お前のハーレムをぶっ壊す IFルート【あらすじ必読】 作:バリ茶
夜にいと一緒に病院で検査を受けた後、午後からの出席という形で小学校に戻ってから数時間後。
給食を食べて五時間目と六時間目を終えたボクは今、登校班のみんなと一緒に下校中だ。
「ふぅ、今日も疲れた」
「朝陽君てば給食を食べに来ただけじゃん!」
「病院だったから仕方ないよ」
「オレもお昼から来たかったなぁ~」
(朝陽くん朝陽くん)
同級生の友達と会話しながら歩いていると、心の中で突然女性の声が響いた。
(……何ですか)
(お兄さんのこと待たないの?)
あの事件の日以降ずっと不思議な腕時計を付けたままでいるせいか、その中にいる小春さんにこうして話しかけられる機会が増えている。
本当に自分の中にもう一人の人間がいるような気がして落ち着かないし、正直この感覚はまだまだ慣れそうにない。
(いいんですよ、流石に最近は夜にいに甘え過ぎてた自覚もありますし)
(そう? 朝陽くんはもっとわがまま言ってもいいと思うけどなぁ)
最近兄に素直に甘えられないのは主にあなたの存在が気になっちゃうからなんですけどね?
別に人の目を気にしているから家族に甘えられないというわけではないし、事実呉原さんがいる前でも夜にいに抱きついたりはした。
でも「夜にいへちょっかいを出すのは止めて」なんて小春さんに言ってしまった手前、彼女を差し置いて自分だけ甘えるのはいかがなものかと思ってしまった。
……小春さんがただのレイプ魔だったなら別にそんな感情は湧かなかったし、会話すらもしたくなかっただろうけど、仮想世界では夜にいを助けてたり信頼し合っていた事実を彼女の記憶を通して知ってしまった今はそうもいかない。
(小春さんこそ、夜にいと話したい事とかないんですか)
(そりゃまぁあるけど……でも私、きみに迷惑はかけたくないから)
(迷惑?)
(私の姿に変身するとすっごく疲れちゃうみたいだし、こうして一緒に居させてくれてるだけでもありがたいのに……これ以上朝陽くんに無理はさせたくないよ)
だから私の事は気にしないでいいからね、と明るい声音で告げる小春さん。
予想以上にボクに気を遣ってくれていたことを知って、少し反省した。
あの衝撃的な映像を見せられて以降……正直に言えば小春さんのことは、もっと身勝手で悪い人だと思っていたから。
記憶と兄の話を照らし合わせれば小春さんが善人だということは証明できるのだが、どうも心の何処かで信用できずにいた。
もちろんそれは今も変わってはいないが、少なくとも邪険にするべきではないということは理解できる。
(いちいち心の中の私の通訳をするのも大変でしょ)
(……じゃあ今後一切夜にいとの会話は無しってことで)
(えぇ!? そ、それはあまりにも極端というか……!)
(冗談ですよ)
(朝陽くんのいじわる!)
……むしろ、この人をからかったりするのが少し楽しいと感じてしまっている自分がいる。それはこの人と一緒にいる事が苦ではないという証拠でもあった。
完全に打ち解けた訳ではないにしろ、ボク自身が今の頑なな態度を崩せば小春さんから寄り添ってくれる……そんな淡い期待を抱いてしまう程度には、彼女の明るさに
「あ、朝陽君……っ」
「どうしたの?」
隣にいた同級生の男の子に突然話しかけられ、意識を現実に戻した。
小春さんとの会話に気を取られて現実でのコミュニケーションを怠ってはいけないので、なるべく間を置かず即座に返事をした。
すると彼は恐る恐るといった様子でゆっくりと前に向かって人差し指を向けた。何事かと思って前方を確認してみると、そこには見慣れない人物が立っていた。
「あは、あは、あは」
白いローブを身に纏った怪しい男が不気味に笑いながら、登校班の先頭の子の前に立って道を塞いでいた。
「……な、なんですか?」
明らかな不審者を前にして登校班の皆は怯え、先頭にいる最上級生の女子も警戒しながらランドセルの防犯ブザーに手をかけている。
その様子を見た白ローブの不審者は懐に手を入れ──
(朝陽くん! 電撃で先制してッ!)
