壁の高い位置に点々と取り付けられたランタンが、小さな火明かりを揺らめかせて暗闇をにわかに照らしている。
窓一つ無い地下には、陽も月も星も、あらゆる空の光が届く事は無い。冷たい石の床と壁で無機質に囲まれたこの空間の生温い空気には、鼻を突くような人間の体臭に混じりカビの濁った匂いが漂っている。
それはこの場所に人が居る事を示しながらも、人が居続けるには嫌気を湧き上がらせるモノでもあった。
「――ぅ、や、あっ……いやっ、いやぁっ……」
「許して、くださいっ……もうっ、もうムリですっ……」
そんな疎らな暗闇の奥、ランタンの明かりの続く先から、消え入りそうな複数の声と荒い呼吸が湿った空気を震わせて届く。
深い階段で隔てられたこの空間は、”見世物小屋”だった。臭気を追って奥へと進めば、そこには赤錆びた鉄格子の林が床から天を貫きそびえ立っている。
四角い格子の奥には、この空間の主によって集められた
「……さて、今度の新入りはこいつか」
「なんでえ、ガキじゃねえか。胸は一丁前みたいだけどよ」
「……くうっ」
鋼で仕切られた小屋の一つ、檻の中に繋ぎ止められたコレクションの一つ。明るい栗色の滑らかな長髪を後頭部の青いリボンでまとめた、軽装の盗賊衣装を着た少女が、壁に追い詰められる形で下卑た笑みを浮かべる男達に眺められていた。
盗賊の少女――アイシャは、街近辺の村で度々起こった失踪事件の調査の依頼を受けていた。被害者は主に二十代前後の女性であり、失踪者の家族達によってギルドへ依頼が届けられた。
依頼の報酬は出来高であり、アイシャは深追いをせずとも一定の報酬が得られる手頃な依頼として認識し、調査に乗り出した。が、その途中で失踪にはある貴族の私兵が関わっている可能性が浮上した。
人攫いが貴族の屋敷へ入り込む所を目にして報告すれば、報酬は高まる。リスクよりもリターンを考えたアイシャは貴族の屋敷周辺に潜み、決定的な瞬間を待っていたが――
「余計な事に首突っ込むからこうなんだよ。ったく、まだ腕痛ぇ」
「かかっ、ガキに手傷負わされてんのマジでウケるわ、なっさけねえ」
「うるせえよ殺すぞ」
茂みに隠れていたアイシャが”その瞬間”に目を奪われていると、背後から迫る別の私兵がアイシャを襲った。
咄嗟に剣を抜いて交戦したアイシャだったが、必死の抵抗も虚しく私兵に取り押さえられてしまう。その瞬間、すぐに訪れるだろう死に絶望したが、幸か不幸かアイシャの命はまだ繋がれていた。
その繋がりが、自らが調査していた失踪事件――拉致を証明する鎖なのは、皮肉でしかないが。
「さぁて、と。一応聞いとくが、どういうつもりであんな所にいた」
「……」
男からの問いは、アイシャは苦い顔でしか応えられない。たとえどう言い訳しようと、自分が見てはいけないものを見てしまった、男に抵抗してしまった事実に変わりはない。
それを覆す程の上手い嘘など、思いつく筈もない。かといって馬鹿正直に”貴方達について調査してました”、”依頼で動いていました”と言うよりは、沈黙の方がまだマシだ。
問うた男は今にも殴りかかってきそうな不機嫌な目付きで、その後ろで控える二人の男はアイシャの胸から下のみを舐め回す様に見続けている。どちらにせよアイシャにとっては、良い予感を感じさせない視線だった。
「だんまり、か。ま、どんな理由があろうが構わねえが」
「いたっ……」
目の前の男は口を開こうとしないアイシャの顎を乱暴に掴み、首を強引に上へ向かせる。頭一つ分は違う男と視線が交錯し、引き伸ばされた喉の筋が痛む。
