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桜の花びら舞い散る季節。
高度育成高等学校。希望する就職、進学先にほぼ100%応える全国屈指の名門校に入学を果たした
(なんで一之瀬さんがこの学校に!?)
長くスラリと伸びたロングウェーブの綺麗な髪とクリッとした大きな瞳。二つのボタンで留められたブレザーを押し出す大きな胸。
青少年の理想を具現化した美少女の名前は一之瀬帆波。
一之瀬と同じ中学だった桐山は、彼女に二年間密かに恋心を抱いていた。
(しかもちらちらこっちを見てくるし!)
桐山たち1年B組の生徒は、担任である星之宮知恵からの説明を終え、入学式までの空き時間を各々自由に過ごしている。
桐山は一之瀬との再会に動揺したまま自席から動けないでいた。
逆に一之瀬は新たなクラスメイトと交流を図っている。
一之瀬はクラスメイトと会話をこなしながら、ちらちらと桐山に視線を送っている。
(とりあえず俺もクラスメイトに話しかけないと)
一之瀬からの視線は気になるところだが、桐山は新しい人間関係を築くために近くにいた男子に話しかけることにした。
「俺は柴田颯! よろしくな!」
桐山が話しかけた男子はフレンドリーですぐに打ち解けることができた。
この学校は3年間クラス替えがないため、今この教室にいる生徒たちと3年間付き合わなければならない。
(まだこっちを見てるよ)
柴田と交流を深めている間も一之瀬は桐山に視線を向ける。
(向こうから話しかけてくるのを待つか)
一之瀬は明らかに桐山を気にしている。
ならばいずれ彼女から話しかけてくるだろう。
桐山はそう判断して、彼女の視線を気にしないよう努めた。
その日の夜。桐山はベッドに寝そべりながら一之瀬の事を思い出していた。
「まさか一之瀬さんと再会するなんてな」
二年間も憧れ続けていた美少女との再会に桐山は心を震わせていた。
ただし再会と言っても、桐山と一之瀬は数えるほどしか会話をしたことがなかった。
そもそも二人は中学3年間一度も同じクラスになったことがなければ小学校も別々だった。
「もしかしてちらちら見ていたのって俺のことを思い出せずにいたとか!?」
その可能性はありえた。
桐山は友人が多かったが、勉強も運動もそこそこの生徒で、一之瀬のように目立つ存在ではなかった。
彼女と会話をしたのも、花壇の水やり中に数回声をかけられた程度だ。
なので一之瀬がこの人どっかで見たことあるな、と思っていても不思議ではない。
「あと可能性があるのはアレのことか……」
一之瀬は中学3年の夏にとある事件を起こした。
同じ中学である桐山はそれを知っている。
一之瀬にとって自分の過去を知る存在は不安だろう。
もし桐山は彼女の過去を暴露してしまったら、一之瀬はこの学校で居場所がなくなってしまう。
もちろん彼女に好意を抱いている桐山はそんなことをするつもりはない。
「向こうから話しかけてくるのを待つか、一之瀬さんが一人のタイミングで声をかけてみるか」
☆☆☆
桐山が高校に入学してから一週間が過ぎた。
クラスにはすでに何個もグループが出来上がっていた。
桐山は柴田、神崎の男子3人で少人数グループを形成しており、昼休みも大体この二人と行動を共にしている。
「桐山は部活入らないのか?」
「入らないよ。高校は帰宅部だと決めてたし。神崎は?」
「俺も学業を優先したいから帰宅部だ」
サッカー部に入部した柴田は桐山と神崎の答えを聞いて落胆した。
高度育成高等学校は一学年で男子が80人しかおらず、必然的に同じ部活に入部する生徒がほかの学校より少なくなる。部活の花形であるサッカー部の新入部員も7人しかいなかった。
「マジか。気が変わったらサッカー部に入ってくれよな」
「気が変わったらな」
「変わることないだろうがな」
桐山も神崎も部活は中学までと決めている。
学業優先の神崎と違い、桐山は青春を謳歌するため帰宅部を選んだが、現代の高校生らしい考えだろう。
(もし一之瀬さんと付き合えたら最高だな)
一之瀬を彼女にできればきっとバラ色の高校生活になるだろう。
桐山は可能性は低いとわかっていながらも、淡い期待を捨てられずにいる。
(まぁ、一週間経っても話しかけられないし、声をかけることも出来てないんだけどな)
一之瀬はすぐにクラス一の人気者になっていた。
バラバラだったBクラスを短期間でまとめており、すでに一部の生徒からは厚い信頼を得ている。
そのため常に彼女の周りには人がいるため、桐山は一之瀬に声をかけられずにいた。
「ん?」
桐山が食堂から戻ると机の上に小さなメモ用紙が置いてあった。
(なんだこれ?)
