吐く息は白く染まり、星が散りばめられた夜空はどこまでも澄んでいる。
そんな、ある寒い日の夜。
魔物退治の依頼を終えた私達は、団長と、何人かの団員と共に、艇へと帰ってきた。
おつかれさま、という団長の労いの言葉に、
「お疲れ様でした」
「おっつかれ~☆」
「ええ、お疲れ様」
「ああ、お疲れ」
仲間達と共に労いの言葉を返しながら、甲板へと登ると、
(ん?)
その甲板の、中央付近。
地べたに座って手をついて、夜空を眺めている人影が見えた。
フードを被った、少女に見える姿。
(……まさか)
この寒い中、と思っていると、彼女はすぐこちらに気が付いて、
「遅いぞ」
立ち上がり、待ちかねたような声を甲板に響かせる。
驚き棒立ちになっていると、後ろから甲板に上がってきた仲間達が私を追い越し、
「あれ、スカーサハちゃんじゃん。たっだいま~☆」
「……ああ、アルスター島の……。私達を待っていてくれたの?」
「いや、ソーン。多分、待っていたのは私達ではなさそうだぞ……」
と、寒そうに白い吐息を零している彼女……スカーサハの周りに集まって輪を作る。
「すまない。少し失礼」
我に返った私は、そんな仲間達の間をややかき分けるようにして、スカーサハの目の前に立ち、
「……ずっとここにいたのか?」
しゃがんで、赤くかじかんだ手と頬を交互に見ながら、そう問う。
「……ふん、自惚れるな」
と、スカーサハが鼻を鳴らして、
「たまたま星を眺めていただけだ。そうしたら、たまたまお主等が帰ってきたから出迎えてやったまでだ」
白い息を吐いて、ふるふると小さな身体を震わせながら、そんな事を言った。
はぁ、と私も白い息をついて、
「あまり無茶をしないでくれ。その身体は器の身体なのだから、体調を崩さないとも限らない」
一応、そう注意した。
こう言って素直に聞き入れるような性格ではないことはわかっているが、それでも言わざるを得ない。
「……ふん」
案の定、またスカーサハが面白くなさそうに鼻を鳴らす。
仕方がないな、と思いつつ、
「スカーサハ」
「……なんだ」
「ただいま。待っていてくれていた事……とても、嬉しく思う。ありがとう」
先とは別の、また心からの言葉を伝えた。
◆
団長と仲間達に、
「私達は、ここで失礼します。彼女を、暖かい場所に連れて行きたいので……」
と、もう一つ、
「今回も、皆の力あってこその、この成功でした。感謝致します」
そう言って一礼し、私はスカーサハを連れ、艇内へと歩き出す。
「……いいな~、スカーサハちゃん」
「羨ましいのか?クラリス」
「そりゃそうだよシルヴァさ~ん。女の子なら、誰でも一度は騎士様に憧れるのっ☆」
「え、女の子って、みんな騎士に憧れるの?ど、どうしよう、私……」
「……ソーン、君はそのままでいい。そのままでいいんだ」
どんどん遠ざかっていく仲間達の声を後ろに、
「さて」
と、私達はいくつもの小さな灯りに照らされている、艇内の廊下にたどり着く。
隣を歩いているスカーサハの頬と手は、まだかじかんで赤くなったままで、
「とりあえず、私の部屋に行こう。暖房がある」
「……ん」
はぁー、と息を自らの手に吐きかけながら、スカーサハが頷く。
……あまり小言を繰り返したくはないのだが、
「スカーサハ。私の帰りを待つのは良いのだが、今度からは甲板で待っていなくてもいいぞ」
それでも言ってしまうのは、私の性分なのだろうか。
「む」
と、スカーサハがこちらを睨む。
「だから、吾は待ってなどいない。たまたま夜風にあたっていただけと言っているだろう」
身体を少し震わせながら、まだそんな事を言うスカーサハ。
……先程は、たまたま星を眺めていただけと聞いた気がするのだが。
