――失敗した。それが、現在のアイシャの心境の全てだった。
初めての仕事は、近隣に現れる盗賊団の調査依頼。ただ見て帰って、情報を提供する。たったそれだけの、それだけだと思っていた、そんな仕事。
情報は正しさと速さこそが正義だ。そう思ったアイシャは、いつ気付かれるかもわからない程に賊の近くに潜伏し――緊張のあまり、砂利を踏んで音を立ててしまった。
「はっ、はっ、はぁっ、はぁっ……!」
ひたすら走るアイシャの肌が音の無い小雨を拾い、汗と共に入り混じった恐怖の雫が後方の地面へと流れ落ちていく。
幸いにも、賊達にすぐ居場所が割れる事は無かった。が、それも時間の問題だ。警戒態勢に移行した盗賊達は、想定以上の規模で潜伏者――アイシャを探し回り始めた。
地理を把握する前に潜り込んだ為に、アイシャは通行出来ない道に何度も当たってしまった。そして盗賊達は、アイシャの存在に既に気付いている。
小雨を得てぬかるみ始めた地面には、くっきりと足跡が浮かんでいる。かといって足跡を浅くする為に歩けば、追ってくる賊達を振り切れない。
「く、うっ、はぁっ、あっ……!」
失敗した、失敗した。何から何まで、準備が足りていなかった。
初めての仕事、簡単な調査。初めての仕事で浮足立っていたアイシャは、準備に金銭や注意を払わずに――装備は揃えたし、注意も十分にしていたつもりだったが――この状況を招いてしまった。
事前に地図を精査していれば、音を立てずにいれば、足跡を残さなければ。自分自身がやってしまった数々のミスばかりが、頭を支配する。
それでも、逃げなければ。逃げなければ、最悪の結果が待っている。確かな最悪の未来が、また一つ深い足跡を地面に刻ませた。
(何か、どこでもいい、隠れられる場所っ……!)
祈るように、縋るようにアイシャは自身が隠れられる場所を探す。
今アイシャが走っているのは、十分な舗装がされていない土の行路だ。盗賊達はその先にあった森の中をねぐらにしていた。
森から離れるごとに、林が、木が、隠れる場所が無くなっていった。今周囲を見渡しても、アイシャが十分に隠れられる場所は全くと言っていいほど無い。
後方に足跡が残っている以上、生半可な物陰では不十分だ。せめて草木が生い茂る別の森、あるいは近隣の村。それが隠れ切る最低条件だ。
人目のつかない、足跡も残らない、隠れられる物陰。その全てが揃っている状況など、そう都合良く用意されていない。それもまた、今理解した事だった。
「く、うっ……!」
僅かにぬかるんだ緩やかな登り坂で足が滑り、前につんのめる。転ぶ前になんとか逆の足を地面に打ち付け、バランスを保った。
ここに来て、アイシャの体力に限界が近付いてきていた。軽装とはいえ小柄のアイシャには、無尽蔵に走り続けられる体力は無い。
加えて肌に纏わり付く様な小雨が体温を奪い、疲労を助長させる。それが今、何でも無いような道で転びそうになった現実の実態だった。
(いやです……嫌ですっ!)
このままでは盗賊達に捕まる。それだけは絶対に嫌だ。
そうなった女の捕虜の行き着く所は疑いようも無く二つのみ。肉体の死か、精神の死だ。
その現実だけが気力を奮わせ、行き着く先を見通せない登り坂を駆け上がり続ける。この先に何があるのかもわからない、しかし後ろからは絶望だけが追ってくる。
目の前の坂の傾斜が実際よりも遥かに厳しく感じられる。息苦しさと疲労が、肺を圧迫し続けている。限界は、もうすぐそこに居る。
悲観的だが現実的な思考がよぎる中、アイシャは坂を登り終えた。
「……っ!」
傾斜は終わり、目の前には以前と変わらぬ平坦な土の道が広がっている。
完全に姿を隠し切れる森は、そこには無い。踏み固められた土の道の横には背の低い雑草と、切り拓かれた木の跡が点在するだけだった。
だが、一つだけアイシャの目を惹くものがあった。
(家……小屋っ……!)
