※この作品はR-18です。

異世スマ 改 R-18   作:Sayuki9284

8 / 14
みなさん、お待たせしました(▭-▭)✧

今週からこの章のメインが始まります。文才がない故期待させすぎてガッカリというのもあれなので、程々にご期待くださいm(*_ _)m

それではどうぞ!


第29話 葛藤

 

「はぁ…。また負けちゃった…。」

 

「仕方ないさ。アルマは今日始めたばかりなんだ。」

 

 

優輝翔がそう言いながら優しく目の前に座るアルマの頭を撫でる。ここは王都内のとある喫茶店。二人はここでお茶を飲みながらボードゲームを嗜んでいた。

 

 

「はぅ…//でも今日から頑張って練習しますから、次やる時は負けません!//」

 

「はははっ。まぁいちよう娯楽なんだからさ、そんなに気張らず空いている時にでもやればいいんだよ。俺が一番望むのはアルマが楽しんで笑ってくれることだからさ。」

 

「優輝翔さん…//」

 

 

優輝翔の何気ない気遣いにアルマが頬を染め、照れ隠しのように冷たいミルクティーを口に運ぶ。優輝翔はその姿を可愛らしく思いつつ、チラッとスマホで時間を確認した。

 

 

「もう5時半か…。そろそろ帰るか。城まで送るよ。」

 

「えっ?いいんでしゅかっ?」

 

「ああ。というか、一人じゃ持てないだろ?」

 

 

優輝翔はそう言って囲碁とオセロのセットを「ストレージ」にしまうと、レジで二人分のお金を払って店を出た。そして仲良く手を繋いで王城までの道を歩き始める。

 

 

「えへへ//」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「いいえ。なんというか、幸せだなぁ〜って//」

 

 

アルマがそう言うのと同時に、アルマの尻尾もその喜びを表現するかのように激しく揺れる。優輝翔はそんな愛くるしいペットのような狐さんを優しく撫でると、たわいもない雑談をしながらアルマを王城の城門前まで送り届けた。

 

 

「じゃあな。落とすなよ。」

 

「はいっ//」

 

 

そう言って少しだけ重そうに二つの娯楽品を抱えて歩いていくアルマ。最初は優輝翔も心配で後ろから見守っていたが、少しすると同じ獣人の兵士らしき兎さんが来て半分持ってくれていたので、優輝翔は安心して踵を返して路地裏に入った。そして人目がないことを確認してから「ゲート」で「銀月」の自室へと帰る。

 

時刻がちょうど夕食時だったので、優輝翔は特に体を休めることなく一階まで降りた。ミカさんは厨房で料理を作っているのか、食堂にはエルゼと八重しかいないようだ。

 

優輝翔はリンゼがいないのが気になったが、念話で呼んでも反応がないのでおそらく寝てるのだろうと思い、気にせずに二人の隣の席につく。すると、二人は不思議そうに優輝翔を見て尋ねた。

 

 

「あれ?優輝翔、リンゼは一緒じゃないの?」

 

「2人ともなかなか帰って来ないでござるから、てっきりデートでもしてるのかと思ってたでござるが……」

 

「は?リンゼとはお昼前に分かれたぞ。」

 

「「え??」」

 

 

優輝翔の言葉に二人は顔を見渡して首を傾げる。その顔には戸惑いの色が浮かんでいたが、それ以上に困惑したのは優輝翔だった。

 

 

「エルゼ、八重。リンゼは一度も帰ってきてないのか?」

 

「えっと、そこまでは分からないというか……」

 

「拙者達は二人で修行していたので帰ってきたのは夕方の4時頃だったでござる。」

 

「あ、でもここに降りてくる前に部屋を覗いた時はいなかったから、たぶんいないと……」

 

 

ガタンッ!!!

 

 

「きゃっ!ど、どうしたの優輝翔……」

 

「な、なんか物凄く怖い顔してるでござるよ……」

 

 

いきなり立ち上がった優輝翔を見て二人はさらに困惑したようにそう言うが、今の優輝翔の脳には二人の言葉は1ミリも届いていなかった。

 

 

(部屋にいない…?バカな……じゃあ、リンゼは……)

 

 

優輝翔の額から大量の汗が滲み出る。

 

リンゼが部屋にいないということはベッドでぐっすり眠っているという線は消えた。まさか他の誰かと、とか、そこら辺の道端で、などリンゼに限ってありえないだろう。なら何故念話に出ない?出れないのか?

 

だとするならば考えられるのは3つ。一つは念話が出来ないほど遠くにいる場合。しかし何故そんな所に?それもどうやって?

