「今日は皆に私の協力者を紹介するわ。こちら元悪魔祓いで現在はフリーの紫藤イリナさん。人間だけど実力は私たちに負けず劣らずだから変に見下さない様に」
「リアスったら……私たちだって多くは元人間ですのよ。ただの人間だからと言って下には見ませんわ。ねぇアーシアちゃんに小猫ちゃん」
黒髪の女性が近くで紅茶を飲んでいた金髪の少女とお菓子を食べていた白髪の少女に声を掛ける。
今日のお茶菓子は今紹介された紫藤イリナが持ち込んだもので、昼間に並ばなければ買えないぐらいには人気のある店の商品だ。
「悪魔祓いと言うと教会の方ですか?」
「んー、元かな。それにしてもまさか駒王で貴方に会えると思っていなかったわアーシアさん。聖女から魔女と呼ばれた貴方に……ってああ気を悪くしないで頂戴。私は別に貴方を魔女とは思っていないわ。悪魔を治せたのであればそれも主の作り出した神器の効果の一つ。だというのに教会の者たちときたら……」
「あ、ありがとうございます」
「……イリナさんはどうしてリアス部長の協力者に?」
「ちょっとした個人的な事情で教会の戦士を止めちゃったのよ。それで生きていくためと守りたいものの為にリアスさんとは力を合わせることにしたの。前までの私であれば悪魔何かと手を組むなんてありえないって言ってたけどね」
あははと苦笑いをしながら頬を掻くイリナ。
彼女に質問をした白髪の少女―塔城小猫は疑問が解決するとまたお菓子を食べる作業に戻る。お菓子を食べるのが好きな彼女でも今回のお茶菓子はあまり数を食べていない。ここぞとばかりに食べる。サクサクとしたクッキーとその中に入っているチョコチップの塩梅がまた絶妙。
「……悪魔祓いと言うと聖剣を持っているんですか」
「裕斗!ごめんなさいねイリナ。あの子聖剣には並々ならぬ思いを持っていてね」
「大丈夫ですよ。そうねえっと……」
「木場裕斗です」
「木場君の望んでいる物と同じかは知らないけど、確かに私は聖剣を持っているわ。でもこれは教会から下賜されたものではないのよ。丁度一月前に扱えるようになったオリジナルの聖剣。名をガラティーン。騎士王アーサーが持っていたとされるエクスカリバーの姉妹剣よ」
騎士王アーサーの配下の一人で太陽の騎士と呼ばれていた騎士ガウェインが持っていたとされる聖剣。剣の柄には疑似太陽が内蔵されており、ガラティーンに斬られたものは焼けるような熱さを覚えることになる。
「ガラティーン……すみません。違うモノだと分かってもまだ僕には整理できません。すみません部長、僕先に今日は上がります」
「そう……無理にとは言わないわ。ゆっくり休んで頂戴」
金髪の髪を短髪にしている美少年―木場裕斗はそれだけを言うと荷物を手に取り部室から出て行った。
「さて、じゃあ次は私の眷属を紹介するわ。さっき出て行ったのは木場裕斗。騎士の駒を与えた子よ。こちらは私の女王であり部活の副部長でもある姫島朱乃よ」
「朱乃と呼んでくださいねイリナさん」
「此方こそよろしくお願いします。私の事もイリナと呼び捨てで構いませんよ朱乃さん」
握手し、互いの実力を自然と図る。最近になって父親の力を使い始めた朱乃と、天然の聖剣使いになったイリナ。
まだまだ伸びしろがあり、これからの成長が楽しみだ。
「それでこっちはアーシア・アルジェント。貴方が言ったように元は教会でシスターをしていた子よ。堕天使の策略で命を落としたところを私が眷族にしたの。彼女の神器の事もあり与えた駒は僧侶」
「アーシア・アルジェントです。えっと……イリナさんとお呼びしても?」
「勿論。私もアーシアって呼ばせてもらうわ。それにしても貴方大変だったのね。教会では魔女とされた後は情報が入ってこなかったのよ。だから多分、他の教会関係者は貴方の事を魔女と呼ぶだけでなく、悪魔に身を売った魔女と呼ばれるかもしれないわ。だから何か困ったことがあれば相談してよ。力になれるかは分からないけど話は聞けるし」
「はいっ!よろしくお願いします」
