レッスンルームにも……やっぱりいないか。
「おう、プロデューサー。人探しかい?」
ええ、
「うん?
そうなんですか……って、あぁ……またこんなところで脱ぎ散らかして……。服は脱衣所で脱ぐよういつも言っているのに。
「むしろ、建物内でも服を着るようになったのは進歩じゃねぇか?」
はい。ですが進歩というより、文化レベルが上がったというか、人に向けて進化したというか……。
「人に進化たぁ面白いことを言うねぇ。……確かに、エロスってのは野生に帰る行為といえなくもねぇしな」
一応、我々は近代文明の中で生活しているので、その環境に適した装いを心がけていただきたいのですが……
「ああ、わかってるよ。近代文明の中にありながら野生に帰るから、エロスってのは燃えるんだ」
本当にわかっておられるのでしょうか……。
「
あ、
「ひぇっ!? す、す……すいません……。ひとりなのにシャワーを使ってしまって申し訳ありません……っ!」
いっ、いえいえ、そんなに恐縮ならさらずとも……
「おい、あんまルミノを怖がらせんじゃねーよ」
そんな! 怖がらせるつもりはなかったのですけれど。
「ルミノと話したけりゃ、先ずは自分の両手両足をふん縛ってからにすんだな」
それは勘弁してください。まだ仕事中ですので。
「安心しな、ルミノ。この男が変なことをしようものなら、オレが代わりに跨ってやるから」
それこそ、変なことそのものではないでしょうか……。しかし、妙ですね。いつもならレッスンが終われば皆さんシャワーを浴びに行かれるものなのですが。
「あー、それなら、こないだそこに新しいスパできたろ」
みたいですね。何やら完全に自動化された24時間営業だとか。
「あたしも行ってみたいのですけど……」
それはどうでしょう……? あのような施設は刺青禁止のところが多いので。
「心配すんな。こういう街だけに、大丈夫みたいだぞ。ただ、配慮は必要だろうから、遅い時間にしておこうって……今夜一緒に行くんだよな?」
「はい❤」
……私も同伴してよろしいでしょうか。
「何でだよ。さすがに混浴はねぇからな」
いえ、お二方の深夜外出には前科がありますので。
「起訴されてねぇよ! 厳重注意じゃねぇか!」
「ごめんなさい……うぅ……」
あ、砂橋さんすいません泣かないでください。責めているわけではありませんので。
「第一、集まってたオッサンたちも大喜びだったじゃねぇかよ。それでどうして警察呼ばれんのかわからねぇ」
日本の法律では、公共の場で裸になってはならない、とされておりますので……ハッ!?
「おいおい、まだ夕方だぞ? さすがのオレでもこんな時間から脱ぎゃしねぇって」
しかし、草那辺さんは草那辺さんですから……ここにワンピースが残されている、ということは、下着のまま外をうろついている可能性も……。
「プロデューサー、蘭の下着、見たことあっか?」
男としては、そのような質問には答えづらいのですが……ってぇ!?
「探しに行くのなら急いだ方がいいぞ。それとも、オレたちが行ってやろうか? 予想される蘭と同じカッコで」
「……❤」
「いまなら会社帰りのサラリーマンも多いだろうし」
「……いっぱい、見てもらえる……❤」
これ以上心労を増やさないで下さい! あぁ……もう、私が行きますから!
***
えーと……例のスパは……どこだったかな……? あまり気に留めてなかったから、どの区画だったかイマイチ覚えてないぞ。入れ違いになったら厄介だし、ステージはもうすぐだから、警察のお世話になっている時間は……
……って、うわぁっ!? 見つけたことは見つけたけど……草那辺さんは、どうしていつもいつも……ッ!
「やぁ、お前。そんなに息を切らせてどーした?」
どーした、じゃないですよ! 首から掛けているタオルは……その小ささでは巻けませんね。ほら、早くこのワンピースを……
「シャーッ!」
わっ、タオルを振り回すのはやめてください! それ、水吸ってますから、当たったら痛いですよ!?
「フフン、ランに服を着せたければ力尽くで来い!」
そう言われても、絵面的に婦女暴行っぽいのでとてもやりにくいのですが。何より、ステージまで時間もないので、そろそろ戻っていただかないと。
「大丈夫。七時だよな。ラン、覚えてる」
もう一時間もないですよ。だから、すぐ劇場に戻って……
「やなこった」
!?
「化粧だの着付けだの、ラン、嫌い」
嫌いでも必要なことなんですよ!
「どうせ脱ぐんだろ。あのヒラヒラ着るの、面倒」
ストリップというのは脱ぐことに意義があるんです! 最初から裸ではダメなんですよ!
「その違いがわからない。むしろ、最初から裸の方が、お客さんも喜ぶ」
と、ともかく……場所を移しませんか。ここは目立ちすぎます。
「ラン、目立つの平気。それが仕事だから」
あーもー……ですから、我々は貴女方の裸で収益を得ているので、仕事の外で脱がれては困るとあれほど……ッ!
