「師匠には失望しました。信じておくりだした妹と、まさかこんなことを」と、瞳に怒りの光を宿しつつ、極めて平坦な声でシュテルはユーノを告発した。冥いバリアジャケットに隙間なく身を包む姿はまさしく死神を想起させる。
数秒前までレヴィの手にさんざんいじられて元気だったユーノのフェレットも小さくなる。
「というか、どうやって入ってきたの? カギはかけてあったけど」シュテルの後ろには、破壊されて煙をあげる扉が見えた。猶予はないとみたユーノはレヴィの前に立って、なんとかシュテルをなだめようとする。
「あの、シュテル、これにはわけがあって。話せばわかるから、あっ、待って、待って待って! ブラストクロウで何する気!?」
「……モゲロ」
激しい音が響くと同時に、急襲するシュテルの赤い爪がユーノのシールドに弾かれる。
「速い。さすが、わたしの師匠」
「強い。長くは持たない……!」
一瞬にらみあう師弟の間に、レヴィが割り込む。
「待ってシュテるん!」
「どきなさいレヴィ」
武器を構えた少女に相対する、裸の少女、それに守られる裸の少年。もし目撃者がいたら潔く自死を選ぼう、とユーノは考える。
「大丈夫だよ、シュテるん。ユーノはまだ童貞だよ。ボクとはイロイロしたけど、本番はまだだから」
「……本当ですか?」
「うん、うん! まだ、してないよ!」
「そうだよシュテるん、キミのために大事にとっておいたんだよ!」
「……そうなんですか?」
「そう、そうだよ! たぶん、いや、絶対……そのためだったんだ!」
「そうだったんですね……師匠、失礼しました。わたしの早とちりでした」武装を解いて、シュテルがぺこりと頭を下げて謝罪を示す。シュテルはガーリーなリボンのついたピンクのワンピースを着ていた。
「やっぱり、わたしが本妻ですよね」
「うん! 前から約束してた通りだよ、シュテるん。」
「本番をとっておいたのは褒めておきます。ですがレヴィ。先に手をだした件については後で問いただしますからね」
「あ、うう、やっぱり?」
レヴィが青冷めているが、ユーノはそれどころではなかった。急展開についていけずに焦っていた。自分の人生計画が知らない間に決められているのはわかった。
「ねえねえ、本妻とか、約束って何? どういうこと?」
「もちろん、師匠がわたしと結婚する約束の話です。レヴィから聞いてないんですか?」
「アレ、言ってなかったっけ?」
レヴィが可愛く小首をかしげるが、ユーノはまったく初耳だった。
レヴィとシュテルの説明によると、いろいろいたす前から約束があったらしい。本妻をシュテルとして、みんなでユーノを分けるんだ、とか。そのためにシュテルやレヴィが無限書庫に遊びにくるようになっていた、とか。本妻はシュテルだから、本番好意はシュテルが最初にするべきだ、とか。レヴィがユーノを最初に襲ったのは約束違反ではないけれど、予定されていなかったことだった、とか。最初は『色仕掛け』のつもりが、いつのまにかエスカレートしたんだ、とか。
「さあ、話も落ち着いたところで」とシュテルがユーノの手を握る。
「さっそくしましょう、師匠」
「する、って何を?」
「もちろん、性行為です。せっくす、とも言います」と、シュテルが珍しく顔を赤らめ、声をひそめる。それがあまりに可愛くて、ユーノも顔を赤くする。まじめなユーノは貞操とか、結婚の理念とか、据え膳喰わぬは、とか、いろいろ考えるけれど、現実的に断るに断れない話だった。断ったら命が危ないのはよくわかっていた。それでも聡明なユーノは、先に解決すべき問題があることを指摘する。
「待ってシュテル。扉が壊れて開いてるから、せめて別の部屋で……」
別の部屋に入って鍵をかけるやいなや、シュテルはユーノを押し倒した。いつもクールで無表情なはずのシュテルの真っ赤になった頬と切ない瞳がユーノの視界いっぱいになる。
「ずっと、こうしたかったんです、師匠。ずっと、ずっと。なぜだかわかりませんけれど、一目惚れしたみたいに、最初からあなたのことを愛してしまって。好きになってしまってたんです」
「シュテル……」ためらいを敏感に感じたシュテルは、けなげに首を振る。
「いまはレヴィのことを見ていてもいいです。でも、必ず振り向かせますから。だって、わたしが本妻なんですから。わたしの方が、先に愛して、愛してしまって、燃え上がったんですから。……レヴィの方が手は早かったですけれど」
シュテルはユーノの唇にそっと口づけをした。優しくて切ない、甘酸っぱい味のする、初恋のキスだった。
