腐り目、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
試合開始と同時に須藤は平田を乗せながら突撃を仕掛ける。こちらも距離を赤組の騎馬との距離を詰めにかかる。
須藤の狙いはCクラスの騎馬のようで、距離を詰めた瞬間……
「おらぁっ!」
突進をしてCクラスの騎馬を崩す。高円寺とアルベルトに次ぐフィジカルの須藤の突進に耐えられる騎馬はそう無いだろう。
これで白組の騎馬は7騎だ。しかし慌てるほどじゃない。点数を手に入れるのに必要なのは騎馬を倒すことじゃなく、ハチマキを奪うことだ。騎馬を倒した場合、ハチマキを奪えなくなるから得点に差は生まれない。
そうこうしているとAクラスの騎馬が俺達の方にやって来るが、俺は焦らずに相手の胸を優しく叩く。
「うわー、やべー」
胸を叩かれた男は棒読みで喋りながらブラブラ揺れるので、そのままハチマキを奪う。
「やられた〜」
騎手はのんびりと騎馬から落ちる。これで騎馬の数は同じだ。
「よし次行くぞ」
「あ、ああ……これって八百長だよな?」
「ああ。事前に坂柳派は手を抜くように約束してくれた」
俺の騎馬で1番前に陣取る小宮がそう言ってくるので頷く。これは須藤を叩く際に騎馬の数が多いと面倒だと有栖が判断して、龍園に手を抜く事を教えていた。
有栖からしたら須藤も由比ヶ浜同様に敵だからな。まあ激しくどつかれたから仕方ないけど。
「けど、これって赤組の上級生に文句とか言われないのか?」
「言われねぇだろう。既に赤組と白組の間には逆転不可能なくらい差があるし、2年生なんか学年全体で八百長やってるし」
さっきから上級生の競技も見たが、2年生の白組は露骨に手を抜いていて赤組に大差をつけられている1番の原因だ。
手を抜いている理由としては2年生における立場があるからだろう。2年Aクラスのリーダー、南雲雅は学年全体を支配していると聞いたことがあるからな。
何にせよ八百長をしちゃいけないルールなんてないし、そもそもDクラスの参加表がAクラスとBクラスに漏れてる時点で正々堂々なんて言葉は存在しないし。
そう思いながらも俺は坂柳派の騎馬の方に行くべく小宮達に指示を出す。
そして再度八百長をやりハチマキを奪ってから周りを見回すと既に殆どの騎馬が失格になっている。
Cクラスの連中は連携してDクラスの騎馬を倒しているが、須藤の突進により全滅。
Dクラスの騎馬は須藤がいる騎馬以外は龍園の騎馬とCクラスの騎馬により全滅。
Aクラスの騎馬も今俺が倒した事で全滅。
Bクラスの騎馬も葛城派の騎馬に負けて2騎失い、俺と龍園の騎馬だけだ。
結果的に2対1とあってこっちが有利だが、龍園の性格上普通に攻めるなんてのは有り得ない。
ともあれ須藤達に近づかないようにしながら龍園の方に近寄る。
「勝負アリだなゴリラ。2対1だから当然か」
龍園の言っている事は事実だ。龍園の騎馬のアルベルトを崩すのは無理だろうし、仮に崩せてもその瞬間に俺の騎馬が横から潰せば問題ないからな。
「はっ!タイマンじゃ何にも出来ないから2人がかりってか?卑怯者らしいぜ」
「いや、タイマンでも潰せるぜ」
「だったらタイマンで来いよ。それともビビってんのか?」
須藤は安い挑発をする。普通なら乗らないが龍園なら楽しみたいから乗るだろう。
もしくは……
「良いぜ。だったら比企谷の騎馬にタイマンで勝ったら相手してやるよ」
そう来たか。となるとプランDかプランFだな。
「何だ、やっぱビビってんじゃねぇか」
「見極めてやってんだよ。比企谷の騎馬に勝てないようじゃ俺の騎馬には勝てないからな。ま、お前みたいな単細胞じゃ比企谷の騎馬にも負けるだろうな」
龍園の執拗な挑発に須藤の額に青筋が浮かぶ。
「んだと……!」
「ダメだ須藤君。挑発に乗ったら相手の思う壺だよ」
平田が止めに入る。しかし即座に龍園は笑いながら口を開ける。
「事実を言っただけで挑発じゃねぇよ。比企谷相手に無様に停学を食らったカスだしな」
