エルトリア、惑星再生研究所の朝は早い。まだ陽がのぼりきらず空が白いうちに鶏がけたたましく鳴いた頃には皆、目を覚まして活動を始める。
飼っている動物たちの世話も必要だし、それを世話する人間たちの朝の支度も必要だ。パンと牛乳、チーズとバター、ヨーグルトはただ皿にだしてやればいい。野菜と果物を切って、フライパンに油をしいてハムとソーセージを焼く。溶いた卵を、野菜やミンチ肉と合わせて、塩コショウをふる。簡素だし、いつもと変わらないけれど、素材がいいからどれも美味しい。それに量が多いとなかなか大変だから、これくらいシンプルな方がいい。のんびりしているように見えるけれど、だれもかれも、ここの暮らしはなかなか忙しい。農耕牧畜というだけでも大変なのに、研究なのだ。湿度や温度管理はもちろん、様々な土と肥料、間隔の開け方、剪定の仕方、育て方を試し、植生を調査し、土地に最適な植物を探していく。動物たちも、家畜だけでも大変なのに、自然に帰していくために育てる生き物達の生態調査も加わって、いくら人出があっても足りない。
今日の予定は何だったかな、そう、育成魔法の調整、課題は生物多様性の維持と管理……などと考えながら、ユーリ・エーベルヴァインは人形のように美しく整った顔を冷たい水で洗い、真白いタオルでふいた。こがねの長い髪が陽光なくとも輝く。
「ユーリ、おはよう」と後ろから声をかけてきたのは、蜂蜜色の長い髪の毛を優雅に解き放ち、いつものように優しく微笑むユーノ・スクライアだった。
「おはようございます。ユーノ」
不思議な人だ、とユーリは時々考える。自分と違って、こんな荒れ地に縁もなく、興味も持つことはないだろうに、あの王様達と結婚して、協力してくれる。いまでは、彼の知識や組織運営、指揮統率、調査能力、魔導の力は惑星再生に欠かせない戦力だ。彼のおかげで、再生は十年は早まった。
「今日は、レヴィと一緒に遺跡の方に行ってくるよ。だから、お弁当はぼくが準備する」
「ありがとうございます。今日は、わたしが朝食当番なんです。助かります」
「それじゃあ、またキッチンで」
会釈をしてユーノは去っていく。
聞けば、あの三人を相手に毎晩激しくいたしているそうだ。あの細身でよく身体が持つものだ、と思う。一人を相手するのもそれなりに大変だ、と本では読んでいるのだが。王様がユーノを従えるかと思ったら、けっこう対等、あるいはユーノの方がうまく王様達を従えているように見えるシーンもある。
「……不思議ですね」
「そうね。予想外だったわ。まさか三人とも、堕とされるなんて」
と、ユーリの独り言に声を返したのはイリスだ。
「どういうことですか?」
「彼の能力が必要だと思って、わたしがシュテルをたきつけたのは知ってるでしょう?」
「……ええ」
「もちろん、倫理的に問題のあるウィルスコードなんかは使ってない。純粋に言葉を使って説得した。いわば、伝統的習慣であるところのお見合いを設定したにすぎないわ」
やはり、イリスはあの所長の娘なんだなあ、とユーリは思う。先を見越して用意周到といえばよいのか。
「シュテルは彼に近しいタカマチナノハによく似ているでしょ。だから、彼は喜んでシュテルに従うかな、って思ってたのよ。それに、レヴィもなんて言うか、三人の中では一番セクシーだから、誘惑できるかな、って。そのくらいよ、わたしが考えたのは。ところがふたを開けてみれば、あのプライドの高い王様までメロメロになってるんだもの。……レヴィから聞いたんだけど、彼、夜はすごいらしいわね。無限の体力で、天国に導いてくれるとか……。まあ、そんな男女の営みというやつが、わたしなんかには計算できない、ということなのかしらねぇ」
「ユーノに聞くと、あの三人を相手にするのはすごく大変だ、って言ってましたよ」
「そっか。でも彼はけっこう謙遜するから、わからないわ」
ユーリはレヴィから聞いた話では、ユーノはやはり優しくて、いつも献身的にしてくれるんだとか。単なる気配りのことでなくて、夜の営みのことだというから、顔を赤くしたものだ。なんでも、こちらの弱点(ユーリにはよくわからないが)を熟知しているかのように、丁寧なやり方で最高に気持ちよくしてくれるのだ、とか。