「好き、好きです」好き、好き、と何度となく繰り返しながら、シュテルはユーノに口づけした。やがて、どちらからとなく舌がからまりあう。ねちゃりと音をたてて、ゆっくりとねっとりと、軟体動物が交尾するようにユーノとシュテルはキスをした。身体をこすりつけあわせ、全身で相手を感じる。「ん……」とつぶやいて、シュテルはワンピースをおもむろに脱ぎ捨てる。白いブラジャーもためらいなく脱ぎ捨て、レヴィに比べるといくぶん平らかな胸を露わにする。
「レヴィも、まざってくださいね」
「うん!」仲間外れになっていたレヴィが、ユーノに身をよせ、大きな胸でユーノ頭を包み込む。
「レヴィ、んむ……んちゅ、ちゅ」条件反射のようにユーノは乳房に吸い付き、頬ずりをして、柔らかさと感触とあたたかさを味わう。シュテルはというと、ユーノの胸に顔をうずめていた。舌で乳首を転がし、鼻先をこすりつけ、それから音をたてて吸い付く。そしてゆっくりと舐める場所を下にずらしていく。胸、肋骨、腹筋、おへそを順番に念入りに舌で味わっていく。そしてやがてユーノの股間にたどりつく。
「これが、師匠の……すごい、おっきい、かたい……んちゅ」先走りにぬれたユーノの怒張を白く美しい指で支えて、竿も亀頭も、すきまなく念入りにキスをする。それからようやく、はぷ、と肉茎を咥える。ユーノのそれは、丹念な愛撫を経てすでに痛いくらいに勃起していた。本日二回目だが、ユーノは激しく興奮していたのでむしろ一回目よりも固くなっていた。
いつもはクールな美少女が、表情をゆがめながら、固く勃起したものに音をたてて吸い付いている。しかも同時に、二人目の美少女のやわらかい乳房も掌にあり、顔全体で味わうことができる。
ぴちゃぴちゃと淫靡な水音が響き渡る。淫夢を見ているのではないかと一瞬ユーノは疑った。やがてシュテルが陰茎から口を離す。そして、体勢を変えて、股間にまたがるようにする。手で勃起したものを支えて、陰唇にそわせる。
「師匠、いれます……んあ、ああ、あ、あああああああああ!!!!!」
ぷつり、と膜を破る感覚とともに、感じたことのない肉の圧迫感がユーノの肉茎全体を包み込んだ。初めての膣は狭く、痛いくらいの圧迫だった。もちろん痛みを覚えたのは初めてのシュテルも同じで、目を固くつぶって「んんん」と小さな声をだして痛みに耐えていた。
ややあって「師匠、う、動きます」と言いながらぎこちなくシュテルは腰を上下させ始める。
「無理しないで」と言いつつ、ユーノはシュテルにあわせて腰を動かした。レヴィの激しいフェラチオを味わった時もそうだったが、快楽を求めて腰が勝手に動いた。同時に、さしだされたシュテルの手を指をからめて握り、支える。
やがて、亀頭が甘美な蜜壺の奥にあたるのを感じる。狭く、きつい膣をえぐるようにしながら、蜜壺の奥目指して肉茎を差し込む。ぱんっ、ぱんっと音をたてながら、腰と腰がぶつかる。
こみあがる射精感をこらえるために、ユーノはレヴィの固くなった乳首をしゃぶることに意識を集中しようとする。吸い付き、むにゅむにゅと鼻先でいじり、味わう。だが、マルチタスクが得意すぎるのがわざわいし、ユーノは器用に腰を使うのもやめられなかった。
「シュテル、もう、でる、でちゃうよ……!! ぁはあ、でるっ、でるっ……」
「師匠、来てください、ぅくっ、あ、あああ、んんんぃぃいいい……」
ラストスパートの激しいピストンがあったと思ったら、ユーノは射精していた。狭い媚肉に最後の一滴までしぼられるような快楽。真っ白になった頭で、ユーノはうすぼんやりと、これで自分も童貞じゃないのか、思ったより早かった、若かったな、大人になれたのかな、とつまらないことを考えた。なぜか、涙が流れた。シュテルもまた涙目だった。顔が近づき、唇が優しく合わさった。舌をからませるわけでもないけれど、あたたかい、愛のあるキスだった。
3人ともぜえぜえはあはあとしばらく荒い息がおさまらなかった。初めてを済ませた興奮と達成感が無言のうちに共有されていた。肉の喜びの中で、愛をしっかりと確認した満足感もあった。
やがてユーノが口を開いた。「シュテル、レヴィ、これからも、よろしく」
「ええ、よろしくお願いします。師匠がはやくエルトリアにいけるように、わたしたちも手伝いますから」
ユーノは一瞬で現実に引き戻された。退職手続き、引継ぎ、周囲の人間への説明、考えなければならないことはいくらもあった。
「我らが王も、待っていますよ」
「そうそう、王様とはちゃんと結婚式あげなきゃね!」
シュテルが本妻なら、ディアーチェは何になるのだろう、とユーノは思考を逃がした。