アンデットの婚活事情と木桜美夜のセカンドライフ 作:木桜 春雨
ずっと独り身を通してきた、というか人付き合いがあまり旨くなかったのだと男は思っていた、だから恋人もできず結婚までこぎつけることができなかった、かし、このままでは良くナイト思い人生の半ばを少し過ぎたときに婚活と思ったとき、流行病で死んでしまった。
ああ、つまらんと思った男は生まれ変わったら今度は平凡でもいいから普通の人生を送りたいと、まるでドラマの主人公にも慣れない様な台詞を呟いて眠りについた。
そして生まれ変わったとき、自分の顔を見て思わず叫んだ。
「なんじゃー、こりゃあ」
普通、生まれ代わりなら、幼児、赤子から人生か始まるものだろう、ところが、そんな予想を見事にぶっちぎってくれたのだ。
「何を驚いているのです」
突然、頭上から神々しい声が聞こえてきた。
「私はパルティア、貴方の願いを叶えてあげた聖女です」
パルティア、女神だと、頭の中の、いや、心の叫びを読んだのか、最近、聖女になったばかりなのですと相手は答えた。
生前不幸だった人間を幸せにする為の試験です、貴方が幸福になれば自分は聖女から女神になれるのですと喜々として相手は言葉を続ける。
「貴方は死の間際、幸せになりたいとなりたいと言ったでしょう」
「だ、だからといって、なんで、この顔だ、しかもアンデットじゃないか、人間ですらないなんて、幸せから遠すぎると思わないのか」
男は自分の顔を指さしてよく見ろと詰め寄った、普通なら必死の形相になるだろうが、の顔に表情はない、と言うのも白骨だからだ。
聖女は、一瞬無言になった。
「で、でもアンデットなら病気にもなりません、寿命も永遠ですよ、食事だって絶対に食べなければいけないってことはありません、いいでしょう」
よくないと男は叫んだ。
「幸せじゃないだろう、こんな骸骨のアンデットなんて恋愛も結婚もできん、普通の幸せから遠ざかっているなんてもんじゃないぞ」
あら、以外とまともですね、欲がないのねとパルティアは思った、だが、この男が幸せだと思わなければ自分の試験の合格はあり得ない、それというのも今回で九九九回目の試験、これで不合格だともう後がないのだ。
「アンデットでも最近は人権が認められています、ドラマを見たことがないのですか」
「ドラマ、なんだ、それは」
「有名なアニメ、オーバー○○○知らないの」
と言いかけて、はっとした、あれは別世界のテレビの話だったわと我に返った、ここ最近、別の世界でニート同然の生活、アニメとライトノベルの小説や漫画を読んでばかりで殆ど外に出ていなかったのだ。
世界は広いのよ、同性同士どころか異種族で恋愛、結婚も珍しくないの子供だって生まれるよ(あれはオメガバースという設定だったわね、なんてことを説明したが、目の前のアンデットには響かなかった、いや、理解されなかったと言った方がいいだろう。
しかし、このアンデットが幸福だになってくれないと試験合格どころか、次のレベルアップも難しいのだ。
「結婚すればいいんじゃない」
「話が飛びすぎでだ、そもそも相手が見つかる訳がないだろう、この国では」
「だったら、他所から召喚すればいいのよ、魔法ぐらい使えるでしょう」
人として生きて居たときには魔法なんて無縁だったのに、いきなりアンデットに生まれ変わって魔法が使えるとは本気で言ってるのか。
「えっ、使えないの、それは困ったわね」
困っているのは、こっちのほうだ、できるなら人間として生まれ変わらせて欲しいと言うとあっさりと却下された。
「あたしの選択が間違っていたというの、とにかくあんたを幸せにするわ、その為に魔法が使える様にしないとね、いい人を紹介するわ」
いい人、紹介、嫌な予感がしたが、間違ってはいなかった、自分は元、魔法使いで賢者だと紹介された老人に貴方の弟子よとアンデットは魔法が使える用にしてほしいと言われて修行にする事になったのだが、気がつくと。
「あら、アンデット、久しぶりね」
元気だったと聞かれて、思わず怒りに任せて相手を殴りつけたい気分になったのは無理もない、何故なら初めてパルティマと出会ってから八百年近く過ぎていたからだ。
