嘘ついてすみません!!!
「ぷぁ……遅かったね? あんまりにも、美味しそうだったから味見しちゃった。ふふっ、こんな所にわざとらしくキスマークなんて付けちゃってさ、夜見への当て付けのつもり?」
案の定、危惧していた事が起こった。楓にはもう少し注意すべきだったと私は深く反省する。
桃は桃で、1人前に私を煽っているみたいだけど楓が無防備なのは出会ってから1週間も過ごせば容易く分かる。
けれど、楓の上気した頬、妙にはだけた制服姿を見ると何処かイラついて仕方がない。その蕩けた瞳の先で見つめていた相手が、夜見桃というだけで。
私は内心、込み上げてくるものを抑えながら冷たく桃に言う。
「別に、私が楓と何をしても関係ないでしょ?」
「ううん、あるよ。……ただ、夜見がこの子、貰っちゃおうかなって」
笑みを浮かべながら1人前に私に挑発しているのか、元々ある自分が昨日付けたキスマークの位置へと唇を押し当て、こちらをちらり見てくる。
これで上書きしてあげる。とでも言いたそうな目。
あてつけのつもりでやってるのは桃の方だ。
この子はまだ昔の事を引きずっている。あの時の拒んだから、私は桃に貶められ、私はクラスから瞬く間に孤立させられてしまう事になった。
だから、この子の居ない学校を選んだ。
誰も中学での私を知らない人の所に来た。
なのになんで、まだこの子は私の目の前に居るんだろう。
私は、拒んだのに。
昔の私達の関係はこうじゃなかったのに。
私は……親友だと思ってたのに。
でも、そんな事を今のこの子に、それも私が言ったところで状況は変わらないどころか悪化する気がする。
だから、私が選ぶ選択肢は──。
「楓、行くよ。早く行かないと授業遅刻しちゃうから」
「う、うん」
「……っ」
反応して喜ばれるなら。と取った行動はリアクションしない事。
私は、楓の手を引いて強引にその場を後にする。
この行動で合ってる。私の行動は間違っていない。
そう胸に言い聞かせながら授業を受け、気付けばお昼休み。
ふと後ろを見ると、さっきのような事があったにも関わらず、授業終盤になると昨日までと同じようにかっくん、かっくんと首を前後に揺らして瞼を閉じている楓。
その様子がとても気に入らない。と感じた私は無言で楓を揺り起こす。
「んぁ? ……あ、寝ちゃってたや」
「楓、今日は中庭で食べるから……着いてきて」
少し冷たい。と我ながら思うものの、このくらいの方がこの件にはもう関わらない。
……と思っていたのに。
「ごめんね、今日は夜見さんのところに行こうと思って」
「え? ……どうして? あんな事されたのに、なんで?」
「話があるから。とても大事な、話」
私には分からなかった。理解出来なかった。
私が行かなかったらあのまま襲われていた可能性もあるのに。
それでも楓は、行く。と言った。
開いた口が塞がらない。
そこで私は思う。
楓ってこんなに、頑なだったかな……。
もっと、ふわっとしていて、弱々しく見えたのに。
気付けば、楓は教室から姿を消し、いつも居る桃も話の為なのか居ない。
今追いかけなければ、いつものように取られて、最後には捨てられる。
取られたくないし、捨てられる楓の姿も見たくない。
なのに、桃とはもう自分からは話したくないという気持ちが自分をその場に縛り付ける。追いかけるどころか、立つ事が、一歩踏み出す事が……難しい。
久しぶりに出来た友達が、気になる人が奪われるかもしれないのに私は一体何をしているんだろう。なんで足が、動かないんだろう。
考えても考えても、答えに納得がいかない。
行く事も、行かない事も私には選べない。
ああ、苦しい。弱気な選択しか出来ないのが歯痒い。
楓、行かないで。首を突っ込まないで。
桃ももうやめて……私の友達を、取らないで。
私の心の叫びは虚しくも自分の中だけでしか響かない。当の本人達は目の前に居ないんだから当たり前。
昨日は、あんなに強気に行けたのに。
その後、私は昼食も喉を通らず、戻ってきた2人を見る事も出来なかった。何があったのか、凄く気になるのに……こういう事になると私は
こうなったらもう、授業なんて耳に全く入らない。
でも、何か独り言とか、聞けないかな。
と思って、聞き耳を立ててしまう。
……。
…………。
何も聞こえない。
やっぱり、楓は独り言を言うタイプじゃないよね。
何も聞こえない、し?