不審者の挙動を見た瞬間に心の中の小春さんが叫んだ。
「──っ」
その言葉をほぼ無意識なまま反射的に受け入れたボクは、即座に右腕に巻かれているアクセスウォッチを起動して小春さんの体に変身。
間髪入れず前方に右手を伸ばして電撃を白いローブに向けて発射した。
「あぐっ!?」
突然放たれた電撃をモロに浴びた白ローブは大きくのけ反って後ろに転倒。その隙にその場にいる登校班の皆に向かって叫んだ。
「みんな早く逃げて!」
「……えっ?」
「なに? なに……?」
「ぁ、あっ、朝陽君が女の人に……!」
しかし周囲の子供たちは困惑するばかりで一歩もその場を動かない。彼らはまさに普通の小学生なので危機的状況下での即座の判断ができないのは当然だ。
しかしボク自身も小春さんに突き動かされるまま不審者に攻撃しただけで正直状況の把握は全くできていない。
──すると突然、ボクの体が勝手に動いた。
(えっ?)
自分の意思に従わない体は右手から強力な電撃を再び前方に向けて発射し、それを仰向けになっている白ローブに直撃させる。
「あががっ!」
そして白ローブが悲鳴を挙げた瞬間、ボクの体は思い切り地団太を踏んでから強く叫んだ。
「早くどっか行けっ!!」
「──わっ、わっ!」
「きゃあぁぁ!」
大きな地団太と頭が揺さぶられるような怒号に怯えた小学生たちは悲鳴を挙げ、一目散にその場から逃げ出した。
子供たちが必死になって逃げ去るその光景を見ながら、ボクは状況の理解を求めて咄嗟に小春さんに向かって叫ぶ。
(こ、小春さん! どうなってるんですか!)
すると焦燥に駆られたような声音で彼女が返事を返してきた。
(ゴメンちょっと体借りる!)
(どういう事ですか……!?)
(こいつはゲームフィールドから出てきた怪人! 小学校の時も沢山いたから、多分バリアが消えた後デム隊が何人か取り逃がしたんだと思う!)
早口で状況を説明した小春さんは『自分の本来の姿』になっているボクの体を操り、後方に数歩下がって一旦白ローブから距離を取った。
よく見れば白ローブが倒れている近くには拳銃のような物が落ちている。
状況から察するに、白ローブは懐に手を入れた時にあのピストルを取り出そうとしたのだろう。小春さんの指示に従わず奴に先制攻撃をしていなかった場合の状況を想像して、思わずゾッとした。
「……こ、このクソ女ぁ……っ!」
小春さんが身構えると同時に白ローブはゆっくりと立ち上がり、右ポケットに手を突っ込んだ。
そして取り出したのは──手のひらサイズの小さな拳銃。
「デリンジャー……っ!?」
「死ねぇァッ!」
小春さんが驚いたのも束の間、隙を見せずに白ローブが小型拳銃をボクらに向けて発砲した。
「──っぶな!?」
それを驚異的な反射速度で左に避けて躱す小春さん。
(……い、今何で避けられたんだ……って、アレ?)
気がついた時にはボクの全身に青白い電気が迸っていた。
それは小春さんが『ライトニングフォーム』というパワーアップ形態に変身したという何よりの証拠であり、またそれによって反射神経が稲妻と同等の速度にまで飛躍したからこそ、先程の銃弾を『見てから』躱す事ができたのだと理解できた。
本来のボクなら脳のキャパシティがオーバーしてしまって、とても直ぐに理解できるような事象ではない筈なのだが、どうやら小春さんにアクセスしている影響で思考の速度もライトニングフォームによってパワーアップしているらしい。
「な、舐めやがって!」
すると白ローブは何処からともなくナイフを取り出し、こっちに向かって突撃してきた。
(……なんだ、厄介な能力とかは持ってないのか)
白ローブは先ほどから重火器や刃物などあからさまな武器しか使ってきていない。しかもここまで追いつめてもナイフしか出てこないということは、この不審者に特別な能力などは無いのだろう。恐らくサポートとか科学者的ポジションだったに違いない。
これならあと数発程度の電撃をお見舞いすれば勝てるな──なんて軽く身構えていると、予想外の事態が発生した。
「死ね!」
「くっ……!」
ナイフを突き出してきた白ローブを電撃で迎撃することなく、小春さんは相手の腕を両手で掴むことで攻撃に対応した。
しかし白ローブの力が強く、あっという間にボクたちは押し倒されてしまった。
ググッと眼前に迫るナイフを持った手を必死に両手で押さえながら苦しげな声を挙げる小春さんに、ボクは焦って声を掛けた。
(小春さん! 何で電気で応戦しないんですか! あと数発打ち込めば勝てるのに!)