「えっ、もうそんなにたってた、不思議ねえ、でも魔法は使える様になったんでしょう、よかったじゃない」
「それはありがたいが、だったら人間として転生できるように」
「それが駄目なのよ、申請しようとしたんだけど、色々と忙しく」
「知っている、振られたそうだな、聖女のくせに男が大事か」
「なっ、何故、それを」
「筒抜けだ、師匠から聞かされたよ、聖域の恋愛情事は聞かされる身にもなってくれ」
「まあ、神も人も根本的なところは変わらないってことで」
アンデットは内心、呆れた、自分が魔法の修行に必死になっている間、自分の師匠である老人からパルティアの話を毎日というくらい、うんざりとするほど聞かされたのだ。
聖女としてはどうしようもない性格、いや、俗物らしいが、最後には。
「いいところもあるんじゃ」
と老人が締めくくるのだ、神や聖女の世界というのも一筋縄ではいかない事も色々とあるのだろう。
「で、アンデット、幸せになるには」
「普通に平穏にらしたい」
「うーむ、女が欲しいか」
「何故、そういう言い方は」
「いや、あたしも考えた、この国とは違う、別の国の世界から女を召喚するの」
アンデットは黙りこんだ、というのも召喚の術は禁止されたのだ五百年も前に。
「えっ、そうなの、いや、五百年前って、あっ、その時、下界に行ってたんだわ」
「忙しいんだな」
「まあね、でも、それなら、あたしの権限で召喚するわ」
「いいのか、そんなことをして」
「任せなさい、あんたが幸せにならないと」
「わかった」
しかし、この時の事をアンデットは後悔した、そして今も後悔しているのだ。
召喚の儀式や術というのは簡単ではないらしく、例え聖女、女神が行うとしても時間と代金がかかるという事をアンデットは後から知った、いや、召喚の術自体が禁止になったので関する事が封印、禁句になったのだろうと知ったアンデットは尋ねた、周りから怒られたりしな買ったのかと尋ねると代金を支払ったという。
「寿命、五百年よ」
聖女の寿命には限りがあるが、パルティアは昔の不祥事で死ねない体らしいと聞いてアンデットは驚いた、神だから永遠に生きたいと思う者は皆無だという。
ではアンデットの自分はどうなのかと思うが、世界や国が滅ぶとアンデットは、それに縛られているらしいのでいなくなるらしい。
「まあ、あんたの場合はどうかしら、とりあず召喚した女と夫婦になって幸せ生活を送ってみなさいよ」
「あ、ありがとう」
アンデットは頭を下げた、というか、それしかできなかった。
違う世界から召喚したのよと紹介された女は決して若く美人という訳でもない、三十過ぎと聞いてアンデットは当たりではないが外れでもないと脱力した、というのも、このパルティアという聖女のやる事だから、こんなものだろうと思ったのだ。
「あたしは死んで天国にでも来たんですか、それとも、これが二度目の人生というものなのかな、あなたはアンデット、もしかして魔法使いですか」
自分の骸骨の顔を見ても女は驚いたり悲鳴を上げたりはしなかった、まるで映画、ライトノベルの異世界召喚みたいと驚いていたので、アンデットは簡単な説明をした。
ここは君のいた世界ではない、魔法、魔物が普通にいる世界だと。
「君の面倒は私が見る」
その言葉に女は驚いた様子で骸骨の顔をじっと見た。
「面倒って子供では、あたし大人ですけど」
「わかっている、だが、この世界国のこと、住む場所、金の面倒などだ」
あっ、そういうことかと女は驚きながらも頷いた。
「働いたりしなくていいんですかね」
「とりあえずはだ、とにかく」
このときアンデットは肝心な事を言わなかった、今、こうして普通に会話をしているのも驚きだったからだ。
この国、アサードという国では魔法使いや異種族、亜人は受け入れられているが、アンデット、ゾンビ、死者等の類いにはあからさまにではないが、冷たい視線を向けているからだ。
木桜美夜(きざくらみや)
何故、異世界という場所に来てしまったのか、わからないままに暮らすことになってしまった彼女だが、映画やライトノベル、ファンタジー映画が好きな彼女にとって二度目のセカンドライフは、この時から始まったのだ。