道から離れた場所に立つ、小さな家。倉庫ほどの大きさを持つ、丸太を積んで組み上げられた建物。
それは与えられた救いのようでもあり、同時に絶望でもあった。足跡がここまで残っている以上、こんなわかりやすい潜伏地点などは真っ先に疑われる。
それでも、先の見えないこの道をひたすらに走るよりはマシだ。そう判断したアイシャは、小屋へと小走りで寄っていく。
そして、小屋の目の前になって一つの事に気付いた。
(――先、客……!?)
小屋の目の前には、自分の走ってきた逆の方向から続いている足跡があった。ぬかるんだ地面に残ったその深さが、その痕跡の新しさを告げている。
逆から来ているという事は、後ろから追いかけてきているだろう盗賊達とは無関係だろう。だがしかし、この小屋の中に隠れるなら中にいる人間と鉢合わせする事は避けられない。
そこに盗賊がやってくれば、十中八九”先客”はアイシャの居所を話してしまうだろう。そうなれば隠れる意味など無くなってしまう。
――それでも。これ以外に助かる道は無い。十の内の一を望み、アイシャは小屋の扉を開けた。
「し、失礼、しますっ!」
「……ん?誰だ、お嬢さん」
扉の先にはアイシャの予想通り、”先客”の男があぐらをかいて居た。
歳はアイシャより一回り上だろうか、髭の剃り跡が薄らと見えるその顔立ちは、壮年を手前にしている事を感じさせる。
剣士を生業としているのだろうか、表面が濡れた
「あ、あのっ、あたしっ、盗賊がっ、後ろから!だから隠れたくって、いや逃げてきてっ……!」
「ちょいちょい、落ち着けって。何言ってっかよくわかんねーよ」
切羽詰まったアイシャとは対照的に、男は突然の来客にも一切動じず、体を拭う右手を止めていない。
だが、その左手はしっかりと鞘に伸びている。剣を抜かないまでも、アイシャに対して警戒している事は確かだ。まずはその警戒を解かなければならない、しかし状況の説明は必要だ。
錯綜する思考が、言葉を乱れさせる。落ち着けと言われて、ようやくアイシャは自分が呼吸を止めて早口でまくし立てている自分に気付いた。
「……ふーっ、はぁ……あたし、追われてるんです」
「誰から――盗賊、か。あー、そういやなんか村で聞いたなー」
深呼吸を挟み、アイシャはまず何よりも大事な要点を告げる。話が長ければ長い程、話の全容はぼやけ、そして何よりも時間がかかってしまう。
盗賊に追われている以上、余計な話に時間を食っている余裕は無い。だが、男からの返答にはアイシャにとっては待ち望んだ言葉が挟まれていた。
「っ、村があるんですか!どこに!近い、ですか!?」
「落ち着けって。こっから歩きで一刻って所かねー、道の途中の橋から川沿いに下った先にあるよ」
「い、一刻っ……!」
一刻、三十分。走ったとしても今のアイシャには辿り着く前に追いつかれるだろう遠さ。
また一つ、アイシャから希望が失われた。もはやこの小屋以外に隠れられる場所は無い、だが目の前の男がそれを許すだろうか。
男の態度、物腰は一見友好的には見えるが、鞘に添えられた男の左手は最低限の自衛を意識している。この状況で盗賊達がやってきた場合、面倒事になる前に男はアイシャを容赦なく売り飛ばすだろう。
それが赤の他人に対する態度としては、最も自然だ。どうにかしなければならない、その思いだけがアイシャの頭に考えを巡らせていく。
(――どう、すれば……!)