(……でっ、できないよ!)
(えっ?)
何故か能力の使用を拒む小春さん。
気がつけば身に纏っていた青白い電流も消えていた。
(何ですか!?)
(だって……! これ以上ライトニングを使ったら……っ)
女子高生故にあまり強くない筋力だけで必死に白ローブの凶刃に抵抗しながら、小春さんは心の中で叫ぶ。
(
真剣な、ともすれば怒声にも感じるような声音で小春さんはそう言った。
当然ながら記憶をリンクさせたボクも彼女の言う『デメリット』の内容は既に把握している。
(朝陽くんの体でそんな事させられる訳ないじゃないっ!!)
(……で、でもこのままじゃ……)
(絶対になんとかするから! あの状態にだけは絶対させたくないんだよ! だから私に任せて! ねっ!?)
そう言ってボクの意見を真っ向から却下する小春さんの声は、今までにないくらい焦りに支配されている。なんとかする、なんとかしたい、そう思って解決方法を模索しているのに全く見つからない……そんな風に感じた。
その時、アクセスを通じて小春さんが初めて『デメリット状態』になった時の記憶を見た。それだけじゃなく、デメリットが解除された後の彼女の心境すらも、その全てをこの身で追体験した。
──絶望。
その一言に尽きる。
一切制御の利かない肉体の全てが延々と勝手に暴れ続け、守りたかったはずの存在を傷つける自分に対して『やめろ』と心の中で泣き叫んでも最後まで状況が好転することは無かった。
デメリットが解除された後の朝、正気に戻った瞬間心の中が闇と絶望で染まりきり、
あの場で兄である海夜蓮斗が止めに来なければ小春さんは確実にその時命を落としていたことだろう。
……それ故に、背負いきれない業を抱えた自分をリアが許してくれた時は本当に意味が分からなかった。
何故許してくれるのか。
本当に許されていいのか。
そんな疑問と葛藤を抱えたまま暗闇の中で彷徨っていた自分を──あの日の夜、彼女は真正面から受け止めてくれた。背負った罪も身勝手な我が儘も、全て引っ括めて自分を肯定してくれた。
それだけの事をされてようやく、小春さんは少しだけ自分を許す事ができたのだ。
そういった経験があって『デメリット』の恐ろしさを彼女は知っている。発症した当の本人にしか知り得ない苦しみを理解している。
だからこそ、そんなものは絶対にボクには背負わせたくない──リンクしている心を通して、そんな優しさが痛いほど伝わってくる。
(……小春、さん)
彼女の気持ちは理解できた。本気でボクの身を案じてくれていることも。
だけど、どうあってもこの場で死ぬわけにはいかない。
(小春さん、体……返してもらいますよ)
(──っ!? な、なに言って)
驚く小春さんを遮って体の主導権を一瞬で奪い去り、彼女を心の中へ無理やり引き戻した。
これでこの体は再びボクの物になる。
「もう一回……っ!」
そして即座にライトニングフォームを再起動し、全身に稲妻の鎧を身に纏った。
「な、なに!?」
再び最強の力を発動させたことに焦る白ローブ。
構わず右手に電流を纏い、掴んでいる腕から大量の電気を白ローブに向けて送り込んだ。
「あグッ!」
突然全身が大量の電力に満たされて心臓が飛び跳ねた白ローブが大きくのけ反り、一気にボクから距離を離した。
その隙に立ち上がって再び電力を右手に充填し、それを槍のように鋭利な形へと造り替える。
紫色の雷光を迸らせ、滾る電気の波をただ一点に集中させた。
この一撃で──コイツを葬り去る為に。
「紫電、雷槍……ッ!」
……
…………
………………
「……ハッ、はぁ」
(朝陽くん!)
