「どうして……こんな事に……」
僕は、自分の体に起こった変化が何故起こってしまったのか分からず、鏡の前で立ち尽くし、ただただ目を白黒させながら呟いた。
それでは、一体どんな変化が起きたか。
その前に言っておくと僕は
なんて、その有り得ない事が現に起こってしまった今の状況でただ否定していても話は前に進まない。
兎にも角にも、常識の一つ二つをへし折られたからと言って臆する事はないんだ。落ち着け。それなら、逆に考えてしまおう。もうこのままで生活していくんだと、このままで生きていくと。
反発してしまうよりも受け入れた方が当然楽に決まっている。
竿が一つや二つ無くなったとしても、玉が二つ、三つと無くなっても新しい自分を受け入れてしまえば問題ない·····。
ここまで話していくと僕の体に起こった事。
それは後天的な性転換。
──つまり僕は女体化したということになる。
なにかの前触れや、予兆は全くない。
いつもの様に趣味の本を嗜み、いつもの様にそのまま寝てしまう。
ただそれだけの事しかしていないのにも関わらず、起きたら女の子に、それも自分の好きなタイプの真面目系黒髪美少女になっている。
「これを機にもしかしたら僕は、ナルシストになるかもしれない·····」
落ち着いてきた僕は、未知の物に触れる様に鏡の前の美少女──自分の頬をぺたぺたと触り始め笑みを浮かべながら一言。
ちゃんと自分のものだと確認出来れば少しの好奇心が出てくる。
顔はこんなに可愛いが、上半身や下半身はどうだろうか。と。
これは自分の物、だから別に変な事をしてる訳じゃない。
そんな誰に聞かせる訳でもない言い訳をしながら自分の胸へと手を伸ばし──もみ、もみもみ。
「·····あ、巨乳なのはポイントが高い」
ここは本当にポイント高い。自分と結婚したい。
寧ろ自分に埋もれて寝たい。というようなほんのちょっと、わからない程度むっつりで、少し根暗で、ちょっと気が弱く、肝が座った多少趣味に偏りのあるどこにでも居る普通の男子、女の子同士の恋愛を描いた通称
そんな中、揉む動作をひたすら繰り返していた手を止め、ある事を思いついた。
「そうだ。これからは僕が、女の子と恋をすれば完璧な百合漫画の完成では?」
こんな名案を思いつくなんて我ながら天才では? という本音は心にしまっておき、納得した様な表情を浮かべる。
そうと決まれば、やる事は1つ。
これを父と母に話して──待った。今の現状を話す·····?
普通の親ならきっと卒倒しない?
一人っ子で、やっと出来た男の子。2人はそれを大いに喜んでいたと聞く。
それを唐突に女の子なったと言って2人の精神状態は正気に保てる?
いや、まずこっちの正気を疑われて警察とか、病院がオチかな。
あー、詰んだ。これは詰んだ。
決心して2分で詰んだ。
そして、不測の事態というのは連鎖していくものらしい。
コンコン、と軽く部屋をノックする音が聞こえた。
ど、どうしよう·····そのまま出ていくか、居留守を使ってやり過ごすか。
どっちの方法もきっと、上手くいかない。が、やるしかない。
声を出すのも気が引け、臆病にも手を震わせながら僕はドアノブに手を掛けゆっくりと恐る恐る扉を開けていく。
途方もない不安と緊張で変な汗が止まらない。扉を半分開いたところで見えた母の姿にそれは加速していく。早くなった心臓の音が聞こえる。呼吸もちゃんと出来ているのか怪しく、
こっちの姿が完全に見えたところで互いに目が合う。
母も驚いたのだろう、目を丸くしてまじまじと此方を見つめてくる。
しかし、僕はビビりきってしまって声を発する事が出来ない。
無言の、無音のこの空間が重くのしかかり耐えられないと思った時、母が口を開いた。
「うーん。·····身体は女の子だけど
容姿は比べる必要のないほど違う、にも関わらず初手でバレてしまった。でも、精神はとっくに追い詰められていて声はまだ発せられない。どう示せばいいのかもわからない。が、察してくれたのか、母が続けて話す。
「とりあえず、深呼吸しなさい」
「··········すー·····はー·····」
言われた通り深呼吸していくと、曇っていた視界が晴れていくようにすっきりと少しずつ気分が落ち着き、不安から来ていた手の震えも止まった。
「さてと、何があったか聞きましょうか」
「えっと、起きたら女の子になってて·····」
「水で?」
「え? 違うけど」
「なるほど、続けて」
きっと何かのネタだろうけど今はそんな場合じゃないからスルー。
「変わった事に大してそこまで驚きとかは無かったんだけど、これからどうしたらいいのか分からなくて、すぐには相談も出来なくて·····母さんに話すのも·····」
「その声と姿ならママ呼びが良い」
僕が真剣な話をしているからちゃんと聞こえなかったんだ。
きっと、聞き間違いかもしれないと思って一応聞き返してみる。
「え?」
「気にせず続けて」
「そ、それで学校とかなんだけど·····」
「知り合いの居ない女子校に行きましょうか」
「う、うん·····他にも提案しようと思ってたところなんだけど、僕は元々男だし」
なんだろう。話が、早いどころじゃない。
僕も、それなりに対応は早かったけど、母の切り返しが完璧過ぎる。
「大丈夫、はあるから」
「いや、そういう話じゃなくて·····」
「男子のフリして男子校行って恋するかどっちがいい?」
「なんでその二択!? ちょっと少女漫画チックなのやめない?」
これは、完璧に遊ばれてる気がする。
心配の2文字より好奇心の3文字が勝ったんだね。この母親。何処かの誰かも驚きより好奇心が勝ってたし、これは血筋か。納得した。
「とりあえず、あなたの本音を聞かせなさい」
「え、それは·····」
「男子校」
「わ、分かったから! え、えっと、女の子になっても恋するなら女の子が良い·····です」
なんで照れながら親にこんな事話さなきゃいけないんだろう。
でも、勝てないから言っちゃう僕。これが世間の理不尽を体現したものか。
「避妊しなくてもいいものね」
「いや、そこじゃねーよ。息子になんてこと言うんだ」
「もう娘です。異論は認めません」
「うっ·····間違っては、ない」
僕よりも浸透はえー·····。
と、この後両親に色んな手続きと引越しをしてもらい僕は女子校に通う事が決まった。誰も僕が知る人の居ない土地で、学校でこれから過ごしていくことが決まった。
半ば無理矢理言わされた本音。
女の子のまま女の子と恋をする。それを実現する為に、まずは普通に過ごしていこう。そう心に決めた。
でもその前に──。
「パパ、今日は
「何!? 楓、いつでもパパって呼んでもいいからな」
「あ、はい·····」
もう、両親チェンジで。
1話は入学のお話からです。早めに投稿したいと思います。
まだ書いていないことをあらすじに書いていますが、何話かしたらあらすじまで追いつくので暖かい目で見ていただければなと思います。
序盤なのでエロシーンなどは少なめ。徐々に増やしていく予定です。
やんわりとご期待ください。過度はダメです。