追手の盗賊を倒す、最も愚策。それが無理だからこそアイシャは逃げてきた。
この小屋の外の物陰に身を隠す、無理。足跡を追ってきた盗賊がこの男に話を聞けば、すぐに付近を探索し始めてそれで終わりだ。
小屋の中に隠れる、同様に厳しい。これもまた、男がアイシャの居場所を言えば終わる。
残る、手段は――
「……あ……あのっ……!」
最後に残された手段は、一つ。それに思い当たると同時に、アイシャの口は動いていた。
◆ ◆ ◆
「どこまで逃げてんだか」
「ったく、この雨の中で逃げ切れるワケねえだろうに」
曇り空から届く光が弱まり、徐々に勢いを増してきている雨の中、三人の盗賊はそれぞれ馬を歩かせて一つの行路を進んできていた。
目的はただ一つ、自身らの団の近辺に潜伏していただろう何者かの調査、そして排除。足跡を見るに一人、恐らくはギルドの方から派遣された冒険者か同業者といった所だろう。
だが、プロでは無い。こうして所在を相手に明かされている時点で、素人からは抜け切らない半端者であるのは確かだ。足跡は雨で流されるよりも深く刻まれ、逃げる方向もはっきりとしている。
「馬じゃねえんだ、そろそろバテてる頃だ。気ぃ入れろよ」
「へーへー。つっても
「俺もそう思う」
ゆっくりと、しかし確実に男達は足跡を辿り道を進んでいく。
足跡の間隔は見つけた最初こそ大きかったが、今では細かく刻まれている。それはつまり、逃げ始めた時から走り続けていたが、今では疲弊して十分に足が動いていない事を意味する。
疲労の蓄積した一人の人間など、もはや袋の鼠もいい所だ。坂道に刻まれる滑った跡が、またその事実を助長する。足跡を確実に辿る為に馬を歩かせてはいるが、そろそろ走らせても問題無いだろう。
この道の先に、まともな遮蔽物はそうは無い。あるのはせいぜいこの近くにある小さな空き家だけで、あとは川沿いの村が離れた場所にあるだけだ。その二択であれば、もはや慎重に辿る必要も無くなる。
「見えたぜ。……小屋に続いてるな」
「オーケー、行くか。馬頼むぜ」
「あいよ、まぁ気だけは緩めんなよ」
坂を登りきり、盗賊達は足跡が真っ直ぐ小屋へと向かっている事に気付く。そこで三人は馬から下り、その内二人が残った一人に手綱を渡す。
馬を委ねた二人はそのまま腰から剣を抜き、残る一人は主を失った二頭の馬を慎重になだめる。そして二人はそのまま小屋へとゆっくり近寄っていった。
「……おい」
「……ああ」
小屋のすぐ直前に来た二人は、扉の両側に立ち、聞き耳を立てる。音は扉に阻まれて全く聞こえなかったが、鼻には油混じりの火の臭いが僅かだが届いた。
中に居る。簡単なハンドサインで相方へとそれを伝え、その相方は左手の指を広げる。
五つの指を、一つずつ折り畳んでいく。気配は隠し、音も立てず、その指が全て曲げられる瞬間を待つ。
そして、全ての指が曲げられた瞬間、片方の男が扉を一気に開け開いた。
「……誰だ、テメエは!」
「うひゃあ、来客が多い日だねー。これで二人――いや、三人目か」
相方の男は長剣を前に構えてすぐに扉の向こうへ足を踏み込む。その先に居たのは、火の灯ったランタンを前にやけに落ち着いている様子の男一人だった。
剣を向けられながら、その男は砥石を自身の持つ剣に這わせて擦り続けている。遅れて扉を開けた二人目の盗賊がやってきても、その呑気とも言える態度は崩れない。
横で外された鎧に一切手をかけない事から、男に警戒も敵意も無い事がわかった。
「……もっかい聞くぞ、誰だテメエ」
「見ての通り、しがない旅の剣士だよ。ちょっと
明らかにおかしい。怪しさを超える異様さが、盗賊達の足を留めさせ続けている。
一方的に剣を向けられながら笑いを飛ばしてくる余裕、挑発にすら思える自然体の態度。そのどれもが、自分達から逃げ回っている人間のものとは思えない。