「興味深いですね」と、ユーリは言った。
「わたしは、そう、イリスも、男女の愛の営みなんて、よくわからないですからね」
「興味深いわね」とイリスも応えた。
不思議なものだ、とユーノは思う。最初の夜には三人
を相手にする大変さとか、天井知らずの快楽の激しさのあまりに死ぬかと思ったのに、いつまでたっても死ねないどころか、だんだんと物足りなさすら覚えるようになった。
夜はもちろん三人で騒々しく乱れる。昼も図書館ではシュテルと愛をかわし、キッチンではディアーチェをよがらせる。そして今日も遺跡の片隅、誰もいない廃墟の隅で、レヴィとつながる。
レヴィはいつものバリアジャケットのまま、壁に手をつき、片脚を高くあげ、大事に隠されるべき股関はパンティごと魔法を解除してユーノの目にさらし、肉ひだまで丁寧に指で開いてユーノを誘った。ぱくりと入り口を開いて、物欲しげによだれがたれ、湯気が上がる。その奥には千の触手がユーノを待っているはずだった。
「ほらユーノ、もうびしゃびしゃだよぉ。ユーノのおちんちんが欲しくてぇ」
「はいはい、レヴィはいっつも我慢できないんだから。今日はちょっと、焦らしてあげる」
固く勃起した肉棒でもって、入り口をなぞってやる。入るかと思えば、先っぽだけでわざと止まり、ゆっくりと引き抜いてしまう。レヴィが物欲しげに腰を動かして誘い込もうとするのが何とも可愛いらしい。
「ああん、ユーノのいじわるぅ。んちゅ、ん、んん、ちゅ、ちゅ、ぷは、キスでごまかさないでぇ。奥までいれてよぉ。ユーノのカチカチちんぽで、ぐしゅぐしゅ、って、してぇ」
「ふふ、レヴィは我慢できるいい子だよ。ほら、今度はこっち」
「んん~! おっぱい!! ぃいい、よぉ!! 乳首、吸われて、揉まれるの、好きぃ!!! ユーノ、上手すぎるよぉ!!」
不思議なことに、ユーノにはどこを攻めればいいか、手に取るようにわかった。それは探索魔法や読書魔法、遺跡発掘で培われた、魔法とも呼べないような第六感だった。この直感に従って繊細に攻めていけば、もともと感じやすいレヴィが一番攻略しやすい。
「そろそろかな……レヴィ、いくよ、いくよ、奥まで、いれてあげる……ほら、ほらほらほらほらほら!! おっと、逃げた……いまっ!!!」
「っんん~!!!!!」
悲鳴にならない声とともに、一突きでレヴィが絶頂に達する。同時に、ユーノもレヴィの中で至高の快楽を味わう。千の触手が麻薬を分泌しながらユーノに絡みつく。
「んあ! あ、あ、あ、レヴィ! レヴィ、レヴィ!!!」
胸をもみしだき、舌をからませ、全身でまじわる。美しい肌に汗がにじむ。汗も、唾液も、涙も、すべて甘露になる。柔らかい肉も、張りのある吸い付くような肌も、触れるすべてが気持ちいい。乱れに乱れる姿を見るのも、耳に入る嬌声も、五感すべて官能の喜びに満たされる。
「だすっ! レヴィ、中にだすっ!! レヴィの! 中!! だすっ、だすぅぅううう!!!!!」
「ユーノ! ユーノ!! そこ、いくっ! そこ、そこ、そこ、またいっちゃう!!! っんんーー!!!」
ユーノもまた絶頂に達して精を放出し、レヴィも数度目かの絶頂を迎える。二人は同時に淫靡に微笑み、ゆっくりと抱擁と接吻を交わす。白濁したものが、結合部からゆらりと流れていく。それはまさしく、絡みあう二人の美なる淫魔だった。陽気に笑うレヴィや、優しいだけのユーノしか知らない者達には想像できないし、そんなのは聞いたとしても即座に否定するだろう。
だから、それはまったく、誰にも予想できないことだったのだ。イリスを責めても仕方ない。
ユーノと三人のネコ達は、今日も獣の交わりを続ける。子供が生まれても、きっと交わりを続けるだろう。
それは、エルトリアが求める生命への渇望なのだろうか、とユーリは考えた。
こちらで物語としては一応の完結となります。
最後までありがとうございました。
後はいろいろ妄想を気が向いた時に書いていこうと思います。