さて、ここから完全オリジナル展開が続きます。その内容はとても残酷で、見る人によっては耐え難いものになっているでしょう。
どうか批判だけはしないでいただきますようお願い申し上げます。
そして最後にはちゃんと感動が待っていることもお約束します。
※感動とは言いましたが、作者が読んで感動したからと言って、必ずしも皆さんが感動できるかは保証しません。
第26話 絶望の始まり【閲覧注意】
アルマと最後に会った日から二週間以上時がたったこの日、優輝翔はリンゼと二人きりでリフレットの近くにある東の森に『一角狼の群れ討伐』と『薬草採取』の依頼を複数受けに来ていた。
「はぁ…。やっと終わった。かなり時間かかったな。」
優輝翔はそう言いながら軽く汗を拭う。まぁほとんど汗などかいていないのだが、そうしたくなるほどに精神的に疲労していたのだ。
「そうですね。一角狼の方は数はいましたけどそんなに時間はかからなかったですが、肝心の薬草がなかなか見つからなかったですからね。」
「ほんと。調子乗って幾つも受けるもんじゃねーな。」
「あはは…。優輝翔さん、時間は大丈夫ですか?」
「たぶんギリギリまだ大丈夫なは……」
リンゼの言葉に優輝翔はそう言いながらスマホの画面を開くと、予想外の時間の経過に慌て始めた。
「やばっ。もうあと5分しかないっ。こうなったらギルドは明日でいいとして、リンゼは一人で帰れるか?」
「ふふっ。私は子供じゃないんですよ、優輝翔さん。アルマさんが待ってると思いますから、早く行ってください。」
「そうか、悪い。んじゃ……」
「ん//」
優輝翔は去り際にリンゼの唇にキスをして、「ゲート」で王都に向かった。リンゼは「ゲート」が消えるその時までその場で見送ると、一人帰路につこうと回れ右をする。そして『銀月』まで帰って、午後からはエルゼたちとゆっくり買い物でも……
そんな未来が、当たり前に来ると思ってた。リンゼ。
アルマと会って、たくさん話して、帰ってきたら自分を真っ直ぐに好きでいてくれているリンゼが、いつものように「おかえりなさい」と真っ先に声をかけてくれる。エルゼたちも加えてみんなで食事を終えたあとは、2人きりで部屋で今日のことや明日の予定を話して、夜はまた2人で……
そんな将来が、当たり前だと思い込んでいた、優輝翔。
「ゲート」を開いて、王都に行くこの時、優輝翔は完全に油断していたのだ。僅かながらに溜まった内と外の疲労と、待ち合わせ時間が迫っている焦り、そして、『当たり前』を『当たり前』だと思い込んでいた安心感によって、完全に、集中力を欠いていた……
だから、気づけなかった。ほんの少しばかり離れた先で息を潜めていた、リンゼに対する確かな悪意に……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ザシュッッ!!
「えっ?!」
リンゼが歩き出してから僅か数十歩、突然リンゼの前の地面にどこからともなく飛んできた1本のナイフが突き刺さった。
一瞬同様で固まりつつも、すぐさま臨戦態勢を取るリンゼ。その時、草木の影から現れたのは……
「…………よぉ。久しぶりだなぁ…。」
「ヒヒヒっ。俺らのこと覚えてるかぁ?」
「っ!」
優輝翔を見送って僅か1分足らず。自分の目の前に立ち塞がった二人の男に、リンゼは身体を硬直させた。見覚えがないわけがない。何故ならその男達は、ある意味で優輝翔と出会うきっかけになってくれた、あの時の二人組なのだから……
「クックックッ。」
「いっひっひっ。」
「………………」
男たちがそれぞれ手斧と短刀を取り出しながら近づいてくると、リンゼもいつでも魔法が打てる用意をしながら1歩ずつ下がる。いちよう先程から優輝翔に連絡を取ろうとは試みてるものの、流石にここから王都まではまだ距離的に念話不可能なようで、優輝翔からの応答は全くと言っていいほどなかった。
今はまだ正午を過ぎたばかり。おそらく帰ってくるまでに6時間ばかりの時を要するだろう。つまり、この場は一人で切り抜けるしかないのである。
「っ、「マルチプル」!」
リンゼの叫ぶような言葉で4つ5つの魔法陣が次々と宙にあらわれる。しかし……
「きゃっ!」
またもどこからか飛んできたナイフがリンゼの頬をかすめることによって、リンゼの意識が乱れ、せっかく用意した魔法陣がそのまま空気に溶け込む。そしてその間にも自分の方に突っ込んでくる男達を見て、リンゼは慌ててステッキを前に出し即席で魔法を放った。
「っ!炎よ来たれっ、紅蓮の炎槍っ、ファイアスピア!」
リンゼの創り出した魔法の矢が男達に襲いかかる。しかしひどく動揺していたためか、その威力も精度も普段のリンゼと比べ明らかに数段落ちていた。そしてそれを仮にも緑ランクの冒険者である二人がまともに受けるはずがない。
