよ?」
「ちっ……」
一之瀬とやらの言葉に赤髪は舌打ちをしながら龍園の胸倉から手を離す。対する龍園は胸元をパンパンと叩いてから赤髪に話しかける。
「お前は良いおもちゃになりそうだな。また今度お前で遊んでやるよ」
「あぁっ?!」
赤髪は怒鳴るが龍園はそれを無視してスタコラ歩き出す。あの野郎、自分から誘っておきながら先に行くとは良い度胸だな。
俺はため息を吐きながら一之瀬に小さく頭を下げて龍園の後を追いかける。
「赤髪をおもちゃ呼びしていたが何を企んでんだ?つか一之瀬って女は知り合いか?」
「赤髪についてはDクラスでもトップクラスの馬鹿だろうから遊び方は色々あるから悩みどころだな。で、一之瀬はBの女で少し前に石崎達を使ってBクラスにちょっかいをかけた時に知り合っただけだ」
言いながらも食堂に着いたので一旦龍園と別れて席を確保する。そして弁当を食べ始めると龍園がラーメンを持ってこっちにやってくる。
「で?話ってなんだ?」
まあ大体予想がつくけどな。
「ああ。今日学校の仕組みがハッキリしたがその特性上、今後は他クラスと競い合う」
「そうだな。そんでCクラスでリーダーをやるならお前だな」
「当然そのつもりだ。放課後にはそれを宣言する」
ま、リーダーを決めるなら早い内が良いだろう。明確なリーダーがいないと今後クラスがバラバラになる可能性が高いし。
「とはいえそれに不満を抱く奴はいるだろうな」
「そりゃそうだ。石崎やアルベルトを始め、何人か傘下を手に入れてるのは知ってるが、いきなりリーダー宣言しても納得はしないだろう」
特にCクラスは我が強い生徒が多いし、龍園の配下でない生徒の大半が不満を抱くだろう。
「ああ。だが実績の1つや2つを出せば反対派の大半は黙るだろうな」
それは否定しない。もしも龍園が実績を上げたなら反対派の連中も気に入らないが従った方が利口と判断して、不満を出さず余程のことがない限り龍園に従うようにするだろう。
「で?実績を出す為に以前誘ったようにお前の下につけと?」
「そうだ。といっても石崎やアルベルトとは違って下僕ではなく部下として雇ってやる」
「雇うって事はポイントをくれんのか?」
「他にも坂柳と関わることについてもお咎め無しにしてやる」
……コイツ。俺が坂柳と関わってる事も知ってるなんて……まさかとは思うが俺に監視を付けていたな。
「俺は別に無理に坂柳と関わるつもりはないからお前が反対するなら関わらないぞ」
「俺としてはそれでも良いが、お前からしたらそれはやめといた方がいいんじゃないか?坂柳がお前をどんな意味合いで気に入っているかはわからないが、アイツの性格からして、お前が関わるのを拒否したら面倒なことになると思うぜ」
そ、それは否定出来ない。俺は坂柳におもちゃ的な意味で気に入られている確信がある。そして奴の性格的に俺が避けたら首根っこを掴んできそうだ。
そう考えると龍園に協力して坂柳と関わる権利を貰うことが1番マシな選択だろう。
「……わかったよ。協力してやる」
俺はため息を吐きながらそう返すことしか出来なかった。なんか俺の平穏はどこに行ったんだろうか?
はぁ……
高度育成高等学校学生データベース (4/6時点)
氏名 雪ノ下雪乃
学籍番号 S01T004758
部活 無所属
誕生日 1月3日
評価
学力 A
知性 A
判断力 C
身体能力 B -
協調性 E
面接官コメント
小中学校から高い成績を筆記試験では高得点を取るが、他者を思いやる気持ちや協調性においては圧倒的に不足している。また自分の意見が全て正しいと思う少々傲慢な面も見られ、社会に送り出すには問題があり強い矯正が必要である事からDクラスへの配属とする。またスポーツにおける技術は高いが、体力が致命的に不足しているので改善が急がれる。
読者の皆さんは森の声を聞いた事がありますか?
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