聞こえない? 何も?
楓って、普段なら授業寝てるのに。
それで天使以外にも「眠り姫」ってあだ名が付く程いつも、寝てるのに。
いつもの寝息が聞こえない。
お昼から、思ってはいたけど……楓も今日は様子がおかしい。
その事に落ち着いてきた思考で私は漸く、気付いた。
楓も多分、怒ってる。
そうだよね。昨日はあんな事したし、今日も桃に襲われた上に巻き込まれたから普通に考えれば怒ってないはずない、よね。
私もいっぱいいっぱいだったけど、楓はただ巻き込まれただけだから。
どうしよう。どうし──。
「……さん、笹木さん」
「はいっ!? 笹木ですっ!」
先生に当てられている事に途中で気付き、思わず立ち上がってしまい、先生は呆れた顔で、ため息を吐く。
「笹木さん、授業、ちゃんと聞いていませんでしたね……でも、この問題の答えを書いてください」
「うっ……分かりました」
私は泣く泣く黒板に問題の答えを書きに行く。
授業は全く聞いていなかったけれど、偶然にも予習していた所だった為なんとか答えが合い、事なきを得た。
「はぁ……」
安堵の溜息を零し、体の力を抜いた所でつんつん、とペンで背中をつつかれ、悩むきっかけになった本人の声が小さな声で聞こえてくる。
「授業はちゃんと聞かないとダメだよ」
「分かってるけど……楓には言われたくない」
「それは違いないけど」
口を開けばホッとするいつものやり取り。
そして、楓は今の会話で出していいと踏んだのか、私が悩んでいた事に変えた。
「それと、言いたい事と聞きたい事があるなら素直にね」
「バレてたんだね……」
「最近のラノベじゃないんだから、私だってそこまで鈍感じゃないし、途中から焦ってた事まで知ってる。落ち着いてる時は落ち着いてるけど、何か変化や異変があるとそれをストレスに感じていつも通りでは居られない。変な事の方が落ち着く私と逆のタイプ。違う?」
「…………ただ寝てるだけだと思ってたのに、私の事ちゃんと観察してたんだ」
「いや、悪いかもしれないけど……美空って不機嫌だと凄く分かりやすいよ、今日の朝から眉間にシワ寄ってたし」
「うっ……そっか」
知らなかった。なんなら、昨日も今日も昼間以外は楓に対しては普通に接してると思ってた。こんなに見透かされて、私の方が幼いや。
ああ、今日の楓は何処か頼もしい。
「それと、放課後、夜見さんも話があるから中庭に来てね」
「……分かった。でも、桃も、いるんだよね?」
「居る。なんなら、その為にお昼は夜見さんに大切な話があるって言ったよ?」
本当に今日のこの子は大分気が回る。こんな可愛い容姿で出会ってまだ2週間も経ってない私の為に思考を巡らせて……。
こんな短時間で何を話したのかは気になるし、どんな顔で今更桃に話せば良いのかも分からない不安も残っていた。
が、整理をさせてもらえる程の時間はなく、直ぐに放課後がやってきた。
悪化する不安を抱えつつ、新たに芽生えた楓への期待が入り交じり、ぐちゃぐちゃな心で教室を出ると、今朝私がやった様に手を握り、こちらを向くと、楓は普段通りの声と、とびきりの可愛い笑顔で私に言う。
「美空、私は今から……2人を怒るから」
私はこの言葉で罪悪感を自覚して、ときめいて──。
何処かホッとしてしまっていた。
お気に入り気づけば160も突破して.......なのに嘘ついた事、申し訳ありませんでした!シリアス書くの下手なので3話くらいで終わらせようと思ったら視点変更するしか思いつきませんでした。
なので、早く書きたいですね。仲直りックス。
という事でポケモンやりつつ、話を進めていきたいと思います。
こんなに拙い小説に高い評価も付けてくださってありがとうございます!これからの励みにします。では、次回の後書きで。