まあ、それに突っ込んでも不毛なやり取りが起こるだけだろうから、
「……この時期は、談話室とか、暖かい所にいてくれ。帰ったら、すぐそちらに行くようにするから」
依頼で艇を留守にする度に寒空の下で待たれていては、こちらの気が気でない。
槍を持っていない方の手で少々頭を抱えながら、そう提案してみるが、
「わかった。考えておいてやろう」
およそ考える素振りを見せずに、スカーサハが不遜そうに言う。
考えるのでなくそうしてくれ、と言う前に、団長にあてがってもらっている私の部屋のドアが見えた。
少し冷えているノブを回し、外開きのドアを開け、
「入ってくれ。すぐに暖房を入れる」
スカーサハを招き入れる。
「うむ」
と、スカーサハが部屋に入り、私も後に続く。
ドアを閉め、手に持っていた槍を壁に立て掛け、中央のテーブルに置いてある小さなバルツ製の照明を付ける。
ぼんやりとした明かりが部屋を包んで、次は、と私は部屋の隅にある小型の暖房器具へと向かう。
スイッチを入れると、すぐに暖かく赤い光が灯って、
「アルスター島には、こんなものはなかったな」
すぐ傍に立っていたスカーサハが、その赤い光に手をかざしながら言った。
「ああ。……初めて見た時は驚いた」
アルスター島の気候は温暖とは言い難く、特に冬場は相当に冷え込む。
なので、寒冷への対策としては主に暖炉が使われているのだが、
「こんな便利な物があるとはな」
火の魔力を搭載しているというこれは、短時間でもすぐに部屋を暖気で満たしてくれる優れ物だ。
こんな手軽な暖房器具はかの島にはなく、そしてこんな便利な物がこの世にあるなどとは、思いもしていなかった。
「空は広いな、スカーサハ」
しゃがんで、暖かい光に手をかざしながらそう言うと、
「なんだ、今更世間知らずの振りか?」
くす、とスカーサハが笑ってそう言った。
私も少し笑い、
「私だって、この世には知らないことの方がずっと多いさ」
言って、私は立ち上がりその赤い光から少し離れ、身につけていた鎧を脱ぐ事にした。
がちゃり、がちゃり、と今日はもう用済みとなった鎧を外して床に置いていると、
「ずいぶん綺麗ではないか」
赤い光を背に、スカーサハが私の汚れ一つない鎧を見ながら、
「お主、まさか怠けていたのではないだろうな」
からかうように、失礼なことを言う。
「違う。今回の魔物は霊体で、肉体を持っていなかったんだ。だから、返り血も浴びていない」
同じ理由で、先程立て掛けた私の槍にも汚れ一つ付いていない。
「なんだ。てっきり、先の女達に任せっきりにしていたのかと思ったぞ」
と、すっかり暖まった様子のスカーサハが、事実無根の皮肉を言ってくる。
「そんなわけがないだろう」
その皮肉を軽く流しつつ、鎧を外し終えた私は内に着ていた簡素な肌着だけになり、
「ふぅ」
と、ベッドに腰掛ける。
ようやく人心地ついた気持ちになっていると、
「そう言えば」
スカーサハがしずしずと歩き出し、
「今日の依頼に出かけた者は、お主以外は皆女だったな」
そのまま、ゆっくりと私の隣に腰掛けてきた。
きし、と小さくベッドがきしむ音が、薄暗い部屋に響く。
「……ああ、そう言えば」
そうだったか、とぼんやり答えると、
「なんだ。そのとぼけた反応は」
スカーサハが怪しむように私を見る。
「まさか気づいていなかった、とでも言うつもりではあるまいな」
「……いや、そういうわけではないのだが」
確かに今日の依頼に参加した者は、団長を含み私を除けば皆女性だった。
だが、だからといって特に何ということもないし、その手の妙な意識も私の中にはなかった。
彼女たちは確かに信頼がおける気の良い女性だが、別にそういった対象では……
「ほう」