それに、この男からの言葉には一つだけ気になる点があった。
「……今言った、”これで三人目”ってのはどういう意味だ」
「ああ、ついさっきアンタらと似た――いや全然似てねーけど、女の子がここに来たんだよ。多分盗賊なんじゃねーかなぁ、あの軽装から見て」
「!」
男は砥石を下ろし、水袋からいくらかの水を垂らして錆を落とす。
盗賊達に警戒どころか興味もないと言った風な雰囲気のまま、値千金の情報が口から溢れる。
盗賊の女、さらに”一人目”。それは間違いなく、今自分達が追っている一人に他ならない。
――だが。
「兄さん。嘘、言ってねえだろうな」
「おいおい、刃物突き付けられて嘘なんか言えるワケねーだろ。そもそもなんで俺がこんなに落ち着いてると思ってんだよ」
仕上げられた剣を鞘にしまい込み、男は飄々とし続ける。
剣を向けられながら、剣を収める。それは敵意が無い証明であり、この男が盗賊達を驚異に思っていないという事でもある。気に食わない態度ではあるが、それは確かだった。
「その女の子、俺を見るなり慌てて逃げてったんだよ。”あなたも盗賊の方ですか!?”、ってな。外に足跡も残ってるだろ?今でも傷ついてるわ俺」
「……見てこい」
「ああ」
それを聞いた盗賊の一人が、開いたままの扉から外を確認する。そこには雨でぬかるみに流されながらも、一つの足跡が道の先へと続いているのが目で確認出来た。
盗賊は小屋の中へ戻り、相方へ青年の言葉が事実だと耳打ちした。
「それでこの辺に
「……なんでそうしなかった」
「落ち着いて話せば大丈夫かなーって。あとは、ほら、俺の鎧見てもらえればわかるけど、逃げるには体が重すぎんだよ俺」
そう言って男は床に置いた胴部鎧を指で突付く。僅かに錆の見える表面を見れば、それが金属製のものであるのは明白だった。
確かに、男のその鎧は重量があるのが一目でわかる。盗賊から逃げるには身が重く、近場で隠密する事はさらに難しいだろう。下手に逃げれば疑いが向く、そう考えるのも自然だ。
「……嘘言ってねえ証拠は、あるのか」
「ねーよそんなもん――と、普通言うトコだけど。あるぜ、盗賊の兄ちゃん達」
男はそう言って立ち上がり、剣も床に置いたまま盗賊達へ近寄ってくる。
盗賊達は怪訝に思いながらも剣先は下ろさず、青年の動向を見る。盗賊の目の前に立った青年は、おもむろに懐に手を入れた。
「……ナイフ?」
「その女の子に投げつけられてな。ほれ、左腕んトコやられたんだよ」
青年の懐から超小型のナイフ――恐らくは投剣用だろう――に僅かに血糊がついたものが取り出される。続けて青年は、左腕を持ち上げて盗賊達に見せた。
そこには肘と手首のちょうど中間に、小さいものの赤い筋の浮かんだ包帯が服の上から巻かれていた。
「血の色見りゃー新しいのがわかるだろ。ついさっきやりあったんだよ、すぐ逃げられたけど」
男の言う通り、黒ずんでいない傷跡はまだ目新しいのがわかる。
この男の言う事が真実であれば、これまでの態度の理由は全てわかる。やってきた盗賊達に驚かなかったのは既に存在を察していたからであり、剣を向けられても動じなかったのは最初から事実を述べるつもりだったからだ。
装備品も重すぎはしないが、潜伏に向いているとは到底思えない。加えて、新しい傷跡と外の足跡は、”一人目”の女がここに来て、そして去っていった事を示している。
「追ってるなら急いだ方がいいんじゃーの、兄ちゃんら」
「……チッ。行くぞ」
「くそ、どこまで逃げてやがんだ……!」
その言葉に従う様に、盗賊達は小屋から出ていく。
俺の腕の仇を取ってくれよなー。馬へと歩いていく盗賊達に気の抜ける言葉を青年はかけるも、盗賊達は一瞥もせずに馬に乗り、行路へ走り去っていった。
それを見送った所で、青年は小屋の中に戻り扉を閉めた。
「――凌いだぜ、お嬢さん。ハハー、どうよこの演技力」