まあ実際停学にさせたのは有栖だがな。
「上等だ!そこの腐り目をサクッと潰してから、ぶっ潰してやるよ!」
須藤は怒声を吐きながら龍園ではなく俺を見る
「全員体勢を低くして守りの体勢に入れ。須藤の突進が厄介だ」
「「「了解!」」」
3人は腰を低くした構えを取る。向こうもフラストレーション抜群のようだが……
「あ、堀北が暑いからか、服をパタパタしてエロいな」
「何っ?!」
俺の呟きに須藤はDクラスの女子がいる場所を見るが、堀北は特にパタパタしていない。須藤が堀北に気があるのは知っているが……
「嘘に決まってんだろ。というかあれだけ息巻いてた癖に煩悩強いな」
敢えて挑発をする。すると須藤は羞恥と怒りで顔を真っ赤にする。
「テメェ……!ぶっ潰す!」
須藤は騎馬全体を引っ張るように突撃をして、防御体勢の小宮とぶつかる。
それに伴い騎馬全体が揺れて俺もバランスを崩しかけるが、ギリギリ耐えながら平田の伸ばす手を叩くように捌く。身体能力なら平田の方が上だろうが、バランスが悪いフィールドで戦っているので本来のポテンシャルを発揮出来ていないので、対処は可能だ。
しかし問題は騎馬の方にある。幾らこっちが防御体勢とはいえ、須藤のパワーに押されているのは事実だ。一応粘れてはいるが後少しで崩れるだろう。
「ちっ……!」
「おらぁぁぁぁっ!」
須藤の力は勢いを増し、俺達の騎馬がよろめく。マズい、そろそろ限界が近づいている。後少し耐えないと……
そう思いながら龍園を見ると、突っ張りのジェスチャーをしている。って事はプランFか。
そうなると……
「比企谷がピンチだ!やれアルベルト!」
横からそんな声が聞こえてきて、須藤は声のした方向を向く。その方向からは龍園の騎馬がやってくる。
「全員一歩後ろに!」
俺が指示を出すと騎馬は横を向いている須藤の隙を突いて一歩後ろに距離をとる。
須藤は慌ててこっちを見るがもう遅い。
ドゴッッッッッッッ
アルベルトが須藤に突進をぶちかます。
「ぐぁぁぁぁっ!」
フィジカルなら学年最強クラスのアルベルトの突進を食らった須藤は大きくぶっ飛ばされて、地面に叩きつけられる。
それに伴い、平田は地面に落下してしまい、赤組の騎馬は全滅となる。
競技終了の笛が鳴り、白組から歓声が上がるのを聴きながら騎馬から降りる。
プランFについてはとにかく守りに徹して、龍園が口約束を破って須藤に大ダメージを与えることで、結果的に大成功だ。
ちなみにプランDについては須藤が突進してきた際に俺が須藤達の方に倒れ、落下しながら須藤の顔面に肘打ちを叩き込むプランだ。
「大丈夫か比企谷?怪我はないか?」
龍園は白々しい言葉を吐き、石崎達はプルプルと笑いを堪える。
一方の須藤はよろよろと身体を起こし、苦しそうに睨んでいる。
「おいコラ龍園!どういうつもりだ?!」
「どういうつもり?クラスメイトが困ってるから助けただけだ」
龍園の言葉に石崎達は我慢に限界が来たのか呼吸困難になりかけ、俺も笑ってしまいそうだ。
「ふざけんな!タイマンって約束だろうが!」
そんな須藤に龍園は鼻で笑う。
「くはっ!寧ろあんな口約束を信じたのかよ?!どんだけおめでたいんだよ!」
まあ龍園の言葉は間違ってない。口約束なんてのは破られるのがオチだ。
「テメェ!」
「別に破ったからってペナルティはないし、破るに決まってんだろカス……行くぞお前ら」
龍園がそう言って歩き出すので俺達も退場ゲートに向かう。その際に須藤は追いかけようとするが、よろめいてしまう。やはりアルベルトの一撃は相当のようだ。
しかしアルベルトや龍園は処罰されないだろう。別にルール違反はしてないし、須藤も白組の騎馬に突進をしたから、こっちが処罰を受けるなら須藤も受けるのは明白だ。
なんにせよ今ので須藤は負傷したし、午後からの推薦競技も貰ったな。
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