朝チュンに近い。これは絶対に運動会やってた。
──朝。
美空から薬を貰い、体調不良から回復した篠田楓は今、とても悶々としている。薬のお陰である程度の症状は収まり、もう万全と言っても過言ではない。が、悶々としている。
体には無数のキスマークが、舌には昨日の感触がまだ残っていた。
そして、隣には何故か僕に抱きついたまま寝ている半裸の美空。
これは、もしかしてヤッたの?
記憶は一切無いけど、意識飛ぶまでヤッたとかいうやつなの?
「すぅ……すぅ……んにゃ、むにゃ……」
ねぇねぇ、もう朝なんだけど……気持ち良さそうな寝息を立てて寝てるから起きてくれる気配は無いし、下手に動けないし、柔らかい感触もあるからもうちょっと楽しみたい自分も居て何か悔しい。
いや、僕にももうそういうのは付いてるけど、立派なのが2つも付いてるけど他人のと自分のじゃ違うじゃん? 隣の芝生は青いって良く言うでしょ? それだよ。隣の巨乳はでかいんだ。
昨日は拒んだけど、女の子同士ってあんな感じのスキンシップを毎回するのかな。でも、舌を入れるのは絶対おかしいよね。……もしかして僕が知らないだけで普通だったりする?
昨日の真相も、女子同士のスキンシップも全部隣のこの子に聞くしか無いんだけど……余計に悶々とした気持ちになる。
ねぇ、本当に昨日は何があったの!?
と、そんな心の声が届いたのか美空は目を覚ました。
目を擦りながら発した言葉は、まるで囁くように。
「昨日は、お楽しみでしたね……」
「それは宿屋の店主が言うやつ」
ふざけた寝起きの一言は兎も角、美空は普段通りなのがちょっと……かなり納得がいかない。僕はあんなにも動揺させられ、肉体的に虐められた。
にも関わらず美空は再び僕の動揺を誘う。
「ふふふっ、まぁ、見た目通り可愛かったし……あの後も激しかったし?」
「あの後も、激しかったって……どういう事!?」
案の定慌てふためいた僕は、耳を真っ赤にさせながら記憶を辿る。
──ほわんほわほわーん。
*
「ちょ、っと……ん、っ……つけすぎ、だって、ばぁ……っ」
赤い痕──キスマークを付けられた箇所は熱を帯びたように感じ、僕自身の体を否応なしに昂らせてきた。だからか、声は妙に甘く、汗ばんだ体は何処か艶めかしさを感じさせた。
首筋に2つ、胸元に1つ、脚の付け根にも1つ、背中に2つ……そして、腰。
それにしてもこんなに付ける必要あった? というくらいに残され、僕には恥ずかしさどころか理性も飛ばされそうだった。
「あはは、ちょっと熱が入って付けすぎちゃった……」
「はぁ、っ、はぁっ……笑い事、じゃないよ、もう」
ようやく解放された頃には寸止めされた様な辛さだけが残り、足を擦り合わせて美空の方を見ないようにしていたのに、美空はそこで再び唇を重ねてくる。
何を意図したこの行為かは分からない。
でも、もう理性が持たない。
押していた手は首に回し、流れてくる快楽を受け入れる。
「ん、ッ……ちゅ、ぁ、むっ……ふっ」
「んゃ……ふッ、んんぁ……っ、んぅっ」
甘く感じる唾液と、自分に合わせてくれる舌使いが後を押し僕自らも舌を絡めに行く。辿々しく、拙いながら懸命に。声が漏れる事すら厭わない。互いを求め合う長い長い口付け。
聞こえるのは互いの荒い息遣い、そして──くちゅ、ぴちゃ、と響き渡る水音が欲をより掻き立て、半ば背徳的なこの行為をより助長する。
しかし、僕の記憶はそこで途切れていた。
*
ああああああっ!! 変な事思い出したあああああ!!!