全力のライトニングフォームで白ローブの怪人を消し去ってから、約一時間。
今は自宅の自分の部屋のベッドに座って胸に手を当てながら、荒い呼吸をなんとか鎮めようと深呼吸を繰り返している。……もちろん、その行為には殆ど意味なんてない。
「うぅっ、く……!」
胸が熱くなって頭がフラフラする。とてもまともに座っている事ができず、ポテッとベッドに横たわってしまった。
怪人に襲われていたあの場を切り抜ける為にライトニングフォームを使ったが、やはり小春さんの記憶通り『発情』という状態はとても辛い。
インフルエンザで寝込んでいる時のように苦しい筈なのに、体の根柢にある何かが疼いてしょうがない。ボーっとして視界がボヤけて度々意識を手放しそうになるものの、何故かそのまま眠る事ができず体が勝手に起きてしまう。
そしてなにより……下半身の一部が大変な事になってしまっている。
小春さんの制止を振り切ってライトニングフォームを使った時から薄々覚悟はしていた事なのだが、いざ実際に同じ状況になってみて改めてこの症状の異常さを痛感しているところだ。
(朝陽くんっ、なんで……!)
(……あぁでもしないと、死んでました)
(それはっ……!)
ボクの言葉に反論しようとした小春さんは言葉を詰まらせ、数秒逡巡してから言葉を続けた。
(……ごめんなさい、私が情けなかったばかりに……っ)
(こ、小春さんのせいじゃありません、ボクが勝手にやったことですから……気に病むのは、やめてください)
そう、あの時の判断は他でもなく自分自身で下したものだ。たとえ発情状態になっても目の前の敵を倒さなければ絶対に死ぬと、そう確信したから実行に移したまでのこと。
小春さんを信じたかったのは山々だけど、冷静に考えればあの選択肢を取るしか道は残されていなかった。
それより今は
もし夜にいにこんな状態を見つかったら……想像もしたくない。
「うぅ……」
ずっと体が火照って仕方ない。まるで脳が焼き切れてしまいそうなほど頭が熱い。
解決策を探したくても時より過る不可解なイメージに思考を邪魔されてしまうので考え事どころじゃない。
駄目だ、しっかり対処法を──
「……どう、しよ」
なんだか、考えるのがむずかしくなってきた。
どうしよう、ぼく、どうすればいいんだろう……?
(朝陽くん! 気をしっかり持って!)
(……えっ、あ、ご、ごめんなさい)
小春さんに話しかけられて、一瞬崩れかけた思考が少しだけ形を取り戻した。……少しだけ。
(あの、小春さんっ)
今のうちに、言っておかなきゃ。
この後どうなっちゃうか、分からないから。
(ごめん、なさい……ボク、えらそうな事ばっかり、小春さんに言っちゃって……)
(あ、朝陽くん?)
(最初はこわかったんですけど……小春さんのこと、もうきらいじゃないですから……すきです、から……)
もう少しがんばれボク。ちゃんと全部いわなきゃダメだ。
(だから小春さんには怒られてほしくないです……夜にいにはボクが悪いんだって、言ってください)
夜にいに小春さんが怒られないように、ボクが悪いってことを言っておかなきゃ。
(小春さんはわるくないから……ぼ、ボク、ぼく……が……)
「ごめんね、朝陽くん」
「……あぇ?」
あれ、小春さんが目の前にいる。なんで?
「ここはゲームフィールドじゃないから、頑張って私の能力を応用しても……二十時間くらいしか実体化できないけど」
「……?」
「これは全部私の責任だから! 私が発情をなんとかするよ!」
なに、いって……
──えっ。
え?
本当に何言ってるんだこの人?
「あ、あの、小春さん?」
「ぎゅーっ!」
「わっ!?」
少しの間ボーっとしたまま何かをブツブツ言ってた気がするんだけど、気がついたら小春さんに頭を抱きしめられてた。
……な、なにこれ、得体の知れない大きくて柔らかい物体に顔が挟まれて……!?