牢屋に繋がれたこの状況で、唯一アイシャに出来るのは、なるべく男達の機嫌を損ねない様に振る舞う事だけだ。とはいえ、それは――
「もう、オレらのオモチャでしかないんだからよ」
「ひうっ……」
男の角張った硬い右掌が、アイシャの胸の膨らみをシャツの上から押し付けられる。女性的な柔らかい肢体の象徴が、男の意志によって歪められた。
そのまま広がった手と指は胸の表面を這い回り、大きさと感触を確かめていく。指の一本一本がアイシャには芯の通った虫の様にも感じられ、ぞわぞわと嫌悪感が背筋を走っていった。
「おいおい、俺にも触らせろや。久々の新入りだぞ」
「うっせえよ、オレぁケガまでしてんだ。最初ぐらい譲れ」
「……っ、う、く」
後ろへ顔だけ向けつつ、アイシャの胸を掴む男は力強く手を動かし続ける。女への気遣いなど一つも無い、ただそうしたいからそうするというだけの独り善がりな手付き。
やがて男の左手もアイシャのもう片方の胸を掴んだ。男の広い掌からも溢れるアイシャの柔肉は、隅々まで余す所無く男の手に撫でられ・圧され・揉まれていく。
アイシャにはこれほどまでに執拗に、異性に身体を触られた経験など無い。自然と口まで湧き上がってくる拒絶の言葉を、なんとか唇の所で押し留める。
「あぁー、やわらけえ。いいねえ、いいカラダだぜ、嬢ちゃん」
「う、う」
男は身体を押し付ける様に寄せ、アイシャを自身と壁で挟み込みながら、胸を揉み続ける。
今アイシャを縛るものは鎖付きの首輪と足枷のみで、両腕は自由になっている。鎖は長く伸ばされ、牢屋の中であれば自由に動き回れる程に余裕がある。
だが、そんな自由も余裕もアイシャが使う事は許されない。少しでも自分の意志を見せれば、その瞬間男達は機嫌を損ね、何をしてくるかわからない。
男との近すぎる距離を意識しない為に目を瞑り、両胸から来るむず痒さだけを黙って受け続ける。風貌・言動からして粗野としか言いようが無い相手に対し、アイシャが出来るのはただ男が勝手に満足するまで耐える事だけだった。
「おら、口開け」
「え――ん、んぅうっ!?」
そう考えて男と現実から目を背け続けるアイシャの顎を男は左手で掴み、強引に唇を奪う。突然の感触にアイシャは目と口を開いてしまう。
その瞬間、アイシャの半開きになった唇に男の舌が割り込んでくる。強く重ねられた男の唇はアイシャの口の形をそのまま抑えつけ、アイシャの口内のゼロよりも深い距離へ異なる舌が押し入った。
ファーストキスの望まぬ喪失。そんな思いに耽る間も無く、男は舌を動かし始めた。
「んっ、ふ、んんっ、んぅうっ」
目の前は深く影が差した男の顔だけが一杯に広がり、口内でも一際敏感な舌は擦る様に舐め回される。自分の舌と同じ柔らかさの、しかしざらつく摩擦が異なる事を告げる、そんな未経験の感触。
逸してもなお目に映る程に間近な所から、濃い異性の匂いが鼻に飛び込んでくる。口を塞がれたアイシャが鼻で息をすれば、同様にしている男と呼吸が重なり、嗅覚は余計に男を感じ取る。
目も、舌も、鼻も。五感の大半を一気に支配される感覚に、アイシャは目を白黒させる。思わずアイシャは、覆い被さる形で迫る目の前の男の両肩に、反射的に両手を添えてしまう。
それがまずい事だと気付いたのは、男の両肩の硬い感触を確かめてからだった。
「……おい。なんだ、この手は」
「ぷぁ、ち、ちがっ、ついっ」
「つい、じゃねえだろ。立場わかってんのか」
