腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「んっ……はぁっ……八幡君、もっと撫でてください」
そう言って俺の膝の上に乗っている有栖。甘えん坊となった有栖のおねだりに俺は抵抗する気もなく撫でる。以前は抵抗したが、おねだりに抗う事は出来なかった。
「つかお前、いつもより甘えん坊だな」
「今日は椎名さんは茶道部でいない為、八幡君を独り占め出来るからですよ……」
そう言って有栖は俺の胸元にスリスリしてくる。停学騒動が終わって時間は経過し、今は体育祭まで1週間を切っている。
そんな中、ひよりと有栖は毎晩俺の部屋に泊まっていて半……どころか殆ど同棲している状態となっている。
それについては今更だからどうこう言わないが、時折火花を散らし合うのでそれだけは勘弁して欲しいものだ。
閑話休題……
とにかく俺は今、同棲相手の1人である有栖に思い切り甘えられている状態である。
まあ泊まり込むようになってから大分慣れてきたがな。
しかし……
「八幡君、キスして良いですか?」
キスだけは慣れない。自分からしたことはないが、有栖とひよりは俺によくしてくる。
対する俺は拒否するつもりはない。どうせ拒否してもおねだりをされた了承するからな。
と、返事をしようとしたらポケットにある携帯が鳴るので有栖に断りを入れて携帯を確認すると……
『Dクラスの参加表が完成したから送る。クラスではダミーを用意するという発想が出てない。変更があったら逐次報告する』
綾小路からこんなメールが送られてくる。添付ファイルを見れば全ての競技の参加表の写真がある。
「有栖。スパイからDクラスの参加表が来たから一旦中止にして龍園の部屋に行かないか?」
「参加表が来たなら仕方ないですね。では行きましょうか」
有栖は頷くと俺の膝の上から降りて杖をついて立ち上がる。それを確認した俺は有栖の足に合わせて部屋を出て、エレベーターを利用して龍園の部屋に向かう。
そしてインターフォンを押そうとすると同じタイミングでドアが開き、龍園が出てくる。
「ん?お前らが来るって事は比企谷の携帯にも参加表が来たのか?」
「その様子じゃお前は俺か有栖の部屋に行くつもりだったか?」
「ああ。が、お前らが来たなら俺の部屋で話すぞ」
龍園がドアを開けっ放しにするので、中に入る。龍園の部屋は何度か入ったが、小道具もあって小洒落ている。
「先ずは情報の確認だ。お前が貰った参加表を見せてもらうぞ」
そう言われるので携帯を取り出して龍園に渡す。龍園は自分の携帯と俺の携帯を見比べて、やがて自分の携帯を操作する。それにより有栖のポケットから電子音が聞こえてくるので、有栖にも参加表を送ったのだろう。
有栖も携帯を取り出して確認する。
「情報感謝します。それでは以前八幡君が用意したDクラスの身体能力データと照らし合わせて参加表を作っていきましょう」
「既に準備は出来てる。Dクラスの参加表は今送られてきたばかりだが、今からプリントする」
龍園は鞄からプリントを数枚取り出し、パソコンを起動する。プリントを見ればDクラスの身体能力データがプリントされた紙やウチのクラスの参加表もある。やはり俺の部屋に行く気満々だったようだ。
暫くすると龍園の部屋のプリントから音が聞こえてきて、紙が出てくる。
「じゃあ早速参加表を調べるぞ」
言いながらDクラスの参加表を3人で見る。競技については各クラス2人ずつ出して、計8人で順位を決める。
最初の種目である100メートル走を確認すると、Dクラスの第1走者はDクラス最速の須藤とDクラス男子最弱の外村って男だ。
他の組も見てみると早い奴と遅い奴が一緒に走っている。その事から察するに……
「Dクラスは能力重視の組み合わせにしているみたいですね」
「予想通りだな。実際にDクラスの中堅メンバーは同じ中堅メンバーと組ませてるし、中堅同士が組んでいるところに早い奴をぶち込むぞ」
「中堅で固まってるのは龍園の案に賛成だな。んで須藤や平田みたいに圧倒的に早い奴がいるところに雑魚を入れれば良いな」
そんな風に話をしながら有栖と龍園はDクラスの中堅メンバーが走るレースに早い生徒の名前を記入している。
すると有栖が口を開ける。