 

二つ目はあえて出ない可能性。しかし何のために?

 

そして3つ目。これがこの中で一番確率の高い可能性で、優輝翔が最も起こってほしくない可能性だ。それは、何らかの不測の事態に巻き込まれて、気を失っている。もしくは……

 

 

「っ!」

 

 

優輝翔は後ろから何か言ってくる二人を無視して急いで部屋に戻る、と同時にスマホを取り出してリンゼの現在位置を調べ始めた。そして画面に映し出されたその情報に、優輝翔は思わず目を見開く。あろうことか、リンゼは優輝翔と分かれた場所からほとんど動いていなかったのだ。

 

 

「ゲート」

 

 

優輝翔は動揺しつつも、急いで「ゲート」を開いてリンゼと別れた場所に来る。その瞬間、優輝翔にとっては慣れ親しんだ香りが鼻腔を突き抜けた。

 

 

「………………」

 

 

優輝翔はもはや何も言うことのできないまま、ゆっくりとその匂いの発生源へ近づく。途中リンゼの装備品であるステッキを回収して辿り着いたその場所には、優輝翔がおおよそ今この世界で一番目にしたくない光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

血塗れの裸体。頭は形が変わるほどに潰れ、首や手足などは根元近くから切り離され、胴体と一緒に何箇所もぱっくりと切り裂かれている。さらに一見して全身まるごと真っ赤に染まっているその身体に目立つのは、股や口元のところを中心に垂れ流れている白い液体。それが何かは、考えるまでもなく分かる。

 

そして極めつけは、そんなメチャクチャに壊されたグロい死体の真ん中に捨てられている、真っ二つに砕かれた銀色のリング。それは優輝翔がこの世界で……いや、生きてきた中で初めて異性に送った正式な愛の証。

 

 

「リンゼ……」

 

 

優輝翔はこの死体の主である愛する少女の名を絶望に満ちた声色で呟きながら、そっと膝を地面について拳を握りしめる。

 

……許せなかった。大切な少女をこんなにした相手が。許せなかった……

 

 

でも……

それ以外に…………

 

 

 

愛する少女を、守ってあげられなかった自分が、許せなかった……

 

愛する女の子を、こんな目に遭わせた自分が、許せなかった……

 

許せなかった、何も起こるはずかないと心のどこかで高を括ってた自分が……

 

 

 

【許せなかった……】

 

 

 

━━━あの時から

何も変わっていない自分が━━━

 

 

 

 

 

「ははっ……。二度あることは、三度ある…か……」

 

 

優輝翔は絶望に染まりながら独り言のようにそう呟いた。

 

もはや誰が殺ったかなんてどうでもよかった。それより何故自分はあの時リンゼを一人にして置いていってしまったのか。何故自分はちゃんと周りの状況、リンゼの安全を確認していかなかったのか。何故自分は時間が無いからといって「ゲート」でリンゼを『銀月』に送り届けることもなく行ってしまったのか。

 

 

 

いったい何故、

愛する彼女(リンゼ)がこんな目に……

 

 

 

 

「……いや、そもそも……」

 

 

 

『そもそも俺はリンゼ・シルエスカという人間を “本当に愛していたのだろうか” ?』

 

 

優輝翔の心の中にそんな疑問が浮かび上がってきた。そしてその自問はどんどんエスカレートし、闇を増していく。

 

 

『俺は今までずっとリンゼに向かって『好きだ』『愛してる』などと内でも外でも呟いてきたが、それは果たして心の底から思ってのものだったのか。そこに中身はあったのか。ただ自分を一番好いてくれている女の子の気持ちを利用していただけじゃないのか?』

 

『俺はただ自分に好意を向けてくれる相手の感情を利用して、ただ自分の性欲を満たすために、そして “あの場所で学び損ねた人間の交尾というものを学ぶ” ためにリンゼを利用していただけなんじゃないのか?』

 

『確かにリンゼのことは嫌いではなかった。むしろどちらかと問われれば好きと答えてもいい。時間にしてみればまだ数ヶ月だが、それでも恐らくリンゼとはこの世界で最も心の距離が近い存在と言っても過言ではないだろう。だがそれでも俺はリンゼを愛していると、心の底から言えたのだろうか?』

 

『否だ』

 

『それはハッキリしている』

 

『俺はリンゼを “決して愛してはいなかった” 。何故ならこの惨状を目の当たりにしても “涙ひとつ流さずにどこか平然としている自分” が確かに存在しているから』

 

 

 

 

 

『……なら何故、俺はリンゼと付き合ったのか?婚約までしたのか?答えは単純明快だ』

 