男は唇と身体を離し、肩に軽く触れていたアイシャの右手首を左手で掴み、握り締める。剣の柄を握る様に込められた掌の力が、そのまま男の抱く怒りだった。
アイシャはただ両手を肩に置いただけで、反抗も拒絶する気も無かった。しかし形だけを見ればアイシャが男を引き剥がそうとした様に見え、事実男は反感を覚えてしまった。
肩に触れた左手は急ぎ下ろしたが、右手は男に握り潰されんばかりの力に捉えられたままだ。離して欲しい、たったそう願うだけでも反抗と見られかねないこの状況で、アイシャは手首の痛みに歯を食い縛る事しか出来なかった。
「こっちはカラダだけありゃいいんだ。指の一本や二本、折れちまっても問題は無えんだぞ」
「ひっ――ゆ、ゆるしっ、許してくださいっ!すみません、ごめんなさいっ!」
男の手がアイシャの手首から人差し指へと移り、同じ力で握り込まれる。そのまま男はゆっくりと握った指を手の甲側へと持ち上げ、自然と曲がる限界にまで捻った。
折られる。確信にも近い直感が、即座に男へ謝罪をさせた。アイシャの必死と言ってもいい懇願を受けた男は、つまらなそうにしながらも左手から力を抜き、指を解放する。
「許して欲しいなら、次どうすりゃいいかわかるな?」
「……ど、どうしたら、いいですか……」
眉間を寄せて見下ろしてくる男に対し、アイシャは男の顔色を伺いながら恐る恐る尋ねる。もはや何を言っても怒り始めるのではないか、自分の言葉を発する事すら恐怖を感じる中、それでもアイシャは男にそれを聞かざるを得なかった。
アイシャには異性の喜ぶ事などわからない。正確に言えば知識として性的な事をすれば良いというのはわかるが、男はアイシャへ明らかに具体的な何かを求めており、どういった事をするべきかというたった一つの正解の見当がつけられない。
怯えて肩を縮めるアイシャへ、男は舌打ちを一つする。たった一つの物音にすらアイシャは肩をびくりと跳ねさせ、目線だけで謝る様に男を潤んだ上目遣いで見上げる。
そんなアイシャの目の前で、男は自らのズボンに手をかけ、その裏の下着ごとずり下げた。
「しゃぶれ。丁寧に、隅々までな」
「……っ、わかり、ました……」
仁王立ちする男の股間には、雑草の様に敷き詰められた陰毛から生える様に肉棒が伸びていた。初めて見る男の象徴にアイシャは目を背けたくなるも、少しの躊躇すら見せられないと考えたアイシャは、すぐさま石床に跪いた。
目と鼻の先にある肉棒を、アイシャは改めて見やる。膨らんで並行に近い所まで持ち上がった肉茎は、腸詰肉よりも遥かに大きい。しかし聞いたことがある程の大きさでもなく、真っ直ぐ顔へ向けられるだけで上に反り立っていない事から、この肉棒がまだ半ば程でしかないと推測出来た。
――なんでこんな事、冷静に考えているんだろう。鼻の奥を突く濃厚な酸い臭いに軽い逃避が入っていたアイシャは、口を開きながらゆっくりと男の股間へ顔を近付けた。
「んっ、く、うう……」
「……おい、さっさと口閉めろ。ちろちろとまどろっこしいんだよ」
アイシャは肉棒の尖端を少しだけ口内に入れ、唇を開いたまま舌先で何度か突付く。舐めるとは到底言えないそれだけの行為で、文字通りの苦渋と辛酸を同時に味わった。
臭い、苦い、酸っぱい、不味い。こんな物を口に咥え込み、あまつさえ隅々までしゃぶり回すなど、普通な訳が無い。
しかし、男からの命令を断る訳にもいかない。意を決してアイシャは、開いた口をゆっくりと肉棒へと下ろしていった。
「――たっ」