メモ用紙をめくるとこう書かれていた。
―――放課後、音楽室に来てください。一之瀬帆波
桐山の心臓がバクバクと速くなった。
(一之瀬さんからの呼び出し? マジかよ!?)
想いを寄せる少女からの突然の呼び出しに桐山は胸を躍らせる。
桐山が恐る恐るメモの送り主に視線を向けると、一之瀬と目と目が合った。
一之瀬は顔を赤くしてうっすら微笑んだ。
「っ……!」
明らかに桐山に向けた一之瀬の笑顔。
桐山は自分だけに向けられた天使の微笑みにノックアウトしてしまった。
☆☆☆
放課後になり、すぐに教室を飛び出した桐山は、当然一之瀬より早く待ち合わせ場所に到着した。
この学校は吹奏楽部や合唱部がないため、放課後に音楽室が使われることはない。
一之瀬はそれを知っていて、音楽室を待ち合わせ場所にしたのだ。
桐山が到着してから5分後。一之瀬が音楽室にやって来た。
一之瀬は恐る恐る扉を開け、桐山がいることを確認すると、ほっとしたような顔で入室した。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
「いや、それほど待ってないから大丈夫」
桐山と一之瀬が会話をするのは8ヶ月ぶりだった。
(久しぶりにまじまじ見るけど、また胸が大きくなっているような)
一之瀬の胸が急成長したのは中学3年になってからだった。
桐山は2年間片思いをしていたので、一之瀬の胸の成長過程を知っている。
中学3年の夏で巨乳と言えるレベルだったが、一之瀬の胸は8ヶ月でより大きくなっていた。
「え、えっと……」
桐山の下衆な視線に気づいていないようで、一之瀬が話を切り出そうとする。
「なに?」
「あ、あのね……」
一之瀬がモジモジしながら、深呼吸して口を開いた。
「桐山くんにお願いがあるの」
「お願い?」
「うん。……桐山くんは私が万引きしたこと知ってるよね?」
「っ……」
桐山の思い人である一之瀬帆波は万引き犯である。
中学3年の夏。一之瀬は万引きを犯して、学校に来なくなった。
現役の生徒会長が万引きをして不登校になる。
そんなスキャンダルなニュースに学校は大きく揺れた。
幸いお店側が被害届を出さなかったため、一之瀬が警察に逮捕されることはなかったが、彼女が築き上げた信頼は一気に崩れ落ちた。
「……知ってるよ」
桐山は仲が良かった生徒会の副会長が一之瀬に対して憤怒していたのを思い出す。
彼が一之瀬に怒るのも無理がない。いきなり生徒会長が不在なったのだ。副会長の彼に大きな負担が圧し掛かるのは当然だった。
「だよね……」
万引きが発覚してから一之瀬は一度も登校しなかったが、彼女の行動は正解だったかもしれない。
人気者の一之瀬であったが、中には彼女を妬む生徒もいた。
その生徒たちが一之瀬の机や私物に悪戯をし続けたのだ。
それはいじめと呼んでもおかしくないものだった。
「お願いって……万引きしたことを黙っててほしいってこと?」
「……うん」
桐山は言われるまでもなく黙っているつもりだった。
自分の好きな人が笑顔を取り戻したのだ。
「黙っててくれたらなんでもするから。お願いします」
「………………え?」
もちろん誰にも言わないと桐山が言葉を放とうとした瞬間、一之瀬の口からとんでもない発言が飛び出した。
(な、なんでもするって言った? 言ったよな!?)