「うん? そんな話、初耳だぞ」
……ああ、すいません。そう諭したのは姫方さんでしたか。
「それにラン、仕事だとかそういうの、よくわからない」
!?
「ラン、お前たちと一緒に行けば服を着ないで暮らせると思って来た。だから、服は着たくない」
あああああ……ストリッパーを曲解してるーーーっ!!
「この街のオジサンたち、みんないい人。……お、スマホ向けられたらサービスしなきゃ。ほい♪」
ここでY字バランスはやめてください!
「ちゃんとステージには間に合うように帰る。お前は劇場で待っていればいい」
そうはいきませんって! 警察に見つかったらどうするんですか!
「警察って、こないだの黒服たちだろ? もちろん、こうする」
だーかーらー! ステージ外でのY字バランスは厳禁です!
「オジサンなら、みんなこれで喜んでくれる。問題ない」
警察がオジサンとは限りませんよ!? 婦警……女性の警察もいるんですから。
「マジで!?」
マジです。……まあ、この街はこういう街ですので、男性の警官が多いに違いありませんが。
「うーん……女の客だと困る。どうすれば喜んでもらえるか、わからない」
そもそも、警官も客として声をかけているわけではないのですけど……
「シキに訊いてみようかな。シキは、そういうこと何でも知ってる」
そ、そうですね! なので、先ずは劇場に帰りましょう! 姫方さんがまだいるかはわかりませんが。
「おう! ……あ、でもラン、まだ帰れない」
いやいやっ! 帰れない……ではなく、すぐにでも帰っていただかないと!
「あの銭湯、コーヒー牛乳が売ってなかった」
!?
「だから、いつものお店に寄っていこうと思ってたところ」
お店って……どう見てもお金持ってないじゃないですか。
「だから、あのお店。ツケ? ってヤツで買い物できるから」
……まあ、あそこのオーナーはうちのお得意様でもあるので、理解があって助かっておりますけど。
「あ、でも、ステージ前だから、疲れることしちゃダメか」
疲れることって……一体ナニで支払いを……!? ……いえ、聞かなかったことにしておきましょう。
「でも、いまなら大丈夫か。……だよな?」
何がどう大丈夫なんです?
「ラン、知ってる。男はみんな、財布持ってた」
男だから、というわけではないですけど……はい、持ってますよ。
「ツケなら後でお前に払うから、お前は代わりにお金を頼む」
わっ、わ……お尻をこっちに向けられても困ります!
「そーだったな。支払うのはステージの後だし。むしろ、ステージ中でもいいぞ」
いえ、今日の入りですと、お相手はおそらくお客様の誰かになるかと……。
「どっちにせよ、後で払うものは払うから、風呂上がりのコーヒー牛乳を頼む」
……わかりました。ですが、その前にひとついいですか?
「おう! お前さえ良ければ、ツケのひとつやふたつ、いますぐいいぞ!」
お尻ではなく……先ずは、こちらを。
「だから、服は着たくないって」
せめて劇場に戻るまでは着ていて下さい。それで、飲み物代はこちらで出します。もっとも、そのツケとやらも、結局すべて劇場に現金払いの請求が来ているのですが。
「難しい話はわからんけど……なら服は、コーヒー牛乳を買ってもらうまで、でいいか?」
この期に及んでギリギリまで抵抗しますね……。
「コーヒー牛乳は風呂上がりだからな。服なんて着て飲んでたら、風呂上がりじゃない」
そういうものなんですか……。今度どなたかに、風呂上がりはタオルを巻くものだと教えていただきたいものですね。
「よし、行くぞ、お前。時間もないんだろ?」
は、はい! ……って、私を置いていかないで下さい! あと、人目につかないよう、せめて大通りからは外れていただきたいのですが……っ!
「気にするな。この仕事は目立ってナンボとみんなゆってる」
こういうのは悪目立ちと言うのですが……はぁ、ともかくいまは、見つからないよう急ぐしかないですね。あと、例のスパにはコーヒー牛乳を置くようお願いしておかないと。
***
「っぷはー」
満足いただけたでしょうか?
「あー……うん、コーヒー牛乳は美味しかった。けど……」
そのー……何か?
「ちょっと距離はあったけど、風呂上がりはやっぱコーヒー牛乳だな!」
ちょっとと呼ぶには距離がありすぎますので、今後は同じ敷地内でお願いできますでしょうか。
「それは、風呂屋に言ってくれ! しかし……うーん……何か、落ち着かない」
その格好で落ち着かれても困るので、今度こそ帰りましょう。車を呼んでもいいですから。
「いや、その前にやることがあるぞ」
?
「飲み物をもらったら、ちゃんと払うものを払わないと」
って……あぁ、もう! またお尻を向けて! 払うものなら私が払ったでしょうに!