「あっ」
が、下ろした先で肉棒の柔らかな表面の感触を、歯の先で感じる。それはつまり、男のモノにアイシャの歯が立ってしまった、という事だ。
男の呟きから一瞬にしてアイシャの血の気が引く。慌てて口を肉棒から離したアイシャは、男の顔を見上げる。男は、眉に深く皺を作って顔の片側だけを大きく歪めた表情を浮かべていた。
しま、った。
「このクソガキ!歯ぁ立ててんじゃねえぞヘタクソ!」
「うあっ!い、いやっ、ちがうんで――」
「何も違わねえだろ、オラッ!」
「ごほっ……!」
膝を立てているアイシャの側頭部を、男が強く殴り飛ばす。一切の加減が無い拳を受けたアイシャは、そのまま冷たい石の床に横へ叩き付けられた。
アイシャの視界が衝撃と痛みによって揺らされ戻らない中、怒りも冷めない男は身体を横に寝かすアイシャの腹部を蹴り上げる。革鎧越しに
さらに男は、足裏でアイシャの痛む腹部を何度も踏み付ける。三度、四度、五度。男の脚が腹を打ち付ける度に、アイシャは無い腹の中身を吐いてしまいそうな痛みと嘔吐感に襲われる。
抗う事が出来ない純粋な暴力。与えられた痛苦だけが頭を埋め尽くし、アイシャはまともな思考すら出来なくなった。
「げほ、えほっ……!ご……ごめん、なさいっ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……!」
「チ、この感じじゃやっぱ処女か。おい、どうなんだ」
「そう、ですっ……したこと、ないですっ……すみません、すみ、ませっ……」
男はアイシャの腹に足裏を乗せ、ぐりぐりと踵を回して上から圧しながら問いかける。喉奥に痛みすら覚える程に荒れた呼吸で失った空気を取り戻しつつ、アイシャは涙を流しながらそれに答えた。
理不尽だった。こちらが与えた小さな痛みが、何百倍もの暴力と苦痛で返される。ただ歯が触れた、たったそれだけの事が死活問題となってしまう。
尊厳を文字通り踏み躙られる屈辱もあったが、それより何より暴力への恐怖がアイシャの心を塗り潰す。生半な覚悟など、本能に根付いた感情の前では何の意味も成さなかった。
「オレじゃなきゃとっくに腕か脚折っちまってるとこだぞ。有り難く思え、オラ」
「ぐっ、ううっ……はい、ありがとう、ございますっ……」
男はさらにアイシャの腹を爪先で叩き、傲岸極まりない物言いで転がり悶えるアイシャを見下す。もはや犬にも劣る扱いだったが、それでも形の上での感謝を強要された。
こんな苦しみをどれだけ受けなければいけないのか、考えたくも無い。しかしそんなアイシャの絶望的な展望など一切介さず、男は伏せるアイシャの髪を引っ掴んで持ち上げた。
「もう一回だけチャンスやんよ。今度は上手くしゃぶれ、出来なきゃ……わかるな」
「……は、い……」
髪を引っ張り上げられたアイシャは痛みから逃れる様に、男の望む通り身体を起こす。再度醜悪な男根と向き合ったアイシャは、顔をしかめながらも大きく口を開き、男の股座に頭を埋めた。
今度は歯を意識的に引き、亀頭の根本までを包むように咥える。口内から鼻まで直接届くような強烈な臭気に吐き気を催しながらも、アイシャは裏筋に舌を這わせた。
舌の表面で軽く撫でれば、亀頭と雁首の凹凸にこびりついた苦味と酸味をどろどろに混ぜた様な味が押し寄せる。味覚がおかしくなりそうな、実際もうおかしくなっているのではないか。そんな思いの中で、アイシャは舌を動かし続ける。
「んぐ、んんっ、ふ、んぅ……」