そう言えばこんなことしてた。自分からしてたから言い訳が効かない(致命傷)。
僕は、友達と何をしているんだ。
馬鹿か、馬鹿なのか。恋人でもない相手にキスマークを付けられ、半ば流されるように始めたディープキスで本気になるなんて……これなんてエロゲなんだ。選択肢もっとあったでしょ。いや、問題はそこじゃないけどさ。
恥ずかしくて死にたい。最高に、恥ずかしい。
「変な事思い出したって辺りから全部声に出てるよ、楓。一旦落ち着いて」
「……なんでそんな冷静なの?」
「ひ、み、つっ(はぁと)」
「美空は、そんなキャラじゃ無かったでしょ……」
昨日からずっと遊ばれ……弄ばれている。
とんだ猫被りが居たもんだ。
……それは、僕もだけど。
「さてと、とりあえず学校行かなきゃね」
「う、うん……そうだね」
なんだか、この態度には本当に釈然としないけど、ここは大人しくしておくしかない。何かを言う度にそこを集中的に突かれかねない。
仕方なく起きると、こちらを見つめて美空は嬉々として呟いた。
「へえ、着痩せするんだ……」
何処か嬉しそうにしている美空が理解出来ず、彼女が向けたところへ視線をゆっくりと下げていけば……露わになった2つの丘があった。
僕はハッとした表情になり、大慌てで胸元を腕で隠し、大声で叫んだ。
「っ……着替えるから出ていって!」
全く、油断も隙もない。
でも、ちゃんと言葉を受け入れたのか素直に外へ出ていった美空。
押し引きは彼女なりにちゃんとあるのだろう。
そう思いながら時計を確認しつつ着替え始め、他にも朝食、学校へ行く準備の全てを終えるとここでようやく一息が吐けた。
昨日の早退後から大変な事ばかり(全部美空のせい)だけど、何だかんだこうして先に準備を終えて外で待っていてくれる優しさは健在。
「ほーら、行くよ」
「あ、うんっ……」
そう言うと体調を気遣ってか、今日も手を繋いでくれた。
でも、僕は昨日の件その他諸々があるから恥ずかしくてまともに顔も見れない。
しかしその道中、今の美空は昨日までとは違った表情を見せた。
段々表情が固くなっていってるというか、冷たさを感じるというか……気を張っていて、話しかけても「んー」とか「そっか」しか言わないし、時折手を握る力が強くなる。そのタイミングは測れず、不規則な為、きっと無意識にそうしてるんだろうけど……どこか不安になり、珍しく僕達の間には無言の時間が続いた。
学校に着くまでこんな感じなんだろうか。
でも、それは、気まずい。
どうにか、しなければ……。
──そう思っていた時、背後から誰かに見られているような気がした。
それと同時に今まで黙っていた美空が口を開いた。
「この視線の正体が、昨日言った事に繋がってるよ。とりあえず、振り向かずに普通にしてて。全部、私がなんとかするから」
まただ。昨日の件は最初から全く、話が読めない。
どうして、僕が見られているのか、そもそも何故美空が真っ先に気付いたのか……聞きたいことは山ほどあったが、ここはぐっと堪える。
「……ん、分かった、美空の言う通りにする」
どんな根拠があって、あんな言葉を言ったのかは分からないままだったけれど、この場は彼女の言う通りにしよう。ああも言い切った上に後で説明もしてくれると聞いた。なら、文句は微塵もない。
そう思って、僕は美空にピッタリとくっついて歩いては甘えるフリをして登校する。
しかし、僕は知らなかった。昨日の1件はほんの始まりに過ぎず、このストーカー紛いの行為も序の口でしか無かった事を。
それに……話の主役がいつも僕だとは限らない。
読んでくださってありがとうございます。
しおりも増えてきて、段々続きを待っていてくれる人が出てきたなって自覚し始めました。
足りない描写とか沢山ありますが、書いていくことで頑張ってそれを無くしたいと思います。
次回、ポケモンやりたいけどレントラー族が剣盾に居ない。
お楽しみに。(嘘です)