イリナ以外の教会関係者の事を聞かされた時は胸にちくりとした痛みが走った。だけど、一人でも彼女という事情を知ってくれている人がいる。そう思うと彼女は嬉しい気持ちになった。それに部活の仲間やイリナだけでなく、もっと大事な人も自分のよき理解者なのだ。だから彼女が悲観する事はない。
「最後に塔城小猫。さっきからお菓子ばっか食べてるけどね。彼女だけは元人間じゃなくて、猫又と呼ばれる妖怪だったの。ま、色々と事情があって私の眷属をやっているわ。駒は戦車。小柄な彼女がバリバリの接近だと思わないでしょ?彼女のファイトスタイルも近距離のモノばかりだし丁度良かったのよ」
「……塔城小猫です。年も一つ下だそうですし小猫と呼び捨てで構いません」
「ん、ならよろしくね小猫。私の事もイリナで構わないわ」
小さな小柄に似合わず力があるのか握力が強い。流石は悪魔。根本的な部分で人間と違うのか。はぐれ悪魔を数多く倒してきたが、もう少し考えを改めたほうが良さそうだ。
「本当はもう一人男の子がいるんだけど、彼今補習を受けているのよ。だから今日は紹介できなくてごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です。私の記憶が確かであれば知っているので」
「あら?……イッセーとはどういう仲で?」
「ただの幼馴染ですよ。私は遠目でも分かりましたけど、彼は分からないでしょうがね」
「そう……まぁ、いいわ。とりあえず今日は紹介できただけでも良かったわ。最近この駒王には聖剣強奪犯が潜んでてね。魔王様に応援要請は出しているんだけど、名ばかりとはいえ管理者だから犯人の特定及び、潜伏場所の特定をしたいのよ。イリナには昼間怪しそうな場所を探してもらって、私たちが夜にでもこっそりと見に行く感じで行くわ」
仕事の事もそれっきりで、久々の女子だけの部室で女子トークに耽る。
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その日の深夜。
リアスに呼ばれたイリナは御手洗に夜中に外に出ると伝えると駒王学園に忍び込む。昼間の喧騒が嘘のように静かで、却って不気味だ。
ギシギシと音のなる旧校舎を歩き、目的地であるオカルト研究部の部室へ辿り着く。ドアをノックした後に入ると数人の女性がいた。
「私を呼んだのは何でしょうかリアスさん」
「ふふっ……そう急がないの。といっても流石に気付くでしょ?私だけでなく彼女たちもあの子の空気を少なからず纏ってるんだから」
部屋の中に居たのはリアスと朱乃、アーシアの三人だった。夜中という事もありお茶菓子は出しておらず、代わりにハーブティーの良い匂いが鼻をつく。
夜中にカフェインを取るのは健康に悪いからの配慮なのかハーブティーは有難い。幾ら夏に近づこうとも旧校舎の中は少し寒く、温かい飲み物が美味しく飲める。
「ふーん……複数の悪魔と言っていたけれど、それは朱乃さんとアーシアの事だったんだ」
「ええ、私も先生……あっ、隆君の事ね。先生の女よ」
「はい……私も隆さんの女の一人です」
「これで呼んだのも分かるでしょ?裏を知る私たちと違ってあの子は只の人間。一応ある程度の情報は教えてあるけど、巻き込まれたら大変な目に合う事だけは分かるわ。だからこそ私は貴方達を呼んだの。あの子を、隆を守るために協力して頂戴」
「水臭いですわリアス。私はもう先生なしには生きていけないもの。あの人を守る為なら協力だっていくらでもするわよ」
「わ、私だってしますっ!……癒す事しか出来ない私ですが、何かしらの形でも助けになれば」
「あの人は壊れた私の居場所よ。そんな事情も知らない相手にみすみすと彼を渡す気はないわ」
「ふふっ、流石はあの子が女にした子たちね。普段は弱気のアーシアさえもその気にさせちゃうんだから。協力と言っても今の段階で出来ることは少ないわ。幾らグレモリー家の令嬢と言えど私も只の次期当主でしかない。まだ権力も持っていないし、彼を絶対に守れるほどの実力もない。だからこそ私たちで秘密裏に特訓をしたいと思うの」
そう言うとリアスは指を鳴らす。
今まで何もなかった場所に不思議な空間が出来上がる。ユラユラと揺らめくドアのようなものがある謎の空間。