「ったく、最初からそうしてりゃいいんだよ。オラ、もっと必死にしゃぶれや」
「っ……ん、むう、んくうっ……!」
一舐めごとに強い抵抗感を覚えながらも、それでもアイシャは出来る限り肉棒に奉仕し続けた。出した唾液を舌で持ち上げ、届く限りの範囲を濡らしていく。
口の角度を変え、上下左右に舌を揺らし、歯を当てない様に唇を締める。感情を半ば捨てて、言われた通り尽くす事だけを思ってアイシャは必死で口淫に没頭する。
自分の意志は既に放棄していた。ただ、しなければ殴られる、殺される。直面する男への恐怖は全てに勝り、無意識に女として媚びる事を強制させる。
アイシャの受ける気持ち悪さに比例して、刺激を受ける男の肉棒は大きさを増していき、次第にそれはアイシャが咥える事が出来る太さの限界にまで達した。
「あー、中々良くなってきたぜ……そら、頭も動かせ」
「んぉっ……っぷ、んむ、んっ、んんっ、んっ――」
咥え込む事の出来る亀頭を重点的に舐め回し、肉棒の汚れに唾液を上からまぶしていく。少しずつ男の肉棒に慣れてきた所で、男はアイシャの後頭部を押さえて前後運動を強い始めた。
口内を埋め尽くす肉棒の太さに息苦しさが喉の奥からやってくるも、それに耐え忍びながらアイシャは頭を揺らし、拙いながらも同時に舌を動かしていく。
苦しい、辛い、苦しい。ぐるぐると頭を巡って留まらない苦痛のループが、頭を動かす度にやってくる。男の顔を見上げれば、心底脱力した様子でアイシャの舌を甘受していた。
不公平で、不平等だ。そう思いながらも、アイシャには口を動かす以外の選択肢は無い。
「ふっ、んぷ、んんっ……じゅる、ちゅぅっ、れろっ、んっんっん」
「お、おっ……いいぞ、もっと吸えっ……!」
繰り返す毎にアイシャの舌は動きを早め、それが結果的に男へ積極的な奉仕となる。肉棒の尖端には全てアイシャの舌が回り、そこにまぶされた唾液はアイシャの唇の端から雫となり伝って落ちていく。
男根が口内を行き来する度に、唾液と空気が入り混じり下品な音が隙間から漏れ出す。それに気を良くした男は、背を反らしながら腕に一層力を込め、アイシャの頭をより深くへと揺する。
口の中全てを犯す肉棒から口を離したいという思いを堪えつつ、アイシャは請われた通りに男の肉棒を頬張りながら強く吸い付いた。
「じゅるっ、ん、ちゅ、んっ、く、んんっ、んぅっ、んんん……!」
絶えず奪われる空気を必死で鼻で補えば、目の前の男の臭いを口の内外で吸い込む事になる。”男”をこれ以上無い程に教え込まされ、脳の隅々までが染められていく。
唾液と共に喉を下っていく肉棒の熱と、そこから少しずつ滲み出してきている先走りの味が、身体の深くにまで男を受け入れている錯覚を覚えさせる。窒息寸前の愛撫の最中、アイシャはただ少しでも男の機嫌を良くする為だけに自分の意識を集中させた。
咥え込む、舐め回す、吸い付く、頭を揺らす。男の欲求を満たすだけの動きを、必死に繰り返していく。そんな口遣いを男は十全に味わい、下半身を震えさせて悦びに浸った。
「はぁー……よし、絶対歯ぁ立てんなよ」
「むぅっ――んッ!?ん、んん、んぅうーっ!」
そして男は一言だけ注意した後、アイシャの側頭部を両手で掴み、口内に力の限り自分の肉棒を突き込んだ。
自分の意志を超えて喉まで押し込まれる肉棒に、アイシャは目を白黒させる。そこから逃れる事を許さず、男は掴んだ頭を力尽くで揺すりながら股間を前後に振り始める。
相手の意志を完全に無視した、乱暴な淫行。ただ女の口を道具にするその行為を、アイシャはひたすらに一身に受けた。
