獰猛な吼え声が響き渡る。
黄昏時、あるいは逢魔が時。極東の地にて古来より妖の者が現れ、地上を跋扈していくと伝わる時間が訪れ、街もまた薄闇に包まれようとする中。
人気の存在しない林の中を駆ける、複数の影があった。
「よぉっし、この辺りで良いんじゃない!? まさか撒いたってことはないだろうし……」
「うん、確かに追ってきてる……けれど、これは」
「ひっ! ら、ライオン!?」
「いやこれキメラよ! いや安心したわ、とてもじゃないけれどこんなのを街中で解き放たれたら対応しきれなかったかもしれないしね……」
『――ほう、ここでなら対処できるとでも言いたげだね』
「「「!」」」
軽い隠蔽を施した上での飛行をも駆使し移動していた少女たち。各々の得物を構えながら話し合う彼女たちに、声をかけて歩み寄る影があった。
燃え盛る炎の如く膨れ上がった鬣、ギラギラと輝く眼光。鱗と甲殻にその胴を包み尾の蛇を揺らす獅子は、おおよそ尋常な生物には見えはしない。
神話においてはヘラクレスの振るう武具をも受け止めたという毛皮に身を包む獣――その肩に止まったカラスの姿を見て取ったクロエが、忌々し気な様子を隠しもせずに舌を打った。
「ペットに戦わせておいて自分は高見の見物とは、また随分と慎重なことじゃない。女子中学生相手にそんなに及び腰になっちゃって恥ずかしくないの?」
『これまでの君たちの戦果を侮るつもりはないと言う訳だ。今は下調べと前準備の段階だとも』
クロエの挑発にも乗らず飄々と嘯いて。複数の猛獣の因子を重ね合わされた獣が唸り声をあげたのに、使い魔のカラスがばさばさと羽ばたいて行く。
『流石に古代存在した本物の幻想種には到底及ぶものではないが、時計塔の迷宮に棲まう怪物にも迫る傑作の一体だ、使い潰すのには惜しいが――出し惜しみして勝てる難易度ではないことは保証しておこう。楽しんでくれたまえよ』
「――くる」
「ええい動物愛護法に従え──!」
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ、構えなさい!」
ヤケクソ気味に叫んだイリヤにクロエの叱咤が飛び少女たちが構えるなか異形の獣もまたその柔らかな血肉を貪らんと牙を剥き出しにして唸る。林の中、じりじりと間合いを測り合う4つの影。
キメラの咆哮を皮切りに――魔法少女たちと魔術師の操る魔獣が、冬木円蔵山の林木の中にて激突した。
「――んっ」
美優を、聖杯を巡り繰り広げられていたエインズワースとの戦いは終結を迎えた。
美優は取り戻され、パンドラは眠りにつき、エインズワースの始祖の妄執もまた潰えて。
元の世界へと、6人で戻り――イリヤたちは、
「……ん、ふぅ」
冬木市、新都。日も沈むにつれ商店が続々とシャッターを閉じては飲食店の明かりが灯り、各々の暮らしがスイッチを切り替えていくなか。路地裏で、荒い息を吐いて呼吸を整える少女の影があった。
スカートの一部を裂かれた魔法少女の衣装――桃色の光粒と共にそれが解れ、穂群原学園中等部の制服が露わになる。
──1年と数ヶ月前。初めて魔法少女になったときと比べやや女性らしい輪郭を帯びた身体をくの字に折り曲げて。
呼吸のペースを維持し、調子を整えようとするが――どうにも、上手くいかない。白磁の肌に熱を灯し、目を潤ませるイリヤは――狂おしいまでに熱くなった身体の昂ぶりを、自覚せざるを得なかった。
不意にポケットの中で振動した携帯端末を開くと、慣れ親しんだ家族からのメッセージが届いていた。
『セラやお兄ちゃんには帰りは遅くなるって伝えておいたわよー♪ 魔術師との戦闘前に念のため声はかけてたし朝帰りになっても大丈夫だからね♡』
「う、ぅぅう。クロぉ」
顔を真っ赤にして妹を呪う。
これから済ませないといけないことに羞恥を覚えないでもなかった、が――それでも、背に腹は代えられないのは事実だった。
立ち上がって見上げるのは、限られた住民の住まう建物。一人の青年が住まう廃れた外観のアパートであった、が。彼女は、彼女と同じ『利用客』は、そこが見た目にそぐわぬ確かな建築技術を用いられた快適な住居であることを知っている。