『俺はリンゼ・シルエスカという人間に “首輪” を付けて、自分の “モノ” だと、 “コレ” は自分の “所有物” なのだと主張したかっただけなんだ』

 

『違うと言いたい。俺はリンゼが好きだったのだと、普通に恋人と思っていたのだと言いたい。でもたぶんそれは叶わない。だって、俺の中のあの忌まわしい男の血が自分と同等以上の存在がいることを決して認めやしないから』

 

『そう、あの男は神でさえ認めなかった。むしろ自分が神であるとさえ認識していた。だからこそ好き勝手に人体実験に手を染め、老若男女関わらず多くの人を平気で殺めてきたんだ』

 

『全ての存在の上に立ち、全てを支配し、管理する。すべてが自分中心。『私が神だ』と言わんばかりの傲慢さ。それがあの男であり、そして……俺の “親父” ……』

 

 

「……全く、つくづく俺は “あの男” の血を受け継いでいるんだな……」

 

 

優輝翔は膝をついたまま顔を上に向け、漆黒に染まりつつある瞳で既に日の暮れた空を瞬きもせずに見上げた。

 

 

『もういっそリンゼの事なんか諦めて、あの男の血を受け入れすべてを力で支配する人生を送ってやろうか?』

 

 

暗い、闇に落ちていく優輝翔の思考は、その落下に従ってどんどん欲望の渦に飲み込まれ始めた。

 

 

『今の俺にはそれが出来る。何せただでさえ馬鹿げた改造人間の俺が神様に強化までされてんだ。余裕だろ。こんな世界に、俺に勝る生物なんていない』

 

『全てを支配し、何もかもを管理する。人も、動物も、自然でさえも』

 

『まずはアルマを手に入れる。続いてエルゼもリンゼのことは適当に嘘をでっち上げて同情を引き出せば簡単に落ちるだろ。そのまま女を増やせば性欲の捌け口に困ることは無い』

 

『そうだ。きっとそれがいい。今まで目上や年上の奴にはとりあえず敬語とか使ってたけど、それも一部の人間だけでいいだろう。所詮この世は力が全てなんだ。気に入らなければ殺せばいい。俺の一番得意分野じゃないか。殺生は……』

 

『手始めに冒険者として名をあげる。そして王様に会うことが出来ればこの国の姫にも会えるだろう。そこで惚れさせれば俺は次期国王。その姫も部下も言いなりにすれば国を好きにできる。その後は世界進出だ。とりあえず近隣のレグルス、ミスミド、リーフリースは固い。話し合いで国交が無理なら、戦争して姫をかっさらって国を滅ぼすか。別に評判が悪くなった所で権力と金と悪知恵があればどうとでもなる』

 

『ははっ、気持ちいいな…。いづれ世界を支配し、その頂点に立つのか。女も飽きるまで使って捨てる。気に入らなければ殺すだけ。食も毎日最高級。これぞ神!支配者!誰にも邪魔されない世界そのものが俺中心の絶対君主!』

 

『そうだ。俺は支配者なんだ。なら使ってやればいい。あの男がっ、いや、親父が俺に残した支配者としての資質っ!それを食い尽くして自分のモノにしてしまえばいいんだっ!』

 

『俺は生まれながらの支配者。頂点。元は支配者だった親父も親父より支配者としての資質のある俺に殺されたんだから本望だろっ!』

 

『そうだ。俺は白鷺優輝翔。白鷺のっ!あの男の血を引く男だっ!支配すればいいっ!思い通りにすればいいっ!!何もかもっ!何もかも!!』

 

 

「なにも…っ!……かも…っ!!」

 

 

優輝翔はそう口に出したところで、途端に唇を血が滲み出るほど噛んで言葉を止めた。

 

支配すること、支配したあとの事を考える愉悦感。人間の三大欲求の全てを満たし、更にほかの善悪の欲望の全てを叶えることが出来る理想の世界。

 

 

 

 

 

でも……それ、なのに……

 

 

 

どうして……、どうして……、

 

 

 

 

 

“なんで、こんな苦しいんだよ…ッ……”

 

 

 

 

 

優輝翔の悲痛に満ちた声ならざる叫びが、森の中を漂い闇に消えていく…。視界はただただ真っ暗に…、何もかもが消えていく……

 

そして、そんな優輝翔の状況を代弁するかのように、先程まで晴れていた空は急な分厚い黒い雲に覆われていき、天気は大雨へと急変したのだった。

 

 

 




お疲れ様でした(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*ペコ

長かったですよね?今話もありがとうございました!

感想お待ちしております┏●
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。