「んぐ、んんッ!んおっ、んん、んううッ!ん、ぐ、んん、んくッ!」
男の股間がアイシャの鼻先を叩き、乱れた呼吸がさらに荒らされる。唇から喉奥にまで一気に押し入る肉棒が、男の思うがままに激しく前後していく。
もはや舌を動かしたり吸い付いたりする余裕は無かった。目一杯に開けられた顎の痛みと圧され続ける喉奥の苦しみ、それだけを感じながら行き来する肉棒を咥え続ける。
生理的な限界を超えた行為に胃液がこみ上がってくるのを感じながら、アイシャは押し付けられる男の欲望の嵐が過ぎるのを口を開いてただ待ち続けた。
「あー出る、出る出るッ……!しっかり飲めよっ……!」
「んぐ、んッ、んんッ!ん、く、んッ、んんぅッ!」
永遠にも感じられる寸時の末に、男はアイシャの事を見もせずに射精が近いことだけを告げる。
早く、早く終わって。口から発したいたった一つの願いすらも、強引に行き来する肉棒は躙っていく。熱された鉄の様に硬く膨らんだ肉棒が、口内の深くで震えるのをアイシャは感じ取った。
湧き上がる大量の唾液が肉棒の前後を助け、唇を窄めて与える刺激を増す。それらはアイシャが考えてやった訳ではなく、少しでも早く終わらせようと無意識下で男に媚びたものだった。
その結果は、すぐに出た。
「
「んぅん、ん゛ッ!?」
最後の一突きと共に、肉棒から精が迸る。喉奥を直接灼く精液の熱と粘り気が、意識を一瞬失わせた。
男は斜め上を見上げながら、二度三度と小刻みに精をアイシャの喉へ流し込む。熱い吐息をゆっくりと吐きながらも、アイシャの頭だけは離さないまま男は吐精の余韻に浸った。
その一方で、頭を離す事も許されず喉に精を吐き出されているアイシャは呼吸すら出来ない。肺の空気が無くなるにつれて少しずつ視界がぼやけていき、それまで感じていた苦しさが薄れていくのを感じた。
あぁ、これは、だめだ。本当に息が出来ない状態というのを初めて味わったアイシャは、白み始める意識のままに全身の力を抜き始めた。
「……ふう。ま、こんなもんだな」
「――ッ、げほ、えほ、えほっ!はぁっ、はぁっ、あ゛っ、はーっ……!」
しかしアイシャが意識を完全に手放すよりも先に、男が両手から力を抜いて口から肉棒を引き抜く。何よりも求めた空気が流れ込むのを感じたアイシャの身体は、慌てて呼吸を再開した。
肺の濁った空気を取り替えるに伴い、耐え続けてきた嘔吐感が一気に押し寄せる。アイシャは床にうずくまり、口元を右手で軽く覆いながら呼吸を続ける。
そのままアイシャはこみ上げてきたモノを右掌に吐き出す。口を通った後味は、掌を見るまでもなくそれが男の精液である事を証明し、臭みと苦味がさらなる吐き気を催した。
「……折角飲ませてやった
「っ!」
押し殺してきた不快感が戻ると同時に、アイシャは掌の白濁を床に落とそうとする。が、その途中に上から降ってきた男の声が動きを止めさせた。
その声は疑念をいくらか含んではいたが、アイシャが見上げてみればそこにはほぼ確信に満ちた男の冷たい表情があった。
気付いている、気付かれている。慌てたアイシャが掌を口元へ持ち上げれば、その勢いで戻した精液が唇に当たる。
どろりとした感触が生理的な拒絶感を呼び起こすも、どうすればいいかは直感的に答えは出ていた。少しの逡巡すらも恐れたアイシャは、強く目を伏せて掌の精液を一息で口に吸い上げた。
「ん、ぐ、んんっ……!」
「……口開けて見せろ」