と、スカーサハ。
「ならば」
ぼんやりとした薄暗い部屋。
スカーサハが、ほとんど触れ合う程の距離まで近づく。
小さく美しい顔がすぐ傍まで寄り、澄んだ琥珀色の瞳がじっとこちらを見つめる。
そして、ほのかに甘い匂いが、私の鼻腔を静かに刺す。
「お主にとってのそういった対象の女とは、どういった女なのだ?」
そう言ったスカーサハの頬は、僅かに赤く染まっている。
その赤さは、もう寒さによるものではないだろう。
そして多分、暖まったからまた赤くなった、というだけでもないだろう。
「……待て、スカーサハ」
まだ身体を洗っていない、と言いかけて、
「待たぬ」
途中で、唇を遮られてしまった。
◆
ぼんやりとした明るさの部屋。
隅には、赤い光を灯す暖房器具。
そんな部屋の、ベッドの上。
「……寒くないか?」
白い素肌を晒し、ぺたんとシーツに座っているスカーサハが少々心配になり、私はそう訊いてみる。
「いや、大丈夫だ」
と、スカーサハ。
件の暖房のおかげですっかり暖まったのだろう、確かにもうその身体は震えておらず、寒そうにしている様子はなかった。
と、
「帰りを待っていた時は寒かったがな」
スカーサハが、小声でようやく正直な事を言ってくれた。
「やはり待っていたんじゃないか」
そう言うと、
「……煩い」
と、スカーサハが顔を横にそむけてそっぽを向いてしまう。
可愛らしい、と思いつつ、
「本当に、次は暖かい所で待っていてくれないか。こちらの気が気でない」
やはり心配で、そう言うと、
「暖かい所?」
と、スカーサハが私を見て言う。
「ああ。常に暖を取っている談話室とか、なんならこの私の部屋でもいいから……」
言葉の途中で、
「暖かい所など」
と。
スカーサハが、私に抱きついてきた。
柔らかく、暖かい肌。
鼻先に、流れるような銀髪が散って、狂わんばかりの甘い匂いが香る。
「ここしか、思い当たらんぞ?」
私の胸をその小さな顔でくすぐりながら、スカーサハがからかうように言う。
……なんだか、誤魔化されているような気がする。
結局こちらの言うことは全然聞き入れられていないような気がするが、
「……スカーサハ」
今は、そんな事はどうでもいい気がした。
私はスカーサハの顔を上げさせて、その小さな可愛らしい唇に、
「ん……」
自分の唇を重ねる。
そのまま、ほんの少し、舌先が触れ合って、
「……甘い」
唇を離し、私は誰ともなくそう言う。
すると、スカーサハが私から離れてシーツに仰向けになり、
「……お主はいつもそんな事を言うな」
半ば呆れたような顔で言った。
「……そうか?」
いつも?と私は不思議に思う。
口付けの度、私はこんな事を言っているのだろうか。
「ああ、毎度毎度甘い甘いと。そんなわけがあるわけないだろう」
まったく、とスカーサハ。
そう言われても、
「スカーサハが甘いのだから、仕方がないだろう」
私にはそう言う他がない。
「……ふん。味音痴の味覚評など信用できるか」
スカーサハがまたそんな根拠のない皮肉を言い、
「唾液が甘いわけがなかろう。この馬鹿」
と、少し頬を染めながら、顔を横に背ける。
その仕草が、とても可愛く、
「自分で気づいていないだけだろう」
私は、横になったスカーサハの、白く細い首筋に口付ける。
「ひゃ」
「……相変わらず、首が弱いのだな」
「う、うるさい……ひゃっ」
可愛く声を上げるスカーサハに、今度は、と首筋から喉元に唇を移動させ、一気に吸う。
と、スカーサハが、
「うあ、だ、だから、こ、ここは触れてはならぬと何度……」
手足を小さくじたばたさせながら、うめく。
ここ。
すなわち、今私が愛撫している喉元。
――故事に曰く。