これは必要に迫られてのことだ。胸の奥の昂ぶりも、胎の奥が苦し気に疼くのも魔法少女としての力を行使した副作用に過ぎない。だから身内で時折揶揄されるような感情などが存在する筈はなくて。
断じて、そう断じて――私は、期待なんか、していな、
「お、来たかお疲れさん」
特に事前から来訪の連絡があった訳でもないが、客の動向はある程度把握していた。登録されたIDに反応した自動扉が来客を告げる音声とともに開かれるのに応じ廊下に顔を出して端的に声をかけてやると、立ち竦んでいた少女がびくりと肩を震えさせた。
「……こんばんは、暮人くん」
「いらっしゃい。今回はまだ軽めの案件だったにせよまあ疲れもあるだろう……? 調律が終わったらゆっくり休んでいくといい」
「軽め……あのライオンと戦うのが、軽め……?」
バイタルを確認する限りでは、今日彼女たちを襲撃した魔術師の操るキメラを魔力砲で消し飛ばすのに勢いよく魔力を回した筈だった。
そのせいか息は全力疾走でもした後のように乱れ、顔色も平時のそれと比べだいぶ赤くなっている。一瞥しただけでは確認できなかったが、あの分ではすっかり濡れてしまっているだろう。
多少際どいラインではあるものの、学校で身内やクラスメイトに対して見せてるような様子を維持するのに随分と頑張ってるなあと苦笑する。調律を始めるからその前に水分でも補給しておくといいと伝えると、イリヤはぎこちなく頷いてからキッチンに向かっていった。
「……さて、と」
既に準備は終わっていた。寝室に乱雑に放られていた調律用の薬剤を注入するのに使った空の注射器や機材を片付け、使い終わったものを白いトレイに仕分ける。
開きっぱなしにしていた扉から来客の様子を覗くと、自分を待っていたのだろうイリヤが部屋のすぐ近くで所在なさげに佇んでいた。暮人も通う学園の制服を身に纏う白の少女が、彼を認めるなり目を泳がせ、羞恥に耳を真っ赤にしてうつむくのに――躊躇うことなく、その細腕を掴んで寝室に引っ張り込む。
「――あ」
「ん、っ。うっ、んむ――――は。ふぁ」
「んんっ、そこ、は。ひゃっ、んむっ……!」
柔らかな唇に口づけを落とし、舌を絡め合わせながら。初めて会った頃と比べても着実に成長しつつある身体をまさぐって中等部の制服のボタンを次々と外していく。
「ふぇ、待ってぬぬぬ脱がすのは待って! ……さ、先にシャワー浴びせてくれないと、汗が――んむっ」
「ん……、俺はこのままで構わないぞ、どうせこれからもっと汗を流すんだし、君の匂いも……うん、悪くない」
「や、ぁああああ」
腰を片手でまさぐりスカートのファスナーを開きながら、ブレザーを脱がせて露わになった華奢な腕をもう片方の腕で持ち上げた。腋に顔を寄せわざとらしく匂いを嗅ぎだすと涙目になっていやいやと悶えだすのに、苦笑しながら腰に回した手で少女の身体を引き寄せる。紅い瞳を潤ませて恨みがまし気に睨みつけてくるイリヤに嗜虐心がそそられるのを自覚しながらも、これ以上の顰蹙を買う前に用だけでも手早く済ませることにする。
衣擦れの音。するりとスカートを腰から落とせば恥じらうように頬を染めて見ないでと絞り出すが、知ったことではないとばかりに露わになった肌を慣れた手つきで触られるのに翻弄される。脱がしていった制服を汚さないようにと伸ばした爪先でスカートやシャツを寝室の端にどかしたのはせめてものの配慮だった。
制服の上からでもその膨らみを主張していた乳房を揉みしだきながら、ショーツの中に滑り込ませた指で濡れぼそった秘部を刺激して少女の調子を確認していく。
「ふぁ、や、ぁ……!」
「ん、すっかり濡れてるね、準備は万端だ」
「い、言わないでぇ……ん、あ……!」
既に発情していたのもあってか、軽く愛撫をしていれば絶頂までさほどかかりはしなかった。弱いところを的確に擦り上げられるのに反応し愛液を溢れさせてきゅっと締まる膣口に指先が締めつけられるのを堪能しつつ、身体を震わせのけぞるイリヤを受け止めながら腕の中の華奢な少女をベッドに押し倒す。
そのまま調律用の術式を確認、自身もまた衣服を脱ぎすて、潤んだ瞳に熱を灯らせてこちらを見上げるイリヤと目を合わせ――ずぷりと、粘質な音をたてて少女を貫いた。