今の冗談だよね、と桐山が視線を送るが一之瀬は頭を下げたままで表情が読み取れない。
(いや、さすがに冗談だよな)
言葉を交わした回数はわずかだが、桐山は一之瀬がそんなことを言う人間でないことはわかっていた。
だから彼女なりの冗談だと桐山は判断する。
その判断が間違ってると知らず、桐山も爆弾発言をしてしまう。
「そ、それじゃ……エッチさせてくれたら黙ってるよ」
これで一之瀬は「桐山くんのエッチ」と笑いながら突っ込んでくれるだろう。
桐山はそう信じていた。
だが一之瀬の答えは予想外のものだった。
「……いいよ」
「ふぁ!?」
「その……え、エッチさせてあげるから……万引きしたことは、黙っててください」
「っ……」
顔を紅潮させ潤んだ瞳で見つめられた桐山の股間が急激に膨らんだ。
(ま、マジか……。一之瀬さんが俺とエッチしてくれるって……)
桐山一馬は基本的に善人である。
保護者の教えに従い相手が嫌がることは一切しないし、困っている人がいたら放っておくことができない。
また、不良に絡まれた友人を助けるために躊躇なく飛び込める勇気もある。
だから普段の彼ならば、不埒なお願いなど断れたはずだ。
だが今回は違う。
相手は二年間思い続けた少女だった。
彼女が不登校になってからもう会えないだろうと思っていた。
高校で再会できただけで嬉しかったのに、そんな彼女とセックスができる機会が訪れたのだ。
(こんなチャンス二度と来ない!)
桐山がこの世に生まれて15年。初めて欲望が理性を上回った瞬間だった。
「一之瀬さん、いいんだよね?」
「うん」
顔を紅潮させたまま一之瀬はゆっくり頷いた。
「そ、それじゃ、俺の部屋に行く……?」
セックスをするとしたらどちらかの部屋になるだろう。
経験がない桐山に野外でセックスする選択肢はなかった。
「お、お願いします……」
「それじゃ行こうか」
「あ、待って」
了承を得たので桐山が踵を返すと、一之瀬が彼の袖を掴んだ。
「どうしたの?」
「や、薬局に寄ってから桐山くんの部屋にいこう……」
「薬局?」
「ゴムを買わないと。その……赤ちゃんができちゃうから……」
「っ!?」
早く彼女を抱きたい。
そんな気持ちが先走った桐山は避妊をしなければならないことを頭の中からすっぽり抜けていた。
(い、一之瀬さんの口から赤ちゃんができちゃうって!?)
彼女の口から放たれる卑猥なワードに桐山は興奮しっぱなしだ。
「そ、そだね! まずは薬局に行こうか!」
「うん」
薬局までの道のり。
二人の顔は首の付け根まで朱を注いだように真っ赤のままだった。
「た、たくさんあるんだね……」
薬局に辿り着いた二人は早速避妊具を物色する。
あまりの種類の多さに一之瀬は驚愕した。
「うん。正直何を買えばいいのかわからない」
彼女いない歴=年齢の桐山は当然避妊具を購入したことはない。
(つか、敷地内の薬局にコンドームが売ってるってことは……そういうことだよな)
高度育成高等学校は不純異性交遊を禁止している、
だが薬局には多くの避妊具が発売されている。
さらに男女は階数が違うだけで同じ寮に住んでいる。
肉体関係を持つのは暗黙の了解ということだ。
「とりあえずこれでいいかな」
人気がありそうなデザインのパッケージを手にする桐山。
薄いだの、いい香りがするだの、いろいろ書いてあるが桐山はデザインで決めることにした。
「き、桐山くん、待って」
「どうしたの?」
「こ、これ……」
「アフターピル?」
一之瀬が桐山に見せたのは市販のアフターピルだった。
以前は医師の処方箋がなければ入手できなかったが、現在は薬局で簡単に入手できるようになった。
「これを飲めばコンドームはつけなくていいんだって」
一之瀬がパッケージに記載している説明文を読み上げる。
「そ、そうなんだ」
「どうしよっか?」
「うーん」
経験がない桐山にとってどちらがいいのか判断がつかない。
「あ、あのね……」
「ん?」
「せ、セックスって生の方が気持ちいいんだって」
「……はい?」
「だ、だから……アフターピルを買おっか」
なぜ一之瀬は脅されているのにこんな乗り気なのだろうか。
(一之瀬さんは何を言ってるんだ?)
桐山は疑問に思ったが、彼女が心変わりするのが怖かったので、突っ込まないことにした。
「そ、そうしようか」
「う、うん。それじゃ会計してくるね」
「いや、俺が出すよ」
「で、でも……」
さすがに女子に買わせるほど桐山は腐ってはいない。
それに一之瀬帆波を抱けるのだ。
3000ポイントなど彼にとって安いものだ。
「いいから」
「なら割り勘にしよ」
「割り勘?」
「うん。……だめかな?」
桐山と一之瀬の身長差は10センチほどある。
なので一之瀬が桐山を見つめると必然と上目遣いになる。
さらに瞳も潤んだままだ。
「だめじゃない」
そんな一之瀬のお願いを桐山が無下にできるはずがなかった。
他作品と違ってより丁寧にエッチ描写書きたいと思います!