「えへへ、おっぱいクッション~」
「ちょ、ちょっ! 何するんですか……!」
「デメリットはスッキリすれば治まるから、ね?」
明るい笑顔をした小春さんに押し倒されて、ベッドで横になったまま再び大きな胸の中に顔を埋めることになった。
その瞬間小春さんの甘ったるい匂いが鼻の奥に充満して頭がバチバチして、体がビクンビクンと震えてしまう。
「ふわぁ……!」
「朝陽くんが悪いことなんて一つもないんだよ。きみには怒っていい権利があるんだから……私の事、好きにしてもいいの」
そっと頭を撫でながらムギュムギュとメロンのように大きな胸をボクの顔に押し付ける小春さん、その声音は今までに聞いたことが無いほど優しいものだった。
すると、不意に小春さんがボクの右手を左手で掴み、その手をそっと自分のスカートの中に触れさせた。
「っ!? なっ、なななっ」
「……ほら、触ってみて」
「なっなんでっ」
「あの記憶を見せちゃったから誤解されてるけど……私もちゃんと女の子だってこと、知っておいて欲しいから」
そう言われて手を入れ込んだスカートの中で、おそらく小春さんの下着であろう部分に手が触れた。
……しかし、記憶に映っていた『男性器』らしき感触はまるで見当たらない。
「んっ……触り方、優しいね」
「……ぁ、あぅ」
顔を上げると、そこには慈愛の表情に満ちた美少女の顔が超至近距離にあった。そのせいでとてつもなく気恥ずかしくなってしまい、思わず下を向いて目を逸らしてしまう。
しかし小春さんはそんなボクを変わらず撫でながら甘やかしてくれている。
そして不意に下半身の頂点が彼女の柔らかな太ももに押し付けられてしまった瞬間、体感したことの無い衝撃が全身に走って甘い声が出てしまった。
「ぅあっ……♡」
「ふふ、これで朝陽くんも安心して甘えられるかな?」
「そ、それは──」
──すると、ベッドの上に置いてあったスマホから着信音が聞こえてきた。
「あらら? んーと……あっ、お兄さんからだよ」
「えっ」
普通に調子を変えないままの小春さんにスマホを手渡され、画面を確認するとそこには確かに『夜にい』の文字が表示されていた。
……そういえばそろそろ帰宅してきてもおかしくない時間帯だ。
「も、もしもし」
『もしもーし! 連絡遅れてごめんな!』
「大丈夫だけど……どうしたの?」
『実は──』
そこから何やら事件に巻き込まれたような話を聞いた気がするけど、正直ほとんど覚えていない。
ただしっかりと覚えているのは、小春さんの甘い匂いと柔らかいおっぱいの感触に負けて『今日は帰ってこなくていいよ』と自分から言ってしまったことだけだった。
★ ★ ★ ★ ★
呉原と一緒に高校での事件を終えてから、丸一日が経過して現在は昼過ぎ。
今は丁度自宅の前に到着したところだ。きっと朝陽も待っていることだろう。
ちなみに呉原とフィリスがパンパンしていたあの現場を見てから保健室に戻った後、自分でも分かるくらい呉原に不自然な態度を連発してしまって冷や汗をかいたものの、そこはアイリールが上手くカバーしてくれてなんとか隠し通せた。本当に助かった……。
流石に親友とはいえ『そういう場面』を見られていたと知れば羞恥心で泣いてしまうかもしれないので、この秘密は墓場まで持っていくことに決めた。
ちなみに仮想世界で呉原に「うるさかった」と言われた時は顔が爆発するくらい恥ずかしかったです。はい。
まぁ、そんなこんなでようやく我が家に帰宅だ。母親はもう仕事に戻っちゃったし、父親も町内会の集まりに行ってしまっているので家にいるのは恐らく朝陽だけだけど。
「ただいま~」
ガチャリとドアを開けて玄関に入ったものの、いったいどうして朝陽のお出迎えがない。ここ最近は毎回「夜にいおかえりーっ!」って言いながら抱きついてくれていたのだが。
「朝陽ー?」
名前を呼びながらリビングを覗いてみたが弟の姿はない。休日の昼ごろはいつもソファで寝転がっている筈なので、これは何かの事件かもしれない。