「これは私の魔力を応用した空間転移魔法よ。予め繋いで置いた一点と現在地の私の居場所を繋ぐもの。このドアを潜れば冥界のグレモリー家の所有する土地に着くわ。今そこには私の姉……といっても義理なのだけど、彼女がいるから彼女に修行を付けてもらうわ。先方に話は付けてあるし、何よりもあの人の実力は魔王様が認めているわ。彼女の特訓さえ乗り越えられれば今以上に強くなれることは間違いないわ」
本来人間界と悪魔の住む冥界を行き来するには専用の通路を使わなければ移動できない。だがそれを可能にしたのがリアスの滅びの魔力と呼ばれるモノ。
グレモリー家に遺伝する魔力で、リアスは兄であり魔王よりも滅びの魔力という面ではずば抜けて才能を持っている。滅びの魔力からマイナスである滅びを抜き、プラスマイナス0にした状態で空間魔法を上書きする事で出来た正真正銘彼女だけのオリジナル魔法。
一度使うのに魔力の半分を持ってかれるという欠点があるが、使い慣れて行けば少ない魔力で行使できるようになるだろう。
「取りあえずは一週間。でも、一気に人がいなくなれば学校も、駒王の管理も滞って大変な事になるわ。だからまずは私と朱乃が行ってくる。一週間後に此処に戻ってくるから、一週間後の深夜にこの部屋にきて頂戴。入れ替わりでイリナとアーシアを冥界に送るわ。ただ気を付けてね。私の義姉ではあるものの、特訓となれば遠慮なくビシバシしてくるだろうから」
そう言うとリアスと朱乃は不思議なドアを潜り姿を消した。
部室に残ったのは元教会組であるイリナとアーシア。といっても仲が悪いわけでもないので適当に話した後、そこそこで切り上げて各々の家へと帰った。
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更にあれから二週間半。リアスの眷族の一人である木場裕斗が失踪した。元々彼は聖剣に個人的な想いを抱いているので単独行動をするのも考えてはいた。だけどまさか本当にするとは思っても居なかった。
リアスの義姉であるグレイフィアから修業を付けてもらった四人は、見違えるほどに力を手にした。初めて会った時のように握手する必要もなく、相手の大体の実力を計れるようになったし、イリナは大剣の振るい方を教えてもらった。
ガラティーンは本来は片手剣なのだが、女であるイリナには重く、片手で持つことは不可能だったため大剣のように両手で振るう事になった。
「はい隆くん。今日のお弁当」
「ん、ありがとう。じゃあ行ってくるね」
「いってらっしゃい」
御手洗が学校に行くのを見送ると家事をパパっと済ませる。もっと彼との時間を楽しみたいのだが、強奪犯であるコカビエルという聖書に記される堕天使が潜伏しているのを見逃す事は出来ない。犯人の特定こそできたが、未だ潜伏場所までは見つけられていない。
ガラティーンをいつでも出せるように警戒しながら駒王の町を歩く。日の高い時間にイリナのような年頃の少女が出歩いては不審に思われるので、阻害魔法を掛けてもらったお気に入りのフードコートを被って歩く。もう夏が間近になったが、コートの中には冷却魔法が掛けれられており見た目以上に過ごしやすい。
人が少ないところもある程度見た後、お昼ご飯をレストランで食べようと思い商店街に入った。商店街の中は主婦で溢れかえっており、喧騒を見る限り堕天使が好みそうではない。
「イリナか……?おいイリナ!私だゼノヴィアだ」
「あれ?ゼノヴィアじゃんお久しぶり。どうしたの?」
「どうしたのこうしたもあるか!お前が教会から勝手に抜け出し、聖剣を置いて行ってからの毎日が大変だったんだぞ!?少しは謝罪の気持ちぐらい持てんのか」
「んー……確かにゼノヴィア個人にはあるわね。ごめんなさいゼノヴィア。パートナーとなった貴方に何も言わずに抜け出してしまって」
「最初からそう言えば良いのだ馬鹿者。それで?お前はこの町で何をしているんだ?聖剣を返却し、我らが主からの恩恵を受けていないお前では何も力にならないというのに」