「ヒャッハッハッ!なんだそのちっぽけな魔法は!」
「きゃっ!」
細身の男が魔法を避けつつ投げてきた短刀に、リンゼの持っていた魔石付きのスティックが弾かれる。もちろん狙ったわけではなく、短刀を防ごうとしてスティックを立てたため、たまたま当たった短刀の勢いにスティックが持っていかれたのだ。
もともとスティックなどなくても魔法は出せるので、あれは魔法の威力と速度を少し上げるために持っていたものだが、それでも持っていた唯一の武器を弾かれたことによる一瞬の動揺は、男達が自分たちの間合いまで持っていくのに十分すぎるほどの時間を与えてしまった。
「オラァァ!!」
「キャァ……ッ……けホッ…!!」
筋肉質な男が容赦なく振り下ろした手斧がリンゼの腹をえぐり、リンゼは数メートルほど吹き飛んで大木に叩きつけられた。無論刃のある方ではないので怪我はしてないが、それでも大の大人が振り下ろした鉄の塊はまだ十代前半の少女が痛みで立てなくなるほどのダメージを与えるには十分すぎるほどの威力を発揮していた。
男たちは卑しい笑みを向けながらリンゼに近づくと、痛みで横たわる少女を容赦なく攻撃し始める。頭を踏みつけ、腹を蹴りつけ、お尻を蹴りつけ、胸を蹴りつけ、背中を蹴りつけ。
そうして十分にリンゼが弱った後で、細身の男がリンゼの髪を掴みあげ無理矢理立たせた。そして首に腕を回して動けないようにしてから、筋肉質の男がリンゼからあるものを奪い取る。
「っ……や、…やめ……」
弱りきったリンゼの口からか細くもハッキリとした拒絶の声が響く。しかしそんなものは聞こえないとでも言うかのように、筋肉質の男は無視してリンゼから銀色に輝く綺麗なリングを奪い取った。
それは指輪。優輝翔がリンゼに送った、二人の関係を象徴する愛の証みたいなものだ。それを筋肉質の男はそこら辺の地面に置くと、そこに遠慮なく手斧を振り落とす。
「っ!や……やめて…っ!やめてっ!……やめてくださいっ!!」
「ヒャハハハハッ!!やめてやめて言われてやめるわけねぇだろうが!いいからお前は大人しく見てろよ?お前さんたちの大切な指輪が粉々になる瞬間をな……」
「っ……いや……いやっ!やめて!やめてっ!!」
リンゼは必死の思いで何度も目の前の筋肉質の男に叫ぶ。しかしそれでも男の振り下ろす腕が止まることはなかった。指輪が小さいので1回では当たらなかったが、それでも4回目に振り下ろされた手斧の先端が、ここで始めてリンゼの指輪にクリーンヒットし、傷を与える。
カキンッ!!
「おっと、指輪にしちゃ随分硬ぇな。ちょっと傷とヒビがついたくらいか。でもあと何回かやってりゃ……バラバラ、だな。」
筋肉質の男がそう言いながら指輪を拾ってリンゼに見せると、リンゼの顔がますます絶望に染まる。筋肉質の男はその顔をまじかで見て大笑いしながら、また指輪を地面に落とした。
「さぁて。こりゃ早く砕いた時の顔を見てみてぇな。ついでにあのクソ野郎がそれを見てどんな反応するかも……」
そう言って手斧を振りあげる悪魔のような……いや、悪魔を瞳に映したリンゼは、もはや正常な思考などできないままここで一番言ってはいけない発言をしてしまう。
悪魔に対しどうぞ自分が生贄ですとでも言うかのような、発言を……
「……なんでも、しますから……」
「あ?」
「なんだって?」
リンゼの発したその言葉に、細身の男は無論、筋肉質の男が初めて手を止めてリンゼを見た。まるでその言葉を待ってたかのような反応だが、今のリンゼにはそれに気づく余裕など毛ほどもない。心も体も弱りきったリンゼに出来るのは、せいぜいが優輝翔との大切な愛の証である指輪をこれ以上壊されないように身を捧げることくらいなのだ。
「なんでも……しますから…。」
「あ?なんでも?じゃあこういったこともしてくれんのか…よっ!」
「ひゃっ!//」
リンゼの首を片腕で締めていた男が、もう一方の手を使ってリンゼの胸を鷲掴みする。そしてそのまま揉みしだき始めると、リンゼは明らかな拒絶を示した。
「いっ、いやっ!やめてっ!」
「へっ。ならこれは壊すしかないな。」
「っ…まっ、待って!待ってください!」
リンゼの反応を見て指輪を地面に置き直そうとした筋肉質の男を、リンゼが慌てて呼び止める。
「あ?なんだ?何か言いたいことでもあるのか?俺は優しいからな。あと1度だけならお願いを聞いてやってもいいぜ。ただしそのお願いが納得出来なきゃ……」
筋肉質の男はそう言うと、悪い笑みを浮かべながらコツンコツンと2度指輪に手斧を当てた。それは暗に、壊すぞという分かりやすい合図。リンゼはそう言われて完全に絶望の奥底へと沈むと、もはや何が正しいかも判断出来ないまま、男達の肉欲を受け入れることを選んだのだった……
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