腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
綱引きのルールはシンプル。綱を引きあって、2本先取の勝負だ。
AD連合は身長が小さい奴を前に、大きい奴を後ろに配置している。
対するBC連合も同じ陣形だ。今回体育祭の指揮については俺が担当しているから確実性を重視したが、龍園なら間違いなくクラスの生徒を固めていただろう。
そう思いながらも綱を持って待機して、開始の合図を待つとピストル音が聞こえてきたので、皆が一斉に綱を引き始める。
「オーエス!オーエス!」
綱引きで馴染みの声が響く中、グラウンドに響き渡る。最初は拮抗したが、直ぐにこっちが有利となる。今回はちゃんと足並みを揃えているからそうなればフィジカルがある生徒が多いこっちが有利だ。
暫くすると笛が鳴ったので手を離す。初戦を制したのはBC連合だ。
「まずは一勝だな。んじゃ次はアレをやるぞ。Cクラスの連中も宜しくな」
俺がそう言うと、Bクラスの連中は一斉に頷き、Cクラスの生徒も一部は嫌そうだが反対はしない。
そして2戦目が始まる。
「オーエス!オーエス!引けぇ!」
AD連合の最後列にいる須藤の声が聞こえてくる。ここで負けるわけにはいかないからか、さっきよりも力を感じる。
「粘れよお前ら!この綱引きは絶対に勝つぞ!」
須藤の掛け声にAD連合は更に力を込める。結果、こちらが僅かに不利となる。
そう判断した俺は息を吸って……
「お前ら、行くぞ……!」
そう叫ぶ。それを聞いたBC連合は全員が一斉に手を離す。するとAD連合の男子は手応えが軽くなった為、その反動で一斉に倒れる。
「ぐっ!痛ぇ!」
一際大きな声で苦しむ須藤。まあそれも仕方ない。Bクラスの生徒から無数の攻撃を浮く、龍園に背中を踏まれ、事故とはいえ俺にフライングボディプレスをされて、終いにはAD連合の男子が前から飛んできたのだから、身体能力が高い須藤でもダメージはデカいだろう。
「何やってんだよ、ふざけてんのか!」
「別にルール違反はしてないし、真面目だ。わかったら静かにしろよ停学野郎」
「テメェ!」
俺の挑発に須藤は俺に詰め寄ろうとするが、その前に葛城や平田が止めに入る。惜しい、殴ってくれりゃ失格に出来たのに。
そう思いながらも元の場所に戻り最終戦の準備をする。さっき俺達は綱から手を離したが、向こう、少なくともはやって来ないだろう。
何せDクラスのクラスポイントは僅か1しかないので、勝ちを放棄する選択肢を選ばないだろう。
それから直ぐに最終戦が始まったが、向こうは俺達がやった戦術を使わずに呆気なく負けた。まあ須藤はボロボロになっていて、他の連中も2戦目で怪我した奴がいるだろうから当然だ。
「クソがっ!あいつらふざけやがって!」
須藤は喚くが、別にルール違反はしていないからどうこう言われる筋合いはないな。
何にせよ元々大したことないDクラスのチームワークは崩壊寸前だし、Aクラス男子も今の綱引きで何人か怪我をしている事から当初の予定通りとなっている。
そのことに安堵しながら俺達は自陣に戻るのであった。
それから女子や上級生の綱引きを見学するが、この時点で赤組の勝ちは殆ど決まった。1年だけなら俺達白組が勝ってるが、2年3年の赤組が強過ぎる。
もう100クラスポイント引かれるのは確定だ。1位を取ってもマイナス50ポイントってマジでムカつく。
となると俺達にとっての希望は龍園の考えている策のみだ。Cクラスに仕掛けるらしいが、どんな作戦なのだろうか?