ここに居ないとなれば多分自分の部屋だ。もしかしたらお寝坊でまだ起きていない可能性もある。
「んっ?」
階段を上がろうとしたところ、二階から極力足音を鳴らさないようにしながらレンが降りてきた。
「~っ!」(目をグルグルさせながら慌てている)
「ど、どうしたレン」
何やら混乱した様子のレンが俺の前まで来ると、スマホに文字をタップし始めた。どうやら早急に伝えねばならない事があるらしい。
ジッと待つこと数十秒、レンは俺にスマホの画面を見せてきた。
【昨日帰ってきたら朝陽くんが小春とエッチしてた! なんで!?】
「……は?」
その文字列を見た瞬間、俺は即座に二階へと上がっていった。チョコチョコとレンも付いてきたが、どうやら彼女も俺と同じく心の整理ができていないらしい。
これは本人に聞くしかない。小春が実体化してる可能性とかそこら辺はどうでもいいのだが、一体どういう事なのかを聞かなければならない。
頑張って足音を消しながら朝陽の部屋の前まで到着し、レンと一緒になってドアに耳を近づけた。
朝陽が誰かと会話をしているならここで様子見、話し声が聞こえなかったら中に入ろう、そうしよう。
──ちょっと考えてみれば、十中八九あの特殊形態のデメリットのせいだってことは分かる。
それなら多少は……本当に多少は致し方ないし、その状況を理解できる俺が無闇に喚きたてるわけにはいかない。今は中に入れる雰囲気なのかどうかを確認するだけだ。
俺は蓮斗と同じくらい小春を信じてるからな。どうあっても間違いなんて起こらないだろう。
『だから……その』
『朝陽くん、はっきり言ってくれないと』
んっ、もしかしてシリアスな話とかしてるのか。
だとすれば俺が割って入る訳にはいかないか……?
『わ、わかりました』
『うん、どうぞ』
てかどういう状況だこれ。
小春ってもしかしてアクセスウォッチの中からいつでも出れるのか? それならレンと一緒に寝たあの日も出てくればよかったのに。
……恥ずかしがり屋な面もあるとは知らなかった。
『また……(もし発情した時は)お、お姉ちゃんに気持ちよくしてもらいたい……』
『……うんっ、いいよ。リアちゃんには絶対(見られたら殺されるから)内緒ね?』
────は?
「朝陽ぃぃぃぃぃィィィッッ!!?」
バタン!
「わっ!?」
「あっ、り、リアちゃん!?」
速攻で朝陽を抱き抱えて小春と距離を取った。そして朝陽のほっぺや髪を触りながら諸々を確認していく。
「大丈夫か朝陽!? なにされた!? ナニかされたのか!? 変な事されてないか!?」
「え……ぁ、う、うん」
頷いた! いや頷いたけどこの反応は嘘だろ!? 信じられねぇよオイッ!! 絶対何かされた後じゃねぇか!
これ絶対不可抗力の性欲発散とかじゃないよ!? だってさっきの会話おかしいもん! あとなんか朝陽の目が普通じゃないもん!!
「テメェ小春おい何うちの弟誑かしてんの!? 何で一夜にしておねだりさせる関係にまで発展させてんのこれ俺に対する挑戦かなにかですか!?」
「あっ、いや、その! これは違うというかなんというか……っ!」
その反応は違くねぇだろ何言ってんの! ふざけないで!!
──お前まさか普通にウォッチから出れるのに身を隠してコッソリうちの弟を調教してたとかあまりにもエグすぎるだろうが!? 悪魔か何かなの!?
泣くよ! 泣いていい!? もういろいろと感情が追いつかないから泣いていいですか!!?
「この浮気者ォぁっ! あんなに好きって言ってくれてたのに……お、弟に手ぇ出すほどの見境なしだなんて思わ゛ながっだ!! しっ、信じた俺がバカだったぁ゛……!」
「リアちゃん待って! ご、誤解なんだって!」
「うぅっ、うるさいバカぁ……! おれがどんな気持ちで小春のごどを……えぅ゛ぅ、ひぐっ、うえぇん……っ!」
「ぎゃああぁぁ!! 泣かないでェ!! ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃッッ!!」