※この作品はR-18です。

消えた過去からこんにちは   作:雪解けの宵王

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 二十話近く書いてきて今更なんですけど、そういえば光明君の容姿を細かく決めてないことに気が付いた。最低限分かってれば良い部分しか決めてない。


Epilogue -一歩踏み出して-

「おや、もう来たかな」

 

 遊び倒した休日も終えて、今日は四月の二十日。皆が憂鬱になる月曜日の朝だ。そんな日和に家の中に響く電子音を聞いて、僕は客人を迎えるために玄関へと向かう。尋ね人はもちろん祈ちゃんだ。

 

「おはよう、光明君」

「ん、おはよう祈ちゃん」

 

 鞄を手にして外へと出れば、そこにいたのはやはり制服姿の祈ちゃん。もう家に寄ってもらうのも当たり前になりつつある感覚を覚えながら、僕は彼女と挨拶を交わす。

 

「あのさ」

 

 何となく無言で歩くこと数メートル。少し考えていたことを切り出すために、僕は祈ちゃんに話しかける。視線を向けてくれる彼女を見て、僕は改めて口を開き直した。

 

「部活、入ってみようと思う」

 

 改めて話すことなんてこのことぐらいだし、言おうとしていたことは何となく分かっていたのかもしれない。優しい目線を向けたままの祈ちゃんを見ていると、自然とそう思った。まぁ、つまり続きを催促されているわけだ。

 

「昨日思い出した時とか……その他のこともそうなんだけど、やっぱり皆凄い嬉しそうな顔とか……態度とか。皆が僕がしたいこと(そうであること)を望んでくれたから、改めてしっかり行動に移さないとって思って」

 

 咄嗟に話そうとすると上手く口は回らない。でも、僕がやらなくちゃいけないことを進めるためには、あそこに入った方が良い気がした。多分、何となく。そういう言葉がくっついてくるけど、この温かな勘を無視するのは憚られたから。

 

「記憶のことなら、私も手伝うよ?」

「それは本当にありがとう。でも、あそこにいることに意味がある気がするから……僕はそうしたい」

 

 返す祈ちゃんは私だけでもと言いたげだ。でも、まだ部室で覚えた既視感は分かってないし、何より僕をよく知る……であろう人たちが一堂に会する場所でもある。決め手は何となくばかりだけど、それでも早く目的を果たすのには近道に違いない。

 

「はぁ……」

「う……付き合わせちゃう祈ちゃんには悪いけど……」

「ううん、いいよ。光明君の記憶が戻るなら私もそっちの方が良いし」

 

 元々、祈ちゃんは僕が入れば入ると言っていたのだ。つまり、この状況は僕の身勝手に付き合わせてしまう形になる。そのことを謝ろうとしたら、祈ちゃんは僕の言葉に被せるように否定してくれた。

 

「それじゃあ、放課後に部室行く?」

「うん? あー、お昼でも放課後でも良いけど……」

「ダメ、お昼は私と一緒にお昼ご飯食べるんだから」

 

 それはそれとして、入部するにしてもしないにしても、進退を決めたのであればお姉ちゃんたちに報告は必要だ。ただし、祈ちゃん的には昼休みはダメらしい。ムッとしながら僕の腕を取る姿は、大事なものを誰かに取られたくない子供のように見えた気がした。

 

「じゃあ放課後にしようか」

「うんっ」

 

 タイムリミットまではまだ十分あるので、敢えて反骨精神を見せる場面でもない。祈ちゃんが放課後がいいと言うならそれに従おう。その意志を見せれば、彼女は嬉しそうな声で返事をする。二人の間に生まれた空間は、休み前よりも近かった。

 

「それじゃあ祈ちゃん、またお昼に」

「ふふっ」

 

 そんな風に話しながら歩いていれば、すぐに学校へとたどり着いてしまう。玄関へと向かう祈ちゃんと、下駄箱へと向かう僕とでは目的地も違う。そんなわけで、いつものように手を振って彼女と別れれば、今日はいつもと違う反応が返ってくる。何かを含む笑みに首を傾げながらも、僕は歩いていく祈ちゃんの背中を見送ってから歩き出した。

 尤も、その意味はすぐ分かることになるのだけれども。

 

 

 

 

 

「皆、おはよー」

 

 ガラガラと扉の音を立てて先生が入室してくるのを見て、雑談に興じていたクラスメイトたちも次々に自分の席へと着いていく。フレンドリーに接される先生ではあるけど、別に舐められているわけではないのだ。

 

「えーっと……実は今日もまた転校生がやって来ました」

 

 などと考えていると、突如ぶち込まれる爆弾。この前僕が編入してきたばかりなのに、また、しかもこのクラスに転校生がやってくるらしい。

 

「不知火さん、入ってきて」

「……ん?」

 

 ざわざわと騒ぎ立つ教室の中へと招くための呼び声。それを聞いて、僕は少し遅れてから疑問符が頭に浮かぶ。それは遊君も同じだったらしい。寝かせていた身体を起こして、彼は僕へと視線を送った。知る由もない僕は首を横に振ることしかできないんだけども。

 

「不知火祈です」

 

 そして、扉の向こうから現れたのは、予想と違わぬ人物であった。見慣れた銀髪と赤いマフラーを揺らして歩く祈ちゃんを見て、彼女の素性を知る僕は固まってしまう。同時に、数分前に見た含み笑いの意味も理解して。

 

「よろしくお願いします」

 

 極短い自己紹介。それと共に祈ちゃんは明らかに僕の方を見ながら微笑む。何度か教室に出入りしているのは見られていたから、周りの視線も自然と僕に集まった。

 やっぱり、僕の人生は驚きの連続らしい。予想通りにいかないここ最近のことを思い出して、僕は何となくそう思うのであった。




 実はサブタイトルでダブルミーニング狙えるところは積極的に狙いに行ってます。いくつあるか探してみてね。
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