「んっ……! あっ、ひぁっ――いィ、ひっ……しょこ、はあ!」
「あぁ、これは本当に――たまらない、な!」
可愛らしい薄桃色のショーツをずらして挿入しながら、下着だけになった少女の下腹部に浮かび上がった
腰を打ちつける度に嬌声をあげる少女の柔肌に幾度となく唇を落としながら、何度交わろうとも飽きさせてくれることのないイリヤの極上の肢体に感嘆を漏らした。
正直なところ、気を抜いてしまえば即座に射精してしまいそうなところだったが――仕事を果たす前に快楽に自分が呑まれてしまっては、調律師としての意味がない。術式を駆動――、性的接触を媒介とした魔術回路への、否イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという存在そのものに対する干渉を開始する。
「あっ……! やあ、あっ。わたしの、なかにぃ……!?」
「いちいちエロいな本当に……」
イリヤと暮人の身体に浮かび上がった刻印。術式を起動し
まあ、自身の『中身』に踏み入られるのに慣れてもらっても困るのだが──万一これが病みつきになってしまわれてしまうと扱いにも困る──拒絶反応をされないのは僥侯だった。
直に交わるという行いを記号に発動される魔術。聖杯としての方向に傾き過ぎた少女を人の位階に引き戻す――引きずり下ろす調律魔術。
「っ……」
「あ、あ、ぁ――」
寝台に仕込まれた補助礼装が動きを止めたことを察する。
腕の中で華奢な身体を震わせたイリヤを抱きしめ、組み伏せ、指先でその紅い瞳を開いて瞳孔を確認した。徐々に発光の収まる少女の身体に浮かんだ下腹部や胸の中心の刻印に触れることで経過を把握し――過去にこなした依頼とは比べ物にならないくらいの集中力と魔力を削っていかれた苦悶を押し殺し息を吐く。
「お、終わぁ――ったぁ!?」
ズン!
「いつもの調律はもう終わったから。これから1時間……30分程度でいいか。その後は風呂にでも入って念入りに洗おうね……っと」
「やぁ、まっ。不意打ち、きんしぃ! やっ、まっ待って……! ~~~~~!!」
「もう達したか、ちょっと早い気もするけどそれもしょうがないか……。悪いがこっちも生殺しされて限界なんだ、待ってなんかやれないよ」
突き入れては腰を引き、再度叩きつける。
嬌声と水音。自身の発する淫猥な響きが少女の耳に届くように激しい抽挿を繰り返し、亀頭に弱点を突き上げられた少女が締めを強くするのに合わせ精を吐き出す。
「また、なかぁ……! やっ、あっ……!」
「本当に搾り取ってくるよな……何なんだ一体。抱くたびにエロくなってない……?」
「そんな、こと。な――ひぃん! また、おっきく――」
調律の最中のそれにも負けず劣らずの乱れ具合に責めてる筈のこちらの方がおかしくなりそうだと暮人が笑みを引き攣らせる。クロエや美遊といい聖杯三人娘は男を惹きつける魔性としての完成度は凄まじいものだった。
雛が餌を欲しがるように顔を寄せたイリヤの唇を塞ぎ、舌を絡め合わせる。乳房を揉む手のなかで自己主張する乳首を爪弾いては可愛らしく喘ぐのに薄く嗤いそのまま口を開いて胸元を貪った。狂おし気に腰を振る卑猥な雌の尻をわしづかみそのまま中に白濁をぶちまけて――そのまま、少女を翻弄するように愛撫と抽挿を続ける。
「。っ、あっく……ひや、あっ、ぃ……!」
「あっ……!や、また――今すっちゃ……!」
「まって、お願いまって――あっっ……~~~~~っっ、うぅ……」
愛撫と交合を重ね、度重なる絶頂に息も絶え絶えになって割り開かれた脚を精と愛液で濡らすイリヤから吐精したばかりの剛直を引き抜いて。息を荒げながら、ベッドに仕込んだ礼装を引っ張り出して片付けていく暮人は思わずといったように苦笑する。
多少は自重しないと病みつきになりかねないなと呟いて――軽く首を振り、湯でも沸かすかと寝室をあとにした。
・
エインズワーズ戦で聖杯としての力を使いすぎたイリヤたちを人間寄りに調整するため訪れた調律師の少年。薬の副作用で年若い容姿で固定されているのをいいことにイリヤたちと同じ学校に通う。だいたい20代後半。ヤク厨。