今回は導入部なのでエロはありません。
個人レッスン開始
私たち清澄高校麻雀部も二年生となりだいぶ落ち着きました。
清澄高校も新入部員を獲得し、新メンバーとともにインターハイ連覇をめざし、日々鍛錬を続ける毎日です。
新入部員もほとんどが経験者で私達もうかうかしていられません。
「のどちゃーん、こっちの子からの質問なんだけどー」
「はい解りました。そちらはですね…」
私、原村和も新副部長として新入部員たちの実力向上のため教える毎日です。後輩に教えていく中で、新しい発見などもあり、なかなか楽しいです。
しかし、清澄麻雀部として問題があるとすれば…
「須賀先輩これなんですが…」
「須賀先輩、牌譜の整理をお願いできませんか?」
「ああわかった。そっちのことは…」
男子部員は一人も入部が来ず、そのせいで団体戦に須賀君は今年も団体戦が出来ず、さらにはまた男子一人という肩身の狭い状況に陥っています。
それだけではなく、須賀君はまだマネージャーのようなことをさせられています。
新入部員の多くは熾烈なレギュラー争いのために一回でも多く打ち、実力をつけたいため雑用が出来ない子がほとんどです。
また、まったくの初心者の子たちも一生懸命須賀君のお手伝いをしようとしているのですが、二度手間や足を引っ張ってしまうケースが多く、結局は須賀君がやらなければならないことがほとんどです。
「どうすればよいのでしょうか…」
このままでは須賀君の実力が付きません、いや、それだけならばまだしも、後輩たちに下に見られ、精神的に大きく負担がかかる可能性が高いです。
最悪のケースである心に傷を負って退部、なんてこともこのままではけっしてそう遠くない未来ではありません。
※
「京太郎の件はわしも常々考えておったよ」
まずは人の意見を聞いてみるべきだと思い、現部長であるまこ先輩に相談をしてみました。
「雑事を押し付けては2年としての示しがつかんしのぉ」
「さすがに練習時間もとれないのは…須賀君にも個人戦があるのですし…」
須賀君本人も今年の個人戦は清澄麻雀部の男子代表として頑張りたいと言っていました。本人が頑張りたいと言っているのにその環境を作れないなどあってはならないことです。
「じゃがどうする。今年の新人たちはレギュラー争いのため少しでも強くなろうと大忙し。そんな新人たちに無理やり雑事を押し付けては京太郎に怒りの矛先が向きかねんぞ」
「それは…」
なんとなくですがそんな空気が蔓延しているのはわかっていました。新入部員の中の経験者の子の中には『全国優勝した清澄として、連覇のために強者は練習に力を入れ、雑事は弱者にやらせるべきだ』という過激な意見を持っている子もいると伺っています。
彼女たちにとって『弱者』というのは間違いなく須賀君のことでしょう。
団体戦のため、そして清澄高校の連覇のための意見としては間違いないのでしょうが、私にとって正しいとは思えません。
「まずわしたちがやらなければならないことを確認していこう。一つ目は初心者…というよりも京太郎を軽視する空気をどうにかせねばならん」
「どうにかって…」
簡単に言ったがこれはなかなか難しい。口で言ってどうにかなる問題ではない。たとえ口で言ったとしても彼女たちもその場では従うかもしれないが、心のうちでは反発するであろう。
「これは京太郎本人が示すしかなかろう。大会で結果を出す。これが一番じゃ。そのためにも二つ目に麻雀を学ぶ時間を取ってやりたいのぉ」
「そのための時間が雑事でつぶれてしまうんですが…」
「それはわしが何とかする。わしも京太郎に甘えすぎとった。反省してわしが初心者連中に雑事を叩き込む。これで少しは時間がとれるじゃろう」
「ですが…」
それでも今から大会で結果を出すようなほど練習ができるのであろうか。もうすぐ5月だ。あと1か月と少し、部活動だけでそれほど多くの練習はできない。
とするならば…
「私が個人的に放課後に教えます。放課後に私の家で個人レッスンします」
「大丈夫なのか…ぬしの家の父は厳しいと聞いたが」
「大丈夫です。あのインターハイ以来、お父さんすごく優しくなったんですよ」
あの大会以来、父は私を一人前の大人のように扱ってくれ、ほとんどのことには口出しせず、大目に見てくれるようになったのだ。
「じゃが三つ目の問題が残っておる。京太郎のストレスケアじゃ。後輩たちからの軽視される視線、雑事を押し付けられる不満、そのうえ今度は部活後まで縛られるのであろう。それらストレス要因をどうやって消すかじゃな…」
「それは…」
そうだ。彼の心は現状でもかなり危ういところに立っていると思われる。さらにこれ以上詰め込むとすれば破裂してしまってもおかしくない。
結局この点には答えが出せないまま私たちの話は終わってしまいました。
※
「そりゃあのどちゃんのおっぱいをぐわしぃっと揉ませるのが一番だじぇ~」
「ゆーき…」
質問した私が思わずがっくりするような答えが返ってきました。思わず冗談ですよねと聞き返すとホントだじぇと否定するような言葉が返ってきました。
「あのバカ犬は年中発情期だからな~のどちゃんのおっぱい揉ませればいっぱつで元気百倍間違いなしだじぇ」
「私も同意見かな~」
「咲さん…」