「でも、ランは払ってない」
だから、代わりに私に払ってほしい、という話だったじゃないですか」
「それはそうなんだが……実際払ってもらったら、落ち着かない」
では、この代金は草那辺さんのお給料から差し引いておく、ということで……
「違うぞ! そんなんじゃダメだ!」
ですから、お尻を突きつけないで……まさか!
「おう! 買い物したらマンマンにチンチン! 百円分、熱いの
いえいえいえ! 百円分って身体を売る単位じゃありませんから!
「うー……でも、オッサンにはいつも
ちょっ……店長さんに向かって何てことを! すいません、すいません! 悪気はないんで。
……ああ、はぁ、いつも息子がお世話になってるから気にしてない、と。お子さん、いらしてましたっけ。……愚問でしたね。ハイ。
しかし……あぁ、あまり長居されては困る、と。時間が時間だけに……っていや、深夜でも、全裸の女のコがいては困るでしょうに。……はぁ、こういう街だけに、深い時間なら意外と見逃されるんですねー……。
……って!
「ということで、ほら。百円分、射精しろ!」
あーもー、百円分って何なんですか! ……はぁ、値段に関わらず一回の買い物で一回、と。そうですよね。男として何度もできるものでもありませんし。
「時間ないんだろ? 何かもう……マンマンがウズウズして……早くお支払いしろよ!」
どうして肩代わりしたこちらが、さらに支払いを要求されてるんですか……。しかし……はぁ、すいません。ご理解感謝します。で、では……せめてバックヤードをお借りして……
えっ、バックヤードはダメ!?
「気にすんなよオッサン! 男同士だろ」
はぁ、何が収めてあるのか何となくわかりましたが……しかし、店内でそのようなことは……うぅ、店内の方がまだマシ、ですか。
で、では、せめて、お店の奥へ……
「やっとヤる気になってくれたか! ほら、早くチンチン!」
あ、あまり商品には触れないように! 手を突くならちゃんと何もない棚板の部分を……
「早くぅ……ランのマンマン、やっぱり、お前のチンチンが一番好きみたいなんだからぁ……」
そ、そのようなことを言われると……ちょっと心も揺れてしまいますね。では、失礼して……
「あ、あ……はぁ……❤」
これは、吸い込まれるようですね……っ!?
「だってぇ……ずっと
急がないといけないので……早くても文句言わないでくださいよ!?
「安心しろ! ラン、早いの大好き! 早く熱いのを……あ、あ、あ……はぁ……っ!」
草那辺さんからもお尻を押し付けられては……くぅ……やはり、
「もっと、もっとぉ……っ! あ、あ、あ……やぁん……♪」
こ、これなら……こちらも早々に……ハッ、入店のチャイムが!?
店長さん、止めてくれてますよね……って、ちょ、ちょっと! そこの棚から覗かれてませんか!?
「あっ、あ、あぁん……ちゃんとオッサンがゆってくれたんだろ。奥で……お支払い中だってぇ……❤」
いえいえ! ちゃんと、と言うなら足止めしていただかないと……!
「さっ、さーびすしなきゃ……ラン、そういうお仕事だからぁ」
草那辺さん、動かないでください! そっちに顔を向けたら……
「おっ、男の人……前から見た方が……喜ぶぅ……♪」
それはそうでしょうけど……あ、あ、思いっきり
「だ、だから……オッサンが、ちゃんと……」
なるほど、撮影はするな、と言ってくれているのですね。しかし……うわ、またチャイム! 退社時間だけに、人もいっぱい来てしまいます!
「ほ、ほらぁっ、腕、引いてくれないと……男の人、悦んでくれない……!」
ここでそんなこと気を使う必要ないですから! って……あぁ……あっちにも、こっちにも……最初の人なんて、ついに物陰から出てきちゃったじゃないですか!
「だっ、だっ、大丈夫! ラン、そういう、お仕事だからぁっ!」
しかし、これには私の方が……耐えられそうにありません!
「
これは、もう……あぁ……本当に……!
ビクッ、ドクン、ドクン……っ!
「あ、あ、あ……熱いのが……マンマンに……チンチンから、マンマンに……熱いぃぃぃぃ❤❤❤」
こ、これは……うぅ……早く撤収しないと。って、草那辺さん、大丈夫ですか!?
「す、すまん……久々にお前のチンチンだったもんだから、マンマンも頑張りすぎちゃったみたいで……」
あぁ……こんなにグンニャリしてたら……ステージに立てますか?
「少し休んだら大丈夫。だけど……ギリギリまでぇ……」
これはもう……いえ、大人しくなっていただいたのはむしろ好都合かもしれませんね。それでは失礼して……よいしょ、と。すいません、通りますー!
もっとこのコの舞台が見たい方は、TRKを、TRKをよろしくお願いいたします!
願いいたします!