「勝手にいいムードで終わらせようとしてんじゃねぇよおおおぉぉぉぉ!!!!!」
ワロスはさくやに向かいドドドドと砂埃を上げながら突進し、そして拳を振るった。
「ぶふっ!」
ワロスの拳はさくやの顔面に打ち込まれ、
さくやは突然の出来事に目をぱちくりさせた。
「ワロス…生きてたのか…」
「今のオメェになら、オレにも勝てるぜぇ!」
ワロスはさくやの腹を踏みつけた。
「うっぐ…ぐああ!」
「痛えだろ?オラァ!」
ワロスはその足でさくやの腹を踏みにじる。
腸の裂けた腹を踏みにじられたさくやは、腹の中を抉られるような痛みに苦しみ、そして咳き込みながら血を吐き出した。
「ゲホッ!ガホッ!」
「テメエに潰されたタマの恨み晴らしてやるぜ!もうテメェの言ってた化け物も出て来ねえみてぇだし、テメェをぶち殺して、オレが優勝だあ!」
さくやはぼろぼろになりながらも、
目の焦点をワロスに合わせ声を発した。
「タマナシが…お前みたいなヤツが、
これからなにを楽しみにして生きていくつもりだ?」
息も絶え絶えながら気丈にワロスを煽りながらも、
この時さくやは、ある思いを抱いていた。
(すでに仇は討った。もうこんなところのルールに従う必要もない)
さくやは迷っていた。ワロスの事は気に入らないが、この闘技場のルールに最後まで従って、ひとりの男の命を奪っても良いものか。
世界のより強い剣術を求めてジパングを出て以来、激しい戦いの日々は相手の命を容赦なく奪う修羅のような人格をさくやに形成したが、そのような中でも数々の良き出会いによる影響と、何よりアリスと出会い過ごして来た事で、戦う相手にも憐憫の情がさくやの心に芽生えるようになっていた。
(どうする…)
「テメエのせいで、テメエをレイプしたくても出来ねぇよおぉぉ!!!」
(決めた、コロそ^q^)
ワロスは左手に鋭利なものを持った。
さくやがエルロイに投げたアサシンダガーである。
「これでテメェの腹を裂いて、ハラワタを引きずり出してやるぜぇ!」
ワロスはさくやの身体を跨いで、ダガーを逆手に持ち、さくやの腹に狙いをつけた。
「死ねやぁ!」
さくやは残りの力を振り絞って起き上がり、ワロスの手首を掴んだ。さくやの今の握力で、ワロスの手首を潰す事は出来ないが、それでもワロスのダガーを握る手は徐々に力を失っていった。
「ぎえぇ!コノヤロォ!!」
ワロスが右手で抵抗しようにも、すでに潰されているのでどうする事も出来なかった。さくやはワロスからダガーを奪い取ると、両手で逆手に持ち、ワロスの脳天に突き立てた。
ワロスは両手で頭を抱えて立ち上がり、ふらふらと横に回りながらさくやから離れていくと、
「オーーーーーマイ、ガーーーーーーーーー!!!!!!!」
という断末魔と共に頭から血を噴出させ、バタンと倒れて、足を一定の周期の間隔で痙攣させた。
さくやは、ふたたび仰向けに倒れ、そのまま目を閉じ眠りについた。
ーーーーー
さくやが目を覚ますと、そこはサマンオサの宿屋だった。
「さくや!よかった、目が覚めた!」
アリスは涙ながらに喜びの声をあげると、さくやにかけ寄り縋った。
「アリス…大丈夫、生きてるよ」
さくやは子供をあやす仕草でアリスの頭を撫でた。
「ここは…サマンオサの宿屋か」
「そ!」
さくやの問いに答えたのはアヴァであった。
「大変だったのよ。あの後賭けに勝っただの負けただの、ジッパーがどうのこうの騒ぎまくる人混みを掻き分けてさ、3人でさくやをここまで運んで、教会から神父と僧侶をいるだけ連れてきて、アンを筆頭に教会のみんなと協力してさくやの手当てしてさ、さくやってばそれから2日も目を覚さなかったのよ」
「そんな大掛かりな……お金がかかったんじゃないのか?」
アリスはその言葉に、喜びの表情のまま、微動だにしない石像のように固まった。アンもどことなくよそよそしくソワソワしている。
「おい」
その時、アヴァだけが明るく「あーそれね!」と答えた。
「あたしね、さくやがゲームに参加する事になって速攻で全額賭けに行ってたのよ。やっぱり持つべきものは強い仲間よね!」
さくやはアヴァに必殺のボディブローを、、、寸止めした。
「ありがとう」
…
一方その頃、ジパングの戦士がサマンオサの騎士を殺害したという知らせをきっかけに、サマンオサはジパングに宣戦布告をし、まもなく両国は戦闘状態へと突入した。