龍の喉元には、逆さに生えた逆鱗と呼ばれる鱗が一枚ある。
普段は温厚な龍だが、ひとたびここに触れられれば、触れた者を生かして帰さぬほど怒り狂うという。
……だが、
「今は、真龍ではないだろう?」
このエルーンのつるつるした喉に、そんな鱗があるようには思えない。
「い、今はそうでも、真龍ならば……ひゃうっ」
構わずに、喉元……恐らくは逆鱗があるであろう辺りを、ねぶるように舐める。
そしてその度、こちらから見ればいささか大げさに思えるほど、
「うぁ、や、やめ……」
スカーサハの身体がぴくんぴくんと反応する。
つまりああは言っていても、ここはいわゆる、スカーサハの『感じやすい場所』という奴なのだろう。
(……拒まずともいいと言うのに)
そう思いつつ、とは言え、とも思う。
スカーサハが触れてはならぬというのなら、確かにそうするべきだろう。
……今はともかくとして。
なので、
「そうだな。なら、真龍のスカーサハとする時は気をつけよう」
唇を喉元から離してそう言うと、
「……へ?」
何故か、スカーサハがぱちくりと素っ頓狂な顔を作る。
「?」
どうしたのか、と思っていると、
「お、お主、今なんと……」
その顔が何やら化け物を目の当たりにしたような顔に変わっていき、
「……む」
私は少々むっとしつつ、だがこれ以上何かを言ってやる気にもなれなかったので、
「ひゃっ!」
構わず、私は胸の小さな桜色の突起に口付け、同時に既に少し湿っていた秘部を、右の人差し指でなぞる。
「あっ、ば、馬鹿っ。この馬鹿っ。い、いつの間に、そんな取り返しのつかぬ所まで……あっ」
何やらうめきながらあえいでいるスカーサハに、
「……今更だ」
それだけ言って、胸を吸いながら、秘部のやや上部にある、皮を被った突起に触れる。
「あっ……」
びくん、と一際大きくスカーサハの身体が跳ねる。
一旦胸から口を離し、舌を身体に這わせながら、秘部まで移動させる。
そうしてたどり着いた無毛の割れ目を、そのまま静かに舐めると、
「あっ、うあ……」
ぴくん、ぴくん、とスカーサハの小さな身体が反応する。
割れ目に、私の唾液でない液体が、どんどん滲み出てくる。
女性が……スカーサハが、感じているという証。
(……ああ)
スカーサハが、感じている。
スカーサハが、私で感じてくれている。
けして許されない筈の罪を犯した私に、スカーサハがその身体を委ねてくれている。
愛おしい。
ただただ、愛おしい。
その優しさが、総てが、愛おしい。
「……スカーサハ」
舌での愛撫をやめ、私は彼女の顔を見る。
「……?」
スカーサハが、ぼう、と私を見る。
上気した頬。
荒い呼吸の度に小さく震える肩。
白い肌に伝う汗。
(……っ)
気が狂わんばかりの衝動が、内に起こる。
はち切れんばかりに怒張した自分のモノを、濡れそぼったそこにあてがって、
「……いいか?」
衝動を何とか抑えながら、そう訊いた。
「……ん、いいぞ……」
そう頷いた、スカーサハの顔。
眉は下がり、吐息は荒い。
頬は染まり、僅かに綻んだ口元は、淫らな微笑みを作っている。
それは、言うなれば、まさしく女の顔で、
「……っ!」
私の何もかもをかなぐり捨てさせるには、十分すぎた。
◆
暖かい。
ぬるぬるしている。
千切れそうなばかりに狭い。
己のモノが、この世のものとは思えぬほどの快楽が包まれる。
そして同時に、己の心が、言葉にできない幸福で満たされる。
……私はスカーサハと出会うまで、これを知らなかった。
この快楽も、この幸福も、どちらも知らなかった。
私にこれを教えてくれたのは、スカーサハが最初だ。
そして今後も私にこれを教えてくれるのは、スカーサハが最後だろう。
――なんだ、今更世間知らずの振りか?