「はぁ……相変わらず貴方は物事を一つの面からしか見ないわね。どうして私が居るか?簡単よ、この街の管理者と協力して堕天使を探しているの」
どの店に入ろうと物色している所を昔馴染みに声を掛けられた。無下に扱う訳にもいかず、取り合えず相手するも疲れる。
ここのところはアーシアやグレイフィアに御手洗といった気安く話せる相手といたからか特に疲れる気がする。イリナの教会の戦士時代のパートナーのゼノヴィア。青い髪と男勝りな口調が特徴の少女だ。彼女が自分にだけ明かしてくれた秘密である天然の聖剣使い。ある意味で彼女と出会えたのは運命だったのだろう。イリナの中には信仰心は残っていつつも、嘗てのように妄信をしてはいない。
だからこそゼノヴィアを少し疎ましく思う。
「成る程。まさかイリナが天然の聖剣使いに目覚めるとはな。だがそれがなぜ悪魔と協力する事に繋がるのだ」
「あのねぇ……仮に私があのまま教会に身を置いた戦士だったとしても貴方と二人でこの地に来てたらもっと大変だったわよ。相手はあのコカビエルよ?聖書にも記されている堕天使となればまだまだ未熟な戦士である私たちが勝てるわけないじゃない。よしんば勝てても良くて満身創痍、悪けりゃあ四肢欠損よ」
「ぐぅ……だがやってみなければ分からないだろう。やる前から諦めていたら勝てんぞ」
「どんだけ夢見てるのよあんた。私はお断りよ?今はリアスさんの協力者としてコカビエルの潜んでいそうな場所を探してるんだから」
適当に入ったファミリーレストラン。メニューをパッと見て美味しそうだと思ったオムライスを頼む。
イリナの否定的な意見ばかりにゼノヴィアは額に青筋を浮かべるが、とうのイリナは無視。彼女の事を心配に思う気持ちはあるが、それはあくまでも巻き込まれた場合だ。率先して危険な事に突っ込んでる以上、自業自得としか思えない。
隆と出会う前、それも真実を知り絶望する前であればイリナはゼノヴィアと共に闘っただろう。護りたい存在が出来たイリナにとって無謀な事をする気はない。彼が心配するし、単純に自分も痛い目にあうのは嫌だからだ。
「お前がそこまで腑抜けているとは思わなかったぞ。私はこれで失礼させてもらう」
ガタンと大きな音を立て椅子から立ち上がるゼノヴィア。じゃあね~と適当に手を振り、運ばれてきたオムライスにスプーンを入れる。ふわっとした卵とデミグラスソースがマッチしており、口の中が楽しい。ケチャップで味を整えているライスもきっちりと主張しており、卵にソース、ライス全てが調和しており非常に満足のいく味だった。
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結果からしてコカビエルは捕まった。リアスやその眷族、協力者であるイリナを駒王学園の校舎に呼び込み深夜での戦闘が行われた。
イリナが元教会の聖剣使いだったことがゼノヴィア伝いで木場にバレ、
一悶着があったが、彼の昔の仲間からの援護で仲直り。
ガラティーンのおかげで無事に五体満足、目立った外傷もないまま終わったが、元パートナーであるゼノヴィアの精神が少し壊れた。コカビエルが戦闘前に既に聖書の神はいないと大々的に言い放ち、教会の戦士であり主を信仰するゼノヴィアが動けなくなるぐらいには衝撃的だった。
同じように衝撃を受けたのはアーシアもだった。ただ彼女の場合は直ぐに立ち直ると仲間の皆へ鼓舞するように、特訓で覚えた支援魔法を使っていた。彼女が吹っ切れられたのは御手洗という存在が大きいのだろう。少なくともイリナにはそう見えた。
イリナにガラティーンを持たせたのはFGOのイベントでガウェインが特攻持ちだったからです。タグにFate入れたほうが良いんですかね。作中で振るわせる予定もなければ、再登場すら未定なんですが。ちなみに柄に疑似太陽は其処から持ってきた設定なので。
ていうか二話連続エロなしとか。R-18作品として良いのだろうか。まぁ次回イリナ③はエロありです。
イリナ一人ではなく、アーシアと一緒かゼノヴィアと一緒か。アーシアになりそうなんだよね。一番好きキャラですから。