そう思いながらも続いての競技の準備をする。
競技は障害物競争で、用意されている障害物は、平均台、網潜り、頭陀袋。難易度は高くないが、どれもスピードダウンを余儀なくされるものだ。
んで俺が配属された6組目で、厄介なのはCクラスNo.2の神崎だ。これまでの競技を見ると神崎にはまず勝てないし、2位を狙って行くつもりだ。
そして俺の番になり、スタートするが案の定神崎は早く、俺達が平均台を渡った時点で網潜りに挑戦している。
俺の順位は3位、とはいえ2位から5位までは横並びなのでどうなるかはわからない。
網に到着した俺は梃子摺りながらも4位で網を抜けて頭陀袋に向かう。
と、ここで2位と3位の2人が足に頭陀袋を付けた事によりバランスを崩し、2人まとめて転ぶ。
そんなチャンスを逃すつもりは毛頭なく、俺は2人を抜き、そのまま頭陀袋を脱いで2位でゴールする。
うん、今のところ順調だな。これなら次の中間は相当伸びるだろう。
そう思いながらゴール地点にて待機して、他のレースを見続けるが、やはりCクラスが一番成績が良いな。
そして最後のレースとなるが……
「はぁぁっ!?健のヤツ、また野村と鈴木に森重に田中じゃん!ズルっ!」
Dクラスの生徒がそう喚く。ソイツの言うように最後のレースに参加する8人の中でウチのクラスの野村と鈴木、Aクラスの森重と田中は学年でも桁違いに足が遅い生徒だ。不満を持つのは当然だろう。
1位を取るのはDクラス最速の須藤かCクラス最速の柴田のどちらかだろう。
そこまで考えていると肩を叩かれたので横を見れば隣に座っている神崎が小声で話しかけてくる。
「(やはりお前達とAクラスはDクラスの参加表を手に入れたのか?)」
質問ではあるが、神崎の口調からして確信を抱いているだろうな。
「(よくわかったな)」
「(Bクラスだけならまだしも、Aクラスも協力しているなら誰でも怪しむ)」
「(ま、そうかもな。俺としてはお前がリーダーなら参加表を渡しても良かったが、リーダーは一之瀬で、どのくらいお人好しかわからない以上教えるのはリスクが高いと判断した)」
一之瀬のお人好しレベルはわからないが、万が一俺達が参加表の情報を渡し、一之瀬がそれをDクラスに教えたら作戦が台無しだからな。
「(なるほどな。まあ外部からしたら不安に思うかもしれないが、一之瀬はそこまでお人好しじゃない)」
「(一応頭の隅に置いておく……っと、須藤の勝ちか)」
グラウンドを見れば須藤が僅かに柴田を上回り1位を取っている。どっちが勝つかはわからないかギリギリの勝負だったな。まあ俺としてはDクラスの須藤が負けて欲しかったが。
そう思いながらも俺達はグラウンドから退場して、入れ替わる形で女子が入場する。
そしてBクラス本陣から見学する中、龍園は何かを観察している雰囲気を出している。
疑問に思いながらも障害物競走を眺めていると……
「ごほっ!ごほごほっ!」
龍園が水筒片手に噎せていた。気管支に飲み物が入ろうとしたのか……と、思ったが、龍園は獰猛な笑みを浮かべているので違うだろう。
多分これは合図だな。
疑問に思いながらもグラウンドを見ると、ウチとAクラスはそこそこ速い4人がいるのでDクラスの生徒は中堅レベルだろう。Cクラスの生徒については知らないが、Dクラスから学年でも屈指の人気者である櫛田もいる。
そう思っている間にもスタートすると、Aクラスとウチのクラスの4人が一足早く出て、櫛田とCクラスのポニーテール女子がワンテンポ遅れる。残りのCクラスとDクラスの女子2人は更にワンテンポ遅れる。
最初の平均台についてだが、櫛田のポニーテール女子のバランス感覚が良いのか差を詰めて、次の網潜りでは遅れている2人を除いた6人は全員巨乳であるからか潜るのが遅く、網潜りが終わった時には6人が並走している。
そして頭陀袋を足につけてピョンピョン跳ね、最後の直線コースに入ろうとする。
その時だった。ウチのクラスの山峰が頭陀袋を脱ぐのに手間取り、ワンテンポ遅れてしまい、6位になってしまう。
山峰は焦りながらも走り、櫛田を抜いて5位になる。幸い1位から4位は割と固まっているのでまだ逆転可能だ。
そして4位のポニーテール女子との距離を詰めようとするが……
(何だありゃ?)
突然ポニーテール女子がチラチラと後ろを向き始めたのだ。明らかに挙動不審である為、男子からも戸惑いの色を感じる。
そして……
「うおっ!結構凄い事になったぞ!」
追いついた山峰とポニーテール女子が絡み合うように転倒する。
「網倉!」
Cクラスの男子が叫ぶ中、櫛田と7位と8位の2人が転倒した2人を抜き、ポニーテール女子……網倉はゆっくりと起き上がり、何とかゴールする。
一方の山峰は相当痛いのか蹲ったまま起き上がる気配を見せず、続行不可能と判断された。
周りが騒めく中、龍園を見れば口元をニヤつかせている。
大方ワザとだと思うが、推薦競技に出る山峰を潰してまで何をやらかすんだか……
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