アイシャは唾液のみが残る右掌を男に差し出し、男の指摘を逃れる。舌の上で粘つく精液の味に声も無く悶えていると、男は続けて命令してくる。
気付いて、やらせている。反応を楽しみたいのか、また暴力を振るう口実が欲しいのか。そのどちらかなど、今のアイシャにとってはさしたる差などない。
殴られるのも蹴られるのも、もう嫌だ。その一心で、アイシャは一度は男の意志のみで流し込まれた精を、今度は自分の意志で呑み込んでみせた。
「……え、ほっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「よーし、ちゃんと飲んでんな」
今まさに嚥下の最中にあるアイシャは男へ向けて口を大きく開き、精を吐いていない事を男へ証明する。惨め極まりない自身の行いそのものに厭気が差した。
女身一つで危険に挑む以上、こういった行為に関しての情報は頭の片隅にあった。だがそれはあくまで表面上の理解だけで、今直面している現実はそれよりもずっと陰惨だ。
何よりもアイシャを心を暗く沈めたのは、これが始まったばかりであるという事実だった。
「ったく、一人で楽しみやがって……次は俺の番だぞ」
「こっちもいい加減待ってられねえよ、俺も頼むぜ嬢ちゃん。とりあえずは手でいいからよ」
「はー、余韻ぐらい浸らせろよ……ま、さっさと一周するのは賛成だがよ」
後ろに控えていた兵士二人が、射精した直後の男の肩にそれぞれ手を置く。その下半身は既に脱ぎ捨てられ、今し方アイシャが奉仕を終えた肉棒とほぼ同じ程に膨らんだ男根がそそり立っていた。
兵士達からの声に応じ、男はその場から引き下がって牢の片隅に座り込む。座り込んだ男は薄い暗闇の中へ手を伸ばし、そこに転がされていた酒瓶を持ち上げ、直接瓶口を咥えて傾けた。
酒を呷る男は、今まさに二人の兵士に迫られているアイシャの姿を細目で眺め続けている。自分自身が酒の肴なのだろう、それを悟ったアイシャは自分の立場を改めて思い知らされた。
「お前ら、ちゃんと見えるようにヤれよー」
「ギャラリーのくせに贅沢言ってら」
「ま、何でもいいだろ。嬢ちゃん、うつ伏せになりな」
「……はい……」
アイシャの側に寄った兵士はその場であぐらをかき、股を開いて自身の下腹部を指先で叩く。ここに顔を埋めろ、そういったメッセージに従ってアイシャはその場でうつ伏せになり、男の太腿に頭を乗せる。
それに続いてもう片方の兵士が壁際、アイシャの左手側に座り込む。壁を背もたれに腰だけを向ける姿勢を取った兵士は、アイシャの左手を取って自身の男根の根本へ誘導し、握り込ませた。
鼻先には垂直に天へ向けられた肉棒が、左手には見えない所で脈打つ男根がある。また、そしてこれからも。この醜悪な男達の象徴に、ひたすら媚び続けなければならない。
アイシャの視界に、薄い水面が出来た。
「んじゃ、ゆっくりじっくり全部舐め回してくれ。ここんトコ全然綺麗にしてもらってなかったからなぁ」
「あー、手は強すぎず弱すぎず、きっちり頼むぜ」
「……わかり、ました……がんばります……」
そんなアイシャの心情など欠片も考慮に入れず、男達は自身の欲求のまま次の奉仕に対して細かく注文を入れていく。
アイシャの生涯で、最も暗い一夜は始まったばかりだった。
【 昨年のあたり ― 牢獄 ― 厭らしい兵士達 ― 暴行された ― ??? 】
ちゃんとした陵辱を書いてない事に気付いたのと、ゲーム中で省略される細かい部分を見たくなったので、自力ででっち上げます。