「あ、それと由比ヶ浜さんの件についてお願いがあります。彼女は頭も身体能力も悪いので、この戦略で行くとペナルティにより次の中間試験で退学になるかもしれないです」
だろうな。由比ヶ浜の身体能力はDクラスでもワースト3に入るほど低い。
俺達の戦略を使用したら由比ヶ浜は下位10人に入って、ペナルティとして次の中間試験で10点引かれるだろう。そうなったら由比ヶ浜は殆ど確実に退学になる。
しかし由比ヶ浜を徹底的に嬲りたい有栖としてはそれは避けたいのだろう。
「ですから前半……そうですね、100メートル走、ハードル競争、障害物競走で由比ヶ浜さんと一緒に走らせるのは、私達のクラスで運動神経が悪い女子4人にしてくれないでしょうか?」
なるほどな。由比ヶ浜と走らせる女子7人の内、4人を雑魚にすれば由比ヶ浜がペナルティを受ける確率は大きく下がり、もしかしたら入賞するかもしれない。
「良いぜ。あのビッチと走らせる奴は雑魚にしといてやる」
有栖の頼みに龍園は了承する。俺達の同盟は由比ヶ浜が退学したら破綻する可能性が高い。まだAクラスとの差は結構あるし、龍園としても由比ヶ浜が早く退学するのは避けたいのだろうな。
「ご協力感謝します。では次に私達のクラスの中堅についてですが……」
それから俺達は参加表の作成を続けるが、龍園と有栖が足並みを揃える事に恐怖を感じてしまう。怪物2人が手を組んでDクラスを叩くのだから、Dクラスに未来はない。
そんな事を考えながら俺はDクラスの大半に同情して、龍園と有栖が足並みを揃えられる要因となった由比ヶ浜に呆れるのであった。
1時間後……
「では失礼しますが、変わった事があったら情報共有をしていきましょう」
「だな。んじゃまた明日」
「ああ」
俺と有栖のクラスの参加表も完成したので、龍園の部屋を出てエレベーターに乗り、俺の部屋に戻る。
「とりあえずこれでDクラスが最下位は間違いないでしょう」
有栖の言う通り、Dクラスが最下位なのは間違いない。AクラスとBクラスはDクラスの参加表を参考にして参加表を作った。情報を持ってないであろうCクラスは運動神経が良い生徒が多く、マトモに戦ってもDクラスに勝つのは明白だ。
俺の予想では1位がCクラス、2位がウチのクラスで、3位がAクラスで4位がDクラスとなっている。
そして1位の組は50ポイント入り、2位は0ポイント、3位はマイナス50ポイントで、4位はマイナス100ポイントとなる。
んで総合で判断すると勝つのはAD連合の赤組だろう。2年3年のAクラスは文字通り桁違いだし。
そして勝った組にはポイントは貰えないが、負けた組はマイナス100ポイントとなる。
つまり俺の予想だと体育祭によって動くポイントは……
Aクラス マイナス50ポイント
Bクラス マイナス100ポイント
Cクラス マイナス50ポイント
Dクラス マイナス100ポイント
って感じになると思う。
これが俺の予想だが、こうなると俺達BクラスはAクラスとの差が生まれ、Cクラスとの差が縮まるので良くない結果となる。
まあ龍園も予想しているだろうし、なんか作戦を考えているのは間違いない。俺達Bクラスはそれに従えば良いだけの話だ。
そう思っていると制服を引っ張られるので横を向くと有栖が制服を引っ張っている。
「八幡君。さっきの続きですがキス、しても良いですか?」
そういやさっきはキスをするって話をしていた時に綾小路から情報が来たんだったな。
「……好きにしろ」
拒否しても最終的にはキスをする運命だ。
俺が了承すると有栖は目を瞑るので俺は身を屈め……
ちゅっ
唇と唇が触れ合う。何度も触れ合った唇だが美しく思える唇だ。
「ふふっ……やっぱり八幡君とするキスは気持ちが良いですね」
そう言って寄り添ってくる有栖を見ると愛おしさが湧いてくる。この愛おしさはひよりに対して湧いてくるが、最終的にはどちらかを……
そう考えると憂鬱になってしまう。2人は特に何も言ってこないけど、いずれ俺は選ばないといけない。
その時にどちらも納得する方法はあるのだろうか?
俺は有栖からの甘えを受けながらそう考えるのであった。
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