腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「いよいよ今日から復帰ですね。まあ勉強は部屋でしてますし、大丈夫でしょう」
「そうですね。私としては教室に八幡君が居ないのは寂しかったです」
朝、自室にて朝食を食べていると右隣に座っている有栖がそう言って、左隣に座っているひよりが頷く。
2人の言うように俺は昨日で謹慎期間を終え、今日から学校に行く。学校から出された課題は全て終わってるし、クラスポイントも結果的に増えたから学校に行っても悪い事にはならないだろう。
それについては問題ないが……
(もうひよりと有栖って俺と同棲してね?)
有栖と初めてキスをした次の日から、ひよりと有栖は毎日俺の部屋に泊まるようになる。しかも昨日、この部屋に自分の制服や教科書などを置いて良いかと頼んできたし同棲する気満々だ。
最初は断ろうとしたが、2人の上目遣いに負けてしまい了承してしまった。俺、2人に頭が上がらないなぁ……
しかし悪いことばかりじゃない。家事の半分はひよりがやってくれているし、有栖はその間に俺に勉強を教えてくれるが、前者は負担が減ってありがたいし、後者については教え方が上手いので理系科目の理解が深まっている。
ただ行ってきますのキスやおやすみのキスをしたりするのは恥ずかしいから勘弁して欲しい。
そう思いながらも朝食を済ませて学校に行く準備をすると、ひよりと有栖は俺の腕に抱きついてくる。2人のささやかな胸が腕に当たり、ドキドキしてしまう。
しかし、ここで離せと言っても却下されるのは目に見えているし、特に何も言わずに部屋を出る。
寮を出て久しぶりに通る通学路を歩いていると、辺りから視線が集まる。まあ停学を食らった人間が美少女2人に抱きつかれながら歩いていたら嫌でも目立つよな。
「しかし目立ちまくりだがお前らは嫌じゃないのか?」
「いえ。全く嫌じゃないです」
「椎名さんと同じです。それに私達は同盟を結んでますから問題ありません」
まあそうだな。Aクラスリーダーの有栖とAクラスと同盟を結んでいるBクラスにてそれなりの地位にいる俺が一緒に歩いていてもおかしくはない。
例外があるとすれば由比ヶ浜に見られたらギャーギャー騒がれるだろうが、アイツは停学中だから問題ない。
つか由比ヶ浜は停学中の課題をやってるのか?俺もやったが、アレ結構難しかったし。
まあどうでも良いか。
そう思っている間にも学校に着いたので昇降口で上履きに履き替える。
「じゃあ俺は職員室に行かないといけないし、またな」
「はい。また後で」
「教室で待っていますね」
2人は腕から離れるので俺は職員室に向かい、中に入る。
「失礼します。坂上先生はいますか?」
「おはよう比企谷君。課題の提出かね」
「こちらです」
「確かに受け取った。今日から復学だが、今後は暴力を振るわないように。結果的に得をしたとはいえ、停学は本来避けるべきだ」
まあそうだな。今回の件も由比ヶ浜がぶっち切りの馬鹿だから良かったが、マトモな人間なら俺に暴力を振るわないで、雪ノ下を殴った俺を学校に訴えていただろうからな。
「以後気をつけます」
坂上に一礼をして職員室を後にする。とりあえず教室に向かうが、悪感情を向けられることはないだろう。
そう思いながら歩き、自分の教室に入る。すると皆が一斉に見てくるが、予想通り悪感情は感じられないので安心した。
「よう比企谷。お務めご苦労だったな」
そう言ってくるのはBクラスのリーダーの龍園で、満足そうな笑みを浮かべて俺に近寄ってきて携帯を取り出す。
「お前のおかげでCクラスと差を付けれて、Aクラスと差を縮められたぜ。だからクラスの皆からポイントを集めて慰労金を用意したから取っとけ」
言うなり龍園が携帯をいじると俺のポケットから電子音が聞こえてきたので、携帯を取り出す。
そしてポイント残高を確認すると、プライベートポイントが朝見た時より25万増えてきた。
俺が稼いだ50クラスポイント、これはつまり俺が所属するBクラスの生徒が月の初めに貰えるプライベートポイントが5000増える事を意味する。
クラスの人数は40人。つまり50クラスポイント稼ぐと、月の初めにBクラス全体に20万振り込まれる事を意味する。
それはわかるが……
「20万じゃないのか?」
振り込まれたのは25万。貰える分にはありがたいが、20万でも不満はない。
「お前はクラスでも身分があるから、見舞金も付けただけだ」
「ヤクザかよ……まあ貰っとくけど」