「……い、生きた心地、しませんよホントッ……」
見えないほどに暗い部屋の片隅へ向け、青年が独り言を放つ。それに応じて、そこに転がっていた大樽からアイシャがのそのそと姿を現した。
アイシャは男に協力を頼み、盗賊が来るまでの間アイデアを交わし、即興の
「なんとか、うまくいってよかったです……」
「俺の言った通りだったろ?しっかり嘘が出来てりゃ、細かい所は気にされないって」
アイシャは青年へ盗賊団と自分の状況を端的に説明し、情報を共有。青年は話の信憑性を増すために、アイシャから投げナイフを一本借りて自身の腕を小さく裂いた。
外の足跡だけが問題だったが、そこは青年がこの小屋へとやってきた時の足跡を、アイシャが逃げた時のモノと言い張る、と大胆すぎる大嘘にした。
幸運な事に雨足が強くなって徐々に足跡が流されていくこの状況では、それがアイシャのものか青年のものかは正確な判別はつきづらい。足跡の違いから違和感を抱かれる可能性こそあったが、アイシャを見つけ出す為に先を急いでいる盗賊達は細かな違いを気にしなかった。
「傷、大丈夫ですか?服の上からだけど、痛かったんじゃあ……」
「ま、こんぐらい掠り傷だって。服の下はもっとデケー傷跡まみれだし、俺」
アイシャが包帯が巻かれた男の左腕を見て、心配そうな表情を向ける。男は左腕をぐるりと回し、なんてことないと態度で示してみせた。
実際、覚悟して切る傷など然程痛いとは感じない。指や胴体ならともかく、鍛えた腕に表面に傷がついたぐらいではまるで痛みを感じさせなかった。
「……さて、と。言われた通り、俺は盗賊を追っ払ったワケだが」
「……っ」
それに、
その眼光に射竦められる様に、アイシャは目を小さく逸らして両腕を体の前で組んだ。
「さっき言った事、忘れたとは言わせねーけど。確認だ、もう一回言ってもらえるか?」
「……は、はい……」
青年はそれまでの気を抜いた様子を無くし、身を縮めるアイシャを見下ろす。
信用、金銭、義理、義務。架け橋となるその全てを、アイシャは男に対し持ち合わせていない。
ならば、アイシャが何を以て男と関係を結んだのか。それは、一つしかない。
「――助けて、ください。
「
「……はい」
言外なモノを含むやり取りが、関係を結んだ時と同様に為される。
そういう事。青年のニュアンスは、アイシャに対して明確に身体を要求している。それ以前に、アイシャ自身の言葉がそれを暗に含んでいた。
アイシャがこの場で男に捧げられるものは、
まさかこんな形で初めてを迎えてしまうとは思っていなかったが、盗賊に捕まるよりは遥かにマシだ。そう自分に言い聞かせ、アイシャは困った様な視線を男に送った。
「ま、俺も久々だし。あんま無理はさせねーから安心しろって」
「……あ、あたし、はじめて、なんです……」
「なんだ、そりゃ大変だな。まー、それなら俺に任せてくれればそれでいいぜ」
少しでも男からの優しさを期待し、アイシャは自身の経験について告白する。顔から火が出そうなほどに、事実頬は染まっているだろう熱を羞恥が呼び起こす。
一世一代の告白にも関わらず、男の反応は淡白なものだった。ふうん、そう、それで。そんな幻聴が聞こえてきそうな程に、男はアイシャに向ける目に欲も浮かばせず、見下ろし続けている。
「そんじゃ、脱ごうか」
「……は、い」
男は自身の服に手をかけ、一つ一つの衣服を雑に床へ放っていく。
考えていた行為とはまるで程遠い、雰囲気の無い始まり。なんともしようがない現実の中で、アイシャもまた自身の衣服に手をかけた。
【 初仕事の時 ― 一軒家 ― 冒険者 ― 体を要求された ― ??? 】
「アドゥスタ海の孤島」販売開始・全EDクリア記念として投稿します。
皆も買おうね。買ってるよね。うん。
1/20 時期が「盗賊見習いの時」となっていたのを適した時期にエラッタしました。