隣で聞いていた咲さんまで同意見だったようです。中学生からと付き合いが長い咲さんまで同意見なんですか。
「京ちゃんおっぱい星人だしね~なんだかんだそれが一番効果あると思うよ」
「…そうなんですか」
男性の多くは女性の胸の大きさに固執している。彼もその例にはみ出ていないということは知っていましたが…
「そこまで効果があるんでしょうか…」
須賀君の折れてしまいそうな心をつなぎとめる。その効果が私の胸にあるのだとしたら…
「まあそれは置いておいて…京ちゃんの問題は私たちも何とかしたいなって考えてたんだよ。それで考えたんだけど和ちゃんの方には京ちゃんの強化に専念してもらえるかな?」
「私たちはレギュラー候補たちを面倒見てやるじぇ」
と思考していると二人から予想外の提案がありました。
「あの…二人は教える側には…その…」
どうにも咲さんは自身の運の偏りに頼った戦術を中心としており、それは他者にあまり参考とならないような気がします。ゆーきの方もあまり他者に教えるような性格とは思えません。
「まあそう思えるよね。だけど私たちが教えるのは実戦方式だからね。対局を通して自身で学んでもらうんだ」
「全国優勝者達の麻雀見せてやるじぇ」
「なるほど…」
それならば二人とも大丈夫かもしれませんですが…
「大切なレギュラー候補たちの心を折らないでくださいね。特に咲さん…」
「え!?そんな心配出るの!?」
あまり自覚していませんが咲さんの麻雀は後輩たちから対局者の心を折ると評判なんですからね。そのせいで陰で魔王なんてあだ名が付けられているんですよ…
※
「え!?和の家に個人レッスン?行く行く!」
とりあえず行動すべきであると須賀君を誘ってみたところ、喜んで誘いに乗ってくれました。あまり放課後の行動を縛られることに苦痛を感じないでくれたことに喜びながら、須賀君を我が家へと招待しました。
「うお~ここが和の家か~なんか緊張するな~」
「そんなに緊張しないで大丈夫ですよ」
まるで子供のような須賀君の反応に微笑みながら我が家の中を通し、勉強部屋まで案内する。
「ここが和の部屋か?なんだか本しかないんだが」
「違いますよ。ここは勉強部屋です。理論を勉強してもらいますから覚悟してくださいね」
そんな~という言葉とともに勉強が始まります。がんばりましょうね、須賀君。
※
「須賀君違います。そこは…」
「ああ悪い…ここ何度も間違っちまったな…」
須賀君自身申し訳ないと思っているのでしょう。ですが今一つ身が入っていないような感じがします。
ただ単に集中力不足となっているのではない。これは多分心のどこかで麻雀にかかわることに苦痛を感じてしまっているのではないかと思います。
須賀君は私たちとの対局がほとんどで、常に格上との対局でした。そのせいでラスを引いたり焼き鳥での3位などのケースが多かったのです。
そのせいでこの一年間あまり勝つことが出来ず、麻雀自身に内心嫌気がさしているのではないでしょうか。
(これは思ったよりも重傷かもしれませんね)
努力が実を結んでいるのが実感できない。自身が勝利している未来が想像できない。
本人が初心者なのに周りにいるのは全国優勝者。
常に負ける確率が高い勝負に挑まされ続けるなどもはや拷問である。
(もっと早く行動すべきでしたね…)
振り返ってみればここまで過酷な環境においてしまっているとは思わなかった。彼と同じ立場の人間がもう一人いれば話が違ったのであろうが、それはいなかったのだ。そんな彼の心を傷つけた私たちが癒す必要がある。
(ならば仕方ありませんね…)
これは医療行為なのです。須賀君の傷ついている心を癒すための治療行為。心肺停止している人を人工呼吸するのには恥ずかしがっている場合では無いのと同じです。
が、少し心の準備が必要です。覚悟を決めるためにも一息つく必要性があります。
「ここらで少し休憩でもしましょうか。」
「あ、ああ。わかったよ」
私の言葉に須賀君はほっと安心したように笑います。失敗続きで精神的に疲れていたのでしょう。
「なにか飲み物持ってきます。ココアでいいですかね?」
「ああ」
疲れた体と心には糖分が必要です。ココアにたっぷりと砂糖を入れ、須賀君のもとへと持っていきます。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
おいしそうにココアを飲む須賀君の顔を見ながら、自分の中の覚悟を決めるため深呼吸を一つ、二つとしていきます。これから行う行為にはどうしても羞恥心がわいてきてしまいます。変に思われたり、引かれたりしないだろうかと思いながら覚悟を固めようとするもうまくいきません。
「なあ和どうしたんだ?」
そんな風に深呼吸をしている私が不思議だったのか、須賀君が不安そうな顔で話しかけて来ました。
「なにか困ったことでもあるのか?俺でよければ話だけでも…」
「須賀君…」
そんな風に自分を差し置いて私の心配をしてくれる彼の優しさに感動しながら、そんな彼を助けるためならば、と遂に覚悟が決まりました。
「須賀君」
「はい?」
彼の顔をみながら
「だいじょうぶですか?」
顔を赤く染めながら
「お、おっぱい…も、揉みますか?」
そう発言したのでした。
なぜかシリアスに染まってしまった…
次回からは明るい感じになると思います。