貰えるならありがたく貰うとしよう。
「それとお前が停学中に、Aクラスの成績の良い奴がウチのクラスの馬鹿どもに勉強を教える事が始まったから、お前も時間がある時に教える側で参加しろ。金田やひよりにも話をしてる」
そういや龍園はウチのクラスの学力を上げる為に有栖と取引を交わしていたな。俺も文系科目については学年トップクラスだから呼ばれるのは必然。
面倒ではあるが仕方ない。1学期に龍園を王と認めた以上、やらないって選択肢はないのだから。
俺は息を吐いて席について朝のHRが始まるのを待つのだった。
数時間後……
「遅れてすまない」
授業が終わって、俺はとある教室に入る。中を見れば既に生徒が複数いた。
「時間前だから問題ないよ〜」
そう返すのはCクラスリーダーの一之瀬帆波。今日は体育祭の団体競技についての話し合いがある。
既に練習の記録は龍園から貰って、停学中に見たので問題はないが……
「それなら問題ないが、話し合いは一之瀬一人で参加してくれないか?警戒心剥き出しの人間が多いと気が休まらない」
見れば一之瀬以外の大半は警戒心を露わにしている。
「ごめん。比企谷君がクラスポイントを稼いで差を付けられちゃったから気が立ってるから……そんな訳だから部屋から出て貰えないかな?」
まあそうだろうな。ウチのクラス、というか龍園は入学して直ぐに一之瀬のクラスに攻撃を仕掛け、一之瀬のクラスをBからCクラスへ落とした。
加えて俺がクラスポイントを稼いだとなれば気が立っていてもおかしくない話だ。
「ダメだよ帆波ちゃん!龍園君の右腕なんかと二人きり危険過ぎるよ!」
「こら千尋ちゃん。失礼だよ」
「でも……」
一之瀬はそう言うがオカンかよ。
「別に気にしてない。無人島試験で自分のクラスに50ポイントの損害を与えたソイツからしたら、俺達を警戒するのは当然だ」
「っ……!」
俺がそう言うと無人島試験にてリーダーをして、龍園に指名された白波千尋は真っ青になる。
と、ここで一之瀬が白波をギュッと抱きしめる。
「千尋ちゃんは悪くないよ。金田君を迎え入れる選択をした私の責任だから」
まあ間違っちゃいないな。少なくとも俺がクラスを率いるなら殴られた痣があっても門前払いをする。
そうこうしていると一之瀬が俺を見てくる。
「千尋ちゃんがごめんね。でも今は体育祭の話し合いだからこれ以上は勘弁して欲しいかな?」
「……ああ。こちらとしても悪かったな」
少しイラッとしたとはいえ、少々攻めすぎたな。
「じゃあ本題に入るが、体育祭の団体競技についてだ。練習しやすい騎馬戦や玉入れは金田が主導で練習をしてる事は動画で見た。それを踏まえて、俺が考えた作戦だが……」
そう前置きして俺は団体競技における作戦を説明するが、全て説明するとCクラスの大半は引いたり苦笑いをしている。
「うーん……基本的には文句はないけど、綱引きについては賛成しかねるね。卑怯って言われるよ?」
卑怯?何を言ってんだか。
「別にルールは破ってないからな?さっき坂上先生に聞いたら禁止事項じゃないって言われた」
「モラルの話だよ」
「卑怯ってのは敗者の戯言だ。俺は龍園と違ってルールを破る事はしないが、ルールの範囲内ならなんでもやる主義だ」
倫理的にアウトだろうが、法律的に問題ないなら俺は気にしない。
すると口を挟む男がいた。CクラスのNo.2の神崎だ。
「一之瀬。比企谷の提示する作戦に乗るべきだ」
「ちょっ?!本気で言ってるの神崎君?!」
すると一之瀬の後ろにいるポニーテールの女子が慌て出す。
「ああ。ここで俺達が反対しようが、龍園の性格から考えて実行するはず。ならば怪我人を出さないようにBクラスに合わせるべきだ」
だろうな。というか龍園も十中八九俺と同じ作戦を考えているだろう。そしてマトモな人間なら龍園は周りの反対なんて気にしないと理解出来る筈だ。
よって神崎の意見はモラルを無視すれば、Cクラスにとって最善の考えである。
「まあどんな選択をするかは自由だ。それにこの作戦は実力がAD連合と互角の時のみの作戦だから、出来ない事もあり得る」
「……そうだね。ならそうならない事を祈るよ」
お人好しめ。普通の学校ならまだしも、一之瀬のような人間はこの学校で勝ち抜くには不向きだろう。
まあライバルの一角がそうならありがたいと思っておこう。
そう思いながらも俺は作戦や合同練習について更に細かく詰めるべく案を巡らしていくのだった。
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