と、さっきスカーサハは言った。
世間知らずの振りどころではない。私は、この世の事など何も知らないに等しい。
少なくとも、男女の事と、女性を愛するという事については、何も知らなかった。
だから、もし。
スカーサハに出会わなければ。
スカーサハが私を赦してくれなければ。
スカーサハが私を愛してくれなければ。
私は、これを生涯知る事はなかっただろう。
「……スカーサハ」
一旦、繋がったまま動きを止めて、私はスカーサハを見る。
「……?なんだ……?」
とろんとした目で、スカーサハが私を見る。
白い肌は汗だくで、流れるような銀髪は大いに乱れてシーツに広がっている。
控えめな胸の先端にある桜色の突起はつんと立ち、掴んでいる細い太腿は火傷せんばかりに熱い。
そして、繋がっているそこは、その比にならないほどまた熱い。
そんな、知らなかったスカーサハの姿を見ながら。
この世の誰よりも、スカーサハを感じながら。
「……ありがとう。私は、スカーサハに出会えて、本当に良かった」
私はそう言った。
すると、
「ふふ」
スカーサハが愉快そうに笑う。
それは悦びというよりも、呆れたような笑いだった。
「そこは、愛しているとか、そういうのではないのか?」
くすくす、と笑うスカーサハ。
「う、す、すまない」
情けなく口ごもりながら、そう言うと、
「ふふふっ」
また、スカーサハが笑って、
「よい。ノイシュは、それでよい」
穏やかに、幸福そうに、
「お主の想いは、もうとっくに伝わっている。だから、それでよい」
そう言ってくれた。
「……スカーサハ」
ありがとう。
本当に、ありがとう。
例えようもない幸福の中、私は、中断していた動きを再開する。
「あっ……」
苦しそうに、スカーサハが口をぱくぱくと動かして、
「ノイシュ、吾は、吾は、ノイシュを……」
何かを言った。
その言葉を私は誰にも聞かせるつもりはないが、その言葉は確かに私の耳に届いて、
「……ああ、私も……」
それと同じ事を私は言って、そしてこれ以上、私はもうまともな言葉を発する事はできなかった。
果ては、もう近かった。
◆
照明を消した、暗い部屋。
スイッチを切り、赤い光を灯していない暖房器具。
そんな部屋の、ベッドの上。
「暖かいな」
スカーサハが私に引っ付きながら、そう言った。
「……私は少し熱いのだが」
せっかく汗を流してきたというのに、私の身体にはまた汗が滲み始めている。
冬用の厚手の毛布に包まれながらこうまで抱きつかれては、流石に少々暖かすぎる。
が、
「では、離れるか?」
そんなからかうような顔でそんな事を言われては、
「……いや、このままで構わない」
そう言う他がない。
「ふふ、素直なのは良い事だ」
と、スカーサハが笑う。
そのまま、少し間があって、
「ノイシュ」
と、スカーサハが静かに、私の名を呼んだ。
「ん?」
なんだ?と相槌を打つと、
「……ありがとう」
らしからぬ素直な口調で、スカーサハがそう言った。
「……スカーサハ?」
そんな事はこっちの台詞で、と言おうとして、
「……寝る」
ぷい、とスカーサハが身体を横に背ける。
そしてそのまま、
「……すぅ」
と、わざとらしい寝息を立ててしまった。
私は、少し笑って、
「……ありがとう、スカーサハ」
おやすみ、と頭を少し撫でて、そう言った。
「ん……」
と少しスカーサハが反応して、
「すぅ……」
今度は、わざとらしくない寝息を立てた。
それを見て、私も毛布を被り、寝る態勢に入る。
……明日は、団長が引き受けていた別の依頼がある。
私はそれに参加する予定はなく、今度はスカーサハが参加する予定となっている。
件の依頼は今日と同じく夕方から始まり、帰ってくるのは夜になるだろう。
(……)
もしかすれば。
明日は私の方が、寒空の下でスカーサハの帰りを待ってしまうかもしれない。
いや、待ってしまうだろう。
(やめてくれと注意したと言うのにな……)
心のなかで苦笑しつつ、ふと、私は思う。
もしかしたら、ある意味では私とスカーサハは、似た者同士なのかもしれない。
やめろと言われても、何を言われても、結局の所では自分のやりたいようにやる。
(まあ、私はスカーサハほどわがままなつもりはないが……)
……とはいえ、私にもそういう所はある。
ならば、
(惹かれ合ったのは案外、そんな理由なのだろうか?)
似ているから、お互いに何をするかわからない事がわかっているから。
だから、お互いに放っておけず、お互いに一緒にいたいと思うのだろうか。
(……まあ、いいか)
取り留めのない思考に終止符を打ち、スカーサハの可愛らしい寝息を聞きながら、私は目をつぶった。
(願わくば)
明日の依頼でスカーサハが危険な目にあわぬよう。
そう祈りながら。